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矢原正治 A
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473号 2009年8月9日
(31)ヒオウギ アヤメ科
セミがうるさく鳴いています。長梅雨もどうにか終わり、ようやく太陽が顔を出し、夏の季節になってきました。皆さま如何ですか。今年の農作物は7月の長雨でだいぶ痛んだものもあるのではないでしょうか?何かと大変だと思います。
今月は、太陽に向かって咲く風車のような花をつけるヒオウギです。中国で射干(ヤカン)といいます。秋につける黒い実(種子)を烏、葉が扇の様に並ぶので烏扇(カラスオウギ)とも呼ばれました。平安時代には扇が檜(ヒノキ)の薄板で作られたことから、檜扇(ヒオウギ)と呼ばれるようになったといわれています。万葉の歌の中に“ヌバタマ”と言う名前でもでてくるようです。ヒオウギの花の絵が熊本城天守閣に置いてある、参勤交代の時に用いた船の“波奈之丸の天井画”にもあります。
薬用では根茎を用い、秋(10月前後)に根茎を採取し、水洗いして数日日干しにして乾かし用います。民間薬では、扁桃炎,去痰に、1回5〜10gを水300ccで1/3位に煎じ3回に分けて服用します。射干の薬性は寒、味は苦です。火(炎症)を瀉し(抗炎症作用)、毒を解し(解毒作用)、肺を清め、痰を消し(去痰作用)、咽喉の痺痛の薬として中医学(中国の医療)で用いられています。
家の庭の喜樹(キジュ)の横にヒオウギが咲いています。日陰にはチクセツニンジンがあり、雑草の中にカワラケツメイ(種子を決明子ケツメイシ)を見つけました。鉢を持ち上げるとムカデが大きくなっています。サクランボの葉にイラガがついていました。毒の毛で痛い目にあいましたので、さっそくヤブガラシの葉をもんでつけると痛みが引きました。私の毒虫・虫さされの特効薬です。ナガサキアゲハが飛んできました。
暑くなりましたが、この時期いろんな生き物が元気ですね。元気が無くなっているのは人間だけでしょうか?胃腸を弱らせている人が増えてくるシーズンです。原因は、冷たいものの摂りすぎ、クーラーで冷やしすぎなど。胃が冷えて水が溜まり動かなくなっているせいです。夏風邪、夏バテの原因になります。巧く胃の水を動かすことが大切です。暴飲暴食は避け、一日一回は @汗をかく A温かいお茶でも飲む、たまには B鍋でも食べるなどして、暑い夏を乗り切って下さい。夏バテ→ 冬の風邪→ 春の身体のだるさ→ 夏バテしやすい→ 風邪が抜けない と続きます。どこかで断ち切るよう身体を少し動かし、お身体をご自愛ください。
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477号 2009年9月13日
(32)ヘチマ ウリ科
今月はヘチマ(糸瓜)です。別名イトウリ、それの略が“トウリ”で「ト」の字のあるのが「いろは歌」の「ヘ」と「チ」の間、「ヘチの間」なので「ヘチマ」と呼ばれるように なったとのことです。
ヘチマの利用方法は@若い果実を食用に、A熟した果実の繊維を乾燥しタワシに、B茎を切って根のついた方を瓶にさしてヘチマ水を取り化粧水に、C種子から油をとり化粧品原料に、Dヘチマの種の煮汁で肌を洗うとつるつるに、などです。ヘチマは、食べて美肌に、タワシで身体を擦り美肌に、ヘチマ水、ヘチマの種の煮汁で一層美肌にと、1つの植物で3回お肌に潤いを与えてくれます。
薬効として、生の果実を煮た汁に、去痰、咳止め、利尿効果があります。中国では、若い果実を糸瓜(しか)と言い、性質は涼、味は甘い、清熱、去痰、解毒等を目的に用いられます。
雌花は朝早く開きます。雄花は日中でも咲いています。雌花は花の下にヘチマの小さいものが付いているので分かりますが、葉の付け根の茎から直接出て花が咲くので、葉の下に隠れて見付けにくいことが多いですね。雄花は茎から30cm位の花序柄(かじょへい)を伸ばし、その先に数個咲くので目立ちます。遠くから観てヘチマの花と分かるのは雄花です。余り込み合って栽培すると、雌花が葉の根元で咲くので、花粉をつけた虫が雌花を見つけきれずに、実のなりが悪いのではないでしょうか?
我が国には1600年ぐらい(慶長年間)に中国から長崎に渡来し、野菜に分類され、万病薬との記載もあります。
ヘチマ水の作り方は、熊本県薬剤師会のホームページhttp://www.kumayaku.or.jp/y_faq9.htmを参考にしてください。家にパソコン、ネットワークの無い方は、町図書館に行くと親切に教えてくれます。日中の暑い季節、外での仕事は大変です。たまには涼しい図書館を利用しては如何でしょうか。いろんな本もあります。
暑い折り、熱中症には十分に気を付けて下さい。外での仕事の時は、こまめに水分の補給をしてください。急に沢山飲むと疲れますし、冷た過ぎるとまた疲れます。またお年寄りの方は部屋におられても熱中症にかかることがありますので、こまめにお茶を飲んで下さい。
ヘチマで美人に、健康に!!
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481号 2009年10月11日
(33)ミョウガ ショウガ科
9月〜10月初めはミョウガの美味しい季節です。冷や奴にミョウガの千切りが合いますね。食用には花穂(花茎、ミョウガの子)を用います。香りが良く、消化促進の効果があります。
落語の「茗荷宿(みょうがやど)」には、泊まり客にミョウガの料理を食べさせ大金の入った財布を忘れさせようとした主人が、結局は財布を取り忘れ、自分は「あれ、宿賃をもらうのを忘れた」という落ちがあります。この落語の話から、ミョウガを食べると物忘れをする話になっています。実際ネズミを使った実験で、ミョウガを食べさせると、少し忘れっぽくなるという結果が出ています。本当はミョウガは物を忘れるぐらい美味しいのかもしれません。
家にあるミョウガは、南阿蘇高森の田楽保存会の庭でもらってきて4年目です。今年の収穫は20個ぐらい、味と香りを楽しみ、夏バテ気味の食欲を増進してくれました。
薬効として、花茎(花穂)は生食で消化促進に、根茎を霜焼けのかゆみに用います。根茎20〜30gを水約400ccで半分になるまで煎じ、これで患部を洗います。
同じように民間薬で霜焼けに用いるものとして、ヘクソカズラの生の果実をすりつぶしたものを患部にクリームと一緒に塗り付ける治療法もありますが、屁糞葛(ヘクソカズラ)ですので、さぞ臭いだろうなと思います。ヘクソカズラの花は今咲いています。小さい花ですが中央が紫紅、外が白なので綺麗です。
9月はラオス、ネパールに出かけました。揚子江から始まったと言われる米の文化は東は日本へ、西は東南アジアに伝わりました。そこで同じような食文化が形成されています。ラオスと日本を比較すると、外郎、熟れ鮨、塩辛、納豆、醤油などがラオスでも見られます。ラオスは香りのある野菜を用いた食文化で、ラーメン(米の麺に豚骨又は鶏スープ)に皿一杯の野菜、モヤシが付いてきます。これがまた美味しい。ハーブ入りのラーメンは、弱った胃には最高かもしれません。黒米(玄米)のオコワも栄養満点の健康食です。
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485号 2009年11月8日
(34)ナシ バラ科
今月の薬用植物はナシ(梨)です。写真はネパール、Katmandu近くのNagarkotで咲いていた季節外れのヒマラヤナシの花と、食べるには少し早い果実です。ネパールにも荒尾梨のような大きな梨もあるようですが、野生種は親指大です。
中国ではヒマラヤ梨の果実を“山里紅”(shan li hong、さんりこう)と言い、味は、酸甘。性質は温。薬効は、食積を消し(胃のもたれを助け消化を良くする)、?滞を化す(血の流れを良くする)の効果があり、肉を食べて胃がもたれるときの消化促進、消化不良に、泄瀉(便通を良くする)、痛み止め、産後の血液の流れの悪いことによる痛み、高血圧を治すと言われています。果実の乾燥したもの約10gを煎じて服用すると効果があるでしょう。(日本には無いですね)
ヤマナシの果実も薬用に用います。(食用の梨も同じと考えられます)味は、酸 甘。性質は涼。薬効は、津液(細胞の水)を生じ、燥を潤す、痰を化す(痰を除き)の効果があり、渇きを消す、熱による咳嗽(セキ・タン)を止める、便秘を治す等の作用があります。同じナシの仲間でも性質、薬効が少し異なるのも面白いですね。
果物を食べ過ぎると下痢をするのは、津液を潤して、お腹を緩くするせいでしょう。食べ過ぎには御注意を。
柿が沢山なっていますが、皆さん余り食べません。「取るのが面倒くさい。果物は剥くのが面倒くさい」のだそうです。柿は、酒の後に、酒毒(酔い醒まし)を消すのに良いのですが。試してみませんか?但し、食べ過ぎると、糖分が多いので、糖尿病の方などには良くありません。いつものことながら食べ過ぎには注意して下さい。
昨今、痩せ薬といって“防風通聖散”を飲んでいる人がいます。これは漢方薬です。健康食品ではありません。良いからといって飲み過ぎて体調不良を起こした人がいるようです。飲み方が分からない時はきちんと話を聞いてくれる薬局の薬剤師さんに相談し十分に注意して飲んでください。
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490号 2009年12月13日
(35)ダイダイ みかん科
ダイダイは代々とも書くことができ“代々繁栄、健康”で有るようにと願い、正月のお飾りなどに用いられます。ダイダイの皮を生薬で橙皮(とうひ)といい、民間薬で芳香性苦味健胃薬として消化不良、胃腸炎、二日酔いなどに用います。また中国の古い本に“悪心を止め、酒毒を解する”(胃のむかつきを和らげ、二日酔いに良い)と記されています。
ミカンの皮が苦いのは、フラボノイドというポリフェノールで、昔はミカンの缶 詰、ジュ−スなどを作るのに、苦味を感じないように酵素を用いて、水に溶けないようにしていました。水に溶けると舌で味を感じ、水に溶けなくなると味をほとんど感じません。現在は品種改良で苦味物質の少ない品種になり食べやすくはなりました。ただ、昨今、この成分が高血圧の予防などに良いのだとして見直されています。時代が変わると不要にされたり、必要にされたり、人はいい加減ですね。しかし自然の恵みは良いものです。
私たちが正月にこたつの中で食べる、ミカンはウンシュウミカンです。この皮は生薬で陳皮(ちんぴ)といい、やはり健胃、鎮咳、去痰などを目的に、漢方で用います。その中には、胃の水毒(水が体内のある部分で多くなり滞る)による強い悪心(むかつき)、嘔吐、心下痞(胃のつかえ感)の有るときに用います。一年の無病息災を願って元旦にのむ屠蘇散(お屠蘇)等に入っています。ミカンの皮は温める性質があります。お風呂に入れると香りも良く身体が温まります。
私たちが日頃捨てている物も役に立つものが多いことが分かると思います。自然の恵みを大切にしたいものである。
野菜・果物には旬があります。その季節に路地で出来るのが、自然(太陽の光、水、土)の恵みを受け、人の体に必要なものを多く含みます。巧く旬の野菜・果物 を利用して下さい。但し、食べ過ぎは禁物です。
インフルエンザが流行っています。咽に違和感を感じたら早めに渋茶でウガイをし
て下さい。また、嘔吐下痢症も流行ってきました。五苓散(ごれいさん)を頓服(1
時間おきぐらいに2〜3回ひどいときは1回に2包飲む)で飲んでみて下さい。効く かも。治らなければ早めに医者へ。
楽しい年末、新年をお迎え下さい。来年もよろしくお願いします。
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494号 2010年1月17日
(36)コオニタビラコ キク科
七草粥は食べられましたか。七草粥は、胃を元気にし、一年を健康にと願う習わしです。
春の七草に入っている5種[セリ、ナズナ(ぺんぺん草)、オギョウ(ゴギョウ、母子草)、ハコベラ(ヒヨコグサ)、ホトケノザ]の雑草は、踏まれても踏まれても、どこかで生きていく草たちです。これにスズナ(蕪)、スズシロ(大根)を加えて春の七草です。その中のホトケノザの名前で呼ばれている“コオニタビラコ”です。
タビラコは漢字で“田平子”と書きます。 田の稲が無くなった後の地面にヒトデのように葉を広げ、中央に黄色い花を旧暦の正月(2月)過ぎに咲かせます。シソ科でピンクの筒状の花をつける本物のホトケノザとは違います。
春の七草は全て薬草で、健胃、解毒、整腸などの作用を持ちます。コオニタビラコは、全草を、解熱(げねつ)、解毒(げどく)、抗潰瘍(こうかいよう)などに用いると言われています。
冬は乾燥して肺を痛め、咳が出て、風邪にかかりやすくなります。大根、唐辛子などの“辛い”ものは、肺を補います。しかし、摂りすぎると肝(肝臓)に障害が起きる可能性があります。そこでゴボウ、お茶などの“苦い”ものを一緒に飲食することで作用を緩和すると言われています。五味[酸、苦、甘、辛、鹹(塩)]の入った正月のお節料理は五臓五腑に良いですね。自分で作られましたか?
漢方で、肺と大腸はつながっているとされ、肺が痛むと大腸の調子が悪くなり、下痢、便秘を起こすことがあります。水溶性の下痢の時は、先月書いた“五苓散”をお試し下さい。五苓散は頓服で効きます。便秘症の方は“唐芋(サツマイモ)+ヨーグルト”を、毎日少しずつでもお試し下さい。唐芋は、焼き芋または蒸し芋をサイコ
ロ大に切ったものを入れると良いでしょう。私のカバンには五苓散と葛根湯を入れています。調子が悪いと思ったらすぐ飲めるような“お守り”です。
ところで、便秘の人は、タマゴ位の大きさの唐芋を、毎日夕食後に1個食べてみま
せんか。便秘が解消するはずです。お試し下さい。
また、噛むこと、咀嚼(ソシャク)は、ボケ予防、高血圧予防、体脂肪減少等にも効果があります。少し堅いものを良く噛んでゆっくり食べましょう。ゆっくり噛んで味わって、元気(普通)で長生きしましょう!! 今年もよろしくお願いします。
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498号 2010年2月14日
(37)アマチャ ユキノシタ科
今日は旧正月ですね。七草粥は2月21日になります。このあたりになると温かくなりますので、七草も田畑で採取できるはずです。
今月は“綺麗な花には毒がある”のとおり、園芸で用いられますが、有毒植物のジギタリスです。食用に用いるコンフリー(別名:ヒレハリ草)の葉と似ていますので、間違えて食べることの無いようにして下さい。
ジギタリスは毒草ですが、薬草でもあります。しかし普通の人が用いると死ぬこともありますので、花を見るだけにして下さい。草抜きをして触る、汁が手に付くぐらいでは大丈夫です。口に入れ、飲み込まないことです。
私たちの周りには毒草(有毒植物)が沢山あります。これら毒草のほとんどは薬用に用います。人は沢山の有害なものの中で五感を働かせて生きてきました。しかし脳が発達したお陰で、信じ込むことをするようになり、自然と巧く付きあえないようになっている人が増えています。
県農業公園で“植木まつり”や戸島で“植木市”が始まっています。園芸店でジギタリスの苗も売っていると思います。買ってこられて育ててみるのも良いかもしれません。さすがに毒草ですので、葉っぱは虫がほとんど食いません。私たちの周りにも毒草であり薬草でもあるものがあります。スズラン、オモト、それに縁起物の植物フクジョソウ(福寿草)花、葉を鑑賞するだけで、口には入れないで下さい。
私たちは多くの有毒植物を食べています。きちんと前処理すれば問題ないのですが、安易に食すると中毒を起します。例えば、昨年多かったのがジャガイモです。陽に当たって、皮、肉が緑色になっているものは、普通は、緑の部分を切り取り、ゆでるなどして、有毒成分を水に溶かして少なくして食べていました。しかしピーラーで皮を剥く、又はそのまま蒸して食べることがあるようで、有毒成分(苦い味がする)が多く残っていて、嘔吐をすることがありました。小学校の授業でジャガイモを栽培する時などは、イモに土を頻繁にかけることを忘れないで下さい。また、収穫したイモは冷暗所に保存して下さい。
安全に食べるためには、昔の人の知恵を忘れないで下さい。
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502号 2010年3月14日
(38)モモ バラ科
今日は旧正月ですね。七草粥は2月21日になります。このあたりになると温かくなりますので、七草も田畑で採取できるはずです。
今月は“綺麗な花には毒がある”のとおり、園芸で用いられますが、有毒植物のジギタリスです。食用に用いるコンフリー(別名:ヒレハリ草)の葉と似ていますので、間違えて食べることの無いようにして下さい。
ジギタリスは毒草ですが、薬草でもあります。しかし普通の人が用いると死ぬこともありますので、花を見るだけにして下さい。草抜きをして触る、汁が手に付くぐらいでは大丈夫です。口に入れ、飲み込まないことです。
私たちの周りには毒草(有毒植物)が沢山あります。これら毒草のほとんどは薬用に用います。人は沢山の有害なものの中で五感を働かせて生きてきました。しかし脳が発達したお陰で、信じ込むことをするようになり、自然と巧く付きあえないようになっている人が増えています。
県農業公園で“植木まつり”や戸島で“植木市”が始まっています。園芸店でジギタリスの苗も売っていると思います。買ってこられて育ててみるのも良いかもしれません。さすがに毒草ですので、葉っぱは虫がほとんど食いません。私たちの周りにも毒草であり薬草でもあるものがあります。スズラン、オモト、それに縁起物の植物フクジョソウ(福寿草)花、葉を鑑賞するだけで、口には入れないで下さい。
私たちは多くの有毒植物を食べています。きちんと前処理すれば問題ないのですが、安易に食すると中毒を起します。例えば、昨年多かったのがジャガイモです。陽に当たって、皮、肉が緑色になっているものは、普通は、緑の部分を切り取り、ゆでるなどして、有毒成分を水に溶かして少なくして食べていました。しかしピーラーで皮を剥く、又はそのまま蒸して食べることがあるようで、有毒成分(苦い味がする)が多く残っていて、嘔吐をすることがありました。小学校の授業でジャガイモを栽培する時などは、イモに土を頻繁にかけることを忘れないで下さい。また、収穫したイモは冷暗所に保存して下さい。
安全に食べるためには、昔の人の知恵を忘れないで下さい。 |
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506号 2010年4月11日
(39)ゲンノショウコ フウロウソウ科
花見をしましたか?豊肥本線沿いの桜並木の下を車で何度も通りました。
道端に、小さな葉を出し始めたゲンノショウコを見つけました。煎じて飲むとすぐに効果が出ることから「現の証拠」という意味で名前がつきました。また、果実の弾 けた形が神輿(みこし)に似ていることから「ミコシグサ」ともいわれる薬草です。道端や野山に生える多年生植物です。熊本では花は夏に開花し赤色。関西以西の花は赤、関西以東は白色です。阿蘇の野草園に白花がありますが、関東から持ってきたもので、植物多様性からすると問題ですね。
薬用としては、地上部(多年草なので半分ぐらいを採取)を乾燥したものを、下痢止め、整腸に、煎じて服用します。湿疹、かぶれに煎液を外用で塗布し用います。お茶のように薄い状態で飲むと下痢をすることもあります。
今、葉が似ていて切れ込みの鋭い“アメリカフウロウソウ”(花は春)を道端、田畑の畔などで見かけます。同じような成分が1/3〜1/5位含まれています。整腸効果はあると言われるが、試したことはありません。阿蘇などに行くと、似たような葉で、毒草のキツネノボタンがあります。また、山では猛毒のトリカブトの葉も似ています。ゲンノショウコの薬用での採取時期は、花の咲いた夏〜秋ですので、その頃になると見分けがつきます。春先に植物を採取し、山菜で食するときは、十分注意をしてください。
脊梁の山々では鹿の食害が出ています。残っているのは、鹿も食べない有毒植物(毒草)です。また、阿蘇の放牧地で奇麗な花を咲かせるのも、毒草が多いですね。見る・写真に撮るだけで、注意してください。[奇麗な花にはトゲ(毒)がある?]
植物を長く有効利用したいと思いませんか?目先のことにとらわれず、長い目で 植物と付き合って下さい。そのためには、取りすぎないこと、お互いに最小限の量だけを採取して用いて下さい。例えば、タラの芽は美味しいですね。同じ木から3度芽を採取すると枯れます。タラの樹皮は糖尿病に良いという人もいます。もし切るなら長い目で見て、来年芽が出るところを残して切ることをお勧めします。皆さん自然と長く、巧く付き合ってください。
筍堀りに行ってきました。イノシシが上手に掘って食べていました。昔は来なかったのに何故こんなに荒らすのでしょうか?里山に人が入らなくなり、人の臭いがしなくなったからではと思います。緩衝地帯が無くなり美味しい食べ物のある畑が近くにあれば誰だって食べたいですね。大変ですが阿蘇の草原再生と同じように、動物との共存のためにも、里山を整理することが大事かもしれません。 |
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510号 2010年5月16日
(40)タラノキ ウコギ科
今月の薬用植物は”タラノキ”です。熊本では8月に花を咲かせ、9月に黒い実を付けます。果実はヤツデ、ウド、薬用人参、トチバニンジン、エゾウコギ等と同形の5o位の球状の果実が数十個集まり、さらに球形をしています。薬用としては、民間薬で根皮・樹皮を糖尿病の予防、改善に用います。
5年ほど前、阿蘇の内科の先生から電話があり「タラの皮を煎じて飲んでいた人の糖尿病が良くなったのだが本当にそのような文献がありますか」との事。お聞きすると、掛かり付けの患者さんの糖尿病が改善したとの事、びっくりした声でのお電話でした。文献を取りに来られたときにお話をお聞きし、タラノキの樹皮を採取するときは、来年も芽が出るような位置から切っていただくように、また、根皮が良いという人もおられますが、根を掘ると、植物が無くなるので、取り過ぎには注意をお願いしました。内科医の先生は、長年治らなかった糖尿病が改善したので驚いておられました。
タラノキ樹皮+カキドオシ地上部+ビワ葉(乾燥各5g位を1日分として500cc位の水に半量になるぐらいまで煎じ、煎じ液を3回に分けて飲む)も糖尿病に良いと言われています。
タラノキの新芽(タラ芽)は春の山菜で有名です。美味しいので、山で採取する人がいますが、他人の山に勝手に入って採るといけませんね。また、同じ木から3回芽を採ると枯れることが多いようです。さらに、高いところに芽があるので、下から木を切って採る人がいますが、これも来年から無くなりますので、木は切らないで下さい。毎年美味しい山菜・自然の恵みを少しでも分けてもらえるようにしたいものです。
人は必要以上に物を欲しがります。自己中心になりがちです。そうすると自然を破壊し、廻り廻って自分の身体・精神を破壊します。何事も6分目位にしておくと、自然と人が巧く共存出来るように思えてなりません。 |
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514号 2010年6月13日
(41)ダイズ(大豆) マメ科
大豆を知らない人はいないと思いますが、ダイズの花はほとんど見たことが無いのではないでしょうか。青紫色の小さな花を葉の根本に咲かせます。種子を大豆と言い、きな粉、豆腐、味噌、醤油、納豆、おから、湯葉、豆乳などに加工され、食卓に並んでいます。また、若いダイズの種子は枝豆として、ビール、酒のつまみに食べられます。
大豆には、タンパク質、脂質が多く、糖質も含み、栄養価が高い食品です。必須アミノ酸という言葉をご存知でしょうか?身体を構成するタンパク質を作るために必要なものです。それが、玄米と大豆でほとんどまかなえます。昔の日本人は良い食品を食べていたのですが、現在はいかがでしょうか?米の消費量は1/3位になり、大豆の消費量も激減しているようです。
大豆の中で薬用として用いられるのは、黒豆です。民間薬として、咳止めに20g具合を水300cc位で煎じ半量として、頓服(必要なとき)で何度かに分けて飲む。利尿、解毒を目的に、炒った黒豆20g位を500cc〜1L位の水でお茶代わりに飲む。酒を飲むときに枝豆、大豆製品を一緒に食べると、肝機能が良くなり、二日酔いしなくなる可能性もあります。お試し下さい。花でお茶を作って飲むのも解毒の効果は強いようですが、花は小さいので、大豆の方が大きく良いですね。普通の大豆のも同じような作用はありますが、少し弱いようです。お正月のお節料理に黒豆の煮たものが付き物です。肝臓を丈夫にして一年間を乗りきろうということかもしれません。汁も一緒に飲むと良いですね。
近ごろ有名になっているイソフラボノイド類が大豆には含まれ、女性ホルモン様作用をしますので、男性の前立腺肥大改善、女性の更年期障害予防などに効果があると言われています。ただしイソフラボノイド類を沢山含む豆乳を乳児には飲ませ続けないで下さい。
近ごろ植物による中毒が良く新聞に出ます。食卓の皿には食べられるもの(食べて有毒ではないもの)を乗せるのが原則です。しかし、昨今、奇麗だから、身近にあるからといって、花、葉などの食経験の無いものを料理に用いて中毒が起きてています。例として、アジサイの葉による中毒が報告されています。青酸が入っているとの報道もありますが、日本のものからは、現在検出されていません。しかし、噛むと不味いですね。園芸店、身近な花々、家の庭にも有毒植物が沢山植わっています。触るぐらいでは中毒はしないのですが、咽から中に(飲み込まないように)してください。薬用植物の本を見ると、後ろの方に書いてありますので、参考にして下さい。
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518号 2010年7月11日
(42)アカメガシワ トウダイグサ科
今月の薬用植物は“アカメガシワ”です。雌雄異株の木です。春の新芽は赤く、奇麗ですが、花が咲くころには全体が緑の葉に変わっています。秋には黄色く色付き落葉します。薬効は雌雄どちらでも変わりません。
アカメガシワの樹皮を薬用として用い、生薬名を赤芽柏(あかめがしわ)別名、将軍木皮(しょうぐんもくひ)ともいいます。民間薬では、胃腸薬として、抗潰瘍作用を目的に、胃潰瘍、十二指腸潰瘍に用います。使用する量は乾燥樹皮2g位を水300cc位で半量位まで煎じ、その煎液を食後3回に分けて飲むと効果があるようです。他に葉を煎じたものを腫物の患部に塗布すると良いと言われています。私は大学の学生時代に胃潰瘍になったようなのですが、鈍いのか気が付きませんでした。胃カメラで見ると、今でも潰瘍痕があります。知っていれば試したのですが。
中国では、樹皮を乾燥したものを“野梧桐(やごどう)”と言います。同じように消化機能を調整する効能があり、胃潰瘍、十二指腸潰瘍を治すと記されています。1日3〜4gを煎じて飲む、または、粉末を服用するそうです。成分としては、苦味成分の bergenin、フラボノイドの rutinなどが報告されています。
アカメガシワの樹皮の採取は、今の梅雨の時期、木の皮が剥ぎやすいので、皮を剥いで、小さく切り、それを良く乾燥して保存して下さい。梅雨の時期、乾燥しにくいので、カビなどが生えないように十分に注意して乾かし、保存して下さい。沢山の皮を剥がすと、来年、もし必要な時に木が枯れて無くなりますので、無闇に採取しないで下さい。大きな木の皮を剥がす時は、幹周りの1/4位を縦に剥がすと、木が枯れなくてすむことが有ります。一本の木を巧く使う方法も考えて下さい。その前にストレスの多い時代です。ストレスを巧く解消し、胃潰瘍にならないことが必要です。
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522号 2010年8月8日
(43)オジギソウ マメ科
今月の薬用植物は、6月にネパールで見つけたマメ科の“オジギソウ”です。日本では園芸植物ですが、東南アジアでは薬用に用います。ネパールでは1,000m位の所に生育しています。牛が放牧してありましたが、トゲが有るからでしょうか、食べられていませんでした。薬用としては、全草を貧血、筋肉痛に、根を赤痢に用います。
中国では、全草を“含羞草(がんしゅうそう)”と言い、味は甘、性質は寒で、有毒。清熱する、精神を安らかにする、解毒する等の効果があり、腸炎、胃炎、不眠症、小児のカンの虫、帯状疱疹などに用いると書いてあります。タイでも薬用に用います。
触ると葉が閉じ、お辞儀をしたように葉が下を向くので、オジギソウという名前がついています。また、夕方から朝早くの夜の間も葉は閉じています。今、花を咲かしているネムノキ(マメ科)も同じように葉を夜には閉じますね。花も昼間は開いて夜は閉じる植物が沢山あります。アサガオ、ハス、チューリップなど、観察していると楽しいですよ。
熊本大学薬学部の薬用植物園は、細川藩の薬園“蕃滋園”の流れをくみます。蕃滋園には、約1,000種の薬用植物・有用植物が栽培されていたとの記録があり、明治
23年の廃園のおり、五高に竜眼樹他150余種を移植したとの碑が、熊本大学黒髪キャンパス、五高記念館前にあります。その中の薬用植物が、昭和2年に開園した薬学部の前身、熊本薬学専門学校の薬用植物園に移管されたのですが、昭和28年6月26日の熊本大洪水で、薬専の薬用植物園も人の丈ぐらいまで冠水し、草類は大打撃を受けたようで、テンダイウヤク、ニンジンボク等の樹木だけが現在残っています。もし近くにおいでの際は、市電で、味噌天神下車、歩いて2分の“薬用資源エコフロンティアセンター”の“薬用植物園”にお立ちより下さい。
9月11日(土)熊本大学薬学部で、薬用植物観察会・講演会、12日(日)休暇村南阿蘇近くでの薬用植物観察会を行ないます(案内は、8/1のワンネスに)。興味のある方は、是非ご参加下さい。観察会の講師は、北海道から種子島までの薬用植物の専門家5名が来てくれます。 |
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526号 2010年9月12日
(44)カリン バラ科
9月9日は“重陽の節句”でした。1月1日の正月、3月3日のお雛さま、5月5日の端午の節句、7月7日の七夕は、祝いますが“重陽の節句”のお祝いはしませんね。陽が重なる日で“菊の節句”です。
話は戻って、今月は“カリン”です。まだ果実は熟していないので、今の時期、風などで落ちたものを拾って焼酎に漬けると、えぐ味と渋みで喉が痛くなり、飲めたものではありませんのでご注意ください。果実が熟して、香りが出るまで待って焼酎・蜂蜜などに漬けてください。
カリンの果実は、喉飴にもあるように、鎮咳(咳を鎮める)に、また、整腸(腸の調子を整える)や利尿の効果があると言われています。果実酒は咳止め、疲労回復に用います。
咳止めにカリンの果実を使う時に、酒の飲めない人、子どもさんには、蜂蜜漬けや砂糖漬けがお勧めです。果実を薄く切って漬けて下さい。果実が出てきたら、カビが生えやすいので、果実が液からでないように注意しておくことが大事です。(種子を一緒に入れても問題は在りません)
果物の果実は、種子が熟すまでは果肉に有毒成分を含むものが多く、青梅の青酸配糖体、カリンのえぐ味など、バラ科の植物の多くは果肉・種子には、有毒な青酸配糖体を含んでいます。青酸配糖体は、薬用酒、砂糖漬などで1ヵ月ぐらい置いておくと分解して、毒性が大変弱くなります。人は昔から有毒成分を無毒化する方法を開発していました。先人の知恵と新しい技術を使ってください。
8月末にラオスに出かけてきました。ラオスの人は優しく、穏やかです。トイレなどの衛生状態は日本の30年以上前の状態ですが、首都のビエンチャンは、日本の援助で上水道も完備されており、街中のゴミも少ないのが印象的です。米食と発酵食品を基本とし、香草を食に用いています。仏教国ですのでいろんな食品があります。一度出かけてみませんか?
次号から、身近で、人の目を楽しませている有毒植物も掲載させていただきます。
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530号 2010年10月10日
(45)ウコン ショウガ科
ウコンは、別名秋ウコンといいます。花が秋に咲くことからです。よく似た植物にハルウコン(春ウコン)やガジュツ(紫ウコン)があります。この2種は春に花を咲かせます。
ウコンの根茎は黄色で、食用としてカレー粉に、黄色の色素として沢庵などに用いられます。ウコンは畑に植えたままのものをよく見かけます。秋に掘り起こし、土を洗い流し、充実した根茎を取りだします。残った部分はまた植えて下さい。皮をむき、3〜5mm位(なるべく薄い方が良く乾く)にスライスし、天日で乾燥して下さい。
乾燥したら乾燥剤を入れ、冷暗所に保存して下さい。必要なときに、コーヒーミル等で粉末にし、お湯に溶かして飲みましょう。また、ご飯を炊くときにスプーン2〜3杯入れると、黄色いターメリックライスが出来ます。
ウコンの根茎は薬として用い、鬱金(ウコン)といい、味は辛苦、性質は涼で、気を巡らし、うっ滞した気を解消する等の作用があります。沖縄では酒の席で鬱金が良く飲まれることに端を発し、肝臓の機能を良くするとして、馬鹿みたいに過飲する人が多く、多飲によると思われる死者まででてしまいました。
“過ぎたるは及ばざるがごとし”です。現在の食も過剰栄養摂取の状態で、それを改善するためにサプリメントなるものがよく売れています。食を調整するとサプリメントも不要になり、もっと余裕を持った生活が楽しめるのではないでしょうか。食が毒になり生活も苦しくなる、やはり健康で楽しい生活を送りたいですね。
人は、食と心身のバランスがよければ、健康な生活を送れます。進歩した現代医学で何故病気が減らないのか。何が健康・元気で長生きに良いのかを考えさせられた敬老の日でした。
身近な毒草 チョウセンアサガオ ナス科 別名 エンジェルトランペット、ダツラ
葉、花、種子、根など、全体に有毒成分を含む薬用植物です。冬に地下部をゴボウ(色白のゴボウ)と間違え食し中毒した例や、花をオクラの花と間違えて食べて中毒した例があります。
園芸店で売られ、花が大きく綺麗な植物です。花を観るだけで、取り扱いには注意して下さい。中毒した時は解毒薬はあります。 |
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535号 2010年11月14日
(46)ヒシ ヒシ科
朝夕寒くなり、風邪をひいている人が多くなっています。皆さま如何ですか?今月の薬用植物は“ひし(菱)”です。
稲刈りが終わり、佐賀、福岡南部のクリークの水草が少し勢いを無くしたころ、クリーク、池でヒシ取りのタライ、船が浮かんでいるのを見かけます。30〜40年前は秋の味覚で、栗の代わりに食べていました。今は食糧事情が良くなり、ヒシの種子は珍しい食べ物として売られています。九州ではトゲが2本のヒシの実が多いのですが、忍者が用いた3本のトゲを持つヒシもたまに見かけます。北海道から九州、朝鮮半島、中国に自生します。古い池などに見られましたが、池が汚れたり外来植物におされたりして、生息地は少なくなったのは惜しまれます。
ヒシの花は一日花で、白い5mm位の小さな花を水面に咲かせます。花が受粉すると水中に入り、萼片がトゲに変わります。食用にする種子は子葉が膨れたものです。種子はタンパク質15%、デンプン65%位を含み、栄養に富んでいます。
薬用には種子を用い、滋養、強壮、消化促進、二日酔いに用います。中国でもヒシ(トウビシ)はあり、種子を菱(Ling)といい、味は甘、性質は涼。生のものは暑を清め解熱し、止渇します。煮たものは気を益し、胃腸を健やかにするようです。禁忌として、下痢をしているものは食してはいけないと記されています。万葉集にヒシをつむ歌がありますので、古くから利用されていたようです。また、和漢三才図会(1713年)には、「菱の果実は胃腸を良くし、五臓を補い、暑を解き(しょをとき)、消喝を止む」と記されています。
寒くなり、背中を冷やすと風邪をひきます。ご注意下さい。また、寒い中、ミニスカートをはいている女性をまだ見かけます。足腰を冷やし、風邪をひく、生理不順、冷え性になる、ひどくなると子宮筋腫になるなどしますので、足腰を冷やさないように心がけましょう。
身近な毒草(生・半生のダイズなどの豆類)
豆類を生で食べたり、火が芯まで通らない中途半端な加熱で食べると、嘔吐・下痢を起こします。火が芯まで通らない中途半端な加熱で中毒を起こしている例が、少し大型の白ハナマメやインゲンマメなどで見られます。気を付けて料理をして下さい。
科学が発達していなかった時代、昔の人は、実際の中毒を観察・検証し、料理方法を考えました。昔の人の言い伝えの料理方法にも理由があります。 |
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539号 2010年12月12日
(47)キュウリ ウリ科
今月は、Cucumberこと、キュウリです。40年ぐらい前までは、独特の臭みと、苦味があり、嫌いな人が多かったのですが、昨今は、特有の香り、苦味も少なくなり、あっさりした清涼感から好感が持たれる野菜になりました。また、阿蘇の地キュウリなど、太いキュウリも有名です。10月に食べた旬の腕より太いネパールのキュウリも美味しかったです。
キュウリも薬用です。果実を用います。味が苦く、涼性を示します。果実を生食すると利尿効果が、外用として、薄く切ったものを土踏まずに貼り暑気あたりに、薄く切ったもの又は絞った汁、ヘチマ水の要領で採集したキュウリ水を火傷に用います。中国では、熱を除く(解熱、抗炎症)、水を利す(利尿、利水)、解毒する、胸中の熱を除く等の効果があると記されています。[禁忌]として、胃の冷えた人が食す(用いる)と、腹痛、嘔吐、下痢を起こすことがあると記してあります。
涼性のある、キュウリなど、夏が旬の野菜は、身体を冷やす傾向がありますので、冷え性の方はこれからの寒くなる時期に多食しない方が良いでしょう。また、女性のスカート等がずいぶんと短くなっています。足腰を冷やして、冷え性 → 生理不順・生理痛 → これがこうじて子宮筋腫などの若い人が、また、年を取って更年期障害の方が増えなければよいがと懸念しています。30年後の医療の仕分けの対象者にならないように身体の中身と心のバランスを保って下さい。
寒い時は鍋に限ります。薄めの味付けの鍋を作り、最後は雑炊などにして、汁も食べてしまうのが最も良いでしょう。たっぷり野菜で温まり、健康にも良いです。
身近な有毒植物 モロヘイヤ シナノキ科
エジプトの王様が「元気が出る」と言って食していたことと、ネバネバなので夏に良く食べるモロヘイヤです。
食している葉は、大丈夫ですが、種子は絶対に食べないで下さい。花が受粉しても種子が出来ますので、花も食さない方が賢明です。仕分けして食して下さい。 |
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543号 2011年1月16日
(48)アカネ アカネ科
新年から阿蘇の山々は銀世界です。久しぶりに冬を感じる正月でした。のんびり正月を過ごされましたか?1月7日は七草粥を食べ、胃の調子を整えましたか?胃は車で例えるとエンジンです。胃のチューンナップをおこたり無く。
新年の薬用植物は“アカネ(茜)”です。万葉集には『あかね』という言葉を含む歌が13首もあります。日、照る、昼などの枕詞で用いられますので、新年の薬用植物に選びました。また、鹿児島県ではコガネグサと言うところもあります。
根を掘ると新鮮な時は橙色ですが、乾かすと茜色(赤根色、赤に近い橙色)に変わり、その色から名がついたようです。根を染色に用い、茜染めと言い、その染め布は、女性の腰巻きなどにも用いました。この腰巻は生理痛、生理不順の予防のためでもあり、これから薬を飲む時の“服用”があると言われています。他に腰巻きの赤色の染色には紅花なども用いられています。
薬用としては、乾燥した根を茜草根といい、性質は寒、味は苦。効能として、止血、通経などの目的で用います。中国ではアカミノアカネの根[茜草根(qian cdo gen, せんそうこん)]を薬用とし、止血、通経、咳を止め去痰などを目的に吐血、鼻出血、尿血、子宮出血、打撲、慢性気管支炎などに用いると記されています。
同じアカネ科の植物では、正月のおせち料理の栗きんとんの染色に使うクチナシ、他に、コーヒーノキ、ヘクソカズラ、カギカズラなどがあります。
昨年末から、ノロウイルスによる嘔吐下痢症、咽の痛くなる風邪が流行しています。特に子どもさんのノロウイルスによる嘔吐下痢症で、地域医療センターは大忙しのようです。嘔吐下痢症は、ウイルスによる症状ですが、漢方から観ると、体内の水のバランスの偏重ですので、五苓散が良く効きます。病院に行く前に飲ませてみては如何でしょうか?
もう一つの咽の痛くなる風邪ですが、咳と咽喉部が炎症を起こし痛みを伴います。咽の炎症を抑えるのに石膏、咳を止めるのに桔梗で、漢方処方の“桔梗石膏”という薬がありあます。これもよいですね。ひどくなる前、咽がおかしいかなと思ったら、お〜〜〜と言いながら“うがい”をしてください。身近なものでは“お茶”ですね。特に、ポリフェノール(タンニン、カテキン類)の多い“渋茶”がお勧めです。うがいは、最初は“ゴロゴロ ぺ”で吐き、咽・口を洗い、2回目からは“ゴロゴロ ゆっくりゴックン”で咽の裏を洗ってください。
身近な有毒植物 スイセン(ユリ科)
スイセンを食べる人はいないと思っていたら、昨年、ニラと間違えて食べ、嘔吐した人がいました。葉、香りが違いますので、普通は分かるのですが、紛れ込んだりすると分からないことがあります。気をつけて取ってください。
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547号 2011年2月13日
(49)ニガウリ ウリ科
1月はとても寒く、雨がほとんど降りませんでした。私の家でも電気温水器のパイプの水が2回も凍りました。皆様如何ですか?
寒い冬に、夏の植物を紹介します。ニガウリ(苦瓜)は、沖縄の野菜として30年位前に紹介され、今では日本中で食べられ、栽培されるようになりました。また、陽よけのスダレ代わりに、昔のアサガオに替わって緑のカーテンとして栽培されています。別名ゴーヤ、ツルレイシなどと言います。熱帯アジア原産、熟した果実の種子の赤い種皮は、少々どぎつい赤色ですが、食べると甘くて美味しいです。
薬用ですが、熟した果実を種子ともに乾燥、煎じて解毒、解熱、下痢、眼病などに用います。また、ニガウリの成分が、糖の吸収を抑制することから、糖尿病予防に効果があると言われています。種子とともに果実を薄く切り(スライス)乾燥し、カビの生えないように保存、お茶等で飲んでみては如何でしょうか。ただし、良いからといって飲み過ぎには注意しましょう。
ニガウリの糖尿病予防、改善ですが、食事をするときに一緒に飲んでください。黒ウーロン茶、グァバ茶などと同じで、販売会社が喜ぶような、いつでも飲むようなことはさけた方が良いと思います。
また、予防するものを飲んでいるから甘いもの、澱粉質のものをとっても良いというのも間違いです。“食を毒”に変えないようにしてください。日本人は太らなくても肥満遺伝子、糖尿病遺伝子を持っている人が1/2います。また、持っていなくても、飽食していると、糖尿病になる可能性があります。現在では、よく噛んで、腹6分目で(6分目と思っていても8分目食べてしまいますので)良いのではと思います。c
有毒扱いされそうな植物
酒を飲む前、飲んだ後に、ウコンの入ったドリンクを飲む人が増えています。ウコンは肝機能改善に良いとされ、よくCMに出てきます。しかし、昨今ウコンの取り過ぎと思われる肝臓障害の方がでてきたとの話が増えてきました。どのようなものも『取り過ぎには注意』してください。 |
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551号 2011年3月13日
(50)サクラ バラ科
3月に入り、早咲きのサクラが咲き出しているのではと思います。月末には花見ですね。サクラは花見をするものと思っている方が多いと思います。しかし、ご存知のように桜餅で葉を食用に、八重桜の花は塩漬け、砂糖漬けにしてお茶に用います。サクラの葉は生では香りませんが、塩漬けにして置いておくと、香りの元の成分が葉の中の酵素で分解し、クマリンという香りのものになります。桜餅は葉も一緒に食べると香りも良くて美味しいですね。
ヤマザクラ(山桜)の樹皮を薬用にも用います。外皮を除いた樹皮を乾燥したものを桜皮(おうひ)と言い、そのエキスをブロチンといい鎮咳去痰に用います。他に解毒、皮膚炎、腸炎に煎じて服用します。シャックリに黒焼を用いるところもあるようです。
ヤマザクラは葉が先に出て花をつけます。普通花見をする桜は、ソメイヨシノで花が先です。オオシマザクラとエドヒガンの雑種です。ソメイヨシノの寿命は60年位と言われています。戦後植えられたソメイヨシノが枯れかける時期です。分かっている市町村では10年位前から次の若い株を植え付けているようです。菊陽町はいかがでしょうか?
漢方薬での被害が出ています。コンビニ等でも薬が売れるようになりました。そのために手軽に薬を買うことが出来ます。これは良かったのですが、薬には副作用があります。週刊誌、テレビ等での情報を元に購入して飲み続けるとおかしな副作用が出てきます。例えばやせ薬(おなかの脂肪が取れると宣伝のもの等)で、下痢が止まらなくなったと言う人もいます。“薬は毒”「薬は巧く使うと病気が治る」これだけは忘れないでいただきたいと思います。
体調が悪くなったら、まず薬局の薬剤師に相談して下さい。薬局で相談するのは“無料”です。もしこれで本当に病気だったら薬を買って飲む。それでも駄目そうだったらすぐ病院に行く。これが順番ですが、今はすぐ病院に行きますね。それだけ薬剤師が信用できなくなったのかな?信用できる、相談にのってくれる薬剤師を探して「家庭薬局」を作っておいて下さい。
◆便秘解消にサツマイモ
サツマイモはヒルガオ科です。ヒルガオ科の植物には下剤の成分が入っています。また、サツマイモの食べる部分には繊維が多いので便通を良くします。卵1個大のサツマイモを毎日1個食べると、便秘の解消になります。焼く、煮る、蒸すなどして食べましょう。 |
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555号 2011年4月10日
(51)パパイア パパイア科
3月11日はベトナムにいました。携帯メールで知り、TVを見てびっくり。大変なことが起きたのを知りました。
今回は、南国のフルーツ、パパイアです。熊本でも花は咲きますが、温室・ビニールハウスでしか実がなりません。日本では熟れたパパイアを果実として生食しますが、ラオス、ベトナム等の東南アジアでは、未熟な果実を野菜として用い、千切りにして、トウガラシを少し入れドレッシングをかけ、サラダ感覚で食べます。
パパイアにはタンパク分解酵素が沢山含まれます。ですから肉類を食べるときに一緒に食べることが多いです。未熟なうちは少ないのですが、熟すとタンパク分解酵素が多くなります。タンパク分解酵素は、肉類のタンパク質を分解し、吸収を良くしてくれます。ただし、酵素はタンパク質から出来ていますので、熱をかけると力を失いますので、生で用いて下さい。もし、タンパク分解酵素が不要の時は、加熱すると失活(力を失う)しますので、調理法を工夫して下さい。
熊本ではパパイアを買う人が少ないようですが、身近なもので、同じようにタンパク分解酵素を含んでいるのが、メロン、パイナップル(缶詰は熱をかけているのでだめ)、キウイです。料理に巧く使うと肉類の消化を助けます。
また、少し固めの肉を、メロン、パイナップルの汁に漬けておくと柔らかくなります。(メロンの皮、パイナップルの皮でも十分です)
◆良いものも悪者に
原発事故以来、日本は危ないという風評で九州にも外国からの観光客が来ません。西日本は安全ですし、桜もきれいなので、沢山の観光客を呼び込み、その利益を東日本に還元すべきです。
物事危ないというと避けるようになります。メロンを食べて、口が、喉が痛くなる人がいます。タンパク分解酵素で、口、喉のタンパク質が溶けているからです。美味しいので食べたいと思いますが、注意して食べて下さい。
人によってはいろんな体質があります。リンゴのアレルギーの人(少しでも生は駄目で、完全に熱を加えたアップルパイなら食べられる人)など。自分が大丈夫だから、あなたも大丈夫ではありません。ご注意ください。 |
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559号 2011年5月15日
(52)タンポポ キク科
シロバナタンポポ
宴Zイヨウタンポポ
蒸し暑くなってきました。生まれたときから、エアコンなど、なんでもありの豊かな環境で育った若者には、大変きつい5月〜9月です。特に梅雨の時期は大変でしょう。しかし人間鈍感なもので、一ヵ月前までは、15℃を過ぎると暖かいと思っていたのに、この時期になると15℃では寒いと感じています。人間慣れるものです。何でもありではなく我慢も必要でしょうし、資源枯渇の危機感を持つべきですね。
3月から咲き始めたタンポポも綿毛に代わり、風が吹くと大空へ舞っています。種子(遺伝子)をより遠くへ広げるという素晴らしい植物の知恵ですね。
熊本はシロバナタンポポが主流です。タンポポの中では大柄で、堂々とした太い茎に、頭花の外は白く中心が淡黄色の花を咲かせます。しかし昨今はセイヨウタンポポが幅をきかせ、平地だけでなく阿蘇、九重等の山間部の道路際にも繁茂しています。<br>
西洋タンポポは食用として入ってきたようです。また、葉で作るタンポポ茶は利尿作用があり『おねしょ』をするので、夜、子どもに飲ませるなと言われています。
タンポポの薬効は、根、全草を一日10〜15g煎じて服用すると、健胃、強壮、利胆、解熱、浄血、催乳、利尿等の効果があります。また、根はコーヒーの代用としても用いられます。根、葉、花は食用にもなります。
本邦産(関東タンポポ、関西タンポポ)、西洋タンポポの見分け方は、簡単なところでは、蕾、花の時期に総包(萼 、ガク)が花にくっついて立ち上がっているか。または反り返り、下に向いているかです。大学構内に多いシロバナタンポポは、わずかに反り返っています
タンポポの種子をルーペで眺めますと、突起のトゲトゲがあります。着地した後、何かにくっつくためなのでしょうか?植物の知恵には、いつもながら敬服するばかりです。
花を楽しむ有毒植物 スズラン ユリ科
全草に毒があります。しかし、花が可憐なので、園芸店で売られています。昔々スズランの花を挿していたコップの水を飲んで中毒した子どもがいました。きれいなものには毒がある。有毒植物は、触る、栽培するなど、ほとんど問題ないのですが、料理に乗せて食べたりしないで下さい。食用経験のあるものを食べるようにしてください。
もし食べる時は、他人に迷惑をかけないように、覚悟をして食べて下さい。 |
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563号 2011年6月12日
(53)ネズミモチ モクセイ科
ネズミモチは今、白い小さな花が咲いています。果実がネズミの糞(ふん)に似た形をしていることから名付けられたと言われています。果実は、秋に長さ5〜7mm位の長楕円形の黒色の実を房状に付けます。果実を薬用(生薬)とし、女貞子(じょていし)といいます。私の部屋の棚に女貞子の焼酎漬けがあり、ラベルが貼ってあります。来客がそれを見て「先生の後ろにある“おんなさだこ”と言うのは何が入っているのですか??」と何度か尋ねられたことがあります。最初は何を言われたか分からなかったのですが、今は、即答出来るようになりました。名前の読み方の難しさを感じます。
果実は、滋養強壮、強精に、また、利尿、緩下作用があるとして古くから用いられています。葉は、解熱を目的に用います。また、胃潰瘍にお茶として飲まれています。阿蘇では葉を3日3晩焦げないように煮詰め、それを丸剤とし胃潰瘍に服用している人がいます。
生薬の女貞子(じょていし)は、視力が減退する、目がかすむなどの時に漢方薬に配合して用います。
山に自生するものはだいたいがネズミモチ(写真)ですが、植栽ではトウネズミモチ(唐ネズミモチ、写真堰jもあります。薬効は同じと考えて下さい。両方の植物の見分け方は、葉を太陽に透かして見ると分かります。トウネズミモチは、細い葉脈まで透けて見えるのに対して、ネズミモチは主脈が少し透けるだけです。これで簡単に分かります。自然のモノはそれぞれに特徴を持っています。五感を働かせ、また、虫眼鏡など簡単な道具を用いて、区別することが出来ます。年齢に関係なく五感は鍛えられますので、トライしてみて下さい。
今年の夏も暑そうです。植物で陽射しを遮る、ゴーヤカーテンなど良いですね。実も味わえます。また、熟れすぎた時は、捨てなくて、赤くなった種子の周りの部分が甘いので、砂糖の代わりにして料理に使ってみて下さい。沖縄では食べている人もいます。ただし、種子は除いて下さいね。大学では、ゴーヤの他に、ヒョウタン、カスガボウフラ(カボチャ)、シカクマメ、フウセンカズラ等で日よけを試みています。大きくなって、沢山実がなると嬉しいなと思っています。
身近な毒草 スイセン ヒガンバナ科
最近、アサツキと若いスイセンを間違えて食べた方がいました。何故スイセン?と思う方もおられるかもしれません。花の咲かない若いスイセンは外見が意外とアサツキに似ています。
植えるときに、混在しないように注意しましょう。物事思い込みは禁物です。 |
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567号 2011年7月10日
(54)ハス ハス科
ひご野菜を知っていますか?くまもと育ちの伝統・特産野菜として15種が指定されています。@水前寺菜、A熊本京菜、B水前寺もやし、C熊本長にんじん、Dひともじ、Eずいき、Fれんこん、G春日ぼうぶら、H芋の芽、I熊本赤ナス、J熊本ねぎ、K水前寺せり、L熊本いんげん、M熊本黒皮かぼちゃ、N水前寺のりです。
その中の蓮根(れんこん)の元の植物、“ハス”を今月は取り上げてみます。
☆全てを薬用に用いる“ハス”☆
果実を蓮実(れんじつ)、子葉を蓮肉(れんにく)、子葉の間に有る緑の幼芽を蓮心(れんしん)、種皮を蓮衣(れんい)、葉を荷葉(かよう)、葉の基部を荷葉蒂(かようてい)、葉柄と花柄を荷梗(かきょう)、花の蕾を蓮花(れんか)、花托を蓮房(れんぼう)、雄蕊を蓮鬚(れんしゅ)、肥大した根茎(食べるところ)を藕(ぐう)、根茎の節部を藕節(ぐうせつ)、根茎から取れたデンプンを藕粉(ぐうふん)といい、それぞれ薬用に用いられます。蓮実の完熟したものは硬く重く水に沈むものを石蓮子(せきれんし)と呼ぶが余り使われません。
蓮実は砕いて蓮肉と同様に、強壮、止瀉、止渇、鎮嘔、健胃薬として、多夢、遺精、下痢等に。種皮の蓮衣は強壮、収斂に。荷梗は清熱解暑、通気に。蓮花は活血、止血に。荷葉は止血、下痢、食中毒等に。蓮房は止血、駆お血に。蓮鬚は止血、強壮に。藕は涼血解毒に、藕節は止血を目的に咳に血の混じるもの、吐血、鼻血、血尿等に用います。
レンコンの粉の藕粉は、中国では“軽身延年の長寿薬”として食べられます。民間薬でレンコンの節を咳止めに用います。
熊本には“辛子蓮根”という名産があります。熊本城主細川忠利公が病弱であったので、玄宅和尚が健康改善、造血にとレンコンを食べることを勧め、藩のまかない方が工夫したものです。やがて城主は剛健となりました。熊本ではおせち料理に欠かすことのできない冬の野菜です。中毒を避けるため空気を遮断して保存せず『芥子蓮根は早めに食べましょう』。
細川忠利公の病弱で貧血を治したように、レンコンにはビタミンB12が多く含まれ、鉄分の吸収を高めます。例えば、レバーと合わせた “鶏レバーと蓮根の甘辛炒め”等は良いですね。
★夏の冷たいモノの取り過ぎは毒★
皆さん、夏バテしないよう、胃をチューンアップしてください。身体を暑さに慣らし、蒸し暑いですが、冷たいモノの取り過ぎ、甘いモノ、辛いモノの食べ過ぎは、胃を痛め、夏バテの原因になります。 |
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571号 2011年8月7日
(55)カカオ アオギリ科
カカオの種子は、チョコレート・ココアなどの原料として使われます。種子を発酵・焙煎したものがカカオマスで、これは大変苦くまた高いので、日本では、砂糖・カカオ種子を搾った時に出る油のカカオバター(ココアバター)、粉乳・植物性の油脂などと練り、甘いチョコレートとして売られ手頃な価格ですので、皆さん大好きです。しかし、砂糖が多く、また脂肪分も多いので、食べ過ぎると糖分・脂肪分による弊害が出ます。日本で初めて発売されたチョコレートの製品名は「貯古齢糖」と当て字だったようです。
カカオの花は、写真のように木から直接咲きます。また、果実も木に直接ぶら下がります。ラグビーボールの様な形で、長さ15〜20cm・径は10cm程。
カカオにはポリフェノール(タンニン)があり、抗酸化活性・動脈硬化予防・抗菌活性(虫歯菌予防)・抗アレルギーなどの効果があると書かれています。効果が出る人もいるようですので、お試しください。
この前、観察会の時に、ナツメの葉を齧り、舌の上で転がしてチョコレートを食べると、甘みが消え、ビターチョコレートになることを皆さんに体験してもらったとき、100%カカオマスのチョコレートを参加者からいただきました。少し違いますが苦味があり、甘みが無い本当のカカオチョコの味でした。
市販の安いチョコレートは、前に書きましたが砂糖・脂肪分が多く、動脈硬化予防・虫歯菌予防、抗アレルギーに逆効果だと思われます。もし効果を期待するのでしたら、少し高価な砂糖・脂肪分の少ないチョコレートを食べて下さい。
身近な有毒植物
もし植物の汁が眼に入った時はこすらずに、すぐに水で良く洗い流して下さい。ダツラ・エンゼルトランペットの汁が、眼に入った時は瞳孔が拡散しますので、眼を覆い(絶対に開けない)暗いところで水洗いし、眼をきちんと覆いながら急ぎ眼科に行って下さい。 |
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575号 2011年9月11日
(56)ボタンボウフウ セリ科
お盆から雨が多いですが、皆さんいかがお過ごしですか。朝夕涼しいので、胃が重たいなど、夏バテをしている方は少ないかと思います。庭の植物も、雨が多いので元気がなくなったもの、逆に元気よく伸びすぎているものもあります。
福島原発事故から5ヵ月が経ち、国の対応、東京電力の対応、現場作業員の方への対応を見聞きすると「水俣病」を思い出します。ラジオで興味あることを言っていました。「中国人は本当のことを言っても疑う人が多い。日本人は嘘を言われても信じる人が多い」と。何となく当たっている部分があるなと思いながら、違和感を感じました。
天草では極早生米がいつものように7月に収穫されました。しかし、お盆を挟んで、雨が続いています。阿蘇などの早植えの田では稲の花が咲いているところもあり、結実が心配ですが、どうでしょうか?
夏の長雨で、モモ、ブドウ、リンゴ、栗などの果実に病気が出ているのではないかと心配しています。ところで熊本でもあちこちで薬草栽培がブームになっています。あさぎり町のミシマサイコ(柴胡)、合志などのカンゾウ(甘草)の栽培。「ボタンボウフウ」もそのなかのひとつです。
今月の薬用植物は、「ボタンボウフウ」です。沖縄では、ボタンボウフウの別名を「長命草(チョーミーグサ)」と言い、薬用・食用として、古くから用いられています。薬用としては、根を滋養強壮、咳止め、風邪などに用います。葉は、食用として魚・肉の臭み消し、毒消しなどに。また天ぷら、和え物などにして食べられています。最近は、高血圧・動脈硬化に効く、抗酸化力が強いなどともてはやされています。栽培は結構簡単で、薬用植物園内でもあちこちで大きくなっています。ハマボウフウ(浜防風)に比べると栽培しやすい植物です。
8月末から2週間位、ガダルカナル島(ソロモン諸島)に薬用植物の調査で出かけます。南緯10度位の場所ですが、長袖を持ってこいとのメールが入ってきました。朝夕涼しいのでしょうか?初めての植物にたくさん会えるのと、久しぶりに南十字星が見えるのを楽しみにしています。
畑には、毒草を植えないで下さい。
花が奇麗だからと、有毒植物を畑や、野菜のある近くに植える方がおられます。そのために、誤食による食中毒が起きています。例えば、ニラの葉とスイセンの葉、又はタマサンゴの葉を間違えた。ゴボウとダツラ(チョウセンアサガオ、エンゼルトランペット)の根を間違えた。身近には花が奇麗な有毒植物が沢山あります。良く見分けて料理しましょう。 |
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579号 2011年10月9日
(57)ザクロ ザクロ科
ザクロの枝が折れそうに実がたわわに実っています。果皮の赤色が増し、いつ弾けるかと楽しみにしています。花は6月ごろ咲きます。八重の花にはほとんど実をつけません。小アジア原産で、シルクロ−ドを歩く旅人が咽の渇きを癒した果実の一つです。真っ赤に熟れた果実(小果)は鳥や虫の大好物です。果実の半分は種子で、現代人の食文化には向いていないようです。ザクロのジュ−スが売り出されています。売り文句は「豊満な胸になる」と。しかし果肉にはその作用は無いようです。種子には女性ホルモン様物質が微量含まれることが報告されています。種子は子孫を残す遺伝子を含むため、周皮にタンニンを多量に含み、かじると渋い味がします。ただ、発芽は一度鳥のお腹を通ったほうが数段あがります。一皮むけるのでしょう。薬用としては幹、根の皮を用います。駆虫作用があり、ザクロの皮は条虫駆除薬として用いられます。また、タンニン類には試験管レベルで強い抗HIV作用(エイズウイルス)が認められています。作用が強いので果実を食べるだけにして下さい。
実りの秋、野山に行き、アケビ、マタタビ(未熟は激辛)、サルナシ、カキ等の熟した果実を鳥、虫よりも早く食べるのが楽しみです。ただ、野草・キノコ類の食中毒が増える時期です。ご注意ください。
8月28日〜9月10日、日本から南下し、南緯9度ぐらいにある島国、ソロモン諸島に薬用植物調査で出かけていました。ソロモン諸島では、サガリバナの仲間のゴバンノアシの花、ナリーナッツなど、初めて見る植物に沢山出会いました。南十字星は見ませんでしたが、楽しかったです。
衛生面では、オフェ(コショウ科の棒状の果実)、ビートルナッツ(ヤシの仲間)、石灰を一緒に噛んで吐く赤い唾を除けば、けっこう清掃された町です。町のあちこちにゴミ箱が置かれている。ただ、ビニールが自然に消化しないものだという理解は余り分かっていないようです。アルミ缶は再生するために別に集められていました。
水は珊瑚礁の島なので弱アルカリ性、硬度も首都のHoniara等中心部は高く、村へ行くと低く軟水になります。田舎の水を少し飲んでみましたがお腹は壊しませんでした。Honiara市内の水は沸かして、お茶のタンニンで殺菌し、硬度を落として飲めば問題はありませんでした。
各家に雨水タンクが設置してあったのが印象的でした。 |
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584号 2011年11月13日
(58)フジバカマ キク科
秋の七草「ハギ、オバナ(ススキ)、クズ、ナデシコ、オミナエシ、フジバカマ、キキョウ」の一つ「フジバカマ(藤袴)」です。万葉集に「芽之花 乎花 葛花 瞿麦之花 姫部志 又藤袴 朝皃之花」とあります。これを少し分かりやすくすると「萩の花 尾花 葛花 瞿麦の花 女郎花また藤袴 朝顔の花」となります。フジバカマの名前の由来は「花が藤の花に似て、花弁の形が袴(はかま)のよう」だからと言う説があります。
薬用としては、開花時に地上部を取り乾かしたもの(蘭草 らんそう)を、利尿、腎炎のむくみ等に用います。ただし、腎臓透析をしている人は、利尿作用のあるものを飲むときは十分注意をして下さい。また、浴湯料として、補温、肩こり、神経痛、皮膚のかゆみなどに、地上部を乾燥しもの100~150 g(浴槽が小さくなりましたので、量を少なめに設定しました)を、布袋に入れて鍋などで煮出してから、煮汁とともに風呂に入れて入浴します。一般的に浴剤の場合、皮膚の弱い人で合わない人がいますので注意して下さい。
調理を間違って食中毒
豆による食中毒が増えています。普通豆類は熱を通して食します。これは、マメに含まれる酵素を完全に殺してタンパク質という栄養素として用いるためです。酵素が生きていると「下痢、嘔吐」などを起こすことがあります。
白花豆、大豆などの豆類を調理するときは、中まできちんと熱をかけて下さい。半生を食べると、下痢、嘔吐の食中毒を起こすことがあります。 |
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588号 2011年12月11日
(59)ソバ(シャクチリソバ) タデ科
今年のソバ(蕎麦)の出来はどうだったのでしょうか? 美味しいソバが食べられると嬉しいです。日本では縄文時代の遺跡からソバが確認され、中国から伝わったと考えられています。原産地は中央アジアとされ、日本の他、中国、東南アジア、ロシア、カナダなどで穀類として栽培されています。
ソバの葉、茎、ソバの種子の外皮にはルチンなどのフラボノイド成分があり、毛細血管を強化する作用があるといわれています。特に、韃靼ソバ、ヒマラヤの赤いソバには多いようです。ソバ粉を引くと外皮が無くなりますので、そば粉にはルチンはほとんど含まれていません。
ソバの新芽、花が咲く頃、花と葉を湯通しして酢みそなどで食べるのも美味しいです。葉は光合成で酸素を作りますので、本質的に「抗酸化作用」を持っています。ソバの方言は、クロムギ、ススジグサ、熊本・宮ア・鹿児島では「ソマ」といわれるようです。ソバは麺以外に、饅頭、ビール、焼酎などに用いられています。
しかし、ソバのタンパク質にアレルギーを持った人もおり、呼吸が出来ないなど、大変な症状が出ます。店によってはソバとうどんを一緒に茹でているところがありますので、ソバを注文していなくても外食のときは十分に注意して下さい。
今年の紅葉は遅かったですね。ようやく寒くなりました。腰や背中を冷やして風邪を引かれませんよう、ご注意ください。風邪を引いたら「風邪は万病の元」ですので早めに治しましょう。
新年七日には「七草粥」を食べて、一年の胃腸の健康を祈念して下さい。「胃腸は体のエンジン」ですので、胃腸をご自愛ください。
お年寄りの方は、餅を喉につかえさせないよう、小さく切って食べて下さい。
来年もよろしくお願いします。
<食べ過ぎには注意>
銀杏(ギンナン)を食べ過ぎますと「痙攣(ケイレン)」を起こすことがありますので、一度に30粒位までにしておいて下さい。お子さんは5粒位まで。食べ過ぎて痙攣が起きたときは、救急車を呼んで下さい。もし飲めるのなら総合ビタミン剤を飲むと少し軽減するかもしれません。
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592号 2012年1月15日
(60)木立アロエ(コダチアロエ)アロエ科
アロエは昔はユリ科でした。今はアロエ科に独立しています。寒い冬ですが、温暖化のせいか家の軒下で見つけました。コダチアロエ (木立アロエ)です。別名キダチアロエとも言います。11月の末から12月に三角半島?天草を車で走ると家の軒先に赤い花が咲いています。大学の近くの味噌天神に近い家の軒先でアロエも花をつけていました。霜が降りると弱ってきますが、十分外で越冬し、花をつけるようになりました。 アロエは外傷、火傷、便秘などに用いられ「医者いらず」とも言われています。
薬用部位は肥大した葉部で、下剤、健胃、火傷などに用います。緩下成分が含まれていますが、薬用のアロエ(Aloe feroxなどの葉から得た液汁を乾燥したもの)よりは効果が弱いですね。
身近にあるアロエで、横に広がり葉に白い斑点のあるシャボンアロエ(別名:アロエ・サポナリア)は余り苦くなく同じような薬効を持っています。
痩せるのに下剤の入った健康食品をとる人がいます。アロエは下痢をして痩せますが、人によっては腸が炎症等を起こしたりしています。下痢がひどくなったときは御注意下さい。アロエジュースでもひどい下痢をする人もいますので、体調がおかしいときは飲むのを止めて下さい。
昨今、痩せ薬として、ナイシトールなどとして売られている漢方薬の「防風通聖散」が「ダイエットに良い、脂肪を分解する」などと言われ、健康食品のように売られています。度を過ぎた摂取量で肝障害や下痢が止まらないなどの弊害が出ているようです。体調を壊している方は、薬の分かる薬剤師にご相談ください(薬剤師でも漢方薬の効用をきちんと理解していない人が意外と多いです)。
ジャガイモの保存方法
栽培農家から市場の手前までは有毒成分が出来ないように管理されているジャガイモ。しかし、市場→店→家庭の過程で、太陽の光に当たって少し緑になったり、芽を出すなどしています。緑の皮・果肉はキチンと剥く、芽の部分は大きく除くことをしないと、嘔吐等の中毒を起こします。
ジャガイモを買うときの注意点は
@ 光に余り当たっていないものを選ぶ。
A 家ではなるべく暗所に保管する。
元々、ジャガイモの祖先は有毒でした。それを人の手で品種改良し、食べれるようになっています。先人の知恵を無視しないようにして下さい。 |
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