矢原正治 D


850号 2017年4月9日

(121)ハコベ ナデシコ科

 ハコベは日本全土に分布し、平地に生え、春から秋に枝先に白い花をつけます。ハコベは小鳥の餌や春の七草の一つとして親しまれています。平安時代から食用の記録が『倭名類聚抄(わみょうるいじゅしょう)』に、野菜(当時は文字どおりの野の菜)の一つとして、波久倍良(はくべら)の名があるようです。鎌倉時代では宮中で七種菜(ななくさのな)に??ら(はこべら)の名があります。ハコベの語源は 「はびこる→はこびる→はこべら→はこべ」に変化したと考えられています。
 平安時代もハコベ汁等として食べられていたようです。また、干した粉と塩を混ぜた「ハコベ塩」は歯磨きに使用したようです。民間薬では歯茎の出血を予防する目的で用いられています。さらに、関節炎、リウマチ、便秘の改善、膀胱炎、虚弱体質の改善に用いられます。また、最近の研究で葉緑素の抗菌作用による歯槽膿漏の予防、さらにコレステロールの抑制、高血圧予防、胃腸粘膜の保護などが報告されています。
 春の七草「セリ、ナズナ、ゴギョウ、ハコベラ、ホトケノザ、スズナ、スズシロ」と言える人も多いと思います。

・ハコベ(ヒヨコ草):歯茎の出血
・セリ:健胃・整腸
・ナズナ(ペンペン草):目の充血・利尿
・ゴギョウ(ハハコグサ):咳・痰等
・ホトケノザ(コオニタビラコ):解熱・解毒・潰瘍
・スズナ(カブ):利尿・便秘
・スズシロ(ダイコン):健胃・せき止め・冷え性

 

 このような効果があります。セリ、カブ、ダイコンは普通の野菜として食べられています。

 皆様の周りには食べられる草がたくさんあります。巧く使って下さい。野菜は全ての部分が食べられますが、機能性成分を多く含む外葉、皮、根、芯の部分を「硬い、汚れている、虫が食っている」等の理由で廃棄しているのはもったいないですね。例えば、米は、タンパク質、ミネラル、ビタミン等の機能性成分を多く含む糠(ぬか)を取り除いて廃棄し、デンプンが主の白米を私たちは食べています。これが糖尿病の原因になっているのかもしれません。しかしタンパク質、ミネラル、ビタミンは独特の味がありますので、味覚を重視するとおいしくないと言われることもあります。
 私たちは何を重視するのでしょうか?  
 身体は何を欲するのでしょうか??


854号 2017年5月14日

(122)ゲッケイジュ クスノキ科

 連休はいかがでしたか? ひばりヶ丘公園の北西の入り口(散髪屋さんの横)で、ゲッケイジュ(月桂樹)の雌木を見つけ、四月下旬に花を撮影しました。
 ゲッケイジュの枝葉は、マラソンなどの優勝者に冠で与えるので有名です。ローリエ(フランス語)、ローレル(英語)、月桂樹(日本語)と各国で呼び方は違いますが、地中海原産の常緑樹で、語源はラテン語のLadis(誉めたたえる)からきたと言われています。
 ローリエの葉には甘い香りと苦みがあり、肉や魚の臭い消しや料理の香り付けに、カレー、シチューなどに用いられます。生葉はスッキリした香りと少しの苦みが、乾燥葉は甘い香りが強いのが特徴で、うまく使い分けて料理に用いてください。香りの成分は、シネオール、オイゲノール等で、精油成分から月桂油が得られます。
 薬用では、乾燥葉を煎じて、リウマチ、神経痛に用います。また芳香性苦味薬として葉の粉末を1回1g、1日3回服用します。秋には黒い実ができますが、熟した果実を乾燥したものも苦味健胃薬として用います。
 ギリシャ時代からゲッケイジュは薬用として用いられ、ギリシャ時代のディオスコリデスが書いた薬物誌「マテリア・メディカ」に、葉の煎じ液で坐浴(ざよく)をすると、子宮や膀胱の痛みに効果があると記されています。また、ゲッケイジュの根皮2gくらいを芳香のあるブドウ酒と共に服用すると、胆石を溶かして肝臓病に効き目があると記されています。 
 聖書にはいろんな薬用植物が記されています。最も多く出てくるのが「ブドウ」で、ブドウ酒になりますね。ゲッケイジュ、オリーブ、アンズなども出てきます。日本では、これからウメ、アンズの実が熟れます。うまく利用して下さい。
 家の庭のサクランボの実は熟れる前にヒヨドリに食べられてしまいました。ウメ、ビワが5月末には収穫時期かなと思っています。トキワマンサク、フジは花が終わり、甘茶、テッセンの蕾がだいぶ大きくなっています。ユウスゲの葉も伸びました。ハナシノブの花が咲きだしました。ハナシノブ地上部をお茶にして飲むと脂肪の吸収を抑えてくれることが分かっています。栽培も多くなりました。これを利用してお茶を作って飲んでみませんか?お試しください。
 八十八夜も過ぎ、新茶の美味しい季節です。最近では、カフェインが悪者にされていますが、お茶は身体に良いので、飲む、食べるなど、うまく利用して健康を保って下さい。


858号 2017年6月11日

(123)メグスリノキ カエデ科

 メグスリノキは細川藩の秘薬として知られ、眼に良いと言われています。眼の疲労、かすみ目、結膜炎、白内障、緑内障、肝機能改善などに良いとされていますが、いかがでしょうか? 使用部位は、枝葉、樹皮を用います。花粉症にも良いという話もありますので、試して、調子が良ければご利用下さい。

 

 メグスリノキの果実の写真(左)は、菊陽町沖野の知人の家で撮影させてもらいました。大きさは10cmくらいです。雌雄異株で、秋には赤く紅葉します。来年は4月初めに雌花を見たいですね。写真を撮影しに伺った折、ホウノキ(写真右)が咲いていましたので、頂いてきました。ホウノキは1日花ですが、蕾が開きかけでしたので玄関先でホッとする甘い香りが漂っていました。
 庭のビワが熟れてきました、ヒヨドリが狙っています。サクランボは全部食べられたので、ビワはヒヨドリと競争しながら収穫しようと思っています。

 薬局で売っている薬、漢方薬も同じですが、健康食品、民間薬などは、一週間試してみて、改善されれば続け、おかしい時は止めて下さい。普通は3日くらいで変化が現れます。人により効果が違いますので、飲み過ぎ等も含めご注意下さい。また、いろんな健康食品を合わせて飲まないようにして下さい。
 飲食して、吸収された成分のうち、利用しなかった化合物は、肝臓が解毒するので、取り過ぎると肝臓にたまり、急に肝機能が働かなくなることもあります。肝臓は摂取する食品の成分、添加物、アルコール、薬、等々の解毒を毎日行っています。それに加えて、いろんな健康食品の成分が加わると、肝臓も働くのが嫌になり弱ってきます。肝機能は70%くらいがダメージを受けないと症状が出ないとも言われているので、肝機能障害を起こさないようにご自愛下さい。

 花粉の飛散が少なくなりましたが、それでも鼻水が出る人もいます。PM2.5等による眼の痒み、鼻水が止まる「ハチャメチャ菊茶」(菊花、イグサ粉末、ミカン粉末)を試してみませんか?

 


862号 2017年7月9日

(124)ハルウコン ショウガ科

     

 ウコン、ハルウコン等の名前が知られています。一般に栽培され、酒毒に良いといわれるウコンは秋に花を咲かせますが、ハルウコンは5月〜6月の春に花をつけます。ウコンは、葉の中に花を咲かせますが、ハルウコンは葉とは別に花が出てきます。薬用として用いるのは、根茎・塊根で、ウコンよりも淡い黄色で、清涼感の強い香りがします。
 ウコン(アキウコン)は食用、消化促進に。ガジュツ(紫ウコン)は芳香性健胃薬として用いられていて、ハルウコンはその中間ですが、ウコンとハルウコンを混同してしまっている人も少なくありません。しかし、これらは成分的に異なりますので、家庭栽培のものを使用する場合には、まずどちらかを判別することが必要です。簡単な方法は、花の咲く時期や根茎の切断面を確認する方法です。根茎を折ってみて淡い黄色いものはハルウコンです。黄色色素クルクミノイドはウコンが最も多く、ハルウコンの約10倍量を含有しています。一方、ガジュツには含まれず、紫ウコンと言います。
 ハルウコンは、薬用としては、健胃、消化促進などです。生薬名をキョウオウ(姜黄)といいます。ただ、中国から輸入したウコン(鬱金)は、ハルウコンの根茎で、キョウオウがウコンの根茎の可能性があります。日本・中国での相違がありますので間違えないようにして下さい。また、中国ではウコン・ハルウコンの1年目の根茎をキョウオウ、塊根(2年目以降の根茎)をウコンと言うことも有りますので、混同しないようにして下さい。塊根は、黄色の色が濃くなりますので、その部分をウコンとして用い、黄色の淡く清涼感のある根茎をキョウオウとするのが良いのかもしれません。
 ウコン、ハルウコンの根茎・塊根は「便秘改善に良い」ようです。1日にティースプーンで、1/2〜1杯位を飲むと効果があるという方がおられますので、便秘の方はお試し下さい。
 ウコンが酒毒を消す効果があるといわれ、酒を飲んだ後に沢山飲む方がいますが、肝臓を痛める可能性もありますので、飲み過ぎには注意して下さい。肝臓は70%位のダメージが出ないと悪くなったと感じません。何度も書きますが、ウコン末、ドリンク等の飲み過ぎには注意して下さい。
 沖縄の方に「泡盛を飲みながらウコンを食べますか?」と聞いたことがあります。答えは「沖縄のある地域だけで食べているだけです!」とのことでした。
 今、歯磨きで「イグサ粉末」と「プロポリスエキス薬用歯磨き」を、朝夕にそれぞれ用いています。歯茎の出血、歯肉炎、口内炎が無くなりました。また、感染症に罹ると大変なので咽の抗菌スプレーの「プロポリススプレー」を用いています。効果は良いですね。6月掲載の「メグスリノキ」の葉をお茶にして飲まれている人から、眼の調子が良いですと連絡をいただきました。秋に採取した葉をお茶にして飲まれているようです。興味の有る方はお試し下さい。


870号 2017年9月10日

(125)ウツボグサ シソ科

 9月に入り急に涼しくなりました。気温差の激しい季節ですが、皆様「夏バテ」していませんか? 胃を冷やし過ぎないように、たまには温かいものを飲食して胃をいたわって下さい。
 今月はウツボグサです。5月に花を咲かせ、6〜7月になると花が枯れ「夏枯草(かごそう)」になります。地上部を乾燥したものを夏枯草といい、消炎利尿を目的に腎臓炎、膀胱炎に用いられます。夏枯草1日量、約10gを、500tの水で煎じ、約半量にし、ろ過して3回に分けて食間に服用します。
 夏枯草には、タンニン(ポリフェノール)が多く、夏枯草だけを長期間服用すると、胃を刺激しますので胃弱の人は注意が必要です。
 夏枯草に大棗(たいそう=ナツメの果実)を加えたものは急性黄疸性肝炎に効果があると言われています。また、暑気払いに、夏枯草を刻み、お茶のように飲むと効果があると言われています。外用には口内炎、へんとう炎に、夏枯草3〜5gを、300tの水で煎じ、煎汁でうがいをすると予防できます。結膜炎の洗眼液として、上記の煎汁を脱脂綿でこして用います。この場合には常に新しく煎じたものを用いて下さい。ウツボグサの生の葉を潰して打撲傷などの患部に塗ると効果があるといわれています。

      

 8月中旬、庭にウコンの花が早々と咲きました。普通、ウコンの花は9〜10月です。9月にはミョウガの花が咲きだします。ミョウガは物忘れをするとも言われていますが、皆さんいかがですか?
 8月17日に高森に出かけましたら、お盆に合わせて「ショウキズイセン」が黄色い花を咲かせていました。秋の彼岸にはヒガンバナが咲きます。
南阿蘇、高森は、朝夕涼しくなったとのメールが届きます。秋の植物が大きくなり、稲穂もだいぶん大きくなってきました。電車の走っていない高森線の中松駅から立野駅の間は線路が草ぼうぼうです。「南阿蘇 水の生まれる里 白水高原駅」の前にある食堂は営業していて、駅の清掃もきれいにしてありました。
 駅の横の線路の上を走る車道の橋は、米の収穫が終わる秋から修復の工事が始まるそうです。
 胃腸の調子を整え、楽しい『食欲の秋』をお迎え下さい。


874号 2017年10月8日

(126)ナンバンギセル ハマウツボ科

 秋の七草の薄(ススキ)の下(地際)に、キセルのような形をしたピンクの寄生植物を見つける季節です。ナンバンギセルはススキ、サトウキビ、ミョウガ、ギボウシ等に寄生する1年草です。万葉集では「おもいぐさ」と呼ばれ、全国に自生しています。全草を乾燥し、煎じて強壮、咽の痛み等に用いるようです。
 「ナンバンギセル」の『キセル』といっても知らない人が多いと思います。刻みタバコを吸う時に用いる道具です。写真のピンクの部分に刻みタバコを入れ、火を付け、白く長い茎の端から吸います。タバコは身体に良くない、タバコの煙も周りの人に良くない、タバコの煙・成分は空気より重たいので、床に溜まり、家では赤ちゃんなどに悪い影響を与えます。喫煙者の呼気からもタバコの成分がたくさん出ますので、小さな子どもたちには悪い影響を与えます。気を付けましょう(だいぶ話の方向が変わってすみません)。
 「秋の七草」は、花を愛でるものですが、薬用植物ですので、その説明をしておきます。

◆ハギ(ヤマハギ){萩・マメ科}
 女性のめまい、のぼせに。

◆オバナ(ススキ){芒または薄・イネ科}
 根茎を利尿薬に。

◆クズ {葛・マメ科}
 根を葛根湯に、花(乾燥)を二日酔いに。風邪にくず湯[くず粉小さじ1杯をカップ一杯の熱湯に溶かし、透明になるまでよくかき混ぜ、 好みで砂糖とおろしシュウガを加えたものを飲む]

◆ナデシコ(カワラナデシコ){撫子・ナデシコ科}
 1日あたり、種子3〜6gを水150gで1/2量まで煎じ、3回に分けて服用。むくみ時の利尿に。

◆オミナエシ {女郎花・オミナエシ科}
 乾燥した根2gと、芍薬(シャクヤクの乾燥した根)8gを水400tから1/2まで煎じて1日3回服用。腫れもの、解毒、利尿に。

◆フジバカマ {藤袴・キク科}
 乾燥した全草を300〜500g細かく刻み袋に入れ、風呂に入れる(皮膚のかゆみに)。乾かすと香りが出る。線香の原料にします。京都の線香専門店の前には鉢植えが置いてあります。川尻町でアサギマダラとフジバカマで「旅する蝶」としていろんなイベントが企画されています。

◆キキョウ {桔梗・キキョウ科}
 咽が痛むとき、キキョウの根2gと甘草3gを煎じて飲む。痛む化膿性の腫れものに桔梗1g、芍薬3g、枳実3gを粉にし、これの2〜3gを卵の黄身1個に加え、良くかき混ぜて、白湯で飲む。夏バテに、風邪に十分注意してください。


879号 2017年11月12日

(127)フユノハナワラビ ハナヤスリ科

 少し変わった薬用植物を紹介します。シダの仲間で、薬用植物は少ないのですが、その中の一つが、フユノハナワラビ(冬の花蕨)です。フユノハナワラビは、10月に葉を出し、そのまま越冬、初夏に地上部が枯れる、シダとしては珍しい植物です。10月ごろに出てくる立胞子葉が花のように見えることから名前がついています。英語で「grape fern」
(ブドウシダ)と言い、胞子嚢(ほうしのう)がブドウの房ように見えるところからついたのでしょうか。
 フユノハナワラビには、2種類の葉があります。直立する花のような胞子葉と、地面を這う栄養葉です。胞子葉には、黄緑色の粒状の胞子嚢があり、この中に胞子がたくさん入っています。
 薬用では、地上部(全草)を乾燥して、腹痛・下痢、風邪や百日咳、解熱に用いるようです。
 山に行くと、シダの仲間で、春の山菜のクサソテツ(コゴミ)が葉を大きく伸ばしていました。山に行くと正月に用いるウラジロもまた、お飾り用に裏が白くなり、準備をしているようです。秋の野山を歩くのも楽しいです、迷子にならないように、周りの雑草を観ながら楽しんでください。紅葉もきれいです。
 11月に入ると、花粉やPM2.5がボチボチと飛散し始めます。花粉症の方は、花粉を感じる季節が近づいてきましたので、何かと大変だと思います。花粉症の方は、症状が出ると集中力が散漫になり勉強、仕事が進みませんね。病院でもらう薬は抗ヒスタミン薬が多く、眠気を誘うものが多いので、これも勉強、仕事が進みませんね。

◇そこで身近な食用のものを使ってお茶、「ハチャメチャ菊茶」を作ってみました。無農薬のイグサ、無農薬の未熟ミカン、菊の花を混ぜたお茶です。イグサ、未熟ミカン、菊の花には、抗ヒスタミン作用を示す成分が含まれていることが報告され、またその効果も確認されています。
 花粉症でお困りの方は、「一日一包飲むと花粉症を忘れる、ハチャメチャ菊茶」はいかがでしょうか?

 喉に違和感を感じたら「濃い茶」でウガイをし、早めに風邪等の予防をして、少しでも普通の状態を保ってください。元気(普通のエネルギー状態)が一番!!


883号 2017年12月10日

(128)ツルムラサキ ツルムラサキ科

 寒くなってきました、皆さまお元気でお変わりございませんか? 気温差が激しいので首や背中、腰などを冷やして風邪を引いていませんか? 感冒を「風邪(かぜ、ふうじゃ)」と言います。寒い風で背中が冷えゾクゾクして、寒気、発熱して風邪を引きます。
 2000年くらい前の本「傷寒論」(寒さで傷つき病気になった時の治療法)の最初に風邪の処方があり、その中に症状が出たら、すぐ(頓服で)、1日分の処方を3回に分け、6時間で飲むと書いてあります。例えば元気な人が寒さでゾクッとしたら、すぐに葛根湯エキスを飲み、暖かくして養生し、2時間後に1包を飲んでいき、汗が少しにじんできたら飲むのを止め、暖かくして養生する。葛根湯を飲んだ後に「生姜湯などの温かいお粥」で身体を温め、消化の良い食べ物を食べると葛根湯の効果が上がります。葛根湯を1日3回で飲むとあまり効果がでないことがあり、漢方薬は効かないという方が多々ありますね。

 今月は、7月ごろから食用で売られている「ツルムラサキ」です。茎が紫と緑の2種が売られていますが、緑の株はツルがあまり伸びませんね。ムラサキは邪魔になるくらい伸びて、たくさん食べられます。ツルムラサキ(紫色の株)は、熱帯アジア原産のツル性植物で、日本では健康野菜として栽培されています。他に、果実を染料に、地上部を解熱、利尿などに用いるようです。
 インターネット等で調べると、効果効能に、免疫向上、疲労回復、動脈硬化予防、美肌効果、骨粗鬆症予防、整腸作用、ダイエット効果などが書いてあります。どこまで機能性が期待できるかは不明ですが、ゼロではないと思います。ホームページにはいろんな事が書いてありますが、トライしてみて、もし効果があったら続けて下さい。おかしい時は早めに止めて下さい。
 ツルムラサキは霜に弱く、菊陽町では冬は枯れてしまいますが、奄美群島、沖縄などでは多年草で1年中利用できます。若い葉を収穫し利用する方が美味しいです。

 これから一段と寒くなります。風邪・インフルエンザに罹らないように、免疫力を下げないように心身のバランスを普通に保ち、良いお年をお迎え下さい。


887号 2018年1月14日

(129)ヘクソカズラ アカネ科

    

 ヘクソカズラは全国の日当りの良い場所の木に巻き付いて大きくなり、邪魔者扱いされる蔓(ツル)性の雑草です。
 ヘクソカズラは漢字で「屁糞葛」と書き、春の新芽の時期、葉、茎を揉むと臭く、また秋の実をつぶすと茶色の汁が出ることから名前がついたのではと思われます。また、花の中央が赤くやけどの跡のように見えることから「やけど花(灸花)」、小さい花が可愛く美しいことから「さおとめ花(早乙女花)」の別名があります。また地方ではクソタレバナ、ヘクソ、ヘクサカズラ、ソウトメバナとも呼ぶそうです。
 薬用には果実をアルコールに浸して、しもやけ、ひび、あかぎれ等の皮膚疾患に、化粧水として地上部を焼酎に漬け、液をろ過して皮膚疾患の改善に用います。1ヵ月くらい漬けておくと、くさい匂いは無くなります。人吉・球磨地方では、ろ液をスプレー容器に入れ、皮膚疾患の患部に噴霧して、かゆみ、湿疹、アトピー等に用います。また、腎臓病、かっけ、下痢止めなどには、乾燥した根茎を刻んで約10gを、水約0.5?で煎じて服用すると書かれています。
◆作り方
 人吉・球磨地方では、秋に果実を含む地上部を容器にいっぱいに入れ、球磨焼酎を浸るまで加え、数ヵ月冷暗所で放置し、液をろ過し、皮膚疾患に用います。また同じように「ドクダミ」の地上部も焼酎に漬けて、皮膚疾患に用いる方もおられます。他の薬用植物として、人吉・球磨では、痛み止めに「ジャケツイバラ」の蔓の乾燥したものを煎じて服用するそうです。ただアルカロイドを含み効果が強いので、痛みが無くなれば飲むのを止め、長期の服用は避ける方が好ましいでしょう。

 年末年始、少し飲み過ぎ・食べ過ぎて、胃を弱らせているのではないでしょうか? 七草粥で胃腸をいたわりましたか?
 食は薬、「食薬同源(食は薬の元)」です。食べた物は胃できちんと消化され、胃腸で吸収しエネルギー(氣)に変わり、私たちは元気になります。その気(氣)が血液、体液(水)を巡らし、心身のバランスを普通に保ちます。
 今年一年、胃の状態を普通に保ち、元気(元の氣)に暮らして下さい。皆さまのご健康をお祈りいたします。元気が一番。


891号 2018年2月11日

(130)ジャケツイバラ マメ科

 人吉・球磨地方で、痛み止めに用いられる、ジャケツイバラです。別名をシシモドシ、川原藤などと言います。民間薬として、幹を乾燥し焼酎に漬けて、飲むか患部に塗ります。
 中国では、豆果は、7月ごろ採取し、天日で乾燥させると、裂けて大豆ほどの種子が出てきます。その種子を集めてさらに日干しにします。種子の生薬名は「雲実(うんじつ)」といいます。根、根皮は年中採取可能で、生薬名は「雲実根(うんじつこん)」です。タンニンの含量が高いのが特徴です。
 「雲実」の効能はマラリアの解熱と下痢止めです。1日量12グラムに、水500〜600ccを加えて煎じます。半量まで煮詰めてこし、煎液を1日3回に分けて飲みます。「雲実根」も同様に煎じて、風邪による咳、喉痛、身体痛、腰痛に服用します。打撲傷や腰痛などには、根あるいは根皮を突き砕いて汁を患部に塗布します。

 1月末からネパールのカトマンズにあるAITM (Asian Institute of Technology & Management)大学に講義に行ってきます。ホテルも大学も空調設備が有りません。排気ガス・土埃が酷く、インフラも悪いですが、ヒマラヤの山々が見えるので楽しみです。

 家で仕事をしていたら鼻水が出て来たので、自分でブレンドした「ハチャメチャ菊茶」(食用イグサ粉末、未熟ミカン末、菊花)を飲むと、鼻水が止まりました。気温差が激しく、花粉・pm2.5が飛ぶ季節、「ハチャメチャ菊茶」は重宝します。
 私は、食用イグサ粉末で歯磨きをしています、歯茎の出血、歯肉炎の予防には良いです。イグサは、イライラを抑制します、人は食用イグサを飲んでいると落ち着きます(面白く、すごいです)。
 風邪の早期予防は、寒気がしたら直に葛根湯を飲み、次は2時間おきに飲み、身体が温まり少し汗が出たら飲むのを止め、温かくして養生して下さい(傷寒論より)。
 インフルエンザの時は「麻黄湯」を、節々が痛くなり寒気がしたら直に飲んで下さい。次は2時間後、葛根湯と同じように飲んでください。
 もし1日3回飲みなさいと、葛根湯・麻黄湯を処方してくれる医者は漢方を理解していないヤブ医者です。このような飲み方をするので葛根湯・麻黄湯は効かないと言われます。きちんとした医者、薬剤師を選び、皆さまご自愛下さい!

 ホコリでかすみ、ヒマラヤが見えない、ネパールの首都カトマンズより。


895号 2018年3月11日

(131)ビャクダン ビャクダン科

 今年は寒さが厳しかった分、花粉が多そうですが皆さまいかがですか?
 今月の薬用植物は、2014年3月に、私の後任の熊本大学薬学部の薬用資源エコフロンティアセンター長の渡邊高志教授と一緒に、初めて出かけたミャンマーで出会った「ビャクダン(白檀)」です。初めて花、実をミャンマーで見ました。約5oの小さな花で、濃い紫色であまり目立ちません。実も約1pの楕円形で熟れると黒くなります。どちらも目立ちません。しかし、材は香りが良いので、お香、アロマセラピー等に用いられています。
 材を「サンダルウッド」といい、大変高価で、その精油は鎮静効果、消炎作用、利尿作用、免疫機能向上、抗菌作用等を有することが知られています。精油には抗マラリア原虫作用があるとも言われています。
 ビャクダンの香りが良いのはもちろん、その煙は浄化作用が強いということで、線香、お香に配合されています。インドでは4千年以上前からスピリチュアルな香木として使われている記録もあります。日本では日本書記に記載があります。免疫力を上げますので、ビャクダンを焚くことでインフルエンザ、花粉症等も予防できる可能性があると思います。
 精油に入っている「良い香り」の成分は、Z-α-サンタロール、Z-β-サンタロール、Z-α-サンタラール等のセスキテルペン(炭素数15個のテルペノイド)です。しかし「強い油臭で臭いの良くない香り」の成分も微量ですが含まれています。E-α-サンタラール、E-α-サンタレニン等です。化合物名の記号が「ZとEの1ヵ所」違うだけで、香りが大きく違うというのが面白いと思います。人の性格と同じですね。
 
 香りの強い花をつける「三大香木」という植物があり、「ジンチョウゲ(沈丁花)、クチナシ(梔子)、キンモクセイ(金木犀)」です。ジンチョウゲは春の香りを告げる香りですが、赤い実は有毒なので愛でるだけにして下さい。クチナシは夏を告げる香りの花でしょうか? 秋には橙赤色の実をつけ、「サンシシ(山梔子)」といい、抗炎症作用があり薬用に、また食用、染色に多方面で用いられます。キンモクセイは、秋の訪れを告げる香りで、庭木等に植えられ、甲佐、熊本城等に大木があります。中国では花を砂糖漬け、リキュールにしています。鹿児島ではキンモクセイの葉をお茶にします。
 花粉症は集中力が落ち、トラブルの原因になります。西洋薬で抑えると眠くなります。食用植物のお茶「ハチャメチャ菊茶」は、副作用はほとんど無いので一度お試し下さい。勧めた私がびっくりポンで効果が出ることが多々ありました?


899号 2018年4月8日

(132)チョウセンレンギョウ モクセイ科

 チョウセンレンギョウは、レンギョウと異なり茎が垂れます。レンギョウと同じで3月中旬から4月にかけて黄色い花を咲かせます。
 漢字で連翹(れんぎょう)、英名:Forsythia(フォーサイシア)と言います。レンギョウ、シナレンギョウ、チョウセンレンギョウ等があります。大気汚染や病虫害に強いので庭木や公園等に植えられています。
 果実を生薬として用い、抗菌、抗炎症などの効果があり、よく使われている漢方処方294処方中、14処方に配合されています。慢性の鼻づまり、副鼻腔炎、慢性鼻炎に用いる荊芥連翹湯(けいがいれんぎょうとう)に、咽をよく使う職業の歌手、声優、政治家、教師、塾講師、浪曲師などの方々が、咽の枯れた時に用いる響声破笛丸(きょうせいはてきがん)などに配合されています。
  ただ、日本では果実があまり出来ないので、生薬を作ることは難しく、中国から輸入されているので、花を楽しんで下さい。花をよく見ると雌しべが長く飛び出し、その付け根に雄しべがあり、受粉を避けているようです。また自花の花粉がついても受粉しないと言われ、少し変わりものの花です。果実は秋に熟します。

 3月から山口県 山陽小野田市の山口東京理科大学の薬学部(4月新設)附属の薬用植物園作りに出掛けています。我が家から片道230q位を車に家の薬用植物を満載し移動します。この文章も大学の宿舎で書いています。熊本はサクラ(ソメイヨシノ)が満開で散りかけていましたが(3月29日現在)、山陽小野田市の江汐公園(えじおこうえん)と竜王山などのサクラはまだ5分咲きで3月31日から4月2日が花見のベストの時期でした。3月28日に見たら熊本の家の庭の藤の蕾(つぼみ)も10cmを越え、サクラ、モモ、ハナダイコン(オオアラセイトウ)、ユキヤナギ、ヒゴスミレ、スミレ、ムラサキケマン、ホトケノザ等が満開です。ボタンの蕾もだいぶ膨らんできました。枯れかけていたトキワイカリソウが葉を出し白い花が咲きました、感激です。コブシの花も終わり、2月に咲いたセリバオウレン、フクジュソウは果実になっています。

 スギ花粉が終わり、ヒノキ花粉が最盛期、黄砂も多く来ています。鼻水が出る、眼がかゆい時は「ハチャメチャ菊茶」を飲んで下さい。外出の時も容器に入れて持って歩き、症状が出た時にすぐ飲むと症状が軽減します。少しでも集中力が増しますのでストレスが減じます。お試し下さい!


903号 2018年5月13日

(133)シラン ラン科

    

 4月中旬から陽当たりの良い庭に赤い花が咲きだしました、シランですね。漢字で紫蘭と書きます。植物の名前を知っていても“知らん”などと言いながら覚えたものですが、漢字で書くと「紫の蘭」ですので、理解できると思います。ランの仲間では大変強く、陽当たりが良い所で少し肥料があると増えていきます。白い花も園芸種であります。
 シランを掘り上げると球状の球根が出てきます。これを球茎と言います。この球茎をすりつぶし、傷口に塗り込むと傷の治りが早く、薬局の無かった田舎では冬のアカギレ等によく使っていました。球茎を乾燥したものを薬用名で白及(ビャクキュウ)といい、ヒビ、火傷、創傷などに、すりつぶして外用で用います。シュンラン(春蘭)も同じような使い方をします。
 春は花のシーズンです。冬にエネルギーを貯め込んだ植物たちが暖かくなると一気に咲き始め、種子を作ります。スミレの仲間がたくさん咲いています。道端でよく見かける青紫のスミレは「スミレ」または「ノジスミレ」です。スミレとノジスミレの見分け方ですが、スミレは葉柄(葉のついた軸)に翼がありますが、ノジスミレにはほとんど見られません。ノジスミレは、生薬名を紫花地丁(シカジチョウ、全草を乾燥したもの)といい、味は苦、辛、性は寒の性質を持ち、効能としては、清熱(解熱、消腫)を目的に、漢方では皮膚化膿症の瘰癧(るいれき『はれもの』)、下痢、結膜炎に用いられます。紫花地丁の基原(基になる)植物は、ノジスミレの他に、スミレ、コスミレ等のビオラ属です。民間薬でも全草を『はれもの』に外用、または煎じて内服で用います。HIV(エイズウイルス)の活動を阻害するという報告もありました(細菌レベルの実験ですので実際の効果はどうでしょうか?)。
 50年前の4月、大学に入学するためにおふくろと実家の岡山から夜行電車に乗って博多に行ったのを思い出します。35年前に熊本に来て、熊本生まれの方に「肥後生まれの人より、あんたは肥後もっこすだ」と言われてしまいました。いかがでしょうか?
 話は変わりますが、植物のクローニングは植物自身で簡単に行うものが多数あり、50年以上前からクローンによりイチゴ、サツマイモ、ジャガイモ等々で利用され、販売されています。動物はクローンを作るのが難しいので動物愛護のもと、動物を異常に大事にしますが、植物を軽くみるところがあるのではないでしょうか?「声も出せない・動けない植物」も大事にしてください。


907号 2018年6月10日

(134)ムラサキ ムラサキ科

 ムラサキは、根が紫の色素を含み、布(絹)を紫色に染色するのに用いられています。紫色は昔から高貴な色として愛されてきました。ムラサキは染料として、また薬用として用いられています。昔は熊本市内の帯山から東の丘陵に自生し「小学校の校庭にもたくさん有りましたよ」とお年寄りの話です。帯山西小学校の校歌に「むらさき」の植物名が入っています。
 現在、野生種はほとんど無く、希少植物になり、栽培もだいぶ出来るようになりましたが、根腐れも多くなかなか大変です。
 薬用では、根を紫根(しこん)といい、創傷、やけどの傷口の新生をうながします。他に抗炎症、殺菌、抗腫瘍作用、解熱、解毒、消炎などが認められています。皮膚炎、湿疹、凍傷、やけど、切傷などに外用薬として用いられます。ムラサキから由来する紫根を“硬紫根”といい、中国産はほとんどが“軟紫根”で、種類が違い、基源植物はネパールの標高3000mぐらいに生育するMacrotomia euchroma(=Lithospermum euchroma)です。
 紫根の入った有名な薬に“紫雲膏(しうんこう)”があります。やけどの良薬です。私も1年に一度くらい手作り紫雲膏を作っています。今年はネパールの大学で学生と一緒に作りました。日本では「ごま油と蜜ろう」に「紫根と当帰(とうき)」を用いますが、ネパールでは化粧品及び食品に用いる「チューリーバターとごま油」を使って軟こうの基剤を作り、「軟紫根と当帰」を合わせて作ります。2016年、今年、ネパールに出掛けて作っています。昨年は病気で行けなかったので今年は学生・教職員も心待ちにしていました。
 またもう一つ「黄色クリーム」キハダ粉末とウコン粉末を加えた軟こうも作っています。ニキビ、アトピー性皮膚炎の痒み止めに良いと言っていたら、学生が作ってすぐ使い効果があったのでしょう、もう一個下さいと先生にもらいにきていました。
 先日、山口県 山陽小野田市の江汐公園内の薬用植物園の圃(ほ)場を耕うん機で耕うんしていて大きな石で耕うん機が跳ね上がり、ハンドルが眼の横をかすめて出血しましたが、手作り紫雲膏(紫クリーム)で止血・消毒しました。持って来ていて助かりました。他に蛭(ヒル)に噛まれた時の出血もよく止まります。スーダンのNPO「ロシナンテス」の理事長の川原尚行医師が寄生虫が原因の“リーシュマニア症”になって困っているとき、私が差し上げた「手作り紫雲膏」で治ったと喜んでいました。それ以来の友人です。また、船乗りの知人女性が日焼けに手作り紫雲膏を重宝してくれています。
 現在、山口東京理科大学薬学部附属薬用植物園で、塩ビパイプを使ってムラサキの栽培をしています。今年種子を採取し、増やしていければと思っています。


911号 2018年7月8日

(135)ベニバナ(紅花) キク科

 ベニバナは、一般には越年生草本ですが、2月頃種子を蒔くと1年草になります。紅色の花びら(管状花)を薬用で「紅花(こうか)」といいます。6月に黄色い花をつけ、6月下旬〜7月にかけて花が枯れかけると花びらが紅色になります。
 江戸時代に山形県の最上地方での栽培が盛んになり、品質の高い紅花として非常に珍重されました。紅色の花びらは「通経、駆?血(くおけつ)」などの作用があり、一般用漢方製剤294処方のうち、通導散(つうどうさん)、葛根紅花湯(かっこんこうかとう)など11処方に配合されています。
 民間薬としては、産前、産後、腹痛など婦人病一般には、紅花を1日3〜5g煎じて服用します。 また、昔から、浄血薬として、婦人の血の道に用いられ、月経不順、冷え性、産後の腹痛、更年期障害などに、また、血行障害によるくお血、腫瘍、打撲傷(打身の青あざ)などにも効果があるとされています。生薬は紅色が鮮やかで、黄色色素が少なく香りのよいものが良品とされます。
 薬用の他、天然色素原料として食品や化粧品(口紅など)にも用いられています。管状花を発酵させていくと化粧品などの原料になる紅餅にして、江戸時代はハマグリの貝殻に紅餅を入れて口紅に用いていました。また、ベニバナの種子を絞るとリノール酸の豊富(約70%)な、紅花油が得られます。血液中のコレステロールの低下や動脈硬化予防に良いとして多量に用いられていましたが、偏った食用油の利用は身体に良くないと言われていますので、注意が必要です。菜種油、米ぬか油、胡麻油、オリーブ油、ヒマワリ油等々多種な油があり、油は食として必要ですが、油(油脂)の取り過ぎには注意して下さい。
 天ぷら、揚げ物などの料理は、苦み・渋味などの味をマイルドにして食べやすくなりますが、胃で油分が除かれて、苦味・渋味の成分の、例えばポリフェノールが胃の粘膜と結合して胃を弱らせることがあります。胃の弱い人はポリフェノールの取り過ぎ、刺激のある香辛料の取り過ぎは夏バテに繋がりますので、注意して下さい。
夏バテのもう一つの原因は「冷たいモノの取り過ぎ」です、ほどほどにしましょう。

◆ベニバナ酒の作り方

 ガーゼなどに紅花を30〜40gを包み、ホワイトリカー1.8リットル、砂糖300〜400gと漬け込みます。2ヵ月程度熟成させると、茶紅色のきれいなベニバナ酒が出来上がります。婦人病などの改善に服用すると良いでしょう。


915号 2018年8月5日

(136)エンジュ マメ科

 今回は、マメ科のエンジュにしました。エンジュの花蕾(からい)、果実にはルチン、クエルセチン等のフラボノイド(ポリフェノール)をたくさん含み、毛細血管の弾力を増強する効果等が知られています。またエンジュの花蕾、果実は止血剤として、痔出血、子宮出血、腸出血、吐血、目の出血、鼻血などに、また、脳出血の予防に用います。乾燥した花蕾、果実を一日5〜10gに水500t位を加え、半量になるまで煎じ、ろ過して、一日3回飲み、予防に用います。

 
 7月18日に高齢者大学校の方々に話をしたとき、カンゾウ(甘草)をお婆ちゃんが煎じて使っていたと言われた方がいます。普通、薬用で使うカンゾウは日本には自生しません。合志役場の前の畑で5年ぐらい栽培されていましたが、今は無くなっています。
 国内で用いられているカンゾウは輸入品で、日本に薬用植物園等で栽培されているだけです。カンゾウに関しては、ワンネス814号(2016年7月10日号)に掲載していますので、興味のある方は、ワンネスのホームページのバックナンバーで検索してみてください。
 「カンゾウ」と名前の付く植物は、一重の花のノカンゾウ、八重の花のヤブカンゾウが熊本では身近に生えています。薬用ではノカンゾウとヤブカンゾウの花蕾を採取して熱湯で数分ゆがいて、日干しにして乾燥したものをキンシンサイ(金針菜)といい、風邪、不眠症、利尿に用います。カンゾウのように甘くはありません。

〈夏バテ予防〉

 冷たいものばかりを飲食し過ぎて「夏バテ」をしていませんか? 暑いので冷たい飲食物を取り過ぎると、胃腸が冷え、まず胃の働きが弱って食欲が減少します。そのような時に私は温かいもの、例えば鍋料理を、汗をかきながら食べ弱った胃の調子を整えます。 
 冷たいものを食べる時は温める作用の効果のある「薬味」を少し加えて食べると胃を冷やし過ぎないで夏バテを防げます。冷たいものを食べる時は少しでも温める食材を一緒に飲食して下さい。
 また、熱中症は筋肉が少ない人がなりやすいです。少しでもタンパク質を食べ、運動をして筋肉を増やして下さい。炎暑が続きそうです。熱中症、夏バテを予防し、この夏を楽しんで下さい。


919号 2018年9月9日

(137)コガネバナ シソ科

 7月〜8月、今年は大変暑い「炎暑」の毎日で、冷たいものを取り過ぎ、胃が重くなり、食欲が減退し、夏バテしていませんか? 夏バテを秋まで引っ張ると、体力・免疫力が低下し、冬に風邪を引きやすくなります。

【解消法】
1)汗を少しかきながら温かい鍋料理を食べる。
2)軽い運動をするなどして汗をかくようにする。
3)冷たい飲食物を取り過ぎない。
4)室温の飲み物を取るように心掛ける。5)暴飲暴食を避ける、など。

 今月の薬草はコガネバナにしました。写真のように花の色が青紫で、アントシアニジン骨格のテルフィニジンという化合物が主成分です。熊本では暑い7月〜8月にかけて開花します。漢方に用いる生薬部位は根で、黄金色をしていることからオウゴン(黄・ゴンは、くさかんむりの下に今の字)と呼ばれます。“黄”の付く生薬はたくさん有りますがその中でも有名な生薬の一つです。この黄色はポリフェノールのフラボノイド類によるものであり、その中のバイカリ・バイカレインはアレルギ−に有効であることが分かっています。しかし、逆にこれらが多すぎるとアレルギ−を引き起こすことも知られています。漢方では三黄瀉心湯(さんおうしゃしんとう)、黄連解毒湯(おうれんげどくとう)、小柴胡湯(しょうさいことう)など30種以上の処方に配合され、消炎、解熱などを目的に、充血、胃部のつかえ、下痢、腹痛などに用いられます。

 30年くらい前、小柴胡湯の間違った使用法で多くの死者が出ました。これを「小柴胡湯の副作用」と言った漢方を良く知らない専門家がいたのを思い出します。前記した三黄瀉心湯・黄連解毒湯・小柴胡湯などのオウゴンが入った漢方薬は、ある程度元気のある方に用いる薬です。もし、寝たきり、基礎代謝の下がった人に長く用いると、免疫力の低下などを起こし病気が悪化しますので、長期の飲用は避けて下さい。
 昨今、漢方薬の芍薬甘草湯(しゃくやくかんぞうとう)を、身体が成長途上の小中学生が、スポーツをする時に多飲することが増えています。勝負を優先するのではなく、子供たちの身体のことを考えて利用して下さい。芍薬甘草湯は筋肉の痙攣を抑える作用が有り、こむら返り、シャックリ、痛み止め等に用いますが、利用方法を誤ると副作用が出ますのでご注意ください。


924号 2018年10月14日

(138)ハマナス バラ科

 「知床旅情」という歌の歌詞の最初に『知床の岬に ハマナスの咲く頃 思い出しておくれ 俺たちのことを…』があり、北海道に行くと海岸の低木の木々がハマナスのことがあります。熊本でハマナスを見たい時は、味噌天神近くの熊本大学薬学部 薬用植物園に出かけてください。

   

 ハマナスも薬用で、熟した果実で薬用酒を作り、疲労回復、低血圧、不眠などに、また食用にもなります。花弁は、通経、止瀉(ししゃ)作用があるといわれています。下痢止め、月経過多に、よく乾かした花弁を、1回量5gくらいを茶わんに入れて熱湯を注ぎ、温かいうちに飲みます。花びらおよび果実はジャムにして食べることもあります。また、根はタンニンを含み、染料として暗い黄赤色に染める「秋田八丈(あきたはちじょう)」に利用されます。さらに、ハマナスは皇太子徳仁親王妃雅子殿下のお印です。
 
 9月中旬頃から、朝夕冷え込んできました。ヒガンバナの花も咲き出しました。
 気温が5℃下がると、また20℃を切るようになると、背中を冷やして冬の風邪を引くことがあります。もし、背中を冷やしてゾクッとしたら、体力のある方は葛根湯を頓服ですぐ飲んでください。また、一服で汗が出ない時は2時間後にもう一服飲んでください。これでもし汗がでたら、飲むのを止め(絶対に飲み続けないこと)、温かくして養生してください。(汗を拭いて下着を着替えた方がベストです.。葛根湯を一日3回で飲んでも効果がないことが多いです)。体力のない方が葛根湯を飲むと、汗が出過ぎて止まらなくなることがありますので、十分注意してください。

◆食欲の秋
 これから空気が乾いてきます。胃は湿気に弱く、湿度が高いと夏バテという食欲不振がおこります。しかし湿度が下がると胃の調子が少しずつ良くなります。秋に湿度が下がり、そのために食欲がアップするので「食欲の秋」と言われます。ただ、食欲の秋と言っても、夏に弱っていた胃に急に食べ物を入れ過ぎると、胃も弱りますので、少しずつ食べるのを増やしてください。夏バテのままの胃で冬を迎えると、免疫力が落ち、風邪を引きやすくなります。弱った胃をいたわり、冬までに普通に近い状態にしてください。


928号 2018年11月11日

(139)コロシントウリ  ウリ科

 玉は小ぶりで、スイカに似ています。アフリカ中央部の砂漠地帯に自生しています。薬用として果汁は利尿効果があり,また果汁を濃縮して急性や慢性の腎臓炎のときに利用もされるといわれていますが、そのまま食すと激しい下痢で脱水症状になり砂漠では自殺行為となる可能性があります。

 ウリ科植物の果実は元々苦みがあるものが多く、嘔吐・下痢を起こすことがありますが、品種改良をし、食用になっているものが多くあります。今年、ズッキーニ、ヘチマ(若い実)、ニガウリを食べて、下痢をしたという報告があります。ウリ科の苦みの成分の「ククルビタシン類」には、下痢を起こす性質があります。ニガウリには、別の苦い成分も多く入っていますが、下痢には影響は無いようです。
 ウリ科のニガウリ、スイカ、メロン、ウリ類等は、身体を冷やす性質がありますので、冷えの強い人、体力の弱った人は、たくさん食べないほうがよいですね。食品には体を温める食材、冷やす食材があります。体調に相談して食材も選んで食べると良いと思います。

 便秘で悩んでいる方が意外と多いのではと思います。理由は緊張・ストレスが続く社会だからでしょうか? 交感神経が長い時間、優位(緊張状態)ですと肛門の筋肉が緊張して便が出にくくなるのではと思います。皆さまいかがでしょうか?
 まず便秘解消には、便意を催したら、恥ずかしがらずに「すぐ便所に行く」こと。我慢すると便秘になりがちです。1日3回も食べるのに、一度も出さないのはおかしくありませんか? 大便は、不要なものを身体の外に出すことですので、残しておくと、不要のものが大腸から吸収されて、血液中に入り、身体に害を起こす可能性があります。出すものは早めに出しましょう。

 「便所=身体からの便り所、小便:小さい便り、大便:大きな便り」ですので、例えば、小便は熱がある時は黄色になります。毎日、便りの色、臭い、形等を確認して体調を自己管理してください。また、口の中の「舌」の苔、色などでも身体の便りを見ることができます。
 胃が重くて食欲が減った時は、舌に白い苔が、熱のある時は、舌が少し赤色になります。毎朝、歯を磨く時に舌の変化を観察し、体調と比べてください。

 気温差が激しくなると風邪を引きやすくなります。背中から腰を冷やさないようにご自愛ください。


932号 2018年12月9日

(140)エビスグサ マメ科

   

 中央アメリカ原産の1年草で、日本各地で栽培されています。また東南アジアにも広く分布しています。種子には光沢があり、箱を少しつぶしたような形の種子は鞘(さや)に詰まっています。小葉は相撲の軍配に似ていて、果実(鞘)は下向きの恵比寿さんの眼の形に似ています(写真右)。花が似ているハブソウは、小葉の先端が尖り、果実は上向きで少し怖そうです(写真左)。
 ハブ茶には、現在はエビスグサの種子が用いられています。中身と名前が合いませんが、昔は「ハブソウ」の種子が用いられていました。しかし、ハブソウの種子はカビが生えやすく、エビスグサのほうが収量が多く、成分はほとんど変わらないので、経済性の良いエビスグサがハブ茶として用いられるようになりました。

 薬用として、緩下(便秘)、利尿、高血圧予防、魚毒を消す、さらに胃腸病、口内炎、じんましん、腎臓病、眼病等々、多くの効能があると言われていますが、全ての人に効果があるとは限りませんので、一週間くらい利用して効果がない時は止めましょう。エビスグサの種子を用いる時は、炒って種皮にヒビを入れ、中の成分が抽出できるようにしてから煎じてください。
 根菜等を栽培すると「根腐れ線虫」に悩まされることがあります。予防に「エビスグサ」「ハブソウ」が用いられました。今は「マリーゴールド」や「クロタラリア」などが利用されています。
 「決明子」と聞いて、男性4人組からなる日本の音楽グループの「ケツメイシ」を思い出す方もおられると思います。ケツメイシのグループ名は「全てを出し尽くす(決明子の便秘に効果があり、毒消しとなる)」という意味から付けられたと言われています。メンバーの中に薬剤師の方がおられるようです。
 人は緊張が続くと交感神経が優位になり、便秘しやすくなります。リラックスは副交感神経が優位になり、便通も良くなるはずです。日常生活の中で、便意を催すことが一日一度はあるかと思います。その時は、すぐに便所(お便り所)に行き、大便(大きな便り)を出してください。
 来年も皆さまにとって、少しでも良い年でありま
すよう、お祈りいたします。


936号 2019年1月13日

(141)イネ(米) イネ科

 新年明けましておめでとうございます。今年もよろしくお願いします。
 神事では、正月に餅を用いた雑煮を食べ、神棚に鏡餅を供えます。餅は餅米から作ります。毎日食べるご飯は粳米(うるちまい)です。イネの種子を米(コメ)といい、薬用に用います。
・利用部位 市販の玄米、穀粒(こめつぶ) 粳米(こうべい)と言います。
・性質 平
・効果 下痢、腹痛、食欲不振に粥(かゆ)にして食べます。
・漢方薬処方 麦門冬湯(ばくもんとうとう)・附子粳米湯(ふしこうべいとう)・白虎加人参湯(びゃっこかにんじんとう)

 漢方では、胃腸を調え、元気を付け、口渇や下痢に使います。最近はご飯を食べているけれど、イネを見たことのない人もいます。私たちは食物から命(エネルギー)をもらうために「いただきます」「ごちそうさま」と言います。しかし、その命のもとがどのような形で出来るかを知っておくべきだと思います。

 イネには、古代米として「緑米」「赤米」「黒米」があります。
 赤米、黒米はアントシアンを含み、白米に少し赤米または黒米を入れて「赤飯」を作ることができます。緑米は、葉緑素を含み緑色をしています。
 これらの米は縄文時代に中国から日本に伝わったと言われています。

 日本ではあまり見ませんが、東南アジア諸国で現在も広く栽培されています。ちなみに、緑米、赤米、黒米は餅米の一種で、玄米のまま食べるのが一般的です。玄米(ぬかの部分)はビタミンB1を多く含み、ミネラル(必須元素)としてマグネシウム、亜鉛を多く含みます。

 また、葉緑素(クロロフィル)には、血液循環改善による動脈硬化、貧血の改善、血中コレステロールを下げる効果があると言われています。葉物野菜には葉緑素がたくさん含まれていますので、もっと野菜を食べましょう。生の野菜よりも、熱を加え、料理して食べるとたくさんの葉緑素&植物の有用成分(血圧を下げるカリウム等のミネラル、植物繊維、抗酸化作用などのポリフェノール等々)を含みますので、野菜を少し多めに食べるようにしましょう。


940号 2019年2月10日

(142) ステビア キク科

 今月は「アマステビア(甘ステビア)」です。パラグアイ等の南米が原産地と言われ、日本に50年くらい前に導入されたようです。花は夏から秋にかけて咲きます。甘味成分として、ステビオサイド、レバウディオサイドが知られています。主の甘味成分のステビオサイドは砂糖の300倍位の甘さですが、甘すぎるので、食品分野では、甘味を少し軽減し、100倍くらいのステビア末が使われているようです。天然甘味料として、飲料等に添加され、「糖質ゼロ」と記されているものが多いですね。他に甘草から得られる「グリチルリチン」も天然甘味料として使われています。
 しかしステビオシド、ステビア末の構造式内にはブドウ糖を含んでいますので、カロリーがゼロではありません。記載上、「0」と記された場合、「0.4以下」で四捨五入されています。最もよく分かるのがノンアルコールです。私はアルコールに弱いので、ノンアルコールのビールを飲んで酔います。何故なら「アルコール0%」と記されているビールには、0.4%くらいのアルコールが含まれている可能性があります。お酒の弱い人が、たくさんノンアルコールビールを飲んで、車を運転すると酒気帯び運転で警察に捕まることもありますので、ご注意下さい。
 話を戻して、ステビアの栽培ですが、原産地は暖かい所ですので、寒さに弱く、越冬出来ないことがありますので、冬場はビニールハウス等に入れて越冬すると良いと思います。苗はホームセンター等でたまに販売されています。なるべく甘い苗を選んだ方が楽しいですね。もし、甘味料として飲食するときは、多飲食は避けた方が良いと思います。たまに楽しんで下さい。多くのハーブをお茶等で楽しむ方がいますが、飲み過ぎには注意して下さい。
 先日、農業公園の植木市に行きましたら、剪定したラベンダー、セージ等の地上部をアルミホイルに包み、暖房用の石油ストーブの上に置いて温めていたので、良い香りがテントの周りに漂っていました。広い部屋でお試し下さい。

 インフルエンザが流行していますので、予防に「唾液を出す、口の“あいうべ体操”」、「濃いお茶でのウガイ」、「板藍根(ばんらんこん)エキス」、「プロポリススプレー、プロポリスキャンディー」での予防、“風邪かな?”と感じたらすぐ葛根湯(かっこんとう)か麻黄湯(まおうとう)を一服してください。漢方薬の風邪薬“葛根湯or麻黄湯”は用法的には2時間おきに飲んで下さい。1日3回では効果は半減以下です。
 天然のモノには、良い部分、悪い部分があります。巧く使って、楽しい冬をお過ごし下さい。


944号 2019年3月10日

(143)ミラクルフルーツ  アカテツ科

   

 今月は味を変える植物を紹介します。果実をかじり、舌の味蕾(みらい・味を感じる部分)を成分でコーティングすると、酸味・苦みを甘味に変えてくれます。果実自体は甘味がありません。味を変換するのでミラクルフルーツと呼ばれています。およそ1〜2時間くらい継続します。味を変える成分は糖たんぱく質のミラクリンと呼ばれる化合物です。
 原産地は西アフリカで、1725年に発見されました。花は白く、栽培は酸性の土壌を好み、霜の降らない多湿の半日影を好みます。ただ果実を木から切り離して収穫すると、味を変える成分の効果が時間と共に減少しますので、流通には乗りませんでした。
 他に東南アジア等に生息するクルクリゴ(キンバイザサ科)は果実に含まれる味覚変換物質により、酸味、苦みなどを甘みに変えます。ミラクルフルーツと同じようなものですが、クルクリゴ果実の成分は20分くらいで変換能力が消えます。水を飲むと少し甘く感じます。「糖尿病患者の方に良いのでは」という話もありましたが、食事が全て甘くなり味覚がおかしくなるので、一時期話題になったものの、実用化されませんでした。
 身近にも味覚を変換する植物があります。例えばナツメの葉、ナツメの葉を噛んで舌の上で30秒ぐらい転がしてから、チョコレートを食べると、砂糖の甘みが消え、カカオ本来の味がします。生の葉でも乾燥した葉でも同じです。市販しているギムネマ茶も同じような作用が有ります。ただギムネマ茶は1時間ほど甘味を感じなくなるのでお薦めではありません。
 1月に紹介したステビア等の植物の甘味成分、今回の酸味・苦みを甘味に変える植物、甘味を消す植物等、植物の成分にはいろんなものが含まれていて面白いですね。まだまだ分からないことが自然の中にはたくさんありますが、私たちは経験的に、いろんな植物を食して健康を保っています。
 食べ物が美味しいと感じる時は、本能的に身体が欲しているのでしょうが、人は思い込みで食べ物を摂取することが多く、これが生活習慣病を起こす原因になっているのではと感じます。私たちの遺伝子には飢えをしのぐための肥満遺伝子が備わっていますので、食べ過ぎには注意して下さい。飲食は満遍なくホドホドに。ネパールより


949号 2019年4月14日

(144)リンゴ バラ科

 今月の薬用植物は、先月に滞在したネパールの首都カトマンズにあるAITM大学構内に植えてあったリンゴについてです。
 私が小学生の頃、盛岡の親戚の方から毎年秋に、大きな木箱に入ったリンゴが届いていたのを思い出します。確か、美味しい赤と黄色のリンゴがありました。
 昨今、リンゴの機能性がよくいわれています。成分はリンゴポリフェノール、またはセラミド等です。
 リンゴを切って放置すると、褐変(かっぺん:褐色に変わること)してきます。この褐変は、果肉に含まれるポリフェノールが酸化酵素で酸化重合して起こります。昔から塩水に浸ける、酢に浸けることで、褐変を防いできましたが、リンゴを酢に浸したものを食べるとあまり美味しくありません(個人的な感覚ではありますが…)。
 皮には色素のアントシアニン(アントシアン)が含まれています。これは太陽光の紫外線から果実を守ります。リンゴポリフェノールの機能として、抗酸化作用、中性脂質低下、コレステロール低下などがいわれています。またセラミドには、がん予防、アレルギー改善などに効果があるといわれています。
 そういえば、執筆しながら思い出したのですが、生のリンゴを食べて唇や口の中が腫れるアレルギー体質の方もおられるようです。ただし、完全に過熱したリンゴは食べられるとか、アップルパイを完全に焼いてからなら食べられるそうです。抗アレルギー作用があるからといって、安易にリンゴを勧めないことです。「食べられますか」ときちんと聞いて下さい。

 花粉症の方で、思いがけない野菜や果物でのアレルギーを示す方が最近増えているようですのでご用心してください。
 私も昨年9月頃から、外食すると湿疹が出ることがあります。原因はハッキリとは分かりませんが、添加物の可能性があります。痒み止めを塗ったり、風呂に入って温まると痒みが和らぎ、だいたい次の朝には治まっています。ネパールで3食ネパール料理を食べましたが、15日間はトラブルがありませんでした。しかし日本食を食べたら湿疹が少し出て、腹を壊しました。日本に帰って初めての外食で酷い湿疹が出た変な日本人です。
 皆さま、いろんなものを飲食して湿疹などのトラブルが起きたら、何を食べたかのデータを残し、自分から危機管理をして生活を楽しんでください。


952号 2019年5月12日

(145) セキショウ ショウブ科

 4月末から5月6日までの連休はストレス解消ができましたか?

 今月の薬用植物は、セキショウを取り上げます。昔はサトイモ科でしたが、現在はショウブ科に分類されています。和名を石菖(セキショウ)と言い、清流の流れる谷川の淵などに群生していますが、庭で鉢に植えていても育ち、10年以上、元気で鉢に密生した状態で生きています。
 日本以外では中国からヒマラヤ山脈の、温帯〜暖帯に分布すると記されています。ショウブに比べると小型で、葉は20〜50p位で光沢があり、剣状です。熊本市内では3月中旬、桜の咲き始める頃に棒状の花を咲かせます。全体に芳香があり、葉を切ると気が落ち着くような香りがするので好きです。
 薬用としては根茎を用います。生薬名を石菖蒲(セキショウブ)と言い、中国では、味は辛く、性は微温。痰を除く、気を整える、血を活(イ)かす、風を散らす、湿を去る等の効能があるとされ、聴力障害、腸や胃を温め、健胃・鎮痛作用があり、四肢の湿麻を除く等に用いるようです。また、芳香性健胃、駆虫、鎮静、鎮痛を目的に、胃痛、腹痛、リウマチ等に用いられます。また、昔から「頭が良くなる薬」「健忘症に効く」として用いられました。
 漢方処方で、枕中丹(チンチュウタン)があり、「石菖蒲、遠志、竜骨、亀板」の4種類の生薬からなり、心神不安、健忘失眠 の治療を目的に、心血虚による動悸、驚きやすい、不眠、健忘の改善に用いるようです。民間では、健胃、鎮痛、腹痛に1日量5g位を煎じ、1日3回に分けて服用。抗真菌性があるので、外用薬にも用います。浴剤として、足腰の冷え、筋肉痛、関節痛、捻挫、打ち身等にも良いようです。薬用酒(1リットルに100〜150g)も作れます。
 大分県の別府温泉の鉄輪(カンナワ)にある、鉄輪の蒸し湯があります。普通の蒸気サウナではなく、セキショウの葉を敷いた上に身体を横たえ、ジワジワと温泉蒸気とセキショウの葉の成分で体を温めます。痛み、ストレス解消には大変良いのかなと思います。

 5月の子どもの節句の日(5月5日)に、ショウブ湯の習慣がありますが、古くはセキショウの葉を用いたようです。しかし、ショウブが身近で栽培できるようになってからは、ショウブ湯が主流になっています。

 胃を弱らせて夏バテ(胃バテ)をしないよう、楽しい、母の日、父の日をお迎えください。


956号 2019年6月9日

(146)イトヒメハギ ヒメハギ科

 阿蘇地方には、春になると花をつける「ヒメハギ」が自生しています。この植物はあまり目立たない小さな赤紫の花を咲かせます。今月は、その仲間の「イトヒメハギ(ラテン名:Polygala tenuifolia)」を紹介します。

   

 聞き慣れない名前の植物だと思いますが、原産地は中国の山西、河北、内蒙古、東北地方と言われています。根は曲がって細長い円柱形で長さは20cm、太さは1cmくらいになります。生薬としては根の木部を除いた皮部のみを「遠志(おんじ)」として、強壮、去痰、鎮静、物忘れの改善等を目的に用います。植物のラテン名「Polygala」は“乳牛の乳の量を増やす”「tenuifolia」は“葉が細い”という意味です。
 生薬名の「遠志」は、「志が遠くなる」という意味です。イトヒメハギは痴呆症など、物忘れがひどくなる時に用いられてきたのでは、と研究者たちは考え、痴呆に関して研究を行い、改善が見られることが解明されました。ただ、イトヒメハギは根が細く、一株あたりの収量が少なく、熊本は暑いため、夏場に植物の調子が悪くなり、栽培が困難であることから栽培されていません。富山大学の薬用植物園では雑草化したイトヒメハギを見ることができます。
 成分としては、トリテルペノイド配糖体(サポニン{去痰に効果})、アルカロイドが報告されています。漢方処方では「帰脾湯(きひとう)」、「人参養栄湯(にんじんようえいとう)」に用いられます。遠志の処方中での効果は、帰脾湯では、遠志、茯苓(ぶくりょう)、酸棗仁(さんそうにん)の組み合わせで、不眠、動悸の改善に、人参養栄湯では、遠志、貝母(ばいも)、半夏(はんげ)の組み合わせで鎮咳去痰を改善します。漢方薬は生薬の組み合わせで生薬の効果を数倍にも増強します。昔の人の観察力と実行力のすごさを感じます。

 物忘れは、老化現象の一つといわれています。若い頃は脳が生長し、多くのことを記憶することが出来きるように脳神経が増え、ネットワークが増え、記憶を貯めていますが、年齢を重ねると、その繋がりがうまくいかなくなり、言葉が出てこなくなるようです。「あれ、それ、これ」、「人の顔は覚えていても名前が出てこない」など、物忘れだと思うようになります。しかし、あまりにも物忘れがひどいと考え過ぎると、外出しない、話さないなど、鬱傾向になり、一層症状が悪くなる可能性がありますので外出し、人と話し、たまには胸を張り、自然と人と適当に付き合ってください。例えば、子供達と遊ぶ、囲碁将棋等々、少しでも頭を使う競技をするのも、ボケ(物忘れ)防止の一つだと思います。
 ボケを気にしないで、多く人と「話す&付き合う」ことが、物忘れ防止の一つの方向かもしれません。歩ける足腰を保ち、心身のバランスを、年齢相応の普通に保ってください。皆さまのご健康をお祈りいたします。


959号 2019年7月7日

(147)イブキジャコウソウ  シソ科

  

 今月の薬用植物は、2012年に滋賀県と岐阜県の県境にある、伊吹山の山頂で見つけたイブキジャコウソウです。この植物は、伊吹山の名前がついた植物が30数種ある中の1つです。シソ科ですので香りがよく、麝香(じゃこう)のような香りがすることから名前が付けられています。  
 草丈は低く地面にはいつくばるように生えています。この香りが百里も届くようだというので百里香(ひゃくりこう)ともいわれます。
 類似植物でタチジャコウソウ(別名:タイム)があり、これはヨーロッパ原産で少し大柄の植物です。花期の茎葉をタイムとして百日咳、鎮痛にハーブ(薬用植物)として用いられます。また、タイムは肉料理などの調理用のスパイスにも使われます。イブキジャコウソウは6月から7月初旬の開花時に地上部を陰干しし、風邪などには5gぐらいをコップに入れ、お湯を注いで飲むことで効果があります。また、風邪の予防にも良いようです。ただし希少植物ですので、山では採取しないでください。ハーブ店で苗を購入し、少し日陰で増やしてください。
 ハーブとして苗が売られている、タチジャコウソウは、ヨーロッパでは、胃のむかつき、消化不良など胃腸系や風邪の咳止めなどに使われていて、タイム約5gを紅茶に入れて3〜5分してから飲みます。また、冷え性、痛風、神経痛、低血圧などに、風呂にタイムを入れ、浴湯料にすると効き目があると言われています。イブキジャコウソウも同じように用います。タイムの揮発油は、強壮作用、抗老化作用、感染症に対する抗菌作用や抗腐敗作用があるとされています。

 梅雨にようやく入りました。ゲリラ豪雨が来なくて、適当に雨が降ってくれますようにと思います。阿蘇では田植えが終わっていますが、宇城・八代、熊本市西区などの海岸線は、田植えは6月末から。田植えが終わった稲の成長に水が必要です。
 人も、良い水が必要です。本当の純水(H2O)を飲むと、味をほとんど感じません。美味しい水にはミネラル(無機物)が少しですが入っています(軟水)。ミネラルウオーターは、ミネラルを多く含む水ですので、本来は硬水で、飲むと喉がイガイガします。良い水を飲み、一日一回汗をかき、よく笑い、食事は腹8分目を心掛け、クーラーを使い過ぎず、胃を弱らせず夏バテしないよう心身のバランスを整え、元気(元の気)を保って下さい。


961号 2019年8月4日

(148)キキョウ キキョウ科

 今月はキキョウです。7月末から咲き出しています。青紫の花が綺麗で、薬用では根を用います。根の形が薬用人参に似ているので、薬用人参の偽物として用いられた歴史もありますが、効果は大きく違います。しかし、韓国ではキムチに用いられ「キキョウキムチ」として売られています。もし手に入るのでしたら、キュウリ・ニンジン・タマネギ等の野菜と混ぜて食べると美味しいです。
 キキョウの根は、生薬名“桔梗”といい、用途は鎮咳去痰、漢方では強壮、排膿、咽喉痛を目的に配合され、最も簡単な処方は、桔梗湯(桔梗4g、甘草2g/一日分)です。桔梗湯は、咽喉の炎症(急性扁桃炎、扁桃周囲炎、急性咽頭炎、喉頭炎)に伴う咽喉腫痛、咽の痛み、咽の違和感による咳などに用います。
 キキョウは秋の七草に含まれています。

《萩の花尾花葛花なでしこの花おみなえしまた藤袴朝顔の花(山上憶良作)》

 万葉集のこの歌に出てくる朝顔は、キキョウと言われています。秋の七草は鑑賞用の美しさで選ばれています。月見をしながら花を愛で、団子を食べる(月見で団子)のイメージですが、全て薬用植物です。

<秋の七草> 
萩(ハギ) 根:女性のめまい、のぼせに。
オハナ(ススキ) 根茎:利尿薬として。
葛(クズ)花:二日酔いに。
クズの根:葛根湯などの漢方薬に根から取ったデンプンをくず湯として。
撫子(ナデシコ) 種子:むくみ、月経不順に。オ女郎花(オミナエシ)根:利尿薬または腫れ物に。
藤袴(フジバカマ)全草:乾燥させ風呂に入れて皮膚のかゆみ、神経痛に。
桔梗(キキョウ) 根:咽の痛み、咳・痰に。
アサガオの種子:つぶして下剤に用います。

 私たちが、食べる植物は、機能性がありますので、広く考えると全てが薬用です。また身近にある植物もたくさんの薬用植物がありますが、有毒植物もありますので、分からない物は口にしないで下さい。

 先日、私の連載を見ているという方から、ブドウのような房の実がなったのでと「ヨウシュヤマゴボウ」を見せてもらいました。ブドウのような実と電話で言われたので、蔓性のブドウかと勘違いしましたが、実際に見せてもらってよかったです。
 ヨウシュヤマゴボウは、有毒植物で、根を食べると嘔吐・下痢を起こしますので、食べないで下さい。ヨウシュヤマゴボウの暗紫色の果実を使って子供たちが色水を作り遊んでいますが、問題は出ていませんので、たくさんなめなければ大丈夫のようです。有毒成分は、根にたくさん含まれますので、食用にするヤマゴボウ(アザミの根)と間違って食べないで下さい。酷い目にあります。
 暑い毎日が続きます。心身のバランスを普通に保ち、皆さまご自愛下さい。


963号 2019年9月1日

(149)ヒョウタン(ユウガオ) ウリ科

 今月は、ヒョウタン(ユウガオ)にしました。ヒョウタンは、ウリ科の一年生の蔓性の植物で、硬くならない果実の皮を除いて薬用に用います。味:苦、性:寒、有毒、効能として、水を利し、腫れを消す効果があり、浮腫、消渇、排尿困難などに効果があると記されています。虚弱冷えの強い人は服用してはいけないと記されています。
 ヒョウタンの果実は、他に、乾かし中の種子等を除き、容器、飾り等に用います。ヒョタンを食用としても食べ、中毒した例が沢山あります。ユウガオ(カンピョウ)の果実は食用に用います。同じユウガオとうい「ヒョウタン」を間違えて食べ、中毒することが多々あります。市販で食べられるヒョウタンとして売られていることがあり、大変紛らわしいので、皆さん注意をして下さい。

以下、厚生労働省食品安全委員会のHPより
<ヒョウタンによる食中毒について>
 一部で報道されておりますが、ヒョウタンを食べることによる食中毒が発生しています。ヒョウタンの苗に「食用」と誤表示したことにより、ヒョウタンを食べた方が食中毒症状を起こし、一時入院されました。食中毒の症状は、唇のしびれ、吐き気、嘔吐、腹痛、下痢等です。いろんな植物での食中毒があります。間違えて食べない、よく分からない物は食べない、など、気をつけて下さい。また、暑い季節は細菌による食中毒が多い季節、冷蔵庫を過信せず、熱を加えて、早めに食べて下さい。

 「胃腸を弱らせる」と、夏バテして、疲れやすくなります。胃腸を調え、夏バテを防いでください。夏バテをすると、体力・免疫力が低下し、冬に風邪を引きやすくなります。暑い日が続く毎日「胃を普通に保ち」弱らせないようにしましょう。秋は乾燥し胃の調子が良くなります。
 楽しい、食欲の秋をお過ごしください。ただ食べ過ぎで胃を弱らせると、冬風邪を引きやすくなりますので、ホドホドに!!


966号 2019年10月6日

(150)ハトムギ(Coix lacryma-jobi L. var. ma-yuen) イネ

    

 今月は、ハトムギです。植物の写真を見て、見たことがあると思われる人があるかもしれないが、それは昔、道端に生えていたジュズダマ(Coix lacryma-jobi L)です。ハトムギの種子は、種皮がジュズダマに比べ柔らかく、指で押して割れるぐらいで、雌蕊の随を除くと、溝が出来ます。ジュズダマは中央に穴が開き、糸を通し数珠(ジュズ)状に繋ぐことができるのでジュズダマと言われます。

 

 ハトムギの植物名の後に( )書きしてあるラテン名のCoix はヤシ科の植物。lachrymaは涙。jobiはJobという人物で、「Jobの涙」となります。たしかに果実は涙のような形をしています。
 ハトムギの果実は、生薬名、ヨクイニン(Coicis Semen)といい、筋肉の異常緊張、関節痛などの目的で、麻杏?甘湯(マキョウヨッカントウ)【麻黄4、杏仁3、苡仁10、甘草2】は汗疱状白癬(水虫)、腫脹、疼痛等に。他にヨクイニン湯に配合されます。民間薬では、イボ取り、美肌に用います。また、抗腫瘍活性があり?苡仁+サルノコシカケ+桂枝茯苓丸が結構効果があることがあります。
 ジュズダマの果実は川穀(センコク)といい、ヨクイニンの代用薬として、根は川穀根といい、リウマチ、神経痛、肩こりに民間薬で用います。
 ハトムギから、成分として、脂肪酸、油脂(脂肪油)、多糖(coixan類、CA-1,2)、ステロイドの脂肪酸エステルなどの報告があります。薬理作用では、アセトンエキスに抗腫瘍作用、多糖のcoixan類に血糖降下作用が解明させています。更にCA-1,2に抗補体作用があることが分かっています。意外に脂肪酸にも薬効があるのではと考えられます。

 

 植物の成分で、何々に機能・効果が有る等とテレビ等で言われますが、分かっているのは、ほんの一握り(10%位)でしょうか。自然界のことは分からないことが沢山ありますが、偉い人は全て分かっているかのように話されます。
 皆さんは、自分にあった機能性食品と食品を摂取して下さい。人の遺伝子は各人違いますので“私が良いから、あなたも良い”と強制しないようにされた方が良いでしょう。「私に良かったから、あなたも試してみませんか?」と紹介して下さい。それで試されて、良ければ続け、あわなければ止めて下さい。

 

 少し乾燥してきましたが、食欲の秋にようやくなりそうです。胃腸を調え、免疫力をアップし、風邪を引かない冬をお迎え下さい。花粉症の方は、緑の葉物野菜が少なくなる12月ごろから、なるべく葉物野菜を沢山食べると、花粉症が軽減する可能性がありますので、鍋等で、緑の葉物野菜を多めに食べ、お試し下さい。皆さまの益々のご健康をお祈りいたします。