三里木区  たわらや酒店  宇野功一@


316号 2006年6月4日

(1)景気動向と酒の甘辛

 酒の甘辛で現在の景気が「好景気なのか」「不景気なのか」が分かるのです。経済企画庁長官も、財務大臣にもぜひ読んでもらいたい、ありがたいレポートを書きたいと思います。これでノーベル賞をもらわなくても「のーめる平和賞」は受賞できるのでは・・・。
  日本酒の裏ラベルにはいろんな表示があります。原料米名、精米歩合、日本酒度、酸度、アミノ酸度、製造元、製造元住所、瓶詰日付、コメントなど。その中で、日本酒度に注目。日本酒度とは、大まかにいうと、酒の甘辛を示す指標と一般的に言われています。
  日本酒度が±0であれば、中口で甘くもなく辛くもないというわけですが、+の数字が大きくなりますと「辛口」の酒になります。逆に−の数字が大きくなりますと「甘口」の酒になります。図表に示しました通り、日本酒度と酸度によって大まかな日本酒のタイプが分類できます。

 では、景気動向と酒の甘辛の相関関係について述べたいと思います。辛口の酒の肴はあっさりした塩分の少ないものが相性がいいと言われます。逆に甘口の酒はこってりして塩分の多い料理に相性がと言われます。ご存知でしたか?
  景気がよい時代は酒の肴やごはんのおかずの品数が多く、1品当たりの塩分濃度が低くなり、相性のよい酒は辛口ということになります。逆に景気が悪い時代は、酒の肴やごはんのおかずの品数が少なくなり、1品当たりの塩分濃度が高くなり、相性のよい酒は甘口ということになります。
  戦国時代豊臣秀吉のめでた酒は甘かったし、江戸時代の酒は辛口だったし、バブル経済のころ日本酒度はどんどん辛口傾向になったし、逆に景気の悪い今日は甘口傾向になっています。景気動向で酒の甘辛は変化するのです。

 


320号 2006年7月2日

(2)手軽な薬膳酒 〜人気の梅酒の世界〜

 お酒を選ぶ時にどんな基準で選んでいらっしゃいますか?

 薬膳という言葉を耳にしたことはありますか?和食料理に漢方薬の素材を入れて料理したものを薬膳料理といいます。健康を維持し、将来起こるかもしれない病気を未然に防ごうと、古人たちの知恵が薬膳料理にあります。
 漢方薬の素材を、酒に浸漬させ、素材の薬効成分をお酒に溶け込ませたものが薬膳酒です。薬効成分は脂に溶けやすい成分と、水に溶けやすい成分があります。酒は水とアルコールが混ざっています。酒に漬け込むということは、その両方の成分を抽出するためです。
 漢方薬の素材を、酒に浸漬させ、素材の薬効成分をお酒に溶け込ませたものが薬膳酒です。薬効成分は脂に溶けやすい成分と、水に溶けやすい成分があります。酒は水とアルコールが混ざっています。酒に漬け込むということは、その両方の成分を抽出するためです。
 日本を代表する薬膳酒に梅酒があります。梅を酒に漬け込んだものです。梅の木は庭先に植えられたりして、身近に手に入れることができます。梅の実には、琥珀酸、クエン酸などの有益な有機酸が豊富に含まれています。薬効としては「防腐」「解熱」「鎮咳」「鎮嘔」があります。梅雨に入ったこの時期、梅の実と氷砂糖を焼酎に漬け込み、梅酒を造るご家庭が多いと思います。

◆ 本格焼酎で梅酒を造ろう

 焼酎には甲類(ホワイトリカー)と乙類(本格焼酎)に分けることができます。ご家庭で漬ける梅酒の大半はホワイトリカーが使われていると思います。今年は是非、本格焼酎で漬けてみては如何でしょうか?本格焼酎には、米焼酎、麦焼酎、芋焼酎、そば焼酎、黒糖焼酎、泡盛などがあります。原料ごとに香味が異なります。
 お好きな焼酎の原酒(35%)を買って、梅と氷砂糖を入れて漬け込みます。ホワイトリカーは数ヶ月で美味しく飲めますが、熟成しておいしさを増すことはあまりありません。本格焼酎で漬けた梅酒は、熟成すればするほど、味の深みが増してきます。3年以上寝かせた梅酒は家宝にしてもいいぐらい美味しいものに変身します。是非お試しください。

◆ 市販梅酒のあれこれ

 昨今、梅酒も密かなブームです。現在では市販の梅酒も数多く発売されています。梅酒は焼酎に漬け込んだものが一般的ですが、市販されている梅酒の中には清酒に漬け込んだ梅酒もあります。

 焼酎に漬け込んだ梅酒よりも、格段にソフトで、度数が低いのが特徴です。自分好みの梅酒を見つけるのも楽しいと思います。蒸し暑い日が続く今年の夏場は、梅のパワーで元気に乗り切りましょう!

325号 2006年8月6日

(3)飲み方 ご提案

 お酒を選ぶ時にどんな基準で選んでいらっしゃいますか?

○食べる料理にあったお酒  ○銘柄  ○薦められたお酒  ○気分で  ○とりあえず・・・

 選び方は様々ですが、体調に合わせてお酒を選ぶという選び方も頭に入れておいてください。

◆日本酒は体温を上昇させます

 日本酒(醸造酒)は体温を上昇させる効果をもっています。体温を上げる効果を持つ酒は体にとってとってもよい効果をもたらすといわれます。食欲も増進させます。寒い時期に日本酒が恋しくなるのも理にかなっているのです。厳冬期、 日本酒を飲んで外でを歩いていると酔いが醒めます。

◆焼酎は体温を低下させます

 焼酎(蒸留酒)は体温を低下させる効果をもっています。暑い日に焼酎をロックが美味しく感じます。厳冬期、焼酎を飲んで外で記憶を無くし寝てしまうと、体温が下がりそのまま凍死する恐れがあり危険です。
 お酒にはそれぞれの役割がありますから、体調に合わせて選ぶのも一つの選び方ではないでしょうか。

こんな飲み方はいかがでしょうか?

@ まずはとりあえずビール(先発)  A 料理と一緒に日本酒(中継)  B 料理の後半に焼酎(抑え)  

 お酒も料理もたいへん美味しく食べたり飲んだりすることができます。ビールは喉越しですね。喉の渇きを切ってくれます。
続いての日本酒は西洋料理でいうと「ワイン」でしょう。料理を美味しくしてくれます。飲むというよりはお酒をゆっくり味わうということにおもむきをおきます。香りと味と料理を楽しむのです。寒い日はお燗酒、暑い日は冷や酒で楽しみます。
 後半は焼酎を飲むのです。西洋料理でいうと「ブランデーやマール」でしょう。日本酒にはない蒸留酒独特のキレを楽しみます。お酒を味わうというよりお酒を飲むという感覚です。つまみはそんなにいりません。寒い日はお湯割りで、暑い日や水割りやロックで楽しむのもいいでしょう。ゆっくりとお酒を飲みながら本を読むのもいいでしょう。眠くなったらお布団へ。酒量をそんなに飲まない限りチャンポンしても翌日にはアルコールは残りません。


328号 2006年9月3日

(4)白黒はっきりして こうじのあれこれ

◆ 白黒はっきりして・・・

 昨今の芋焼酎ブームの中で、芋焼酎といえば、黒麹という方程式が飲み手の中にあるようです。昨日、仲のよい友人数名と焼き鳥やさんに行きました。ビールを飲んで、焼酎を御所望。

  A:黒白波って何?
  私:黒麹で仕込んだ白波だよ。
  B:では、ふつうの白波は?
  私:ふつうの白波は、白麹で仕込んでんだよ〜。
  C:で、味が違うの?
  私:うん。味が違うように仕込んであるといった方が正しいかなぁ〜。
  A:でも、白波なのに黒が頭に付くのは可笑しいね。黒波がいいのでは・・・。
  B:それをいうなら、黒潮の方がいいよ。
  私:あまり考えたことがないね。同じような事例が九州にはもう一つあるよ。
  佐賀県の竹下製菓が造る「ブラックモンブラン」というアイスクリーム。ブラックは英語で黒、モンブランはフランス語で白い山。直訳すると黒い白山。黒白波と全く同じような関係じゃないか・・・
  皆:(笑)
  C:ところで、黒麹と白麹について、もう少し教えてくれよ〜。

◆ 白麹と黒麹の話

 酒とはアルコールを作ることです。葡萄酒(ぶどうしゅ)は葡萄の房がブドウ糖ですからそのまま発酵します。ビールはデンプンです。発酵しません。そこで水を与え、芽吹かせます。すると、種の中の酵素の働きで麦芽糖ができます。
 米や芋のデンプンもそのままでは発酵しません。日本では古来から麹菌という一種のカビを利用して、デンプンを糖分に変えてきました。
 黒麹はもともとは沖縄の泡盛の麹菌です。大正時代に鹿児島県の河内源一郎氏によって、黒麹菌の中で、色がない白麹菌を発見。たちまち、南九州の焼酎蔵に広まりました。黒麹はその昔の芋焼酎。復古的な焼酎の味わいということで、人気となりました。
 黒麹は白麹に比べて甘味と旨みがあります。味わい深い通好みの芋焼酎が今人気なのですね。


332号 2006年10月1日

(5)結婚式の幕開けに鏡開き 〜未来を開くお酒の蓋〜

◆ 結婚式の門出を祝う鏡開き

日本人は人生の節目節目にお酒を飲んできました。結婚式の時の三々九度は夫婦の絆を固めるための固めの杯ですし、祝宴の時の「鏡開き」は未来を踏み出す新郎新婦の幸多からんことを祝しての儀式です。人生の節目には、やっぱり日本酒が登場しますね。
 先日、素敵な結婚式が加藤神社(熊本市本丸・熊本城内)で行われました。新婦は弊店のご近所の方。この度めでたく結婚をする運びとなり、弊店に鏡開き用の樽酒を注文しに来られました。古式伝統にのっとった神社での結婚の儀とその後の鏡開き。これは新郎新婦のたっての希望であったといいます。
 新郎はドイツ人。結婚式当日は新郎のご両親や親戚の方々も多数、母国ドイツからお見えになっておられました。神前での結婚の儀も済み、お社の前で縁起よく鏡開きが執り行われました。

◆ 鏡開きの酒は

 加藤清正公ゆかりの「栄光冨士」
 熊本の町の基盤を造った戦国大名・加藤清正公。熊本城の築城、熊本の治水事業を通じて国の石高を倍増させ、熊本各地の土木事業を執り行ない熊本の基盤を作った、熊本のヒーロー清正公。その土木技術は現在でも賞賛に値すると言われています。その加藤清正公を祭った加藤神社で、鏡が開かれたお酒は、山形県鶴岡の銘酒「栄光冨士」でした。
 加藤清正公没後、2代目・忠広公は羽後酒井藩(現在の鶴岡)に1萬石で改易。その後、江戸中期から加藤家は酒造業を営むことになりました。銘柄は「冨士」。樽廻船に乗って、遠くは江戸まで「冨士」の銘酒の名は広がったとか。この日、加藤神社で熊本ゆかりの加藤家の酒「栄光冨士」が鏡開きの酒となり、めでたく1組の夫婦が誕生いたしました。

 おふたりの人生に幸多からんことを祈って鏡開き「セ〜ノ、ヨイショ」  「おめでとうございます」


337号 2006年11月5日

(6)木枯らしが吹く季節 恋しいお燗酒について

◆ 燗酒は繊細な日本人が育んだ文化

 お燗にして風味がよくなる日本酒を「燗あがり」する日本酒と言います。一般的に旨味や酸味が多く、味のしっかりしたボディのある日本酒が、燗して美味しいとされています。
 反対に香りを楽しみたい大吟醸酒や、フルーティーでフレッシュさを味わいたい生酒などは、常温や冷やのほうが持ち味を殺さず美味しくいただけます。冷やで美味しい酒、お燗で美味しい酒は酒質が違います。お酒の魅力を最大限引き出すために大切なのは、そのお酒の特性を知ることです。日本酒が最も輝く(美味しい)温度帯を見つけてあげることです。
 一口にお燗と言っても温度帯によって呼び方と味わい方が違います。ご存知でしたか。おおよそ、5℃刻みでお燗酒の呼び方が違うのです。先人たちは、この微妙な温度の差を見極め、お燗酒を楽しんでいたのでしょう。また、サービスする燗番娘も、この微妙な温度差を見極め、美味しい状態で日本酒をお客様に出していたようです。もちろん、レンジが無かった時代ですから、湯煎と徳利でやるお燗酒は、燗番娘の腕の見せ所でした。

 熱燗といっても、煮立ったように熱い日本酒ではないのは見ておわかりの通り。あまり温度を高くするとお酒の味のバランスが崩れてしまいます。香味のバランスが崩れたお燗酒は、温度を冷やしても元の香味には戻りません(不可逆)。日本酒はデリケートな酒です。
 濃醇なタイプの日本酒は比較的高い温度(上燗や熱燗)でも大丈夫ですが、シャープで淡麗なタイプのお酒は人肌燗やぬる燗程度で楽しむのがおすすめです。 河豚のヒレ酒を楽しみたい方は、濃醇なタイプの日本酒をお薦めいたします。
 どうぞ、5℃刻みに日本酒の温度を上げてみてください。きっとその日本酒が輝く温度帯があるはずです。 そして、5℃ごとに微妙にお酒の香味が変化します。まさに日本酒のお燗酒は文化そのものです。

◆ 一般的な温度帯による日本酒の呼び方

とびっきり燗

約55℃

ひなた燗

約30℃

熱燗

約50℃

常温

約25℃

上燗

約45℃

涼冷え

約15℃

ぬる燗

約40℃

花冷え

約10℃

人肌燗

約35℃(体温)

雪冷え

約5℃


341号 2006年12月3日

(7)命の糧から醸される日本の酒

◆ 酒には欠かせない米の収穫祭

 11月23日は勤労感謝の日。一人の酒屋の店主として、家業に従事している妻に感謝しないといけない日ですが、勤労感謝の日の由来は「収穫祭」であります。
 日本は縄文時代の後半より、大陸から伝わった稲作を行ってきました。およそ2000年の前より、私たちの祖先は脈々と米を造り、それを糧としてきました。秋に収穫した豊穣の米。その収穫に感謝する祭が、自然発生的に各地で起こったことは容易に考えられます。
 代表的な行事が宮中の「新嘗祭(にいなめさい)」。「瑞穂の国・日本」の祭祀を司る最高責任者である大王(おおきみ)(天皇)が民を代表して、新穀を天神地祇にお供えして、自らも食して、農作物の恵みに感謝する式典でした。新嘗とは、その年に収穫された五穀のことを指すようです。
 新嘗祭はいつごろから執り行われているか定かではありませんが、日本書紀の中で、皇極天皇元年(642年)の11月16日に新嘗祭の記述が出てきます。そして戦後、昭和23年にGHQの指導のもとで、新嘗祭は「勤労感謝の日」と名称が改まりました。なんだか、労働者の祭典のイメージで、本来の祭の意を表していない気がします。

◆ お米が通貨だった日本

 今でも日本酒の業界は「石」が息づく。

 世界の歴史から見て、穀物を通貨の基準においていた国が歴史上あったでしょうか。ご存知の通り、江戸時代まで、国力は武士の年俸は米の単位「石」を用いていました。1石は、大人1名が一年間に食べるご飯の量です。(1食に1合の米を食べていたと仮定)

 1石=3合/日×365日=1095合

 1kg=約7合ですので、1石=156kgに相当します。

 平成15年度は日本人一人当たりの米の消費量が約60kgですので、現代人は米を食べなくなったことが分かります。今でも日本酒や焼酎は、江戸時代同様「石・斗・升・合・勺」の単位をふつうに使います。
 1石の米から1石の日本酒が生まれます。1石は1升瓶で100本です。
 命をつなぐ糧=お米。これを原料に作られる日本酒や米焼酎は古来の人たちにはたいへん貴重な物でした。
 さて、収穫の秋、食べ物や飲み物にも感謝をして戴きたいと思います。


345号 2007年1月1日

(8)赤酒で祝す・熊本の正月 〜新年明けましておめでとうございます〜

 皆様は赤酒を召し上がりましたでしょうか?熊本のお正月はこの『赤酒』がないとはじまりませんね。赤酒に屠蘇散を入れて飲む風習は熊本独自の文化です。熊本以外の地域では清酒や味醂(みりん)に屠蘇散を入れて飲みます。
 では、肥後の国・熊本のお国酒(くにざけ)であった赤酒について、今年最初の酒・おもしろ小話を書きたいと思います。

◆ 赤酒とは

 「赤酒」は熊本県にだけ存在する日本酒の仲間です。色が赤が強く、テリのある琥珀色を呈しています。アルコール度数は13%程で、清酒よりやや低めです。「延喜式」(西暦905年)に「黒貴(くろき)」なる木灰を使う酒が記録されており、この流れを汲む灰持酒(あくもちざけ)に属する古典的タイプの酒が赤酒です。肥後の国では「御国酒(みくにざけ)」として、古来より熊本の地で醸造されていました。
  江戸時代・細川藩となり清酒を醸造することはご法度(禁止)となりました。熊本では赤酒以外の酒を醸すことはできなくなりました。これには理由があります。冬でも温暖な時期がある熊本以南の温暖な地域で、清酒を健全に醸造することは当時としては至難の技でした。清酒は多くの米を使います。清酒が腐造すると、米が無駄になるばかりか、腐造した酒蔵が破綻してしまう。そうなれば、藩の収入も減ってしまい、藩が破綻に追い込まれる恐れがある。そのために明治維新まで、熊本では酒といえば「赤酒」だったのです。

◆ 赤酒の製法は

 原料米は清酒が酒造好適米という酒米に対して、赤酒の原料米はうるち米を使用します。醸造手順は清酒に似ていますが、醗酵が終了して、お酒を搾る前に、もろみの中に木の灰(灰汁(あく))を加えて、酸化を防ぎ、もろみを中和します。
  灰汁を入れるためでしょうか?お酒の色が赤く照りのある琥珀色となります。赤酒はアルカリ性の酒なのです。味わいは、清酒に比べてトロリと甘く、味醂より味わいは濃厚。

 慶事用の酒として

 熊本では、御慶事用の酒として赤酒を用います。色が綺麗なこともあるのですが、お正月に赤酒を飲んで新年を迎える風習は江戸時代より代々伝わる熊本の文化です。

◆ 世界の極上の甘口の酒のご紹介

   世界三大甘口酒(欧州貴族達が尊んだ酒)として、ソーテルヌ(フランス・白)アイスワイン(ドイツ・白)トカイワイン(ハンガリー)がありますが、赤酒も上品な甘味があり、これらの酒に劣らない酒質です。ロックで飲めばより飲みやすくなります。料理だけではなく普通に赤酒を飲むことをお奨めします。体によいアルカリ性の酒ですから。赤酒で乾杯!

349号 2007年2月4日

(9)鍋と日本酒

 ◆ 鍋料理にあう日本酒のご紹介

 寒いこの季節、家庭や飲み屋さんでの人気メニューといえばなんといっても「鍋」料理ではないでしょうか。一言に鍋料理といっても、いろんなジャンルの鍋料理があります。鍋料理には美味しい日本酒が飲みたくなります。普段は焼酎党の方でも鍋の時ばかりはお燗で、もしくは冷で「キュー」と行きたくなるというのが日本人の性(さが)なのかもしれません。

◆ ポン酢で食べるあっさり鍋料理

 ポン酢で食べるあっさり鍋料理といえば、寄せ鍋、湯豆腐、鶏の水炊き、しゃぶしゃぶなどがありますね。湯豆腐や寄せ鍋は最もオーソドックスな鍋料理で家庭でも簡単にできますね。市販のポン酢を使うのもいいけれど、橙(だいだい)が手に入る方は橙を輪切りにして、果汁を絞り、醤油と混ぜ合わせるとたいへん贅沢なポン酢ができあがります。橙を多く持っている方は、橙を果汁にして冷凍庫で保存しておけば、一年を通してフレッシュな橙果汁を料理に使用することが可能です。
 この鍋にあう日本酒は淡麗辛口の日本酒です。スイスイと水の如く飲めるタイプの日本酒があれば最高!

◆ 麻ダレでいただく鍋料理

 胡麻ダレでいただく鍋料理といえば、しゃぶしゃぶ、寄せ鍋などがありますね。鍋料理の中でも若者が好んで食べる鍋料理ですね。牛肉のしゃぶしゃぶは高嶺の花かもしれませんが、上質な豚肉をしゃぶしゃぶにするのもいいものですよ。この時期、我が家でも豚しゃぶの料理は結構食べます。牛肉よりもあっさりしていて美味しいし、水菜と一緒に胡麻ダレで食べる触感は最高です。
 この鍋にあう日本酒は芳醇旨口の日本酒です。肉や胡麻ダレの濃厚な味わいに負けない味わいの深い日本酒があれば最高!
 鍋料理を一段と美味しくしてくれる名脇役の日本酒。日本酒を選んで鍋料理の種類を決めるのもよし。はたまた鍋料理の種類を決めてから日本酒を決めるもよし。選ぶ楽しさもいいもんですね。迷ったときには是非ご来店下さい。あなたの鍋料理にピッタリの逸酒をお見立ていたします。


353号 2007年3月4日

(10)花見酒・春はどこからやって来る?

 三つの春の使者たち

 昨年は3月13日に近所の桜が咲き始めました。我が家では、この早咲きの桜を「おっちょこちょい桜」と命名しています。山桜なのですが、上記の写真のように美しい桜です。この桜が咲きはじめてから平均で7日後、熊本地方気象台から桜の開花情報が発表されます。熊本の桜の開花より一週間前に咲く早咲きの桜です。昨年も見事、この桜が咲き始めて一週間後の3月20日に熊本地方気象台から桜の開花情報が出されました。
 春が来るのを感じる花が3つあると思います。まずは「梅」。寒い時期に凛と咲く花です。そして「桃」。3月の桃の節句のころに咲きます。そして春本番を告げるのが「桜」です。

 梅・桃・桜前線の北上速度

 桜前線(さくらぜんせん)とは、桜の開花予想日を同じ日で結んだ線のことです。気象庁によって、ソメイヨシノの開花日予想が毎年行われており、桜前線の北上は、3月中旬頃に九州・四国付近から始まり、北海道には5月頃に到達します。かつては、九州から北東方向にほぼ順に桜前線が北上していましたが、最近は、地球温暖化の影響などもあってか、都市部では桜が早く咲くようになり、桜前線が複雑な曲線を描いて進んでいく傾向にあるそうです。

 お花の北上速度

 梅や桃や桜は北上する速度が違うことをご存知でしょうか?南国では差が大きいのですが、北国になればその差がだんだん短くなるのです。1日に北上する速度は、梅は17km、桜は34kmということらしいです。
 福島県郡山の郊外に三春町という町があります。ここは伊達政宗の妻・愛姫(めごひめ)の故郷。なぜ三春かというと、この町から北では梅・桃・桜が同時に咲くということで三春なのだそうです。

 花見の宴

 日本人がいつごろから花見をしていたのか定かではありませんが、平安時代には花見の宴があったそうです。
 お好みの日本酒や焼酎を携えて、桜の木の下で飲む一杯。いいもんですね。さて、今年は誰と、どこの桜の木の下で、何を食べながら、何を飲もうか。思案するのが楽しみな時節となりましたね。


357号 2007年4月1日

(11)残したい屋号のある店

◆ 2つの名前

 私は宇野功一という名前だから、人から私のことを呼ばれるとすれば「宇野くん」「宇野さん」「宇野」とかあだ名で呼ばれるのが一般的。だが、私は酒屋をやっているので、取引先の飲食店の大将や女将さんからは「たわらやさん」と言われる。私の名前はご存知なのだが、あえて屋号でいうのだ。
 この感覚はおそらくサラリーマンをなさっている方は一生体験できないだろう。お店の屋号というのは、先祖代々受け継がれているもの。「暖簾(のれん)」とも似ている。いわばお店の看板だ。最たるものが襲名ということになるのではないだろうか。たわらや酒店には襲名はないが、歴史のある旧家の酒蔵では、代々当主の名前は襲名で決まっているところもある。今回は日本流の屋号について考察してみたい。

◆ ショップ VS ストアー

 最近、屋号が馴染まなくなったし、屋号のお店がなくなってきた。駅前や地方都市の中央市街地(商店街)が郊外型大型店などの出店で歯抜け状態になっているニュースをよく耳にする。たわらや酒店がある三里木駅前商店街も昔に比べお店が少なくなってきた。我が家から線路の向こう側に「光の森」といった大型ショッピングセンターをコア(核)として全国的なチェーン店が表通りを占めている。
 チェーン店は全国的に画一的なサービスを提供するために独自の個性はない。店長の顔さえしらない。お客様は、お店に入るのが初めてであっても、過去にそのチェーンのお店を利用していれば、使い勝手を知っている。マニュアル通りに「いらっしゃいませ」などの言葉はあるが、会話は少ない。これらは○○○ストアーというコトバのお店だろう。
  屋号のあるお店を考えると、先ずは店主の顔が思い出される。がんこな鮨屋のオヤジ、職人技の蕎麦屋のオヤジ、旬の美味しいものを出してくれる鍋屋のアニキ、堅物な酒屋の旦那などなど。これらは○○○ショップというコトバのお店だろう。専門的な職能を持つ店という意味がある。

 屋号に出で立ち

 屋号は江戸時代の身分制度「士農工商」から発生している。商人や篤農家は武士と違って苗字がない。取引をする上で、日常的に自然的に屋号という苗字のようなものが発生したようだ。商家として代々受け継がれる屋号は商いの基盤である無形の財産である。それは代々築いてきた信用という旗印があるのだ。

◆ 残したい屋号のある店

 私は幼少の頃から鉄道で旅をするのが大好きだった。今でも好きである。自慢ではないが、国鉄全線270線区を完全乗車した。そのため8年がかりで全国津々浦々の街に出かけた。年々益々、地方色が乏しくなるのを肌で感じた。全国どこへいっても同じ看板の店、同じ商品と言った具合に。もしかして日本人自体が画一化されたのでは・・・。熊本県でも、地元菊陽町でも、お隣大津町でも、残したい屋号のお店がたくさんある。それらの店々は、その土地の風土や風習の中で長い年月、我々の祖先の方々に育まれた店ではないだろうか。きっと将来地域の方々のお役に立つ、見直される時代が来ると思う。
 環境に優しい街、災害に強い街とはそんな古い商家のある伝統や風習の中に潜んでいると私は思う。最後に私は「たわらやさん」と言っていただけるのが嬉しい。呼ばれるとちょっと不思議な感覚がある。そこには古い商家の文化の馨りがちょっとだけあるような気がする。

 

 


362号 2007年5月13日

(12)新幹線とTGV 日本酒とワイン

◆ 新幹線とTGV

 フランス国鉄の高速鉄道TGVが3月13日の試験走行で、世界最速の時速553キロに達したという。1990年に達成したフランス国鉄の高速鉄道TGVの最高時速515.3キロの記録を約17年ぶりに更新。走行した区間はパリと東部ストラスブールを結ぶ新路線。

◆ フランスに負けるな新幹線

 ちなみに我が国、日本の高速鉄道新幹線の最高時速は1996年(平成8年)に時速446キロ。およそ100キロの差が開いた。フランスと日本では地形が違う。フランスは平野が広いのに対して、日本は山間地が多く地震が多い。地形的なデメリットは大きいにしても、やはり最高時速を達成するための挑戦をやってもらいたい。負けるな九州新幹線、負けるなJR総研・・・。

 いまや輸出品に

 いまやフランスが開発したTGVは輸出品となり、日本の新幹線も台湾に輸出するなど、両国の開発した鉄道とそのシステムが輸出品として競争が激化している。
 酒類に目をやると、フランスはワインとブランデーを持つ。日本は日本酒と焼酎を持つ。フランスはワインを輸出するに際してワインの品質を国が保証するワイン法という法律がある。特定名称酒(特別な酒)のルールを法律で定めている。産地毎のブドウの品種の設定、単位面積当たりのワインの生産本数、官能検査による香味の審査などなど。品質が高くなれば高くなるほど、クリアしなければならない事項が多くなる。
 そして、ソムリエというワイン案内人の権威が大きい。ワインは文化と言い切る。
 また、ワインをとりまく物語(薀蓄(うんちく))が鎧のように凄い。

◆ 日本酒も焼酎も輸出しよう

 フランスのワインも国内需要は年々下落傾向。しかし、国内で減る需要を海外で穴埋めしているというのが現状。
 日本の酒・日本酒や焼酎(品質のよいもの)もこれからはアジアに輸出すべきでは。では誰が日本酒や焼酎の品質を認定し、誰が物語を語り、誰がソムリエ的なお酒の案内人を務めるか?他国の酒が消費されるためには、酒を醸造・蒸留した国への「憧れ」がないといけない。日本全体が世界の人々に憧れの的となっているだろうか。それを目指せば酒文化も酒類業界の未来も明るい。


365号 2007年6月3日

(13)「日本酒度」って何? 〜日本酒の甘辛を表す数値〜

◆ 「日本酒度」って何?

 日本酒って分かりづらい〜と思っている方が多いようです。弊店に来られるお客様から、「日本酒度」について質問されるケースが多いです。日本酒を身近に感じていただくためにも、今回は「日本酒度」について簡単に説明したいと思います。
 写真は日本酒度を測る「浮標」(うきのようなもの)です。これを測定したい日本酒に浮かべます。一定のところで浮きます。そのメモリを読めば、そのお酒に日本酒度が測定できるというものです。では一体なぜ、浮きを浮かべるだけで日本酒度が測定できるのでしょうか?
 日本酒は米からできています。米のデンプンを麹菌がつくりだす糖化酵素(アミラーゼ)によって糖(単糖)にします。簡単にいうと砂糖水です。水に砂糖を溶かし込んだ液体は、水より比重が重いので浮標は浮きやすいのです。水に塩を溶かした液体も同じですね。プールより海水で泳ぐ方が浮きやすいことを体感したことがあると思いますが、同じ理屈です。
 糖分の多い液体は、酵母の働きによって糖分がエチルアルコール(エタノール)に変化します。エチルアルコールはアルコールと一般的に言われるものです。揮発性が高く、水より比重が軽いので、水にアルコールを溶かした液体に日本酒度計のような浮標を浮かべると砂糖水とは逆に沈みます。
 日本酒の醗酵過程で、はじめは糖分が多く浮標は浮き、アルコール度数が高くなるにつれ、糖分が少なくなり浮標は沈みます。甘口の酒を造ろうということであれば、醗酵の手前で酒を搾れば糖分が多く残っているので甘口の酒になります。逆に辛口の酒を造ろうということならば、醗酵をすすめ糖分をなるべく少なくして搾れば辛口の酒になります。
 日本酒度というのはそのお酒の比重を表わしたものです。おおよそ真水の比重が日本酒度±0で、1%食塩水の比重が日本酒度−10で、それを等分に分けてものが浮標にメモリで記してあるのです。

◆ 甘口の酒は日本酒度がマイナス

甘口の日本酒が好きな方は、日本酒度がマイナスのものを選べばよいと思います。

◆ 辛口の酒は日本酒度がプラス

 辛口の日本酒が好きな方は、日本酒度がプラスのものを選べばよいと思います。
 日本酒度が0〜+5ならば「やや辛口」、日本酒度が+5〜+10ならば「辛口」、日本酒度が+10以上ならば「超辛口」の酒となります。
  日本酒度はお好みの日本酒を選ぶ基準にして頂ければいいかと思います。


369号 2007年7月1日

(14)冷や酒の楽しみ方

◆ 冷や酒の楽しみ方

 暑い夏の季節を迎えました。最近では暑い夏の季節に「冷や」で日本酒を楽しむ飲み方が増えています。より美味しく冷や酒を楽しむために、保管方法、美味しい飲み方をご案内します。

◆ まぎらわしい「生酒」と「生貯蔵」「生詰」

 冷や酒専用の酒として、最近よくみかけるのが小容量の壜に詰められた日本酒です。コンビ二やスーパーなどにも陳列してあります。「生酒」「生貯蔵」「生詰め」と「生」がつきますが、おのおの保管方法が違います。

◆ ふつうのお酒の場合

 貯蔵の前、出荷前と2回に渡ってお酒を65℃に温めて酵母や酵素の働きをなくします。発酵がこれ以上進まず、酒は熟成の時を迎えます。

◆ 生酒について

 生酒は別名・本生(酒)と表示してある場合もあります。お酒をしぼり、熱殺菌せずに、フレッシュな状態で壜に詰められた酒のことです。フレッシュでフルーティーな香りがあります。しかし、生酒は発酵を完全に止めてないため、保管方法に気を使う必要があります。必ず冷温で保管しなければなりません。常温で保管すれば、発酵が進みせっかくの上品な香味が崩れ、美味しくなくなります。

◆ 生貯蔵(酒)と生詰め(酒)について

 生貯蔵については、生の状態で熟成させ、壜詰め出荷前に一度だけ火入れの酒をします。
 生詰めについては、酒が出来上がった時に一度だけ火入れをして貯蔵し、瓶詰め出荷前には火入れをしない酒のことです。どちらも一度は火入れするため、生酒ほどフレッシュさはありませんが、保管については生酒ほど気を使う必要はありません。なるべく冷温で保存することをお勧めいたします。

◆ 冷や酒あれこれ

上のような生の文字が入った日本酒は基本的に冷やで飲むことをお勧めします。日本には古来から冷や酒にもいろんな表現があります。

○みぞれ酒(ざけ)温度・・・0℃前後
  シャーベット状にシャリシャリした状態で楽しむ飲み方。香味というより、触感を楽しむ傾向が強い。

●雪(ゆき)冷(び)え   温度・・・5℃前後
  壜に結露が生じる。香りはあまり立たない。味わいも冷たい感触に隠れる傾向。

○花冷(はなび)え   温度・・・10℃前後
  冷蔵庫に数時間入れておいた温度。壜に触れるとすぐに冷たさが指に伝わる。香りはやや閉じ気味で、器の中で開いてくる感じ。まとまりのある細やかな味わい。

●涼(すず)冷(び)え   温度・・・15℃前後。
  冷蔵庫から出してしばらく経った温度。ひんやりとしてはっきりと冷たさを感じる。華やかな香り。とろみのある味わい。

 お酒によって、どの温度帯で飲むのがよいか若干の違いがあります。5℃刻みに表現を変えるところが日本人らしいですね。あなた自身の好みの温度帯を見つけてみてはどうでしょう。

◆ 冷や酒と料理

   あっさりした料理と冷や酒は相性がよいようです。味付けの濃い料理よりも、シンプルな味付けの料理をお勧めします。これは私がよくやる飲み方ですが、グラスに氷を1〜2個浮かべてロックで楽しみます。ストレートで飲む場合よりも、キリッとして淡麗になり飲みやすくなります。お試しください。

374号 2007年8月5日

(15)憶えて!食中酒12度5分(12.5%)

◆ アルコール度数

 酒は世界中のさまざまな地域で、さまざまな民族の知恵によって、多様な種類のものがあります。酒を大まかに分類すれば、「醸造酒」と「蒸留酒」に分かれます。
 醸造酒で有名な酒類は「ビール」「ワイン」「日本酒」です。穀物や果実の糖分を発酵させて、搾ったものです。アルコール度数は、ビールで5〜10%、ワインで10〜14%、日本酒で14〜20%です。
 醸造酒で有名な酒類は「焼酎」「ウイスキー」「ブランディー」「ジン」「ウォッカ」「ラム」などです。穀物や果実の糖分を発酵させ、出来上がった酒を蒸留器で蒸留したものです。醸造酒に比べてアルコール度数が高くなります。蒸留の初期では70%の酒が生まれます。

◆ 食中酒として適当なアルコール度数は?

 料理をさらに美味しくしてくれる脇役として登場してくるのが「酒」です。料理が美味しいと酒が美味しくなります。酒が美味しいと料理も美味しくなります。食中酒として、いろんなTPOに併せていろんなタイプの酒類が登場してくると思います。「日本酒」や「焼酎」を食中酒として、名脇役的に演じさせるためにはアルコール度数に気をつける必要があります。

 憶えてて!!アルコール度数12.5%

お料理を美味しくするアルコール度数は12〜13%です。これは私の体験に基づく持論ですが、きっとみなさんも実践されていると思います。

【焼酎の場合は】

焼酎の場合、一般的な25%の焼酎ですと、5:5で割ったものは、アルコール度数が12.5%です。この割合で飲む方が最も多いのでは。料理と焼酎が両方美味しく感じるアルコール度数です。

【日本酒の場合は】

市販されている日本酒のアルコール度数は14〜20%です。お燗にすれば、蒸発によって少々はアルコール度数が低くなりが、焼酎のように割ることはありません。

◆ ご提案「やわらぎ水」

 日本酒を焼酎のように水割り、ロックで楽しむ飲み方をなさる方もいます。よい飲み方です。逆に邪道な飲み方と思われる方もいます。薄めると「水っぽくなる」のが嫌いだ、という方にご提案したい飲み方があります。
 日本酒を飲みながら、お好みの水を飲む方法です。「チェイサー」を用意します。日本酒用のチェイサーを「やわらぎ水」と命名しました。「やわらぎ水」を飲みながら日本酒を嗜めば、夜中に喉が乾くこともなく、料理もより美味しくなります。体にも優しい飲み方です。是非、試してみてください。
  どうぞ、憶えておいてください。食中酒にはアルコール度数12.5%が最適です。


377号 2007年9月2日

(16)シャーベット酒を楽しもう

◆ お酒は0℃で凍らないのはなぜ?

 冷凍庫で急速に冷やすことを目的に、日本酒を入れておいて「あっ、しまった。とり忘れた」というような経験をしたことはありませんか。もしビールであれば、冷凍庫内で破裂してしまいますが、アルコール度数の高い酒類は破裂するどころか、凍ってもいません。
 いったいどうしてでしょうか?水は通常ですと、0℃で凍り始めます。液体が固体になるところの温度を凝固点(温度)といい、固体が液体になるところの温度を融点(温度)といいますね。凝固点も融点も同じ温度です。水の凝固点は0℃で、融点は0℃です。つまり、0℃以下に下がれば、水は液体から固体の氷になり、0℃以上になれば、固体の氷は液体の水になります。
 では、お酒の中に含まれている成分として、水の次に割合として多く占める物質として、エチルアルコール(エタノール、単にアルコール)があります。エチルアルコール100%の凝固点・融点の温度は何℃だと思いますか?マイナス135℃です。もの凄く低温にしないとアルコールは凍ることは無いのです。地球上でアルコールが氷で存在することはまずないといってもよいでしょう。だから、アルコール類のことを「不凍液」といったりするのはそんな物質のもつ特性からです。

◆ シャーベット酒を楽しもう

お酒は酒類ごとに醸造方法や蒸留方法、熟成方法が違います。しかし「酒とは何か?」と言われると「水とアルコールの混ざった液体」です。アルコール度数が高くなればなるほど、凝固点・融点は0℃より低くなります。

−−−
アルコール度数
凝固点・融点の温度
0%
0℃
日本酒
約15%
−5〜8℃
焼酎
約25%
−12〜15℃
ウイスキー
約40%
−30℃
ウォッカ
約50%
−40℃

 このような性質を利用して、あなたの好きな日本酒や焼酎で、シャーベット酒を作ってみてはいかがでしょうか?
 通常、家庭用の冷蔵庫の製氷室の温度は−20〜15℃です。日本酒も、焼酎も凝固点・融点温度よりも低いため、当然、凍ってしまいます。しかし、水とアルコールの混じった酒類は、氷のようにガチガチに凍りはしません。シャリシャリのシャーベット状です。そして、アルコール分から先に液状になり、氷の部分はなかなか水にはなりません。シャリシャリの冷たい感触が楽しめます。


382号 2007年10月7日

(17)民営化 古今東西

◆ 10月1日 に思ったこと

 10月1日は「日本酒の日」。その日の新聞の一面はなんと言っても「郵政事業」の民営化の記事だった。昔、僕らが小学校の教科書では、国が関わる企業体として「三公社五現業」があるということを学んだ。
 三公社としては  @ 国鉄  A 専売公社  B 電電公社
 五現業としては  @林野  A 印刷事業(紙幣、切手、国債など) B 造幣事業 C アルコール事業(工業用)  D 郵政事業 だったと記憶している。
 ご存知の通り、公社は1980年代後半に専売公社は「日本たばこ産業」に、電電公社は「NTT」に、国鉄は「JR」にという具合に民営化になった。現業も次々に民営化され、ついに、今年10月1日に郵政事業が民営化になった。

◆ 民営化になった酒造業

 奈良・平安の律令制度の時代、酒づくりは政(まつりごと)には欠かせないものだった。この時代、酒づくりは密造酒を除いては国営で行われていたという。
 1192年、鎌倉時代が始まる。鎌倉の時代には、これまで国が運営してきた酒造業が、民営化されることになった。酒を醸造する代わりに、お上に税金を納めるというもので、全国各地で酒蔵が誕生したという。いうなれば、酒造業の民営化はいまから800年前と言うことになる。
 平安時代までの酒づくりは、政に欠かせないものであったのに対して、鎌倉時代以降の酒造業者たちが目指した酒づくりは「美味しい酒を庶民になるべく安く飲んでもらおう〜」というものだった。そうでなければ、税を支払うことができないし、酒造業が成り立たなくなってしまう。
 平安時代は、酒づくりは「カメ仕込み」であったのに対して、室町時代には「木桶」が誕生する。カメ仕込みとは比較にならないほど木桶は大きく、一度に大量の酒を仕込むことができるようになった。ということは、酒の価格が安くなる。酒は室町時代ごろから庶民の身近な嗜好品になったと理解できる。
 余談だが、茨城県友部町には日本一歴史を持つ酒蔵がある。創業は平安時代後期で創業約1000年。「郷の譽(さとのほまれ)」という銘柄で美酒を醸す。江戸時代には水戸藩の酒造り指南役を歴代務めたという。現在の当主はなんと55代目だという。
 さて、郵政事業より800年も先輩の酒造業。庶民を魅了する日本酒、焼酎を造るのも大切。加えて、少子高齢化の今日、「健康」で「付加価値の高い」「安心・安全」な酒を造ることが急務だ。10月1日の日本酒の日にふと思ったことだ。


386号 2007年11月4日

(18)仮面ライダーみたいな名前の日本酒酵母

 日本酒のラベルの裏側を見た時に、使用酵母の欄があります。その欄の中に「7号酵母」やら「9号酵母」などと記載されています。弊店にご来店なさったお客様からこんな質問が来ました。
 「使用酵母の7号やら9号って何ですか?」「酵母を換えれば、酒の味は違うのですか?」今月は、この質問にお答えしたいと思います。

◆ 熊本は日本酒酵母王国(メッカ)

 明治時代に西洋から科学的な研究が入ってきました。日本酒醸造に関することも研究が進みました。「どうしたら美味しい酒が安全にできるか」という研究をやったのが明治37年に設立した醸造試験所でした。全国各地の銘酒蔵から日本酒を造るのに優れた酵母のサンプリングが始まりました。そして、優秀な酵母は「日本醸造協会」に登録され、全国の蔵元に配布されたのです。発見された順番に番号が付けられました。協会1号酵母、協会2号酵母、協会3号酵母・・・といった具合に。そして、昭和50年ごろから、吟醸酒がブームになるとともに協会酵母に注目を集めてきました。
 ちなみに、協会9号酵母は、我が熊本から輩出した酵母です。昭和27年に「香露」醸造元・熊本県酒造研究所(熊本市島崎)で分離された酵母です。一時は、全国新酒鑑評会で金賞を受賞するための方程式として、原料米は「兵庫産山田錦」、酵母は「熊本酵母(協会9号酵母)」と言われ、日本酒の殆どが熊本酵母で造られていました。現在でも、日本酒の半分程度は熊本酵母で仕込まれています。
  余談ですが、酒どころと言われる新潟、灘、伏見において、熊本酵母を全く使っていない蔵はないと言っても過言ではありません。これほど、熊本酵母は全国的に現在でも活躍しているのです。このことは、熊本の隠れた偉業であると思います。まさに熊本は日本酒酵母の王国(メッカ)なのです。
  最近では、県単位に独自酵母の開発が進んでいます。静岡酵母、秋田酵母、アルプス酵母(長野)など有名な酵母が輩出され、そのいくつかは日本醸造協会に登録され、全国に協会酵母として配布されています。

◆ 同じ酵母を使っても同じ原料を使っても、同じ香味にならないのは何故?

 先にも述べたように、日本酒の大半が協会9号(熊本酵母)や10号酵母で造られています。原料米も精白歩合も同じ、酵母も同じなのに、香味が大きく違う日本酒があります。どうしてですか?という質問が来ます。同じ酵母を使っても、蔵の中には蔵付酵母という蔵ごとに異なる自然酵母が存在します。蔵内の空気中を浮遊して、仕込中にタンクに入り醗酵に関与します。もちろん、蔵人の流儀の違いもありますが、酵母の見えない力が関わっているのは事実です。全国各地の地域の料理(食)に馴染んだ伝統・伝承の味が地方の地酒にはあります。

390号 2007年12月2日

(19)木枯らし吹く季節 燗酒を楽しもう

 ◆ お燗酒は日本の文化

 お燗にして風味がよくなる日本酒を「燗あがり」する日本酒と言います。一般的に、旨味や酸味が多く、味のしっかりしたボディのある日本酒が、燗して美味しいとされています。
 反対に香りを楽しみたい大吟醸酒や、フルーティーでフレッシュさを味わいたい生酒などは、常温や冷やのほうが、持ち味を殺さず美味しくいただけます。冷やで美味しい酒、お燗で美味しい酒は酒質が違います。
 お酒の魅力を最大限引き出すために大切なのは、そのお酒の特性を知ることです。日本酒が最も輝く(美味しい)温度帯を見つけてあげることです。一口にお燗と言っても温度帯によって呼び方と味わい方が違います。ご存知でしたか?おおよそ、5℃刻みでお燗酒の呼び方が違うのです。先人たちは、この微妙な温度の差を見極め、お燗酒を楽しんでいたのでしょう。
 熱燗といっても、煮立ったように熱い日本酒ではないのは見ておわかりの通り。あまり温度を高くするとお酒の味のバランスが崩れてしまいます。
 濃醇なタイプの日本酒は比較的高い温度(上燗や熱燗)でも大丈夫ですが、シャープで淡麗なタイプのお酒は人肌燗やぬる燗程度で楽しむのがおすすめです。

◆ 便利なレンジ用徳利のご紹介

 

 従来の首の細いもの、尖った徳利の形状ではその局部の電力密度が高く過加熱となり、多くの徳利では燗ビンの上下の温度差が20〜30℃の加熱のムラが生じます。電子レンジ用徳利は、まんべんなく温まる形状で徳利の上下の温度差を最小限(2℃程度)におさえ、大変おいしいお燗酒がご家庭(有名割烹、料亭でも使用しています)でも楽しめます。
 こんな重宝な2合徳利(左写真)がこのたび、熊本の通潤酒造(山都町)から発売されました。今年の冬は、お燗酒に凝ってみてはいかがですか。
 ※詳しくはたわらや酒店まで。 232−3138


394号 2008年1月1日

(20)日本の酒は民の酒

◆ 新年明けましておめでとうございます

 お正月に付物といえばなんと言ってもです。すでに飲んでいらっしゃる方も多いのではないかと思います。今年は平成20年、西暦でいいますと2008年、皇紀でいいますと2668年です。日本が生まれてからなんと今年で2668年ということになります。
 今日はお正月ですので、日本のことをヨイショしたいと思います。世界に目を向けますと、日本より長い歴史のある国は?大国アメリカの建国は1776年ですので、日本の江戸時代、たかだか250年の歴史しかありません。中国はといいますと、4000年の歴史とか言いますが、ひとつの民族が営々と国を治めてはいません。いろんな民族がその時々で皇帝となって国を治めました。日本は営々と2668年の歴史を刻んでいます。

◆ 酒は誰のもの

 さて、民族にはイスラム地域を除いて酒があります。その地域で収穫できる安価な果物や穀物を用いて、独自の伝統的な製法によって酒を仕込んできました。
ヨーロッパの人々は麦を利用してビール、葡萄を利用してワインを醸しました。アジアの人々は米を利用して、中国では紹興酒、日本では日本酒を醸してきました。(中世になって錬金術師が蒸留の技術を確立。ビールを蒸留したものはウイスキーに、ワインを蒸留したものはブランディーに、日本酒を蒸留したものは焼酎・泡盛になりました)。民族や地域に違いはあれど、酒というものは神聖なもので、神事に欠かせないものであり、高貴な方々が楽しむものでした。こと、ワインはフランスやドイツの貴族に庇護され、ワイン文化を形成してきました。1855年のフランス・ボルドーのワインの格付け(特級から5級まで、シャトーごとにランク付)は150年以上経った今でも変わっていません。日本はどうでしょう。貴族やその地域の大名が日本酒を庇護してきたのは事実ですが、格付けまではしていません。日本酒では「越の寒梅」「八海山」「出羽桜」「菊姫」「天狗舞」などの各地の銘酒、焼酎では「伊佐美」「森伊蔵」「魔王」「佐藤」などの南国の銘酒は、誰が有名にしたのでしょうか。庶民の人々です。

◆ 日本人は偉い

 貴族が尊んだワインだから、優秀なワインは750mlで何万という価格がします。あのロマネコンティーは750mlでなんと30万円は下りません。日本の庶民がブランドを育んできた日本酒や焼酎は、一升瓶で2000〜3000円程度です。多少プレミアが付いたにせよ、私のお小遣いで買える価格なのでありがたいです。皆さんが正月に飲んでいる酒を、おそらくこのような銘酒ではないかと思います。
 庶民が酒について語る民族って、宇宙創成以来、日本人が初めてではないかと思います。だから、日本人は偉いと思うし、先祖の方々が脈々と伝承してきた酒文化を次の世代に伝えて行きたいと思います。
 お正月に皆さんが飲んでいる酒は、美味しい酒だと思います。こんな素晴らしい味わいになるには、長い年月の研鑽があって出来上がったものです。次の世代に伝えたい日本の文化です。健康的で美味しい酒を世界の方々に飲んでもらいたい。そんな21世紀であったらいいなぁと2008年の元旦に思います。


398号 2008年2月3日

(21)篤姫の時代の薩摩芋焼酎考

◆ 薩摩義士と篤姫

 新年を迎え、某国営放送の大河ドラマも「篤姫(あつひめ)」になりました。宮崎あおい演じる篤姫は、江戸時代末期の1836年(天保6年)に生まれ、時の薩摩藩主・島津斉彬の養女として、十三代将軍・徳川家定公に嫁ぎます。今も昔も、絶えず世の中は変革するのは世の常なのでしょうか。幕末の動乱の御世に、倒幕の動きは篤姫の生まれ故郷からおこります。生まれ育った鹿児島、嫁ぎ先である江戸の狭間で、人として、女として、責任ある生き方を貫いた篤姫。そんな篤姫が生きた激動の時代、薩摩藩主たちが飲んでいた酒は…?を今回考えてみたいと思います。

 薩摩の焼酎

 江戸時代、薩摩において最もよく飲まれていた酒は焼酎でした。これは今でも変わりません。違いがあるとすれば、それは焼酎に使う麹です。現代は「黒麹(くろこうじ)」や「白麹(しろこうじ)」が芋焼酎の麹として一般的になりましたが、この頃の焼酎つくりの麹は、「黄麹(きこうじ)」でした。黄麹は、日本酒を作る麹とほぼ同じ麹です。香りがよく、柔らかな味わいになるのですが、暖かい時期に仕込むと、腐造することがしばしばだったようです。薩摩義士たちが飲んでいた芋焼酎は現代の芋焼酎と香味が違っていたことは事実です。

 黄麹の焼酎から黒麹の焼酎へ

 明治時代になり、西洋から科学技術がもたらされるようになり、伝統的な酒造りや焼酎造りも科学的な解明が進んできました。薩摩よりも南に位置する琉球において、健全に麹が造られることも解明されました。清酒用に使う麹は見掛けが黄色をしているのに対して、泡盛の麹菌は黒色をしていました。黒色をした麹菌は黄麹菌と比べ、クエン酸をたくさん造りだす事が分かりました。この酸によって温暖な地域でも健全に酒造りができました。
 そして、泡盛の黒麹を使って、鹿児島でも芋焼酎作りが行われたのは大正時代初期のことでした。泡盛と同じく、黒麹を使った芋焼酎は温暖な気候でも健全に芋焼酎ができるようになり、現代の芋焼酎の香味へと進化していったのです。

◆ 篤姫の時代の焼酎が呑みた〜い?

 篤姫が生きた激動の薩摩義士たちが飲んでいた黄麹の芋焼酎、飲んでみたいと思いませんか?どんな材料で、どんな工法で仕込まれたのか、実は資料が残っています。1823年(文政6年)に編集された焼酎つくりの古文書「蕃薯考(ばんしょこう)」。この記録をもとに、焼酎づくりを再現されたものがあります。某、幻の焼酎と同じように、手づくりの麹づくり、カメ仕込みは同じですが、出来上がった焼酎を濾す行程がすごいのです。現代は炭を使った濾過に対して、この時代は笹を炭にして絹の布に入れて濾すと言う工法でした。想像以上に上品に仕込まれており、香味は平成の現代でも通じる香味柔らかな焼酎です。
 武骨というイメージの薩摩義士たちは意外にも上品な香味の焼酎を飲んでいたようです。香味は柔らかいが筋の通った味わいは、どことなく薩摩女の気風と通じます。


402号 2008年3月2日

(22)昔の単位が息づく酒の世界

◆ むかしの単位 石・斗・升・合・勺

 問題「一升瓶の容量は?」  ⇒⇒⇒ 答え「一升瓶の容量は1800ml(1800cc=1.8?)」です。正確には1升は1803.9mlです。日本酒や焼酎は今でも「升」や「合」「勺」の単位が生きています。居酒屋さんで「とっくり1合・400円」とか書いてあるのを目にしますね。『1石=10斗=100升=1000合 =10000勺』つまり勺の10倍が1合であり、1合の10倍が1升であり、1升の10倍が1斗であり、1斗の10倍が1石なのです。
石・斗・升・合・勺は尺貫法の体積の単位なのです。この歴史は古く、奈良時代の大宝律令にこの単位が見られるそうです。およそ1,300年間、この単位が息づいているのです。
  尺貫法からメートル法に変わったのは1875年(明治8年)のことですが、その後も相変わらず尺貫法の単位が使われているのです。ビールやウイスキー、ワインはメートル法の単位が一般的ですが、日本酒や焼酎蔵で1年間に生産される酒の量は「石」の単位で言い表します。もちろん、生産量や販売量を税務署に報告する時は「?」の単位を使いますが・・・。だから「うちの蔵は年間生産量1000石です」と蔵元がいうのです。なんだか、江戸時代の武士の所得みたいでしょ。実際そうなんですから笑えますね。酒や焼酎の世界では尺貫法の単位が馴染み過ぎて、世界の標準単位になかなか馴れないのでしょう。

◆ お米の1石、お酒の1石

 江戸時代、大名や御家人たちの所得は「石」で表わされました。熊本(細川)藩は54万石でした。さて、ここに出てきた「石」は米の量です。米の1石とは、大人が1年間におよそ消費する米の量です。ご存知でしたか?江戸時代の生活は現代人と同じく「朝、昼、晩」の3回食でした。1回におよそ1合の米を食べていました。1日に3合食べていたので、1年間では3合/1日×365日 =1095合。米は約7合で1sなので1095合は156sとなります。米俵2.5俵で1石になります。
 お米からお酒が造られることはご存知ですね。1石(約150s)の米でどれぐらいのお酒が造れるでしょうか?日本酒を造るのは、食べる米よりもっともっと米を磨きました。米の芯に近い部分で造る方が美味しい酒になることを経験で知っていました。現在は精米機という便利な機械がありますが、ついこの間まで、水車を利用したり、足込みで精米して酒の原料としていました。玄米を100%としますと、米糠を35%出すと、白米は65%になります。この白米で酒を仕込みますと、一升瓶でおよそ100本、いわゆる1石の酒ができます。
 米1升で酒1升、米1石で酒1石ができるというわけです。


407号 2008年4月6日

(23)歳時記・日本の酒づくり

 日本人が米を造り始めて、今年で何年になるのでしょうか。代々、営々と日本人は米を作り、酒を醸してきました。日本人の春夏秋冬の季節感は、農作物の栽培から生まれ、人々の生活と密接に絡み合ってきました。米から生まれる酒は、節目の祭事に欠かせないものでした。米づくり、酒づくりを知ることは、古来の日本人の営みに触れることではないかと思います。
 私は平成6年より、古来の酒米「神力」(しんりき)を栽培してきました。神力は今から110年前、明治時代に西日本で広く栽培されていた米です。当時、酒米として広く使用されていましたが、背丈が高く、倒伏しやすいため、品種改良した新品種に変わり、戦後はほとんど栽培されていませんでした。
 茨城県つくば市の研究所より、7g、わずか316粒の「神力」の種籾を分けていただき、平成6年春から、菊池市七城町で復活に向けた取り組みをスタートしました。今月からの1年間、米づくり、酒づくりの様子をお伝えしたいと思います。

◆ 初めの一歩「塩水撰(えんすいせん)」

 どの米もまずは「塩水撰」からはじまります。最近は苗を作る農家も少なくなってきましたが「神力」は伝統的な栽培で原料米を作ります。まず、バケツに水を張り、生卵がプッカリ浮かぶようになるまで塩を入れます。海水の塩分濃度とほぼ同じ塩水を作ります。
 できた塩水に酒米「神力」の種籾を入れ、攪拌すると未熟な種籾は浮き上がり、成熟した種籾は沈みますが、浮いた未熟な種籾を網で掬い上げ、成熟した種籾だけを選抜します。
ほどよい温度の水に三日間浸漬すると、種籾から小さな芽が息吹いてきます。
 塩水撰から4日後、神力の種籾を長方形のプラスチック製の黒い箱に土を被せ、種を撒き、また土を被せ種を撒きます。その箱を苗床に敷き詰めます。4月といえども遅霜が降りることもあるので、シートを被せ早苗を守ります。種蒔からおよそ35日程度で田植えができる早苗ができあがります。


411号 2008年5月4日

(24)歳時記・日本の酒づくり 皐月

◆ 「田植え」

 種まきから35日目(およそ1ヵ月)田植えの時期を迎えます。柔らかな早苗が5月のそよ風にたなびくようになります。その年の状況によって多少ずれますが、5月の第2または第3週の日曜日の朝から「神力」の田植えが行われます。今年は5月11日(日)に田植えをします。
 4月上旬に種を蒔いた早苗も、この頃には背丈は30pほどに成長しています。窮屈な苗床ではこれ以上大きくなることは困難です。「早く、大きな田んぼに僕たちを植えてください」と言っています。「はいはい、大きな田んぼに植えてあげますから待ってください」。神力は酒米ですので、普通に栽培される食用米と違って勺植(しゃくうえ)を行います。食用米と比較して苗と苗の間隔が広いのです。1勺(およそ30cm)の正方形の四隅に苗を植えて行きます。食用米と比較すればずいぶん隙間の多い植え方です。

 

 勺植えにする理由は、酒米「神力」はたいへん背丈が伸びる品種だからです。秋の収穫のころには背丈が140cm程度にまで伸びます。子どもの背丈よりも大きくなる品種です。現在のヒノヒカリが80p程度なので、倍の背丈になります。もし間隔を狭めて植えれば、通気性が悪く、光が地表まで来ないため、害虫の温床になってしまいます。間隔をあければ、通気性がよく、地面にまで光が入り、害虫が寄り付かず収穫できます。これも無農薬で稲を育てる知恵なのです。収量よりも安全、そして品質のよい酒米を育てるために、ひろびろと酒米「神力」の苗は植えられます。一列に約60名が並んで昔ながらの手植えを行います。昔は全国どこでもこんな光景が見られましたね。

 植えられた早苗は約4ヵ月、この田んぼで大きくなり、9月中旬に収穫を迎えます。「害虫や病気の被害にあうことなく、強風や豪雨にも負けず丈夫にスクスク大きくなってもらいたい」そんな思いで、今年も一本一本、かよわき早苗を田んぼに植えていきます。

 


415号 2008年6月8日

(25)歳時記・日本の酒づくり 水無月

◆すくすく育て

 写真は今年の5月11日の田植えの様子。104名の方々と1時間程度田植えをしました。5月11日に田植えをした早苗は、しっかりと根を下ろすようにがんばります。農家の人は、か弱き早苗を寒さや風から守るためにさまざまな工夫をします。先ずは水の管理です。田んぼの水を深めに張ります。こうすることによって寒さ(遅霜)や強風による苗のダメージを少なくしています。水は大気よりも格段に比熱が大きいため、大気よりも温まりにくく冷めにくいという性質があります。この水の性質を利用して、冷害から早苗を守るのです。古人の人たちの知恵です。
 さて、6月になると、早苗もしっかりと土壌に根を下ろします。「活着(かっちゃく)」といいます。早苗から苗へ。独り立ちしてきます。やがて、梅雨の頃を向かえます。このころになると1本の苗が、数本づつ枝が分かれてきます。ちょうど、団扇(うちわ)の骨組みのように、放射状に苗の枝が分かれていきます。この枝分かれのことを「分けつ」といいます。1本の苗が、10〜20本に別れます。梅雨明けまで、分けつが続きます。
 苗は分けつしながら、背丈も大きくなります。同じように、田んぼの雑草も苗に負けないように大きくなります。梅雨の時期は、農家にとって除草の時期でもあります。昔は蓑(みの)をまとって、現在は雨合羽をまとって、田んぼで除草する農家の姿を目にします。

◆ さなぶり

 「早苗振る舞い」が「サナブリ」(早苗饗)になったと言われ、忙しい田植えが終わって一息つく、古くは農家の最も楽しい行事の一つです。田の神様へお供え物をし、手伝ってくれた人々を招待して盛大な酒宴が行われました。今までの苦労の労いと「来年もお願いします」という意味が込められています。
  九州では「さなぼり」ともいいます。筑後地方では「粕取り焼酎」のことを「さなぼり」といいます。粕取り焼酎の焼酎粕を田んぼの肥料に撒き、焼酎は田植えを終えた農家の民が味わったようです。こんな「さなぶり」の風習も今では少なくなってきました。


419号 2008年7月6日

(26)君 知るや 銘酒

◆ 「赤がわら屋根」

 6月下旬に沖縄に行く機会がありました。沖縄の地酒といえば「泡盛」です。泡盛についてご紹介したいと思います。
 梅雨がひと足早く明けた沖縄はすでに夏まっさかり。那覇空港にほど近い那覇市小禄にある小さな泡盛の蔵を訪ねました。創業は戦後まもない昭和21年。現在はすっかり住宅地になってしまったが、酒蔵が生まれたころは辺り一面焼け野が原であったそうです。戦後まもない時、物資が少ないころにできただけに、素朴な感じの木造の蔵で、赤がわら屋根に漆喰のスタイルはいかにも琉球を彷彿させてくれます。酒蔵は道路沿に面しているのですが、一段下がったところにひっそりとたたずんでいるため、案外酒蔵とは気が付かず通り過ぎてしまいます。酒蔵の看板もいっさいなく、商売色がまったくありません。
 私と友人のN君と2名で赤がわら屋根の蔵をたずねると、三代目当主宮里徹氏が待っていてくださいました。蔵は冷房の設備がいっさいなく、扇風機がプルプルと音を立てて回っており、天井が低い蔵でした。

◆ 焼酎の原点は泡盛にあり

 N君にとって泡盛の蔵を訪問するのは初めて。コンピュータープログラマーの彼はもともと好奇心が旺盛。現在も伝統的な手づくりで造られる蔵を訪問して、N君の目が輝きました。見るもの全てが目新しく、若い蔵人に質問攻め。
 沖縄はその昔、琉球王朝がありました。首里のお城に王がいて、まつりごとに泡盛を使っていたそうです。
 泡盛の原料となるものは米です。私たちが食している米(ジャポニカ種)とは少し違っています。泡盛の原料に使われるのはインディカ種といって長粒です。まつりごとに使う大切な酒だからこそ、五穀の中で最も高価な「米」を原料にしているのだそうです。宮里氏は「ヤマトの米は品質がよい。けれども高い。うちな〜(沖縄)でも米は獲れるけれど、量が少ない。沖縄は海洋国として、貿易で栄えた歴史があり、中国やタイから安価なタイ米を輸入してきて、泡盛を醸してきた歴史がある」と話されました。
 宮里家は代々泡盛を醸してきました。昭和50年に開催された沖縄国際海洋博覧会の際に、当時の皇太子殿下(平成天皇陛下)に献上された泡盛を造りました。平成12年の沖縄サミットでは、首里城内で催された晩餐会にて各国の貴賓に泡盛が振舞われました。この晩餐会のためにブラインドテイスティングで行われた選考会にて、泡盛「春雨」は主席(第1位)となりました。
 琉球には日本よりはるか昔に蒸留技術が伝わり、黒麹によるもろみ造りが編み出され、泡盛が生まれました。原料が「米」そして「黒麹」、きっと熊本の方の嗜好にかなっているように思います。私たちが飲んでいる焼酎のルーツは泡盛にあります。沖縄に来て、そう実感した旅でした。


423号 2008年8月3日

(27)歳時記・日本の酒づくり 葉月

 夏の暑さにも負けぬ

 8月上旬のこの時期、一年で最も暑い時節を迎えます。最高気温も35℃を越す猛暑日が連日続きます。人間はしおれて、ふにゃふにゃになってしまうのに、稲はシャンと立ち、さらに丈夫に育っています。
 「おまえたちは元気だなぁ〜。まるで、高校球児みたいだね」
 この時期になりますと、田んぼに水を入れるのを止めて、土壌表面を干しあげる作業を行います。「中干し」という作業です。中干しすると、土壌表面が硬く固まります。8月下旬から9月にかけて台風襲来のときに、根っこから倒伏(倒れる)するのを防ぐためです。また、最近では稲刈りの時にコンバインを使います。土壌がぬかるむと、コンバインを使うときとてもたいへんです。そのため中干しをします。

 お盆のころ

 8月15日ごろ、稲穂が茎の中で育っています。かわいそうですが、ナイフで1本だけ根元から切って調べると、根っこから20〜30pのところから15p程度の稲穂の赤ちゃんが育っているのです。青々としている苗の葉の中には、稲穂をつける準備が進んでいるのです。

 8月下旬・稲の花が咲く

 稲の花を見たことがありますか?
 8月下旬のお昼ごろ、稲の穂をよく観察すると稲の花が開いているのが見られます。稲の花には、花びらがなく、花の外側を包む2枚の「えい」があります。「えい」に包まれて、1本の雌しべと、6本の雄しべがあります。稲の花は、たったの1時間くらいしか開いていません。この間に雌しべは花粉を受け取って、種を作る準備を終わります。
 ところが、花の咲くときに雨が長く降り続くと、花が咲かないまま稲が実ってしまうことがあります。 花が咲かなくても稲が実るのはなぜでしょうか。それは、稲が自家受粉するからです。花が開くころには、雄しべは急に伸びて花粉袋が開き、雌しべの上に花粉が降りかかって受粉します。つまり、花が開くころには、既に雌しべの先に花粉がついている訳です。
 稲の花、近くの田んぼで観察してみてはいかがでしょうか。稲に花が咲くなんて、なんとも不思議ですね。


427号 2008年9月7日

(28)歳時記・日本の酒づくり 稲刈り

◆ モミには神秘的な赤いひげ

 9月になると、モミは日ごとに充実し、穂が重くなり垂れ下がってきます。試しにモミを一粒つぶしてみます。先日まで中から牛乳のように白い汁が出ていましたが、いつの間にか米の形をした固形物となっています。稲のモミの先には「芒(ぼさ)」というヒゲがあります。現在の米は芒の長さは1〜2pほどと短いのですが、明治時代の幻の酒米「神力」の芒の長さは2〜4pあります。そして、芒の部分がほのかに赤身を帯びていて、古代米のようでとても神秘的です。

◆ 二百十日(にひゃくとおか)

 立春から数えて210日目のことを「二百十日」といいます。年によって多少違いますが、9月1日前後です。ちなみに、今年は8月31日が二百十日に当ります。このころから、農作物を栽培している農家は、気がかりなことが出てきます。毎日、朝に夕に報じられる天気予報に耳をかたむけます。台風です。この時期に発生し、接近する台風は農作物に大きな被害を与えます。温かな海水温で、エネルギーが温存された大型の台風は、雨や風によって収穫量と品質が大きく損なわれるのです。台風に備えての準備はしますが、なすすべはありません。ただただ、台風が来ないように願うばかりです。
 神力は古来の品種でして、背丈が高い品種です。現在、この地域で栽培されている「ヒノヒカリ」の背丈はおよそ70〜90pなのに対して、幻の酒米「神力」の背丈は110〜130pになります。また、実る米の粒も多く、頭でっかちで、倒れやすい品種なのです。台風が来れば、すぐに倒れてしまいます。

◆ 今年は9月28日 稲刈り

 感謝という思いを体験するには農業を体験することが一番でないかと思います。人間が自然・気象の前では、いかに無力であるか、そして、たわわに実った作物を前にした時、感謝せずにはいられないのでは。収穫の悦びから、自然への感謝が生まれます。そして、その作物の命を頂く時、自然と「頂きます」の言葉が生まれます。農業がごくごく当たり前の時代であれば、誰もが体験してきたことなのですが…。


431号 2008年10月5日

(29)安心安全な日本酒・焼酎

 消費者だれしもが望む『安心で安全で安価で旨い酒』。今回は酒の安心安全とは何かを考えてアドバイスしたいと思います。

◆ 日本酒編

 日本酒は原料として「米」だけで造る『純米酒』と醸造アルコール(焼酎)を添加してつくる『アルコール添加酒』の2種類に分類されます。日本酒にはさまざまなランクがあります。(純米)大吟醸、(純米)吟醸、純米酒、本醸造(本仕込)は、『特定名称酒』と呼ばれます。これらの原料米は食糧庁が認めた3等級以上の酒米を使用することが求められます。等級外の不良な米で、特定名称酒を造ることはできません。
 『特定名称酒』ではない酒は『普通酒』若しくは『経済酒』といいます。少量の原料(米)で、たくさんの日本酒が造れます。日本酒なのですが、添加物が多いので、ある種消費者を翻弄していると言っても過言ではありません。醸造アルコール(焼酎)の添加量が多くなるので、本来の日本酒の風味が損なわれます。その為この種の酒にはラベルに記載されていますが「酸味料(グルタミン酸ソーダーなど)」「糖類(水あめ)」が添加されます。それでも、もっともっと酒を安価にしようということで、原料米をより安くすることが求められます。そこで、今回のような事故米を使用することにつながるのです。特定名称酒の日本酒を選ぶことがより安心・安全と言えます。

◆ 焼酎編

 芋焼酎といえど、麹には「米」を使います。もちろん「米」焼酎は「米」だけで造ります。焼酎ももともとは地元でとれた国産米(地元米)で造られていました。昭和13年以降に、戦争の影響で米が不足するようになりました。上質な米を焼酎の原料にするのではなく、精米で発生する未熟な米(粒の小さな米)、胴が割れた米、少々色が付いた等級外の米で造るようになります。原料代は安価になります。現在、地元産の米を使って仕込む焼酎も出てきましたが、大半は食用米より安価な米が使用されています。安心、安全な焼酎を本当に選ぼうとするのであれば、きちっとした酒米を使用した酒蔵の焼酎を選ばなければなりません。

◆ 安い酒にはわながある

 事故米を転売した会社が最も悪いのは確かです。見抜けなかった農水省も悪い。私は酒蔵も悪いと思います。
 優良な米、悪い米を見抜ける職人(杜氏)や経営者がそこには携わっているからです。厳しいようですが「あなた方は何年、何代に渡って酒づくりをやっているのですか?」見抜けないような素人ではないはずです。日本米で仕込む「日本酒」「焼酎」の原料米はある程度価格が高いのです。酒米は1俵(60s)で15,000円〜20,000円します。酒米の王者・兵庫産山田錦においては1俵(60s)で30,000円もします。
 今回の事故米の価格は1俵4,800〜5,000円。相場からすれば1/3〜1/4です。極端に安価な米であるということが分かります。この価格で国産米が買えるなんてありえません。素人が考えても分かります。行き着くところ、一番の被害者は消費者となります。
 いつ、誰が、どこで、どのような栽培方法で作った米を、いつ、誰が、どこで、どのように仕込んだか、が明確に分かる製品でないといけないのです。大手だから、小さな酒蔵だから、ということは通用しません。こんな時代だから、売り手(酒屋)としても、本物を見抜き、お客様に伝えることがもっと重要になってくると思い今月は汚染米のことを書かせていただきました。


431号 2008年11月2日

(30)21世紀は日本酒の時代 〜がんばれ日本酒〜

◆ 世界が認めた日本酒の世界

 世界最大規模のワイン品評会「インターナショナル・ワイン・チャレンジ」(IWC)が今年もロンドンで開催されました。IWCは、1984(昭和59)年に創設された、世界で最も影響力がある品評会です。日本酒部門の最優秀賞「チャンピオン・サケ」に、出羽桜酒造 純米吟醸酒「出羽桜一路」(山形県天童市・出羽桜酒造)が選ばれました。
 ワイン品評会に日本酒部門というのも不思議な気がしないでもありませんが、海外で日本食の人気が高まっていることを受けて、昨年から創設されたのだそうです。ちなみに、2007年度(昨年度)の「チャンピオン・サケ」最優秀賞に輝いたのは菊姫 純米酒「鶴の里 専売純米酒」(石川県白山市・合資会社菊姫)でした。2年目の今年は、全国160の蔵元から、313銘柄が出品されました。そんな日本酒の中で、世界の有名なソムリエ、プロのきき酒師たちが、選んだ最優秀賞が出羽桜酒造の純米吟醸酒「出羽桜一路」でした。

◆ サケは日本が誇る文化

 民はそれぞれの住む地域の穀物や果実で、さまざまな酒を作り出してきました。酒という飲み物は、それぞれの民族の文化の集大成といっても過言ではありません。世界の三大醸造酒として「ワイン」「ビール」「日本酒」が挙げられます。それぞれ、ブドウ、麦、米から作られますし、これらの酒を蒸留すると、「ブランディー」「ウイスキー」「焼酎」になります。
 日本人は、麹菌を使い、米のデンプン質を糖化させ、糖化させた糖質を酒酵母によってアルコール発酵させるという複雑なプロセスで日本酒を作り出す技術を発見しました。ワインはブドウの果実のブドウ糖を発酵させるいう簡単な発酵(単発酵)に対して、日本酒は複雑な発酵(並行複発酵)をしています。そのため、世界のどの醸造酒よりもはるかにアルコール度数が高く、そして吟醸酒に至っては、穀物の米から生まれたとは思えないリンゴのような、バナナのような、みかんの花のような芳香に富んだエレガントな香りを放つ酒を開発しました。

◆ 21世紀は日本酒の時代

 酒の評論家は言います。酒のヒット商品は百年に一度生まれると・・・。19世紀、人類を魅了した酒は「ワイン」でした。20世紀、人類を魅了した酒は「ビール」でした。では今世紀、世界の人々を魅了する酒は何か?もしかすると「日本酒」かもしれません。
 日本酒の魅力はさまざまあると思います。私は、1992年から熊本のいたるところで、日本酒の会を開催しています。美味しい酒を広めるという、一種の日本酒布教活動です。お燗にしても美味しい。冷やしても美味しい。いろんな香りが楽しめる。料理が美味しくなるなどなど。もう一つ、日本酒の最大の魅力は「比べ飲み」ができるということです。一度に2〜3種類の酒を比較しながら飲むことができます。これは最高に贅沢な遊びです。焼酎でやると、体が持ちません。ワインやビールは一つの料理に対して、一つの酒で楽しみます。これから、木枯らしが吹く季節を迎えます。どうぞ、あなた好みの日本酒を探してみてはいかがでしょうか。そして、今世紀、日本酒が世界の食卓を飾ったら・・・と密かに願っています。
 

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