三里木区  たわらや酒店  宇野功一F

1035号 2022年6月12日

(181)世界が注目する女性杜氏・今田美穂さん

  一昨年、英BBCの100人の女性2020」に日本人女性として唯一、今田美穂さんが選出されました。全国各地に日本酒を造る蔵元は約1200場あります。その中で、女性が蔵元を継ぎ、女性が日本酒を醸す蔵は、そんなに多くはありません。30場あるでしょうか?
 私は、学生時代から、東京のとある醸造(酒蔵の設計技術者)の先生のご縁で、今田美穂さんと知り合うことができました。広島酒を、たわらや酒店が発信しようと思う中で、一番にお客様に伝えたい方が、今田美穂さんであり、彼女が醸す日本酒「富久長(ふくちょう)」です。
 広島酒は三浦仙三郎翁(明治時代の醸造技術者)のおかげで、全国的な銘醸地に、広島が躍進しました。三浦仙三郎の実家は、今田美穂さんの蔵の隣にあり、三浦仙三郎流の酒づくりが脈々と受け継がれているのが、日本酒「富久長」です。まさに、広島酒の王道と言えるでしょう。
 日本酒業界はたいへん閉鎖的な環境で、男性が醸造に、長年従事してきた業界です。女性が酒を醸すことがタブーであった時代もありました。さまざまな障壁を乗り越えて、今田美穂さんのストーリーを作り上げ、醸し上げ続けており、世界が注目する女性杜氏です。
 そんな今田美穂さんが醸し出す酒は、価格以上にトータルパフォーマンスが優れた酒です。山田錦の味わいの特性を香味ともに、とても上品に、とてもエレガントに表現している酒です。純米らしい面と、吟醸らしい面、ややもすれば、大吟醸みたいな酒質があります。久々に感動した1本に出合うことができました。

『富久長 山田錦 純米吟醸』
【色】淡い薄い澄んだレモン色、琥珀色
【香】仄かに香ります。酸味をイメージさせる香り。レモンみたいな爽やかな香り。
【味】口に含むと、ジュワーっと柔らかい味わいが広がります。味蕾が、シャボン玉のようにプチプチと弾けるように香味が口の中で開いていきます。とてもバランスが整った味わいです。アフターの余韻も程よく、キレが良く、ぐびぐびと杯が進む酒です。
【合わせる料理】お魚料理と全体的に相性がよい。
【Service温度】やや冷。12〜15℃。
【価格】 1.8リットル   3,520円(税込)   720ミリリットル 1,760円(税込)


1037号 2022年7月10日

(182)地酒途中下車 豊肥本線・緒方駅(大分県)
大分の銘酒『鷹来屋』(たかきや)

◆浜嶋酒造(資)の歩み
 浜嶋酒造は、明治22(1889)年。初代の浜嶋百太郎氏が創業した老舗蔵。
創業当時、縁起がよいとされる鷹が、浜嶋家によく飛来してきたことから、屋号を「鷹来屋」としたそうです。
 大正3(1914)年、熊本酵母の産みの親で「熊本の酒の神様」・野白金一(のじろきんいち)先生が、浜嶋酒造(資)の酒に自分の名と浜嶋家の屋号から1文字ずつ取って「金鷹(きんたか)」と命名されたそうです。
◆「鷹来屋」誕生へ
 5代目・当主の浜嶋弘文さんが学生時代、昭和54(1979)年、弘文さんの母が、病気で倒れられ、急遽製造をストップ。それから17年間、煙突から煙が出ることはなくなり、地元の蔵元に清酒製造を委託して、未納税酒を瓶詰めして、酒蔵を維持していたそうです。
 弘文さんは、「いつか、また、清酒を醸したい」と思い続け、1990(平成2)年国税庁醸造試験場(現、国税庁醸造研究所)東京都北区の滝野川で酒造りの理論を学ばれました。
 平成2(1990)年に浜嶋酒造を継承。その後、いくつかの酒蔵へ武者修行に出かけ、平成9(1997)年1月、5代目当主が、自ら杜氏として醸した日本酒が誕生したそうです。手本となる師がいない中、自らの感覚を信じ、情熱と愛情を注いでタンク5本(1升瓶約4,000本)分の日本酒を初めて仕込みました。弘文さんは、その酒の名に、浜嶋家の屋号である「鷹来屋」を冠したのです。今では、大分県で品質の高いブランドとして成長。熊本県で初の「鷹来屋」特約店となり、7月5日より、弊店に「鷹来屋」が並びます。
 自らが夏場に栽培した様々な酒米の特性を表現しながら、目指す酒質を作り上げる。とても難しく、緻密でなければなりません。収穫年によっても、酒質のブレを少なくしなければなりません。春から秋にかけて、米づくりからやっているからできることであるのかもしれません。「鷹来屋」の酒は一言で表現すると、仄かに吟醸香をまといながらも、上品な旨味があり、さらりと飲める酒質。つまり清美な酒質の日本酒です。ぜひ、一度飲んでみてください。

〇イチオシの酒
鷹来屋「雄町」純米吟醸
【タイプ 醇酒系 やや芳醇&うま口系】
原料米:自社栽培『山田錦』/岡山県産『雄町』
精米歩合:55〜60%
日本酒度:+4.0(やや辛口)
酸   度:1.60ml

アルコール度数:16.8%
価  格 720ml
 ¥1,750-(税込)
製造元:浜嶋酒造(資) 大分県豊後大野市緒方町下自在381番地


1039号 2022年8月14日

(183)地酒途中下車 仙石線・本塩釜駅(宮城県)
宮城の銘酒『浦霞 禅』(うらがすみ ぜん)

 『松島や ああ松島や 松島や』
 日本三景の一つ、松島は、宮城県仙台駅から石巻まで伸びるローカル線・仙石線。その途中に、塩釜があります。この塩釜に東北を代表する美酒・浦霞「禅」を醸す轄イ浦。今回は、この酒蔵をスクープしました。
■伊達家ゆかりの銘醸蔵
 江戸藩政期の塩竃は藩主・伊達家の崇敬篤い塩竃神社の門前町として、また仙台の海の玄関口として諸税免除等の恩恵を受けながら大いに発展しました。訪れる多くの旅人のために旅篭や歓楽街が神社の門前近くに軒を連ね、活況を呈していたといいます。蔵元・佐浦家の初代・富右衛門は、はじめ麹製造業を営んでいましたが、1724年に酒造株を譲り受け、以来 塩竃神社の御神酒を醸しつづけてきました。明治時代には、海路を利用して三陸沿岸への出荷も盛んだったようです。
■浦霞 『禅』純米吟醸
 浦霞は、東北の銘酒として全国的に名を馳せています。浦霞の安定した優れた酒質は、協会12号・浦霞酵母として醸造協会が1966(昭和41)年より配布をしている酵母です。
 発売以来、地元宮城県はもとより全国的に銘酒の名を馳せた銘酒です。吟醸酒ブームの口火を切った往年の浦霞。控えめな香りと、上品な味わいは日本料理全般に向く食中酒として最適です。冷でも美味しいですが、温めに御燗を点けても美味しいです。
 浦霞『禅』は、1973(昭和48)年に発売。当時、吟醸酒を市販した先駆的な銘柄です。ほのぼのとした春のような酔い心地は飲み飽きず食中酒として最適です。上質な原料を高精白し、低温長期発酵の特別仕込みに依り、すっきりとした味と含み香を身上としています。
 酒名の「浦霞」及び「禅」の書は、松島瑞巌寺百二十八世の住職・加藤隆芳老師(五雲軒と号す)にお願いし画は禅画の淡川康一先生の作とのこと。だるまのラベルは、かなりインパクトがありますね。発売当初、フランス輸出を意識して、日本らしいラベルデザインにしたといいます。発売から来年で約50年。今でも、デザイナもさることながら、中身の日本酒を「旨い」酒です。
■浦霞「禅」純米吟醸=品格ある香味
 和食との相性がとてもいいです。
<テースティングコメント>
【香】爽やかで華やかな吟醸香。香りぷんぷん系の酒ではなく、上品に慎ましく漂うような品格のある香り。
【味】軽快ながら、しっかりと上品な旨味を兼備した純米吟醸です。発売以来、多くの酒徒を虜にしてきた品格のある味。一言で「旨い!」と表現してしまいますね。

 

【タイプ やや芳醇&うま口系】

アルコール度数15.2%
価 格 720ml ¥2,352-(税込)
製造元:
   轄イ浦 宮城県塩釜市本町


1041号 2022年9月11日

(184)隋兵寒合(ずいびょうがんや)と 『ひやおろし』

◆隋兵寒合(ずいびょうがんや)
 今年は6月28日に梅雨が明け、7月、8月と雨が多く、そして暑い夏でした。
 熊本には『隋兵寒合』(ずいびょうがんや)という言葉があります。
 熊本市内に藤崎八旛宮という神社があります。1000年以上の歴史のあるお宮で、この宮の秋の例大祭は、御信仰行列の後に、馬追い奉納があります。馬、口取衆(馬の手綱を持つ)、楽隊衆(馬を囃すラッパと銅鑼)、勢子衆(馬を追う)が100名〜500名が一団となって、熊本市街地を練り歩きます。これを隋兵といい、その行列を隋兵行列といいます。団は約70団にもおよび、参加者は約2万人でしたが、3年ぶりに復活する祭は、17団体と激減しますが、久しぶりの祭りの開催にウキウキします。
 もともとは、旧暦8月15日に開催されていたようですが、その後は9月15日の敬老の日の祝日に開催されるようになり、現在は9月第3週日曜日に開催されています。今年は9月18日に開催されます。
 この時期になると、熊本も朝夕は凌ぎやすい気候となります。朝の信仰行列、隋兵行列を見物する方、祭に出る方は、朝早くに家を出ます。昔はタンゼンを着るほど寒く冷えたと言います。
 今年も隋兵の季節となり、朝夕は急に肌寒くなりました。今朝も最低気温は22℃と、窓を開けて寝るには少し肌寒い気候です。

◆ひやおろし(冷や卸し)
 日々秋の深まりを感じる時節です。この時期、酒蔵の内気温(15℃程度)と、日中の気温の差が無くなる時期を迎えます。この季節になれば、冬〜春にかけて仕込んだ新酒がひと夏の熟成を経て、旨味を増す時期とされています。この時期に瓶詰め出荷する日本酒を「ひやおろし(冷や卸し)」と言います。
 春先の若々しい新酒とは違い、香りは穏やかで、落ち着いたタッチの酒になります。当然、それぞれの蔵元によって、香味の趣も違います。
 百舌鳥の囀りを聞く時期に、脂ののった魚と、全国各地のひやおろしの味わいを楽しむ。秋の楽しみにしてはいかがでしょうか。

追伸)9月18日(日)私も隋兵に参加します。私の母校・真和高校のOB会で組織する「真和誠真会」です。10番奉納です。団の前方で、警備隊長を務めます。差し入れをお願いします。


1043号 2022年10月9日

(185)日本の鉄道150年
これからの日本の鉄道と食と酒を考える

◆汽笛一斉新橋を から150年
 10月14日は「鉄道の日」です。1872(明治5)年に新橋〜横浜間に鉄道が開業した日です。今年でちょうど150年を迎えます。
 鉄道は、イギリスにおいて発明されました。1830年、リバプール〜マンチェスターで開業すると、瞬く間に世界中に広がりました。元々は、物資の輸送でしたが、やがて人の輸送にも利用されました。
 江戸時代、藩の外へ向かうことは容易いものではありませんでしたし、山や谷を越えるのも大変でした。鉄道の敷設により、人々は容易に移動することが可能となり、観光ブームが起こりました。
 大正時代には、蒸気機関車を含む鉄道車両はレール製造に国産化が進み、日本独自の進化を遂げてゆきます。そして、今現在の日本の幹線鉄道網が完成するわけです。
 戦前、日本における有名な特急列車は、特急「燕」(つばめ)が1930(昭和5)年に登場します。東京〜神戸間を9時間で結びました。もちろん、蒸気機関車が客車を牽引するスタイルです。
 その後、再び日本の鉄道が、世界をあっと思わせたのは、なんと言っても、1964(昭和39)年10月1日に開業した東海道新幹線「ひかり」号の登場です。時速210q/時・東京〜新大阪間を4時間で結びました。このような新しい技術の粋を結集して、新しい時代の鉄道が次々に生み出されて行きました。その進化は今でも脈々と続いています。新幹線の営業最高速度は300q/時になりましたし、次世代を担う中央リニア新幹線も2027年の開業を目指しています。最高時速500q/時といいますから、途轍もない早い鉄道ができるわけです。
 日本初の駅弁は、1885(明治18)年、宇都宮駅で販売されたそうです。竹の皮に包んだおにぎり2個と沢庵だったそうです。今や駅弁の種類は全国に約3000種類発売されているそうです。車窓を眺めながら、その地域の特産品がぎゅっと折の中に詰められた弁当は、日本の食文化そのものであると思います。
 現在では、全国各地に「ななつ星」を皮切りに豪華クルーズトレインがお目見えして、たいへんな人気を博しています。
 その一方で、全国で過疎化が進み輸送量が少ない地方ローカル線の経営が問題となっています。鉄道は、ネットワーク(路線網)だから意義があるのでありますから、これ以上赤字ローカル線の廃止は望みません。
 全国津々浦々に名産品、銘酒があるのは、これまでその土地を持続可能な限り守ってきた方々がいたからです。
 地域の特産や銘酒を広めるためには、SNSの他に、実際にその地域を訪問できる手段=鉄道の存在は大きなものになっていくと思います。


1047号 2022年12月11日

(186)岩手の銘酒「南部美人」創業120周年

◆岩手の銘酒「南部美人」創業120周年記念祝賀会
 2020年2月から猛威を振るったコロナウイルス。再び人類に大きな恐怖を与えたウイルスです。人流が抑制されて、久々に東北へ出張することができました。今回は、私の他に、私の長男(22歳 大学4年生)を同伴しての親子旅となりました。爽やかな秋風が吹く盛岡へ。それでも残暑というべきか、とても暑い日となりました。
 2022年9月28日(水)、盛岡グランドホテルで行われた「株式会社南部美人創業120周年記念祝賀会」には、鞄部美人・久慈浩介社長が、これまでに故意にしている
・全国各地の銘醸蔵の蔵元
・世界中の南部美人ファンの方々
・全国各地の南部美人取扱店
・酒類業界の先生方
・地元の酒米を造る農家さん
・地元の政治家

が集まっていまして、総勢630名の方々が参加されていました。
 三方を招待者に囲まれるように配置されたステージ中央には、4代目 久慈浩会長、5代目 久慈浩介社長、6代目予定者 久慈太陽くん(20歳 東京農業大学学生で東京農大応援団)三人揃い踏みでご登壇。その後、5代目現当主・久慈浩介社長による歓迎の挨拶。相変わらず、情熱的なスピーチを朗々と語ること45分。南部美人のおいたちや戦前、戦後のこと。東日本大震災からの復興のこと。海外へ日本酒文化を広める活動についてのこと。さまざまな酒類の開発にまつわるエピソード。そしてこれからのこと。さすが、日本酒の伝道師・久慈浩介節が炸裂して、こちらまで、熱い熱い情熱を感じることができました。
 思いおこせば、久慈浩介くんと私の出会いは、1992(平成4)年、私が大学4年生(22)で、久慈浩介くんが大学1年生の時、東京で知り合いました。
 熊本の弊社主催の日本酒の会にもわざわざ参加して頂いたことがあります。二次会で豚骨ラーメンを食べに行って、店員さんの粗相で、スーツにラーメンがこぼれてたいへんな事態になったこと。
 大学で知り合った方=里佳(りか)さんと結ばれ結婚なさったこと。私の長男より2歳年下の久慈太陽くんが生まれたこと。私が南部美人を訪問した時に、故・山口一杜氏と、久慈浩介くんと熱く日本酒のことを語ったこと。そして、本日、久慈浩介くんに挨拶に行くと「宇野旭くん、久慈太陽の時代も宜しくお願いします。」との挨拶がありました。走馬灯のように思い出された思い出。知り合ってからもう30年が経つのですね。
 うちの長男は、どのようなカタチで酒類業界と関わるかは、まだ分かりませんが、次の時代の扉が開かれようとしているように感じました。新しい未来、きっと、もっと、感動のある、美味しい出会いが待っていると思いました。「南部美人」に乾杯!


1051号 2023年2月12日

(187)バレンタインデーにおススメ 『ハートのエース』発売

天花(てんか) 純米吟醸『秋田酒こまち』
ハートのエース無濾過生原酒

 このお酒は、限定流通商品「大納川天花」ブランドの大本命!顔ともいうべき「エース」なのです。「エース」と言えば、あの歌のフレーズが真っ先に思い浮かんだことからハート柄のラベルデザインにしました。(笑)
 ここ地元・秋田県大森町産の(酒米)『秋田酒こまち』を全量使用した、大納川テロワールの中心的存在であり、米農家さん、街の皆さん、そして造り手の私たちみんなの想いをこの一本に詰め込みました。
 ガス感のあるフレッシュさ、蔵付き酵母の華やかな香り、ジューシーな旨味と酸のバランスが絶妙。そこに透明感が加わり甘味を感じながらもスッキリとキレます。
 このお酒で、皆さんの笑顔が増えますように!その笑顔こそ、私たちの活力なのですから。
・取締役社長 稲上憲二さまコメント
プレゼントをして喜ばれる酒です。
もらって嬉しい酒です。
飲んで嬉しい酒です。
バレンタインデーに、お雛祭の酒に、お花見におススメの酒です。

■香味について
やや芳醇&柔口type
【香】心地のよい華やかで、フルーティーな吟醸香。香りのニュアンスとして、マスカットや白玉団子や桜餅をイメージさせる米由来の心地よいフローラル。
【味わい】一口目「旨っ」と思いました。さっぱりとした酸味と甘味が平面的にひろがります。続いて、米の旨味が、音楽でいうところのベースの部分を担っているようで、重奏的な味わいを表現しています。フレッシュな新酒ですが、すでに飲み頃、完成度の高いお酒です。ビギナーにも飲みやすい1本です。

 1800ml 3,520円(税込み)
  720ml 1,870円(税込み)


1053号 2023年3月12日

(188)若手女性杜氏が醸す宮城の銘酒 『黄金澤』

 『一人っ子の女の子として酒蔵に生まれた意味はなんだろう。』宮城県・川敬商店の挑戦 川名由倫(ゆり)さん。 「ぜったいに継がない、と思ってました。酒造りによいイメージなんて、ぜんぜんありませんでした」15年連続金賞の『黄金澤(こがねさわ)大吟醸』をつくる川敬商店の一人娘。「父はもともと蔵元の仕事が中心でしたが、私が中学生くらいの時から酒造りにも関わるようになりました。夜中でも早朝でも関係なく、心身をすり減らしながら蔵に行く父の後ろ姿を複雑な気分で見ていたのを覚えています。大学の友人と飲み会に行っても、日本酒には一切口をつけなかったし、教員免許も取得し、教職ではなかったものの仙台の企業に内定も取れた。酒とは無縁の道。第一歩を踏み出そうとした時、東日本大震災が。「この蔵も大きな被害を受けましたし、友人が被災したり、身の回りでたくさんの変化がありました。その時、自分が生まれてきた意味ってなんだったのかなって、あらためて考えたんです。一世代前は女人禁制だった酒蔵に、女の子として、しかも一人っ子で生まれてきた意味はなんなんだろうって。神さまは、私に何を求めているんだろうって」。
 川敬商店を継ぐことを考え始めた川名さん。本当に継ぐかどうかはともかく、家業の酒造りとはいったいどういうものなのか知ってみようと、酒類総合研究所で行っている40日間の講習会に参加。
「やってみたら、酒造りもけっこうおもしろかった。じゃあいいかな、と、半分ノリで川敬商店に入社しました」。
 あれから10年。川名由倫さんは、全国でも注目される銘酒として人気が高くなってきました。九州初上陸、黄金澤 山廃仕込み純米うすにごり生原酒 令和4BY(醸造年度)が入荷しました。
【香】
 「みかん」みたいな優しい柑橘の香りです。決して、「オレンジ」や「グレープフルーツ」みたいな香りではなく、「みかん」のニュアンスがぴったりです。正直、山廃仕込みの日本酒でこのニュアンスの香りは初めてでした。驚。
【味わい】
口に含むと、平面的に、ビロードみたいに柔らかい味わいが広がりを見せてくれます。
 とても飲みやすい日本酒です。あっという間に空になります。お花見のお供に、黄金澤はいかがでしょうか?

【楽天市場】黄金澤 初しぼり 山廃純米生原酒 720ml 【日本酒/宮城県/川敬商店】【要冷蔵商品】:美好屋酒店

 720ml   1,689円(税込) /  1800ml   3,253円(税込)

醸造元 : 宮城県美里町 川敬商店


1055号 2023年4月9日

(189)広島サミットに先駆けて
今年注目の酒蔵『龍勢』

◆日本における吟醸酒の歴史は「龍勢」からはじまる・・・。
 明治40年開催 第1回清酒品評会最優秀賞受賞蔵
 この小さな国・日本は、明治という新政府を樹立して開花期を迎えようとしていました。これといった基幹産業はありません。敢えて上がるとすれば、シルク・生糸を海外に輸出することで、ほそぼそと生計を立てるという具合でした。明治政府の財源は酒税が1/3を占めており、健全な清酒醸造は、富国強兵を断行する明治政府にとって喫緊の課題でありました。
 政府は、国立醸造試験所(東京都北区滝野川・のちの独立行政法人酒類総合研究所)を開設して、国をあげて、酒類の品質向上に取り組むこととなりました。
 清酒の酒質向上を目的として、明治40(1907)年に第1回全国清酒品評会が開始されました。それ以後、隔年開催で、戦前昭和13年まで開催されることとなりました。
優等賞は1〜3位に格付けされ
優等1等が広島県「龍勢」藤井酒造
優等2等が広島県「三谷春」林酒造
優等3等が福岡県「富の壽」2009年廃業
でした。

◆2023年広島酒が再び世界へ羽ばたく
 これから記すことは、私の個人的な創造でしかありませんが「こうなるといいなぁ〜」との想いで書きすすめて行きたいと思います。
 2023年5月に、岸田文雄内閣総理大臣は、広島で、G7−先進7か国首脳会議が開催されます。
 前回、伊勢志摩サミットでは、故・安倍晋三総理大臣の計らいで、山口酒が晩餐会などで出品され、日本じゅうに山口酒のブームが起こりました。
 さて、今回、広島サミットでは、間違いなく広島酒が晩餐会で出品され、世界中に広島酒のことが報じられ、広島酒のブームが起こると思います。広島県内には数多くの酒蔵がありますが、その中でも、「龍勢」のこれまでの実力と酒質は、イチオシの日本酒に選ばれること間違いありません。じわじわと「龍勢」人気が高まる2023年になると思います。
 総じて、「旨い」食中酒であります。私は、個人的に、八反35号で醸した「ゆらぎの凪」が大好きです。いくらでも飲めちゃう酒質です。

龍勢 リミテッドシリーズ「ゆらぎの凪」 
生もと純米ヴィンテージ2022
令和4BY(醸造年度)
1800ml 3,300円(税込み)
  720ml 1,760円(税込み)

 


1057号 2023年5月14日

(190)大学4年の長男が醸した2種類の卒業論酒

〜大学4年生卒業論酒 長男・宇野旭プロデュース 2種類の日本酒誕生〜
 2000年生まれ、大学4年生の長男・宇野旭(うのあさひ)が醸した卒業論酒について。
 長男は、東京の某私立大学法学部4年生です。3年生の時に続き、今期も、昨年10月から、富山県富山市岩瀬浜の銘酒「満寿泉」を醸造する竃蒼c酒造店で、酒づくりの修行へ出かけていました。厳冬期を含めて、今年の4月までの約半年間、満寿泉で醸されるすべての仕込みに携わることができました。更に、今期は「自分流の日本酒をタンク2本、醸すこと」という宿題が、社長から提示され、とても考え、悩み抜いた中で、これまでに富山・満寿泉でやったことがない酒づくりで、故郷熊本らしい酒づくりを具現化した日本酒2種類が誕生しました。
 
◆満寿泉『つとめて』熊本酵母仕込み純米大吟醸生酒
〜長男のコメント(原文)〜
 円熟味のあるお酒と好相性である故郷で誕生した熊本酵母を使用し、経る時を味に刻む富山の銘酒・満寿泉との新たな出会いをお楽しみに。

◆『つとめて』の由来について―――
 「冬はつとめて」(清少納言『枕草子』より)夜明け前・早朝という意味をもつ『ツトメテ』。現代語で『つとめて』というと、「努めて」や「勤めて」を思い浮かべます。日々「つとめて」いる、すべての方へ。上手くいかない時間があったとしても、やがて「ツトメテ」の刻は終わり、必ず朝陽が昇ってくるように、きっと報われるときがやってくる。そんな想いを込めて醸したお酒です。

◆テースティングコメント
本来の熊本酵母のお酒と異なる味わいで、ほんのり八朔のような柑橘系の香りがあり、全体的に引き締まってスレンダーな印象です。後味は満寿泉の端麗さを感じられ、満寿泉らしさが垣間見えます。
■満寿泉『  』(ウノウノ)熊本酵母 一段仕込み純米大吟醸生酒
〜長男のコメント(原文)〜
 故郷くまもとで誕生した熊本酵母を使用し、より熟成に向いた日本酒を造るべく、味わいのある酸の多い日本酒を目指して造りました。熟考の末、通常の三段仕込みと異なる掛け米・麹・水を一度に入れる一段仕込みに挑戦しました。

・「  」の由来
 スペイン語・イタリア語で数字の「1」は、UNO。私、ウノが仕込んだ一段仕込みということで、UNO×UNO→ と命名しました。
・テースティングコメント
普段の満寿泉の造りに比べて麹の歩合を増しているため、麹由来のふくよかな味わいと酸とのバランスのよい日本酒に仕上がりました。和菓子の「らくがん」を思わせるような上品な香味が特徴です。
特記@:日本酒度はなんと、−18.90と超甘口を示しますが、酸度3.20mlと甘と酸のバランスが取れています。摩訶不思議。
特記A:今回、熱処理していない生酒を限定300本ずつ、全国有名地酒専門店で、発売します。今年の秋〜冬、壜熟成をした火入酒も発売する予定です。

   720ml


  つとめて  3,300円(税込)

    3,960円(税込)


1059号 2023年6月11日

(191)21年ぶりに復活した日本酒『敷嶋』について
『敷嶋』醸造元 伊東梶@愛知県半田市

◆発酵の盛んな知多半島に『敷嶋』あり
 愛知県中央部、伊勢湾に向かって南北に伸びた半島が知多半島であります。中部国際空港が隣接する半島と言った方が分りやすいかもしれません。そんな知多半島に一世を風靡した酒蔵『敷嶋』醸造元・伊藤鰍訪ねたのは、2023年3月2日の昼下がりでありました。

◆威風堂々たるや『敷嶋』の酒蔵
 亀崎駅から少し離れたところに『敷嶋』醸造元・伊東鰍ェあります。熊本城を彷彿される黒備えの土塀が、蔵の周囲を覆い、酒蔵としての風格と風情を感じることができます。蔵を案内してくれたのは、現在の9代目当主・伊東優さん。
 伊東合資会社の創業は、江戸時代1788(天明8)年とのこと。伊東合資会社が醸す『敷嶋』は人気が高く、大正時代には6000石以上(1石=180リットル、一升壜100本)の生産量を誇り、灘の蔵を凌駕するような規模であったそうです。その当時、繁栄をしていた時代のまま、木造の蔵が現存していました。

 しかし、オイルショック後、日本酒の需要減退時期を迎えて、徐々に生産規模が縮小。伊東優さんの父、8代目・伊東良夫さんが、2000(平成12)醸造年度の酒造りを最後に休業。酒造免許を返上してしまいました。伊東優さんが中学3年生であっといいます。
 2021(令和3)年4月に、酒蔵の改修工事と醸造設備の導入に着手。最終的な製造規模を700石(1石=180リットル)程度に設定し、すべて、大吟醸小仕込みを行う手法で、酒蔵を設計。
・洗米は10kg単位で、洗米できる最新式の水流と泡で、米粒を砕けることなく洗米できる設備。
・酒母タンク、仕込みタンクは、醪の温度管理が可能なサーマルタンクを導入。
・酒を製造する蔵内を、空調設備が整った部屋にして、搾った酒を、直ぐに火入れできるラインを導入。

 2021(令和3)年12月中旬より、『敷嶋1歩目』が仕込まれはじめたそうです。私たち親子が訪れたのは、それから1年数か月後の、2023(令和5)年3月2日だったのですが、『敷嶋2歩目』の酒から、酒屋として、敷嶋物語をお酒と共に、伝えて行きたいと考えています。長〜い道のりでしょうが、皆様の応援をお願いします。温故知新、令和の時代に復活した日本酒が誕生しました。

 

  敷嶋 山田錦 
  特別純米無濾過生原酒 2022(令和4) BY(新米新酒)

  720ml  1,870円(税込)   1800ml  3,630円(税込)


1061号 2023年7月9日

(192)地酒途中下車 長崎本線・鹿島駅(佐賀県)
佐賀の銘酒『能古見』(のごみ)

 佐賀の日本酒が全国的に注目を浴びています。過去に「鍋島」や「東一」をこの連載で書きました。
 今回ご紹介するのは「能古見」(のごみ)という酒です。佐賀県で不動の人気銘柄ですが、熊本県では、弊社しか取り扱っていない日本酒です。ぜひ一度、飲んでみて欲しいと思います。
◆能古見を醸す
 『能古見』(のごみ)は、佐賀を代表する最もふさわしい「地酒」かもしれません。私は、この酒を飲んだ時のことを鮮明に覚えています。「一口含むと、お米の柔らかい旨味がひろがりを見せてくれます。甘くも感じ、芳醇にも感じ、馥郁たる香りを相あわさって、とても一口では表現できない美味しさに感服」ほとんど、地元だけで消費され、地元の方に支持される日本酒です。
 馬場酒造場は、鹿島市から山を越えて大村市に抜ける昔の街道筋にあります。太良岳山系から有明海に中川が流れ、その畔にたたずむ造り酒屋さんです。決して大きな蔵ではありませんが、1990年代から頭角を現して、現在では、佐賀を代表する銘酒として、全国的に知られています。1795年(寛政7年)創業以来、230余年の間、清酒一筋で製造してきました。代表銘柄『能古見』は、8代目現社長兼杜氏の馬場第一郎氏が造り上げました。その背景には、8代目が若かりし時代の情勢がありました。1990年代・当時の売り上げは右肩下がり、取引先酒販店の後継者不足も相次ぎ、馬場酒造場の存続も危うい状況であったそうです。さらには、バブル崩壊後、酒類価格の自由化により、大手企業が普通酒を低価格で販売する世の中でもありました。『自分が造りたい日本酒を、想い入れのあるお酒を』そう思い立った8代目は、これまでの馬場酒造場のスタイルを見直します。酒米最高峰の山田錦を地元の鹿島で生産し、原料米を地元産とした特定名称酒で生き残る道を選ぶ決心をしました。JAや地元農家の説得に7年を費やし、ようやく弊社のブランドが誕生します。かつての地名“能古見村”を由来にした、地元農家と我々造り手の想い・技術が詰まった『能古見(のごみ)』の歴史はこうして始ったそうです。
 近い将来、9代目・馬場嵩一朗氏へとバトンが繋がれます。さらに、斬新なアイデアで新時代に相応しい、『能古見』の研究開発に勤しんでおられます。まさに、地元の生産者とタッグを組んで、地元で最高峰の原料米を育て、自らが理想とする酒を醸して、地元の方々から口コミで「能古見」の美味しさが全国に広まり「能古見」誕生から30年、佐賀を代表する究極の地酒であります。
◆能古見 純米吟醸 中取り生原酒について(初夏を彩る能古見の夏酒)
【香】フルーティーな由来のデリシャスりんごのニュアンスとフレッシュ&熟成の生み出すアロマ香が出て、とても複雑な摩訶不思議な香りです。
【味わい】口に含むと、お米の旨味、甘味、酸味がボリューム感たっぷりに迫ってきます。香りと同じく、フレッシュさと熟成から生まれるまろやかさがミックスされたようなニュアンスです。
【Service温度】ちょい冷えの温度帯でどうぞ。12度程(涼冷えの酒)

   720ml 2,250円(税込) / 1800ml 4,350円(税込)


1063号 2023年8月13日

(193)地酒途中下車

◆一升瓶を運ぶPケースの歴史
 江戸時代、明治時代まで、日本酒を運ぶ輸送容器は、4斗樽が主流でした。現在では、お祝いの席で、鏡開きを行うあの樽でお酒を流通させていました。
 酒屋にお酒を買いに行く時には、消費者(客)は、通い徳利を持って行き、酒屋で、徳利に酒を入れてもらう、いわゆる、計り売り方式でした。今、みたいに、いろんな酒を選べる楽しさはありません。せいぜい、特撰、上撰、並、2級みたいは感じであったと思います。
 
 明治になり、西洋から近代的な技術が日本に流入させるようになり、ガラス製造技術も導入されるようになります。1900年には、灘・伏見の大手日本酒メーカーは、現在の一升瓶に詰めた日本酒の販売を開始します。それに伴い、一升瓶を10本入れられる輸送用の木箱が造られるようになり、一升瓶を10本入れて、流通していました。
 一升瓶10本、満タンに入った日本酒や焼酎を運んだことがありますが、とても重かったです。その木箱を6段まで積んでいました。醤油は日本酒や焼酎より遥かに比重が重いためにとても重かったです。一番重かったのはハチミツでしたね。
 平成時代から、P箱という木製のコンテナから、プラスチック製の箱にシフトし始めました。当初は、8本入りの8Pと言われるものが主流でしたが、現在では、6本入りの6Pが主流となりました。10本入り木箱に満タンの時の重量が約31kg。6本入りの6P満タンの重量が約18kgと、重さが減り、運ぶ負担が減りました。酒屋で、腰を痛める人は、私や父を含めて多いもので、いわゆる職業病かもしれません。
しかし、両手に6Pを1つずつ抱えることが可能となり、以前として、酒屋の腰をやられるケガは少なくなりませんね。
 ところで、(本題)現在、6P箱を日本中に流通させている会社が数社ございます。基本的に、6P箱の役割は、製造メーカーで製造した日本酒・焼酎を、小売店やエンドユーザ―(飲食店や一般のお客様)まで安全に届け、空になった容器を逆に製造メーカーに返却をして、リサイクル(循環)をしているのですが、さまざまなところで活躍しているのを目にします。
◆角打ちstyleの居酒屋さんでひっくりかえして椅子
◆傘たて、野球バット立て
◆布団を干す時の台
■植木鉢の台
■イベントの時の舞台
などなど、私たち日常をさりげなく支えているのです。


1065号 2023年9月10日

(194)富士山登頂をして
「富士」がつく日本酒銘柄あれこれ

◆富士山へ親子で登頂
 「あーたまを 雲の上に出し、地方の山を見下ろして、雷さまを、下に聞く、富士は日本一の山」
でお馴染みの富士山。
 日本のイメージは、「富士山」と「桜」といっても過言ではありません。
 どの方角から見ても、三角錐の形は、荘厳で、とても美しい形をしています。富士山を観ると、思わず、手を合わせたくなります。私だけでしょうか?そんな富士山、みなさんは登ってみたいと思いませんか?。「いや〜、富士山は眺める方がいいよ〜」という方もいるかもしれませんが、あのてっぺんに立ち、ご来光の景色に遭遇しますと、本当に、人生が変わるような感動を味わうことができます。
 私の祖父・故・宇野源造は、若いころ、海軍の軍人さんでした。今から100年前の1923年9月1日に発災した関東大震災の災害支援に、関東へ。その任を解かれた後、帰郷する途中、富士山に登って帰郷したと子どものころ(私が小学校2年生の時に他界)聞いてことがありました。祖父が登山して100年。今年、是が非でも富士山に登ってみたいとかねてから思っていました。その念願がついに叶えられたのです。二男・宇野光(16)と親子で富士山に挑める幸せ。
 8月6日(日)午前5時。無事に、日本の最高峰・富士山・剣ヶ峰の標高3776mの頂きに立つことができました。天気は快晴で、日の出を見る事ができました。
 さて、ふと思ったことは、全国に「富士」の名前がつく日本酒の銘柄がどれぐらい存在するのであろうか?ということで、調べてみました。
・秋田県由利本荘市  佐藤酒造店「出羽の富士」
・山形県鶴岡市     冨士酒造「栄光冨士」
・静岡県富士宮市    牧野酒造「富士山」
・静岡県富士宮市    富士錦酒造「富士錦」
・静岡県富士宮市    富士正酒造「富士正」
・三重県三重郡朝日町 安達本家酒造「富士の光」
・島根県出雲市  富士酒造「出雲富士」
・岡山県倉敷市  遠藤酒造場「宝富士」
・徳島県美馬市  大賀酒造「富士の雪」
・佐賀県伊万里市 川浪酒造「富士の雪」
 全国各地に「富士」のつく日本酒が10銘柄ございます。やはり、富士山の裾野であります静岡県が3場あり多いですね。私たち、日本人にとって、特別な存在である「富士山」。眺めるのもよし、登るのもよし、また、飲むのもよし。やっぱり富士の頂きから観た日の出の光景は、一生涯忘れ得ぬ光景となりました。


1067号 2023年10月8日

(195)銘酒「鍋島」の100周年記念パーティーに参加して

 全国的に地名度の高い「鍋島」で知られる醸造元・富久千代酒造有限会社(飯盛直喜社長・佐賀県鹿島市)の創業100周年を祝うパーティーが開催され、参加して参りました。「鍋島」を販売する酒屋さんが、全国ではなく、全世界から200名集結しました。
 鍋島醸造元は、1923(大正12)年創業で、今年でちょうど100年を迎える節目の年です。日本酒を造る蔵元としては、そんなに古い蔵元ではありません。日本酒業界は、世界一伝統を持つ業界ですので、200年企業、300年企業、最も古いところでは850年企業があります。それでも100年継続をして来たことはたいへんすごいことであります。
 四代目社長の飯盛直喜さんは、パーティーの冒頭の挨拶の中で、戦前、戦後の話をなさいました。戦時中は、酒蔵が軍事工場に転用されて、戦後、製造設備が全くなかったことから、ゼロからの再出発を余儀なくされた父親の苦労の話を、飯盛直喜さんらしい、とつとつとした語り口調で語られました。そして、酔うための至酔飲料であった酒を、日本の文化を楽しむためのものにしようとこだわって醸し続けた「鍋島」誕生の秘話を語ってくれました。
 そして、五代目は飯盛さんの娘さんが、蔵に入って、日本酒づくりを学んでおられるとのこと。また、新しい歩みが始まろうとしています。
 今では、全国的に有名になって「鍋島」ですが、熊本でいち早く、「鍋島」の美味しさに触れて、販売を始めたのが、たわらや酒店です。過去に「鍋島」について、記した記事を、再編集してご紹介します。
◆鍋島との出会い(平成16(2004)年)
 白ワインを注ぐゴブレットに「鍋島」特別純米が注がれました。みずみずしいメロンの香りを秘めた酒はとても輝いていました。
 鍋島特別純米の酒を「カプっ」と口に放り込みました。香った香りと同じメロンを彷彿させる含み香りが口いっぱいに広がります。とても余韻が楽しくキレがいい酒です。もう一つの特徴はたいへんみずみずしい酒質です。私もたくさんのお酒を利き酒してきましたが、こんなみずみずしく、のびのびとした酒質、飲んでいてホッとするようなオアシスのような酒は初めて出会いました。
 思わず「これ日本酒?」と疑うような酒なんです。そして、価格が非常にリズナブル。この日本酒が嫌いな人はいないのではないかなぁ〜、と思いました。酒通の方には強いて勧めませんが、これからお酒を嗜む方やワインが好きな方、肩肘を張らずに気楽に楽しむ酒として、お奨めの一本です。私は、このように鍋島の出会いを記していました。これから、日本酒が美味しくなる季節を迎えます。あらためて百年醸造酒「鍋島」を飲んでみてはいかがでしょうか?

 

 

    原料米:佐賀県産米(山田錦・佐賀の華 等)

   精米歩合:55%

   日本酒度:+5.0

      酸度:1.60ml

      価格:720ml 1,650円 / 1800ml 3,190円

 

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