上津久礼区  古川医院  古川まこと A

菊陽町津久礼868−5    рO96−232−1566
診察時間(月〜金) 9:00〜18:00(昼休み12:30〜14:00)
  土曜日 9:00〜13:00        休診:日曜祝日
内科・外科・耳鼻咽喉科・小児科
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294号 2005年12月18日

(31)医原病F 〜医原病を予防するには〜

 医原病にならない最善の方法は、生涯健康を維持し、医療を受けないことです。自分の健康は自分で守り、日頃病気にならない生活習慣や食生活を実行し、自然治癒力すなわち免疫力をつけることをおすすめします。ストレスや心の悩みは免疫力を低下しますから、日頃から働きすぎないで、大いに笑い人生を楽しみ、心の悩みをいつも解消し、免疫力を高める事です。予防医学を実践し健康長寿となれば、薬や医療に頼らなくてすむと思います。
 しかし、いざ病気で医療をうけざるをえない時、できるだけ医原病にならないようにするにはどうすればいいのでしょうか。医原病の予防には、医療従事者は、医学教育や医療の現場で医原病を体系的に学び、過去の医原病についての十分な知識を持ち、同じ過ちを繰り返さない事です。医療をうける方々の意識改革も必要です。医療機関や医療関係企業そして行政が医原病について積極的に情報公開し、すべての国民がすべての薬や医療でも医原病がおこりうる危険性があることを知っておくべきです。
 医療の目的は自然治癒力を助けることです。いのちある生き物としての人間が本来持っている自然治癒力を高める治療(代替医療)を積極的に行い「自然治癒力を破壊することが多い」現代医療を最小限に減らすことです。すなわち現代医療と代替医療を同時に利用できる統合医療を受けることです。
  例えば、ガン治療では現代医学では3大療法(1.抗ガン剤、2.放射線治療、3.手術)が中心ですが、免疫力が低下し、再発が多くかえってガンの死亡を増加させているとの指摘もあります。統合医療によるガン治療で治癒効果をあげている事実をもっと理解すべきです。しかし、残念ながら統合医療を行っている医療機関は極めて少ないようです。
 ワクチンを使った予防接種による医原病を避けるには、ワクチン接種を受けなくても感染症にかからないように免疫力を高めるしかありません。現在、鳥のインフルエンザから転じた新型インフルエンザが発生した場合、ワクチンがないため、最悪の場合国内での死者は64万人にのぼると厚生労働省は予測しています。致死率が50%というこの病気が蔓延すると、この地域にも患者や死者が続出するでしょう。怖い話です。結局、今後未知のウイルス感染症に対して、前述のように免疫力を高めて備えていくしかありません。


298号 2006年1月22日

(32)あなたのいのちが危ない@ 〜崩れていく世界と壊れていく人間〜

 現在は、ひとりひとりの「いのち」が極めて危ない時代になっています。なぜなら、今は人の「いのち」よりお金優先の世の中だからです。裏ガネを大量にばら撒き、当選した金まみれの政治家たちが得意満面の顔をして政治を行っています。
 前々回の選挙で与党の政策活動費103億円の領収書の97%に日付がないのもその証拠。そして、戦後60年の現在も大企業優先、経済優先、金、金、金の政策を強行しています。医療・福祉対策についても、財政対策優先のため、国民負担を大幅に増やしています。病気の高齢者さえも医療負担を強いられています。
 一方国や企業はメディアを利用し、消費と投資をもてはやし、勝ち組を賞賛しています。テレビや新聞は記事や広告でパチンコ・競馬・競輪等のギャンブルを大きく取り上げ、射幸心をあおっています。2005年秋、競馬の天皇賞を天皇自身が戦後始めて観戦しました。
 日本の平和の象徴として、なごやかな愛にあふれた家庭をもち、芸術を愛し真面目で勤勉な日本人の理想像である天皇が、一攫千金を狙う「大博打」の賭場に現れたのです。ギャンブルはもう恥でも罪でもなんでもなくなっているのです。清貧・勤勉・真面目・努力が美徳でなくなっているのです。しかし現実には、パチンコ・競馬などでギャンブル中毒になり大金を借りまくり家族が自殺・一家離散という悲惨な話が尽きません。
 このような時代の風を強く感じている子どもたちも同じような傾向になっています。多くの子どもたちが勉強する意欲がなくなっています。これは大人が真面目に働く意欲がなくなっているのですから当然のことかもしれません。おまけに、テレビ・ビデオ・テレビゲーム等のメディア漬けにより普通の「人間」になれない子どもたちもどんどん増えています。人々の価値観やとりまく世界が大きく変化し、崩れていこうとしています。そして、大人や子どもたちが壊れ始めています。
 しかし、増え続ける失業率・自殺者、増え続ける凶悪事件、テロ・戦争は大人の責任です。この危機を克服することは極めて困難ですが、あきらめてはいけないと思います。
 子どもたちに希望の未来を残すために、そしてお金よりひとの「いのち」が大切であるほんとうの社会に変えるために私たちひとりひとりの行動が求められていると思います。


302号 2006年2月19日

(33)あなたのいのちが危ないA 〜米国産牛肉は安全か? その1〜

 米国産牛肉輸入再開わずか1ヵ月で特定危険部位混入というルール違反のため、政府は再度輸入禁止を決定しました。何が「危険」なのか?BSE(牛海綿状脳症)について調べてみましたが、人類史上最悪ともいえる恐るべき病気に愕然としました。
 BSEは脳が縮みスポンジのようになることから、牛スポンジ状脳症(BSE:Bovine Spongiform Encephalopathy)と命名されました。BSEの様な症状で死ぬのは牛だけではなく、羊、豚、動物園のチーター、ピューマ、カモシカさらに飼い猫、飼い犬まで腰をぬかして死んでいきます。
 恐ろしいことに1996年3月20日イギリス政府は「ヒトがBSEの肉を食べると新ヤコブ病(スポンジ状脳症)=変異型クロイツフェルト・ヤコブ病になる」と発表しました。汚染肉を1グラム食べただけでも感染すると言われています。牛の潜伏期間約5年、ヒトは早くて4〜5年、ふつうは10〜20年後に発病します。
 BSEの原因は不死身の病原体である感染性たんぱく微粒子「プリオン」で、激烈な放射能照射や360度以上の高熱炉で焼き尽くし黒焦げの灰になっても死にません。
 BSEの発生は「共食い」が原因です。1957年にアメリカの医師がニューギニアの食人種に小脳がスポンジ状になり退化していく「クールー」があることを発見しました。1959年獣医学の研究者がイギリスのスクレイピー(ヒツジ伝達性海綿状脳症)もスポンジ脳であることを発見しました。スクレイピーはヤギにもマウスにも伝染し、筋肉からでも感染します。クールー、ヤコブ病、スクレイピー、BSEの原因は「プリオン」とわかりました。
 1980年代後半、イギリスでBSEの感染が爆発的に拡大したのも「共食い」が原因です。1970年代スクレイピーが多発しましたが、牧畜業者は羊の死骸の山をイギリス全土の40ヶ所以上あるレンダリング・プラント(工場)に運び、加工処理しました。
 死骸は「油脂」と「骨粉」と「肉粉」に分離され、「肉粉」と「骨粉」は家畜や豚の配合飼料やペットフードに生まれ変わり、乳牛・豚や養殖魚そしてペットのえさとなりました。当時ポンド下落のため、イギリス国内で大豆や魚粉が高騰し、牛の飼料を安い動物性飼料へと切り替えました。そして1985年5月イギリスにBSEが発生し、またたくうちに全土にひろがりました(2000年BSE18万頭)。
 1988年7月、イギリス政府は牛・羊の死体を動物性飼料に加工および使用することを禁止しましたが、すでに遅く1995年までBSEに感染した牛70万頭が食用で人間に食べられていると予測されています。専門家は21世紀にはエイズ流行と同じ規模で全世界で新ヤコブ病がひろがると予測しています。ヨーロッパではBSEの正確な情報がメディアにながれ、数百万人が菜食に切り替えています。


302号 2006年3月19日

(34)あなたのいのちが危ないB 〜米国産牛肉は安全か? その2〜

 1980年代半ばからイギリス全土に、爆発的にBSEが大発生をしています。BSEの死骸は、レンダリング・プラントで解体され、粉砕され“肉骨粉”として約8万トンもの「動物性飼料」となり輸出され世界各地の酪農農家に提供されました。
 1994年から英国で若い人たちが異様な症状で亡くなっています。「記憶違い。変な歩き方。イライラして、体が震え、けいれんする。ベッドから起きあがれなくなり、自分が誰かわからなくなる。うわごとを言いながら、ゆっくり衰弱していく。最後には植物人間状態で亡くなる」。病理解剖で脳はすべて萎縮し孔だらけのスポンジ状でした。すなわち新ヤコブ病です。
 1996年3月イギリス政府は「BSEの肉を食べた人間に新ヤコブ病が急増」と衝撃的な発表をしました。イギリスでは2001年5月には、犠牲者が累計で100名を超えています。その平均年齢は24歳です。BSEの専門家は「感染した動物の比率が高いので、人類にとって驚愕すべき危険が生じる」と予測しています。BSEによる犠牲者がヨーロッパ全土に散発的に発生し始め、ヨーロッパ中がBSEパニックになりました。
 米国では公式にはBSEはわずか2例、新ヤコブ病はゼロです。しかし、米国では年間3500万頭もの牛を屠殺し処理し食肉としますが、1%以下の32万頭しかBSEの検査していません。歩行状態の検査は10頭、20頭一緒に歩かせて病気の牛がいないかをチェックするといういい加減なものです。日本の方法での検査であればもっと多くのBSEがみつかるでしょう。
 また、新ヤコブ病がゼロも信じることはできません。孤発型ヤコブ病は100万人に一人しかおこらない病気ですが、最近、全米各地にヤコブ病の集団発生がおこっています。それらの患者さんは「原因不明の孤発型ヤコブ病」と診断され、CDC(米国疾病対策センター)に報告しても「偶然だ」として問題にされず、亡くなった人の脳組織を調べるよう依頼しても拒否されているとのことです。この中に、新ヤコブ病が含まれている可能性は十分あると思われます。
 米国ではアルツハイマー症が400万人、認知症が数十万人と言われていますが、この10年間でアルツハイマー症が 50万人急増しています。専門家の研究では、アルツハイマー症ないし認知症の3〜13%はヤコブ病に罹患している事は病理解剖で明らかです。 
このような現状でも、今もなお米国では危険部位が牛の肉骨粉に混ぜられ動物性飼料として使われています。今後、BSEや新ヤコブ病の急増が予測されます。米国はこのような食肉を日本に輸出しようとしているのです。


310号 2006年4月16日

(35)あなたのいのちが危ないC 〜米国産牛肉は安全か? その3〜

 日本では2001年9月10日に一頭目が発生してから、2006年3月17日24頭目のBSE(肉用牛として初めて)が壱岐で確認されています。BSEはなぜ日本で発生しているのでしょうか。
 1990年2月24日に英国政府獣医局長から農水省に公的な書面で「牛の肉骨粉がBSEの感染源であるので、貴国も注意してほしい」という通告が届いています。しかし、1991年英国から151トン、アイルランドから454トンの肉骨粉を輸入しています。
 1996年英国でBSEによる人への感染の発表後、WHOから日本に「BSEの動物は屠殺し安全に廃棄すること。BSE物質を含む組織をいかなる食物連鎖(人や動物の)に入らないようにする事」という警告が届きました。
 ところが日本は1996年を境にして肉骨粉の輸入を拡大し、EU諸国から79,310トンも輸入しています(1997年〜2001年)。処理に困ったEUの肉骨粉を安い単価(2万円〜2万5千円/トン)で輸入し、国内価格(約5万円/トン)で販売し、ばく大な利益をあげたのです(2万円/トンの利益、合計約20億円の儲け)。
 BSEのリスクの高い肉骨粉がなぜ輸入されたのでしょう。これは飼料、肥料、レンダリング業界に近い政治家が農水省官僚に圧力をかけて強引に押し切ったとも言われています。ここでも政・官・業癒着の構造が原因と思われます。この責任の追及を恐れたのか、2001年1月当時の農水省次官は退職金8800万円と退職金奨励特別手当まで受取り早々と辞任しています。
 世界各国で、BSEに関係ないとされている孤発型ヤコブ病がこの10年間で急増しています。しかし、ロンドンの研究チームは「孤発型ヤコブ病と診断されていた患者の中に新ヤコブ病も含まれ得る」と報告しています。
 2005年2月、日本で新ヤコブ病の患者が初めて報告されました。日本では1999年4月から登録された孤発型ヤコブ病の症例は501例ですが、1999年77例、2000年87例、2001年120例、2002年135例、2003年107例、2004年160例と増加傾向です。
 孤発型ヤコブ病は50代、60代にならないと発症しないといわれていますが、30代、40代で20人も確認されています。この中に新ヤコブ病が含まれている可能性は十分あると思われます。実際、日本で亡くなった50才の新ヤコブ病の患者も当初は孤発型と診断され、死後解剖所見で新ヤコブ病と確定しました。
 この方は1990年前半に24日間イギリスに滞在し、牛肉を食べたようですが、イギリスで感染したかどうかは明らかではありません。 恐ろしい話ですが、日本の食肉も100%安全ではないのです。

参考文献: 「アメリカに潰される日本の食」 山田正彦 宝島社 / 「早く肉をやめないか?」   船瀬俊介 三五館


314号 2006年5月21日

(36)あなたのいのちが危ないD 〜化粧品が危ない! その1〜

 女性の方が毎日使っている化粧品がからだによくないと言えば驚かれる方が多いかもしれません。しかし、もし化粧品の中には発がん性物質があり皮膚を通して体のなかに吸収されるとしたら、あなたはその化粧品を使う勇気がありますか。
 化粧品のメーカーは、売り上げを伸ばすために多額の宣伝費を使いますが、化粧品の中の毒性物質について一切、情報公開はしません。多くの方々はその危険性について知らないまま、「すばらしく美肌になる」化粧品を毎日使い続けているのです。
 なぜ健康被害をもたらす可能性がある化粧品が宣伝され販売されているのでしょうか。少し世の中のしくみを考えればわかることです。

 政治とは本来、大多数の人々の暮らしが豊かになるように行なわれるべきです。ところが現実には、政治家や官僚や一部の人々の利益と幸福のために行われているようです。また、経済とは本来は文字通り「経国済民―国をおさめ民をすくうこと」で、経済学は社会の病気を治し人々に幸福をもたらすためのものです。ところが現実は、経済・経済学は社会の病気をつくり、社会を破滅に陥れているようにみえます。
 したがってこのような政治・経済のしくみにより、日本はお金優先の社会になり、国民のひとりひとりのいのちより国の「経済」のほうを優先させています。その結果、農業生産物には農薬や殺虫剤等の化学物質が含まれ、食べ物には流通のために無数の食品添加物が加えられています。これらの化学物質がさまざまな病気をひきおこす可能性があるにもかかわらず、政府は決して国民に知らせようとはしていません。
 化粧品も例外ではありません。化粧品業界は、国内の昨年の化粧品出荷実績は1兆5千億円という巨大産業です。人々の健康やいのちよりも企業の利益優先の商品としての化粧品が市場に氾濫しています。全国に6〜7千社が化粧品を扱っていますが、いいかげんな業者が、その場しのぎの商売に奔走し、野放し同然になっているのが現実です。
 化粧品の害には急性毒と慢性毒があります。急性毒とは、アレルギー反応や炎症などの形で毒性が速やかに現れる場合です。これは比較的害の蓄積が軽く、治療が間に合うことが多いようです。ところが慢性毒は、毒性が蓄積されて、老化を促進しさまざまな病気を引き起こす危険性があります。
 この原因は化粧品の中に含まれるさまざまな化学物質です。戦後、1950年代から急速に発達した合成界面活性剤が化粧品に使われるようになりました。界面活性剤とは合成洗剤の主原料です!化粧品業界は、これを用いる事によって、量産、流通のための保存、使用の簡便さ、肌の感触、肌への付着性、洗顔などの面で大変楽になりました。
  しかし、この界面活性剤には深刻な恐るべき毒性があります。これ以外にタール色素、香料、酸化防止剤、防腐剤なども皮膚から体内に侵入し深刻な健康被害をもたらします。


318号 2006年6月18日

(37)あなたのいのちが危ないE 〜化粧品が危ない! その2〜

◇ こわい合成界面活性剤
 本来、肌は、角質層と顆粒層という2重構造の角化層によってバリアゾーンの役目を果たしています。従って、化粧品の薬効成分も基本的には顆粒層のレベルでくい止められ、その内側までは浸透しないはずです。
 皮膚組織の細胞そのものを健康にする、肌のバリアゾーンを壊さない。これこそが化粧と美容の基本です。ところが、合成界面活性剤はこのバリアゾーンの角質層と顆粒層の機能を両方とも破壊してしまうのです。これは美容にとって、そして健康にとって恐ろしい事態です。さらに合成界面活性剤には様々な有害性があります。

(1)浸透作用:皮膚に付着すると、皮膚の皮脂膜を溶かし、剥ぎ取り、細胞と細胞の間に侵入し皮膚組織の中に浸透し、さらに細胞と細胞の間のすきまを開き、細胞膜までも破って細胞膜に侵入して細胞を壊します。はては、神経細胞など様々な細胞の細胞膜を溶かし、破り、侵入し、細胞内のたんぱく質を変性させてしまいしまいます。

(2)非分解性:せっけんはほぼ1日で完全に分解されますが、合成界面活性剤はなかなか分解されません。これが自然界で放置され生態系にさまざまな悪影響を与えています。

 環境ホルモンとして生態系を壊し、魚介類や様々な生き物の奇形や受精率の低下をもたらすなど重大な環境問題になっています(「奪われし未来」翔泳社)。
 同じく人の身体の中で分解されずに残ってしまう合成界面活性剤は皮膚障害、発がん性、溶血作用、肝機能障害、生殖作用、環境ホルモン作用など様々な有害な作用があり、身体を蝕んでいきます。
 化粧品には200〜300種類の合成界面活性剤が使用されています。

@乳化剤:クリーム、乳液、マスカラ、ファンデーション、ポマード
A可溶化剤:化粧水、頭髪製品、マニキュア
B分散剤:口紅、白粉、コンパクト(固形白粉)、ほほ紅、アイシャドウ、マニキュア
C洗浄剤:洗顔クリーム、シャンプー、浴用製品
D保湿剤:化粧水、リンス、ムース
E付着剤:口紅、白粉、コンパクト、ほほ紅、マスカラ
F帯電防止剤:シャンプー、ヘアスプレー、リンス
G殺菌剤:化粧水、ヘアクリーム、リンス、フケ止め

 こんなにたくさんの合成界面活性剤が使われているにもかかわらず、化粧品メーカーは生産、流通、販売のためにさらに合成界面活性剤をより多く使用しています。さらに恐ろしい事には、合成界面活性剤は、キッチンや洗濯で使う合成洗剤の他にも、食品の乳化剤など、生活用品の様々な分野で使われています。消費者の健康やいのちを無視し、お金を優先する企業の論理がまかり通っている現状がよくわかります。


322号 2006年7月16日

(38)あなたのいのちが危ないF 〜化粧品が危ない! その3〜

 テレビや新聞では化粧品の毒性について報道はありません。企業の広告で経営が成り立っているので企業批判を避けているからです。この文章をお読みのあなたのように、世の中の出来事に関心を持ち自らの健康に注意されている方々にのみにしか伝わらないのです。
 化粧品には様々な化学薬品が使用されています。殺菌防腐剤、酸化防止剤、タール色素、紫外線吸収剤、染毛剤(医薬部外品)、酸化剤(医薬部外品)等々です。このうち、酸化剤を除くすべての添加物の9割以上がフェノール(芳香族炭化水素)で、一部にアミン系化合物も見られます。
 フェノール系化合物は代表的な発ガン物質です。これらは合成界面活性剤で壊された皮膚のバリヤゾーンを越えてからだに入っていきます。アミン系化合物も強い毒性を持ち、食品添加物の硝酸系化合物に出会うと強力な発ガン物質に変わります。遺伝毒性や発ガン性のある安息香酸ナトリウムも防腐剤として使われています。
 鮮やかな色の口紅や地肌をかくす顔料にはタール色素が含まれています。タール色素はフェノール系の化学物質です。色素を安定させるために合成界面活性剤や溶剤を併用するので、表皮を通過し、真皮やからだのなかに取り込まれます。若い女性が口紅を毎日塗るようになってから1〜2年すると唇は不健康な、つやのない色になってしまいます。
 ヘアカラーには毒性がもっとも危険性が高い薬品が使われています。染毛剤のオルトアミノフェノール、パラフェニレンジアミンはアレルギー、発熱、喘息を誘発し、発ガン性もあります。天然染料のへナにもジアミンなどの染毛剤が含まれていることもあるので、十分成分をチェックし添加物無しの100%純粋なヘナを選びましょう。
 シャンプーにも有害な化学物質が入っています。例えば「植物性洗浄成分の髪にやさしいシャンプーです」と宣伝しているシャンプーの成分は「ラウリル硫酸トリエタノールアミン(界面活性剤)、安息香酸塩、塩化ベンザルコ二ウム(殺菌防腐剤)、オキシベンゾン(紫外線吸収剤)トリエタノールアミン(中和剤)、緑色3号、黄色203号、緑色204号」等です。
 ラウリル硫酸トリエタノールアミンはほとんどのシャンプーに使われ、強力な洗浄力がありますが、同時にひどい毒性を持っています。妊娠直後のマウスの皮膚にこのシャンプーを塗ると受精卵が死にます。最近、シャンプーが原因の皮膚炎が急増しています。
 石けんシャンプーにも添加物として合成界面活性剤を使っていることがあります。「アロエ」や「炭」シャンプーも成分欄を十分チェックして購入されたほうがいいでしょう。
 毒性化粧品は長期間使用していると皮膚を壊し、からだの健康を損なう事になります。化粧品を使われる方は自分のいのちのためにも正しい情報を手に入れましょう。

参考文献
「それでも毒性化粧品を使いますか?」メタモル出版
「使うな、危険」講談社


330号 2006年9月17日

(39)あなたのいのちが危ないG 〜化粧品が危ない! その4〜

◇自然化粧品は安全か?
  化粧品の毒性に気づき、自然化粧品を選ぶ人が増えています。しかし、この自然化粧品も本当に安全でしょうか。天然素材100%の化粧品と宣伝していても安心はできません。莫大な宣伝費をかけてテレビで広告しているような会社の自然化粧品には気をつけましょう。
 全国的に売れている化粧品は大量に全国各地に出荷されるので、化粧品としての品質を維持するために様々な化学物質を利用しています。すなわち、自然な原料だからこそ傷みやすいので防腐剤の力が必要です。
 あるメーカーの「100%自然化粧品」の成分表示欄にはラウリル硫酸塩やトコフェロールなどが記載されていますが、前者は合成界面活性剤、後者はビタミンEとも言われていますが天然ではなく、石油系合成物質dl−α―トコフェロールのことです。
 「お肌の中にスッと浸透するように工夫しました」これがビタミンC入り化粧品のPR用キャッチコピーです。お肌の組織の内部まで浸透させるには合成界面活性剤を利用するしかありません。すなわち、油になじみやすいようにビタミンC自体を合成界面活性剤に加工しているのです。
 米国の栄養補助食品をネットワークビジネスで全国販売している会社の化粧品のセールスポイントは「自然の原料」「確かな品質」です。しかし、この会社の化粧せっけんには、合成界面活性剤のヤシ油脂肪酸エチルエステルスルホン酸ナトリウム、イソステアロイル乳酸ナトリウムや殺菌防止剤パラベン(パラオキシ安息香酸エチル、ブチル、プロピル、メチル)等あわせて17種類の化学物質が含まれています。
 パラベンには内分泌かく乱作用があり環境ホルモンとして認められています。環境ホルモンの怖さは微量でも生殖機能と脳への毒性があります。
 「天然由来の原料を使用している」というメーカーの化粧品のお試しセットがあります、化粧おとし、洗顔せっけん、柔肌パック、化粧液、美肌エキス、保湿クリーム、収れん乳液、これらにはすべてパラベンが使われています。そのほかに毒性のある化学物質が使われています。自然化粧品でも成分表示欄をみてから購入されたほうがいいと思います。
 「お肌のおとろえに立ち向かうあなたを応援します」という宣伝は薬事法違反です。化粧品の効能として「老化を防ぐ」「衰えを防ぐ」は薬事法で禁止表現です。化粧品には、「肌の衰えを防ぐ、老化を防ぐ」効能はいっさいありません。
 このような薬事法違反がまかりとおる背景には、厚労省高級官僚が化粧品業界団体トップに天下るなどいつものあしき官民癒着の構造があります。市場の大半を占める毒性化粧品を何も知らない大多数の国民が日常的に使い続けているのも、毒性化粧品に対して行政指導がまったくできていないからです。
 すなわち、企業や行政のトップに消費者の健康やいのちを大切にする考えが全くないのです。国の政策が国民のいのちより企業の利益を最優先しているからです。あなたはこの現実をどう思われますか?


334号 2006年10月15日

(40)ガン戦争@ 〜あなたは、ガンになったらどうしますか?〜

 ガンによる死者は、1年間で32万人を越え、年間死亡者数の第1位です。そして、今もなお全国に128万人以上の方々がガンで苦闘されています。まさにガン戦争と言っても過言ではないでしょう。生活習慣病とも言われているガンの原因はさまざまですが、今、健康なあなたも、いつガンになるかわからない時代です。残念ながら、進歩した現代医学でもガン治療の限界は明らかです。
 その中で積極的に代替医療やさまざまな治療を行いガンを治療し効果をあげている医療機関や一般の方々が全国各地で見られます。ガンを治すための啓蒙活動を行っているNPO法人ガン患者学研究所についてご紹介します。
 代表の川竹文夫氏は16年前、腎臓ガンになり、3年以内に99% 肺と脳に転移すると宣告されました。その後現代医療に頼らず、さまざまな治療法を試み完全治癒しました。
 川竹氏は苦しみ、悩み、怒り、泣き、喜び、感謝しながら・・・命がけでつかんだ、治すための知恵と戦略を一人でも多くの患者さんに伝えたいと思い、1997年NHKを退職し「ガンの患者学研究所」を設立、2001年から 月刊誌「い のちの田圃」を発行、全国各地でセミナーや講演会を開催しています。
 2003年4月、東京の「千百人集会」では、今まさに闘病中のガン患者さん千人と、ガンがすっかり治った元患者さん百人が集まり、2日間に渡って徹底的に体験の交流。実際には参加した元患者は124人でしたが、このうち約30%(40人)は現代医療の常識から見て、治るはずのない方々でした。
 「いのちの田圃」のモットー:ガンは治る。あらゆる病も治る。それが命の本質だからだ。ウェラー・ザン・ウェル。美しいこの言葉は、病や挫折の向こうにこそ、真の健康や幸福が待っていると言う・・・。

 今、「ガンの患者学研究所」が全国のガン患者さんやそのご家族の方々に、ガンを治すための基本的な心構えやさまざまな治療法についての考え方を掲載した小冊子を無料で配布しています。この小冊子「すべては、あなたが治るため」を一度読まれてはいかがでしょう。ご希望の方は下記までご連絡ください。
〒869-1101 菊陽町津久礼868−5   古川医院  232−1566


339号 2006年11月19日

(41)ガン戦争A 〜ガンを自分で治す〜

 人々は、ガンの怖さを知っていても自分がガンにならない限り、危機感をもちません。しかし、私たちはガンやさまざまな病気を患うかもしれない時代に生きています。
 病気の予防や病気の治療では「自分のからだは自分で守る」ことが基本です。糖尿病をはじめ多くの病気は生活習慣病です。病気をつくった原因は、患者自身の間違った生活習慣にあります。
 病気を治すのも間違った生活習慣を改める患者自身の努力にかかっています。生活習慣病としてのガンの治療も同じです。すべてを医者任せにして、手術や放射線や抗ガン剤だけで治そうとしても、ガン治療の現実をみてもわかるように完全治癒は難しいと思います。
 あなたのガンについての考えを変えてみてください。健康人でもガン細胞は一日平均5000個生まれるといわれています。人類すべて誰でもガン細胞を何千、何万個と持っているのです。これらが無制限に増殖してこのガン腫瘍とならないのは免疫力で防止しているからです。免疫力によってガンが増えたり、少なくなったりしています。
 ガンが自然に治ることもあります。川竹氏(元NHKディレクター)は、このガンの自然退縮の事実を知り、1993年自然退縮について国内・海外で取材し、NHKテレビ「人間はなぜ治るのか」(3回シリーズ)で放送、大反響を巻き起こしました。先述したように彼はガン患者学研究所を立ち上げ、自然退縮にいたるさまざまな方法を多くのガン患者に知らせ、実践を勧めています。その結果、ガンを治した人々が少しずつ増えています。
 ガンは生活習慣病の中でも「治りやすい」病気のようです、しかしガンが治った人たちの8割が玄米菜食をしているように、生活習慣や食生活の思い切った改善が必要です。すなわち、ガンの原因はライフスタイルの乱れ、食事の乱れ、心の持ち方の乱れです。
 ライフスタイルの乱れとは、多忙な仕事、昼夜逆転した不規則な毎日、睡眠不足、運動不足等々あわただしい現在の生活習慣です。食事の乱れとは、肉、魚、卵、牛乳などの常食で、動物性タンパク、脂肪、カロリーを取りすぎる一方、野菜不足でビタミン・ミネラルが取れていない、欧米風の食生活です。
  心の持ち方の乱れとは、職場や家庭での人間関係のもつれ、仕事上でのストレス、金銭関係やその他人生におけるさまざまなトラブルやストレスのことです。したがってガンを治す根本は、患者さん自身の生活習慣全般の改善です。結局、患者さんしか自分のガンを治せないのです。大変難しいことですが、治った方々はこのことを実践しています。 
 NPO法人 ガンの患者学研究所は小冊子「すべては、あなたが治るため」を無料配布中です。
 古川医院までご連絡ください。


343号 2006年12月17日

(42)ガン戦争B 〜本当に必要な情報は伝わらない!〜

 「99.1%は仮説」という本があります。また、この世はあやうく、不確かなことばかりです。おまけに欺瞞(ぎまん)や偽善、嘘、陰謀、謀略に満ち満ちています。テレビや新聞のメディアは本当に重要な情報を人々に伝えず、さまざまな情報が極めて巧妙にコントロールされています。これは本やインターネットなどからの情報をみれば明らかです。
 たとえば、わが国を1000兆円以上の負債を抱える破産国家寸前の状態に至らしめた政治家や官僚は説明責任は全くなく、罪にも問われません。それどころか彼らは高額の退職金と年金で優雅に暮らしています。ところが一方、この大借金のつけをおしつけられている国民は、苦しみにあえいでいます。
 すなわち国は国民には大重税を課し、障害者、高齢者等の社会的弱者にも自己負担を強いています。国民総医療費の抑制だけの目的で医療制度改革を行い、お金のない病人や高齢の病人が病院にかかれなくなっています。ある地域から医者や医療機関が消えていき、医療崩壊がすでに始まっています。これは、国による国民への情け容赦ない「いじめ」に他なりません。
 大多数の人々はテロ組織がこの9.11事件を引き起こしたものと信じています。しかし、インターネット(9.11事件で検索)や本では「9.11テロはブッシュが仕組んだ陰謀だ」とさまざまなデータをあげながら伝えています。
 しかし、大多数の人々はテレビや新聞をみてテロ組織がこの9.11事件を引き起こしたものと信じています。米国は9.11後、アフガンやイラクで戦争を仕掛け、結果として戦争特需があり不況の自国の景気対策となっています。
 医療についても同じです。ほんとうの医療情報は国民に伝わっていません。蔓延し増加する生活習慣病をみれば、現在の予防医学や治療医学があまり役に立っていないのは明らかです。現代医学以外の病気治しの代替医療もとりいれる統合医療が求められていますが、医学界やメディアは積極的に代替医療を取り上げようとしていません。
 先述したように、ガンの患者学研究所の川竹氏がガンを本当に治すための方法を東奔西走しながら全国に伝えていますが、このことをNHKなどのメディアは取り上げようとしていません。
 現在苦しんでいる全国の患者さんに本当に必要な医療情報を国が責任をもってメディアやさまざまな広報手段を駆使して国民に伝えることを望むばかりです。


347号 2007年1月21日

(43)ガン戦争C 〜体に優しい「ガンを治す方法」T・食事で治す〜

 ガンになると多くの方々は「ガンは死に至る病だ」と思い、絶望します。しかし、ガンは他の病気と同じように治癒可能です。医師から見放された末期ガンも、治ります。しかし、私がおすすめする方法は、簡単そうでいて実行するのはなかなか難しいようです。
  ガンを治すのはあなた自身ですから、あなたがどれだけ変われるかどうかにかかっています。すなわち、あなたが病気やガンに対する間違った常識をきれいさっぱり捨て去り、あなたが柔軟な頭脳で新たな知恵や知識を学び、治るための様々な方法(食事療法・心の治癒力等)を実践できるかどうかにかかっています。
 はじめに、ガンを治す食事療法は玄米菜食です(ガンを自ら治した方々の80%以上が玄米菜食を実践)。これは、肉・魚・乳製品等の動物性タンパクや砂糖類などを一切とらない食事方法です。しかし、普通の食事から玄米菜食への切り替えは至難のわざです。
  30年以上前、私は食べ物で病気が治るという講演会で玄米菜食を知り、この30年間玄米菜食がいかに予防医学と病気治療に有効かをみてきました。しかし私のまわりの多くの方々に玄米菜食の効用を理解していただくことはなかなか困難です。最初の結婚でパートナーと彼女のご両親から玄米菜食の理解が得られず、結局離婚せざるを得ませんでした。常識の壁を壊すのがいかに難しいかを思い知りました。
 しかし今は、菜食は世界の大きな流れとなりつつあります。現在、世界規模の食料危機がひろがり、世界で8億人が飢餓状態と言われています。肉より穀物が必要なこと言うまでもないことです。またヨーロッパでは1990年代のBSE(牛海綿状脳症)発生以来、菜食を選ぶ方々が数百万人の規模で増えています。
 様々な菜食の中で玄米菜食のすばらしさは世界で認められています。1977年、アメリカ政府が「マクガバンレポート」で世界中の民族の食事を調査した結果、未精白の穀物、つまり玄米と野菜を中心とした、かつての日本の食事が理想的と発表しています。そして食生活の改善を全国民に呼びかけ、現在、アメリカではガンになる人やガンで亡くなる人は減り続けています。
 1990年アメリカ国立ガン研究所は、ガン死を減らすことに役立つ野菜や香辛料約40種類を発表していますが、ニンニク、大豆、ニンジン、玄米、海藻、きのこなどでいつもいただいているものばかりです。さらに数年前、アメリカの協会が「ガンになってからの食事療法」のレポートを出していますが、菜食主義者の食事がガンと闘う上でとてもいいようであると書かれています。そして現在、玄米菜食を実行しガンを治癒した方々が増えている事実が何よりも説得力があります。
〈参考図書〉 「ガン・治る法則」12か条 川竹文夫著 三五館


351号 2007年2月18日

(44)ガン戦争D 〜体に優しい「ガンを治す方法」U・菜食の歴史を再考する!〜

 玄米菜食は実にシンプルな食生活なので、レストラン・コンビニ・ケーキ屋などをあまり利用しません。したがってこれらの方々には大変迷惑かもしれません。しかし、ガンになった方やガンの不安を抱えている方には、ご自分のいのちがなによりも大切です。健康法としての玄米菜食をご理解ください。
 大昔から農耕民族であり、神道・仏教・儒教の影響を受けてきた私たち日本人は、肉をあまり食べない穀物中心の菜食に近い食事をしてきたようです。
 菜食の歴史は古く、2500年前にインドでゴータマ・ブツダ(釈迦)が仏教を開きましたが、仏教では僧は戒律五戒で殺生が禁じられており、大乗仏教では肉食を禁止されていました。インドで仏教と同じころ開かれたジャイナ教も、戒律の第1番が「不殺生」で徹底して生命を尊重している宗教です。現在にいたるまでジャイナ教徒は菜食を実践しています。
 インドから中国を経由して、6世紀に日本に仏教が伝わりました。675年、天武天皇の勅命で僧侶の肉食が禁止されています。鎌倉時代には世が乱れ「末法思想」が流行、仏教の新しい宗派が生まれています。その結果、精進料理は、各宗派の教えとともに全国に広がり、一般の家庭でも食べられるようになりました。禅宗の精進料理は有名で、曹洞宗では料理と食べることは重要な修行のひとつであり、調理場の責任者の典座は重要な地位となっています(永平寺)。安土桃山時代に茶の湯を創始した千利休は、茶と禅の心に通じるものを見出し、茶会において精進料理の影響を受けた懐石料理を出すようになりました。
 このように精進料理は日本料理そして庶民の日々の食生活に大きな影響を与えてきました。精進料理は限られた食材を調理するため、さまざまな工夫がされています。例えば、大豆は栄養価が高く貴重なタンパク質を豊富に含むため積極的に取り入れられ、味噌・醤油・豆腐・湯葉・豆乳・納豆・油揚げなどが生み出されました。
 ところが、約140年前の明治維新以降に、欧米風の生活や文化をとりいれる国策が強力に推し進められ、パン・肉・牛乳の欧米風の食事が食卓に並ぶようになりました。特に第2次大戦敗戦後、日本は政治・経済・文化など多方面に米国の影響下にあり、まさに「主権在米」が60年経過した現在もなお続いています。戦後米国の巧妙な食糧戦略により欧米風の食生活が全国民に普及しました。すなわち、米国の余剰小麦を学校給食に供給し、子どもの時からパンと肉と牛乳の欧米風の食事を教えこむ「食育教育」が行われています。その結果、今では全国民が何の疑いもなく欧米風の食事をとり続けています。まさに米国が日本の国民の食生活に影響を与えているのです。
 今、世界がお米を主食とする日本食のすばらしさを認めています。いまこそ、世界に誇るべき知恵であるマクロビオティック(玄米菜食)を給食に取り入れ、日本本来の食生活を復活させ、全国民が健康になることを願っています。


355号 2007年3月18日

(45)ガン戦争E 〜体に優しい「ガンを治す方法」V・玄米菜食の歴史と食べもので病気が治る理〜

 「食べ物で病気を治す」というとそんな馬鹿なと思われるかもしれません。しかし、四千年の歴史をもつ中国には「医食同源」(古くは「薬食同源」)すなわち食べることは薬を飲むのと同じように心身を健康にしてくれるという思想があります。中国古代の「周礼」には食医・疾医(内科医)・瘍医(外科医)・獣医の記載があるように、食事治療専門医(食医)がいました。
 我が国でも、医師で薬剤師の石塚左玄(元陸軍少将、薬剤監)は市ヶ谷に「石塚食養所」を開き、多くの患者さんに玄米菜食による病気治しを行っていました。
 1907(明治40)年、食養会を結成。昭和になって桜沢如一が食養の理論を継承、発展させ、マクロビオティックとして世界に紹介しました。桜沢は戦前から戦後にかけて日本各地・インド・アフリカ・ヨーロッパ・ベトナムなどでマクロビオティックの啓蒙活動を行い、弟子の久司道夫らをアメリカに、クリム吉見をフランス、ベルギーに、菊池富美雄らをブラジルに派遣しました。その結果、現在世界各地でマクロビオティックがひろがっています。
 玄米菜食は、なぜからだにいいのでしょうか。以前は次のように説明されていました。「ヒトは毎日の食べ物のおかげでいのちのエネルギーをいただき、生きています。いのちある食べ物をいただき、それがきれいな血液をつくり、体をつくっていけば病気にならず、また病気になっても自然治癒が可能です」
 現在、玄米菜食の効用について様々な観点から説明されています。玄米の主成分は炭水化物(糖質)ですが、タンパク質・脂質・酵素・ミネラル・ビタミン等々身体に必要な栄養分をほとんどすべて含んでいる完全食品です。アミノ酸のリジンは含まれていませんが、他から補えば玄米だけでも十分健康に生きていけます。からだにいい発酵食品のみそと醤油は世界に誇る健康食品です。また野菜の持つ強力な抗酸化作用を利用すれば、さまざまな病気の原因の活性酸素を抑えることができ、ひいては病気治療の手助けになります。
 動物性のタンパクや脂肪を食べると血液がどろどろになるので、血液の循環によくありません。そのため、ガン細胞を殺すリンパ球などの免疫担当細胞が体の隅々まで運ばれなくなります。その結果、免疫力が低下し、ガン細胞が増殖し、肉眼的にみえるようになるまでガンが大きくなり私たちの体を蝕むことになります。ところが玄米菜食にすると血液の状態がよくなり、サラサラ血液となって血球成分が滞ることなくからだの隅々まで運ばれ、リンパ球やその他の免疫担当細胞が十分働き、ガン細胞や病原菌を攻撃し絶滅させます。玄米菜食で末期のガンから生還した方々は、ヒトがもつ本来の自然治癒力を十分発揮できたからだと思います。


360号 2007年4月22日

(46)ガン戦争F 〜体に優しい「ガンを治す方法」W・ガンを心で治す〜

 最近、笑いの効用が注目されています。「笑い」でガンを克服した患者さんもいます。「笑い」には免疫効果があります。すなわち「笑う」とガン細胞を攻撃するNK細胞が増え、免疫力がパワーアップします。笑うだけで糖尿病の患者さんの血糖値が下がる事も実証されています。アトピー性皮膚炎も「笑う」ことで症状が改善したという報告もあります。これからの医療は笑いやこころの持ち方も、治療の一環として考えていく事も必要かもしれません。
 とにかくこの地球の自然現象や宇宙について解明されていることはごくわずかです。「科学」は、99%が仮説に基づいていると言われています。世の中はほとんどわからないことばかりです。医学についても同様です。人体の仕組みや病気の原因についても解明されていないことが多いようです。こころについても同じです。これからの医療はこころについて研究し、臨床に利用することが必要と思われます。
 こころの治癒力を最大限にいかせばガンも治ります。「こころ」については今までほとんど解明されていませんでした。しかし最近、精神神経免疫学という学問によってこころの問題が少しずつ明らかになっています。精神つまりこころの状態が免疫を左右し、あらゆる病気の発病と治癒にもっとも大きな影響を及ぼしています。恐怖、絶望、不安、心配、怒り、恨み、悲しみ、焦り、生き甲斐の喪失などのマイナスの考えは、すべて免疫を下げます。一方、安心、喜び、笑い、感動、感謝、勇気、希望、愛し、愛される感情などのプラスで前むきの感情は、すべて免疫を上げます。
 したがってガンになったら、悲観的になり落ち込まないで、ガンは治る病気だから必ず治るといつも元気に日々をすごし、いつも上記のようなプラスの感情を持つことです。そしてガンは生活習慣病ですから、原因となった生活習慣の乱れを徹底的に改めれば、身体が治る方向に歩み始めるでしょう。そのためには医者から見放された末期ガンの患者さんの治癒体験から学ぶことが一番です。末期ガンを治した人にできるだけ多く会うことです。それができない場合は、ビデオや本をみることでも十分参考になります。
〜参考文献〜
「笑いの免疫学」 船瀬俊介/花伝社
「ガン・治る法則/12カ条」 川竹文夫/三五館


364号 2007年5月27日

(47)ガン戦争G 〜体に優しい「ガンを治す方法」X・心の治癒力と自助療法〜

 こころが病気になったとき、薬を使わないで「ことば」でこころを治すことができます。うつ病や不登校の子どもたちに対して心理療法、ガンのセルフコントロールとしてサイモントン療法、森田療法、自律神経訓練法、精神分析などがあります。高度に訓練された専門家が治療にあたりますが、一番の大きなポイントは「患者さんがいかに自らすすんで病気なおしに取り組むか」にかかっています。
 医者まかせのガン治療では不安や無力感でこころが暗くなることがあります。その時自分のいのちは自分でまもり、自らの病気は自分で治していく「自助療法」がおすすめです。自助療法とは、玄米菜食・手当て・気功・ヨガ・瞑想あるいはジョギング・散歩など自分でできる治療法・健康法です。自助療法を始めるとこころの持ち方も変わってきます。
 ガンになったときも、死の病という悪いイメージがあり、恐怖と絶望のストレスで大きくこころが病んだ状態となります。患者さんの精神・心理状態が病気の経過に大きく影響しています。このようなときに、まず病んだこころを治すことが必要です。専門家の指導がなくてもできます、こころの持ち方を変えるだけです。「ガンは治る」という希望のイメージをこころに刻みつけることです。このことは簡単そうで難しいかもしれません。そのためには、まず末期ガンを克服した人の体験談を徹底して読むこと、あるいは治った人に実際に会うことです。このように末期ガンから治った体験を自らのものにし「末期ガンでも治っている!ガンは治る!」というイメージをこころに焼き付けることです。希望と幸せの感情が高まるとからだ全体の免疫力が上昇し、こころもおだやかになり、体調も良くなります。その結果、少しずつガン細胞が増加しないで、少なくなり、ガンが治っていくのです。
 人生の途中で病気やガンで旅立つのはまだ早すぎます。ガンをはやく治して、自分の人生、健康を自分のものにしていくには、どんな努力も惜しむべきではないでしょう。医者を頼りにしないで、まず自助療法から始めることです。自助療法で治った人は自信と誇りにあふれています。自助療法は、身体そしてガンを治すだけでなく、患者という一人の人間のこころを癒すのです。ガンから多くを学び、ガンを契機にそれまでの生き方を改めて、ガンになる前よりもいっそう健康になり、幸せになることです。
 さあ、こころの持ち方を変え、自助療法を始めてみましょう。まず玄米菜食はいかがでしょう!


367号 2007年6月17日

(48)ガン戦争H 〜体に優しい「ガンを治す方法」Y・余命一年の悪性リンパ腫を克服〜

 現代医学によるガン治療は日進月歩の進歩で、治療で劇的に治癒することもあります。しかし、ガンによっては治療後数年で再発することもあり、いつも不安で安心で
きません。女性のガン死亡者数が一番多い乳ガンは手術しても、再発のおそれがあります。悪性リンパ腫も抗がん剤が有効な血液のガンですが再発することがあります。
 再発を防ぐには、免疫力が低下する強力な抗がん剤ではなく、からだにやさしい代替医療を組み合わせていく統合医療が最適です。古島町子さんは悪性リンパ腫W期B・B細胞びまん性大細胞型(末期ガン)から生還し、現在お元気です。NPO法人ガンの患者学研究所副代表理事として全国で自らのガン体験を講演されています。私は、昨年、宮崎市でガンの患者学研究所宮崎支部の発足会で彼女にお会いしました。
 1977(昭和52)年、古島さんは45歳でカネボウ化粧品の取締役に就任、1984(昭和59)年鐘紡株式会社の取締役に就任、キャリアウーマンとして不眠不休で活躍をされていました。当時、女性としてトップの座についた古島さんに対して風当たりが強く、ストレスは相当なものでした。小島さんは、このような過労とストレスが「ガン細胞」を生み出したかもしれないと述べています。
 2002(平成14)年5月27日、首筋に親指大のしこりができ、良性の腫瘍として切除を受けました。7月7日腹痛あり、7月24日入院、腹部に腫瘍があり、検査の結果は「悪性リンパ腫」でした。手術をすすめられるが、手術をしないで代替医療を選び、玄米菜食(マクロビオティック)やその他からだにやさしい代替医療に取り組むことしました。
  しかし、10月3日腹から肩に激痛が走り、救急車で運ばれる途中に意識がなくなりました。手術では、胃の下部がガンでただれて破裂し、すでに大腸から胆嚢にまで転移していたようです。手術後10日目に抗ガン剤を投与しはじめると心臓に異常が起き、中止することになりました。不幸中の幸いで、これでまた代替医療にすべてを賭けることにしました。ガンの患者学研究所主催のセミナーにも出席、「ガンは治る。あらゆる病気も治る。それが命の本質だから…」などなど、川竹氏の説得力ある話を聞き、代替医療を続ける決意を新たにされたようです。ビワの葉療法、里芋パスタ、生姜湿布などの自然治癒力を高めるさまざまな方法を実践し、徐々にガンを治していきました。
  現在76歳の古島さんは、心身共に、以前よりはるかに健康で幸せな人生を送られています。彼女はガン体験を一冊の本にまとめました。末期のガン患者さんやご家族は一度お読みください。特に血液のガンの患者さんには大変参考になると思います。
お勧めの図書:「絶対、生きてやる。−ガンがくれた幸せを抱きしめて」古島町子 パルス出版


371号 2007年7月15日

(49)ガン戦争I 〜体に優しい「ガンを治す方法」Z・自助努力で治った患者さんから学ぶ〜

 「進行ガン・末期のガン」とガン宣告されたとき「死」のイメージが強く、悲しみと苦しみのどん底に落とされ、心身とも疲れ果て、生命力・免疫力が急激に低下します。しかし、「末期のガン」とはあくまでも現代医療での定義です。しかも、現代医療はさまざまな病気治しの中のひとつにすぎません。鍼灸・漢方薬等の中国伝承医学、心理療法、マクロビオティック・ゲルソン療法・甲田式少食療法・リンパ球療法・その他の代替療法、そして前世療法に至るまでさまざまな病気治しの方法があります。現代医療以外の病気治しの方法を選べばまだまだ治る可能性があります。再三述べているように、これらの方法を選び末期ガンから生還し元気に生活されている方々も少しずつ増えています。
 2002年WHOは「緩和ケア」の定義を改訂しました。1990年の定義では「命が終わりに近づいたガン患者のための医療」ですが、新たな定義は「生命を脅かす病気によって起こる問題に対処する」のが緩和ケアです。「緩和ケア」の新しい定義に従えば、病気やガンによって困ったことがおきれば、緩和ケアを受ける資格があるのです。
 現在、ホスピスや緩和ケアの施設では末期ガンの患者さんには現代医学の積極的なガン治療をしないで、痛みを取り安らかに旅立たれるように、麻薬や鎮痛剤を大量に使用することが行われています。 しかし、まだまだあきらめるにははやすぎます。「進行ガンや末期ガン」の患者さんに対しても現代医療以外のさまざまな病気治しの方法を積極的に取り入れ、自然治癒力を最大限に高め、根本的な治療を行うことができます。
 それでも、ガンの患者さんや家族の方々は、現在のガン治療や病状そして今後の生活について大変不安です。すべての方々がガンをはやく治して元気なからだとこころを取り戻したいと思っています。ガンの患者学研究所が全国に「ウエラー・ザン・ウエルの会」をつくり、全国のガン患者がお互い励まし合うようにお手伝いをしています。「ウエラー・ザン・ウエル」(Weller Than Well)とは直訳では「健康なときより、いっそう健康」。すなわち、「自助努力によってガンを治した人は、ガンになる以前にも増して、心身共に、はるかに健康で幸せな人生を送ることができる」という意味です。ガンの患者さんが中心に会の運営を行っています。熊本でも毎月1回例会を開いています。
 毎月の例会では、お互いにガン克服に取り組んでいる試みを述べ、お互い「必ず治るんだ」と励まし合っています。共に一緒に治っていくためのさまざまな情報交換の場として大変有意義な集いです。ガンの患者さんやご家族のご出席をおすすめします。

日時:毎月第3日曜日 13:00〜16:00
会場:和楽3F(御幸病院敷地内)
会費:1000円 家族お二人1500円
連絡:古川医院 п@232−1566
ガンの患者学研究所 熊本支部  代表 藤本さん п@352−3038


379号 2007年9月16日

(50)ガン戦争J 〜ガンにならないために〜

 人が健康寿命を全うするには、さまざまなリスクがあります。病気の原因は、遺伝的素因より環境・生活習慣・ストレスなどによるものがはるかに多いからです。医学が進歩し、多くの病気の原因がわかってきていますが、病気は減るどころか増えています。医療関係者が病気の治療に邁進し、高額の医療費と多くのエネルギーを注ぎ込んでいるにもかかわらず、この現実です。
 病気の早期発見のための全国的な検診活動は、効果をあげていません。多くのガンは、早期発見はほとんど役に立たないというデータもあります。

 「切って、焼いて、毒をもる(手術・放射線・化学療法)」は多くのガンの場合、患者の生命をのばすことは殆どならないし、むしろ生活の質を悪くすることが多い。  ・・・UCLA乳ガンセンター所長
 
 ある高名な医学者は問いかけています「水漏れする蛇口、水のあふれる流しがあって、大ぜいの専門家が床を懸命に拭いている、しかし、水通栓をとめようとするものがどうしてこんなに少ないのか」。
 すなわち、病気を少なくするには、すでにおこってしまった病気を治療するより、病気にならないようにする予防がはるかに効果的です。ガンについても同じです。しかしこの予防医学がなぜ積極的におこなわれないのでしょうか。これは、政治家や官僚や医者などが原因だと思います。国や地方の政治家やお役人が、政治・経済のしくみの中で人のいのちより国・地方の経済を最優先する政策を採り続けているからです。政治家や医者は、病気にならない社会、そして子どもたちや高齢の方々はもちろんすべての人々が安心して楽しく過ごせる社会をつくるためにもっと積極的に活動しなくてならないと思います。禁煙・いい生活習慣・無農薬の安全な農作物・ストレスの少ない生き方等々の生活環境をつくらなければなりません。そうすれば国民は生活のレベルから生き方を変え、ガンにならない生活をできるようになると思います。
 国の健康管理や環境政策がガンの原因になることがあるのか。医学史家は、病気はただ遺伝子とか胚とか化学物質で起きるのではなく、悪い習慣、悪い政府、悪い企業、もしかすると悪い科学、悪い医学からも起きることを教えてくれる。  ・・・・「がんをつくる社会」より
 
 中国各地でガン患者が急増しているとの報告が相次いでいる。一部の専門家は環境汚染や農薬、抗生物質の過剰使用による食物汚染が原因と指摘し「政府による対策が急務」と警告する。   ・・・・共同通信 2007年9月8日

参考図書:「がんをつくる社会」 ロバート・N・プロクター 共同通信社


384号 2007年10月21日

(51)地球温暖化問題@ 〜現実となりつつある温暖化の脅威〜

 地球温暖化すなわち気候変動による影響は連日のように報道されています。地球は危機的な状況に直面しています。と言っても今まではどこか遠くの国の話でひとごとのように思っていました。しかし、今は、人類一人ひとりにとっても現実問題となっています。すなわち年々夏の暑さがひどくなり、今年は異常に暑く、いつまでも夏が続きました。この暑さが人間のからだに多大の影響を与えています。私の医院にも熱中症の患者さんが来院されていますが、全国、全世界では多数の死者もでています。また体調不良・食欲不振・全身倦怠感を訴える患者さんが多いようです。
 地球全体の気温が上昇しています。この熊本市でも年平均気温は1891年15.6℃から2006年17.6℃と2℃上昇しています。特に1996年からの温暖化は急激に進行し、地球表面温度が急上昇すると予測されています。
 2〜3℃上昇すると悲惨な状況を人類にもたらすと予測されています。「1メートルの海面上昇がすすみ、東京をはじめ全国各地、全世界の海岸沿いの主要都市は水没する。長期にわたる干ばつと熱波が続き、強大なハリケーンが世界を襲い、生き物の種が半分絶滅する。経済的損失は二度の世界大戦及び大恐慌に匹敵する。不足する水をめぐって戦争が勃発。海の生態系が狂い、クラゲとバクテリアだけの原始の海になる。地球は環境難民と飢餓難民で溢れかえる!」
 ところが「この破局を回避するために残された時間は10年しかない」との警告があります(NASAゴッダート宇宙研究所ハンセン博士)。国連事務総長が「地球温暖化―各国の指導者よ 行動せよ」と述べています(10月5日朝日新聞「私の視点」)。「気候変動は世界の政治課題の一番手である。先進国は温室効果ガスの排出を削減する最大の責任がある。政府の対策だけでなく、国境を越えて政治や経済など幅広い分野を巻き込んで国際的な協力が求められる・・・」
 温暖化をストップさせる方策は二つあります。一つは、ライフスタイルを見直すことによって、私たち一人ひとりがエネルギー消費を抑えるように努めること。もう一つは、政府が温暖化を防止するための施策を発動すること。現に、米国では、政治はブッシュ政権以降にむかって動いています。議会は環境対策重視の法案をいくつも通過させ、企業は環境重視の製品をつくっています。しかし、日本の政治あるいは企業はこの世界の温暖化対策にはるかに遅れています。私たちは政治に関心をもち、環境政策と国民の一人ひとりのいのちを重視する政治家に投票し、世の中をもっといい方向に変えていかねばならないと思います。


参考文献 「このままでは地球はあと10年で終わる」
洋泉社Mook


388号 2007年11月18日

(52)地球温暖化問題A 〜銀河系と太陽の影響〜

 地球温暖化の原因は、自然界そのものの変化であると考える科学者もいます。多くの研究者は、太陽や宇宙の変化が現在の地球の異常な気象をもたらしていると考えています。
 過去の幾多の文明の中で、太陽は神として崇拝されてきました。太陽系全体の質量の98.8%は太陽で、残りの殆どは木星が占めています。太陽やほかの惑星はチリのような大きさです。地球から太陽までの距離は11億5千万キロですが、太陽の光はわずか8.3分で地球に届きます。太陽の光は地球上のすべての生命を生み出しています。私たちは、太陽に依存し、大きく影響を受けているのです。
 太陽の表面は、光球と呼ばれる厚さ500キロの大気層があり6000度です。太陽の大気圏は地球まで達しています。光球に温度が低く強烈な磁場をもつ黒点があり、この上空で磁場のエネルギーが一気に解放されて起きる太陽表面の爆発現象が太陽フレアです。太陽フレアは地球に大きな影響を及ぼします。最近、黒点サイクルと太陽の活動サイクルが異常になっています。太陽の活動が活発になり、観測史上最大の爆発も起きています。活発な太陽の活動が地球の気候に強い影響を与え、地球上の生き物が危機的な状態に向かっているとも言われています。
 古代人は天文学を重要視し、太陽や宇宙について現在よりはるかにすすんだ知識や知恵をもち、現実的な解釈をしていたようです。すなわち、太陽に関係する宇宙の周期を研究し、やがて来る人類や地球の終焉の時間を探求していたようです。
 アメリカの宇宙物理学者ポール・ラヴィオレッテ博士は、現代天文物理学と古代文明の神話を結びつけて研究しています。彼は最後の氷河期の氷からコスミックダスト(宇宙塵)を高濃度に認め、大昔に大量のコスミックダストが地球に到達したことを推測しています。また、彼は銀河から放射される強い宇宙線粒子(スーパーウエーブ)が地球に到達していることを予測しています。1993年「ユリシズ探査機」のチームは、コスミックダストが銀河中心部から太陽系に進入していることを報告しています。彼の仮説は次の通りです。「銀河の中心で大規模な爆発がおこり、コスミックダストが急増し、ひいては太陽光線に影響を及ぼし、急激な温暖化現象が起き、氷河期が終わった」。彼は古代の様々な予言と長年の科学的調査を元に、現在の太陽系はコスミックダストが大量に発生している領域を通過しており、近い将来スーパーウェーブに出会うと地球の天候が急変、人類に深刻な被害を与えると予測しています。
 「科学は99.9%が仮説」ともいいますが、この話をあなたはどう思いますか。

参考文献   太陽の暗号  エハン・デラヴィ著 三五館


392号 2007年12月16日

(53)地球温暖化問題B 〜人間のもつすばらしい潜在能力〜

 最近、人間のもつすばらしい能力が解明されつつあります。一人ひとりの意識改革から世界を変えることも可能であることが言われています。
 村上博士(DNA解明の世界的権威・筑波大学名誉教授)は述べています。
―ヒトの遺伝子情報を読んでいて、不思議な気持ちにさせられる事が少なくありません。これだけ精巧な生命の設計図を、いったい誰がどのようにして書いたのか?まさに奇跡としか言いようがなく、人間業をはるかに超えている。そうなると、どうしても人間を超えた存在を想定しないわけにはいかない。そういう存在を私は「偉大なる何者か」という意味で十年位前からサムシング・グレートと呼んできました。細胞の核の中の遺伝子は、四つの化学の文字の組み合わせで表される30億もの膨大な情報が書かれている。その文字もAとT、CとGというふうに、綺麗に対をなしている。この情報によって私たちは生かされているのです。しかも、人間だけではない。地球上のあらゆる生き物(カビなどの微生物から植物、動物、人間まで含めると、2百万種から2千万種)が同じ遺伝子暗号によって生かされている。どうしてもサムシング・グレートのような存在を想定しないわけにはいかなくなります。私たちは約60兆の細胞の集まりですが、私たち人間は宇宙の一部です。そして地球の大自然の秩序の中で生かされています。しかし実際に働いている遺伝子は5−10%に過ぎません。つまり人間の持つ潜在能力はとてつもなく大きいのです。―
 世界的な哲学者・物理学者アーヴィン・ラズローは述べています。
―私達は地球の大きな生命システムの1部分であるという意識を再発見し、取り戻すことが必要です。世界を全体の繋がりの中でみるのです。最近10年間の素粒子レベルの実験や証拠によってこの世界は、極めて微細なレベルで強く繋がっていることがわかってきました。細胞も分子も生命体も生態系も、惑星も銀河も、目に見えない「場」―微細なエネルギーの場―の中にあって、互いに繋がれています。人間の脳は、量子、という最も微細なレベルで外界と情報交換する、とてつもない優れたシステムです。身体の全ての部分を通して、無意識の内に周囲の環境から、無限に近い情報を収集しています。人は、開かれた心を持てば、自分が時空を超えた存在であることがわかるはずなのです。広く、全人類のため、ガイアの全てのいのちのため、そして未来のために生きることが大切なのです。一人ひとりの中に変化を起こす力がある。自分自身が変わることによって世界を変えるのです。

参考文献; 「生命のバカ力−人の遺伝子は97%眠っている」  村上和雄 著 講談社     
映画「地球交響曲(ガイアシンフォニー)第5番


396号 2008年1月20日

(54)地球温暖化問題C 〜悪い政治が格差社会をつくる〜

 すべての人間がそれぞれすばらしい能力をもっているにもかかわらず、その能力を発揮できないのが現実です。その理由のひとつは、日本では明治時代、欧米列強に追いつくため、欧化政策や富国強兵の名のもとに、家庭教育や学校教育により国民を物言わぬ労働者や兵隊や市民につくり上げてきた歴史があります。残念なことに、このような社会のしくみが現在にまで受け継がれています。
 すなわち、現在もなお、教育やメディアを通して年少時より高齢になるまでさまざまな体験の中で、個性を出さず自らの意見を主張しないのが「美徳」という社会習慣が身についています。個々の人々が自由な考えを持ち、一人ひとりのすばらしい能力が発揮できる環境ではないのが、日本の現状です。
 おまけに最近では、もうける事を人生最大の目的とした市場原理主義を掲げた「小泉改革」は現在も続き、深刻な格差社会となっています。一生懸命働いても報われず、生きているのが精一杯のワーキング・プアが全国各地で急増しています。お金がない人や病気の人は「はやく死ね」といわんばかりの医療制度や社会保障制度があり、現実に医療崩壊・年金制度崩壊も進行しています。今や日本は米国と同じように一部の人間だけが富み、大多数が貧困者となる社会となりつつあります。
 2007年の世相を象徴する漢字は「偽」でした。最大・最悪のうそつきは政治家・官僚です。年金問題や防衛庁装備品疑惑は氷山の一角にすぎません。政府は国の借金は膨大なので、今後は年金などの社会保障費も増大するという理由で、国民に重税を課しています。しかし、国民に公表する一般会計以外に、特別会計があります。この特別家計は、各省庁の管理下にあり、官業を行う天下り法人に補助金、委託費などとして支給され、まさに「官の聖域」の資金源となっています。この特別会計(財政融資資金・外国為替・空港整備等々)の余剰金が50兆円もあります。また、国や独立行政法人の資産には膨大な不動産があり、売却や証券化をすれば借金を減らせるのです(独立行政法人の総資産は118兆円)。国民の税金をむだに使い、特別会計を意のままに扱う官僚を告発し、行政改革を行うことができる政府が望まれます。増税路線を走る福田首相や額賀財務相は、窮乏する国民の現実を直視すべきだと思います。
 一人ひとりの人間が、食べ物や住む場所に困らず安心して暮らせる世の中になり、自らの能力を最大限生かせるような社会のしくみが、早くできるようにいつも願っています。

ジョバンニ「さあもうきっと僕は僕のために、僕のお母さんのために、カムパネルラのために、みんなのために、ほんとうの幸福をさがすぞ」
宮沢賢治・銀河鉄道の夜よ


400号 2008年2月17日

(55)地球温暖化問題D 〜私たちに出来ること〜

 地球温暖化の原因としてさまざまありますが、大多数の科学者は過去や現在のさまざまなデーターから、人間の営みが温暖化をもたらしていると結論付けています。現実に温暖化は急速に進行し、人類は他の多くの生物種を道連れに破滅へと突き進んでいます。
 地球温暖化に私たちができることは「地球にやさしいスローライフ」を実践するしかありません。日常生活で無駄なエネルギーを使わないことです。電化製品の待機電力をできるだけ減らすこと。外国や遠くの農作物や食糧をやめ、できるだけ地元の食べ物をいただくこと(身土不二・地産地消)。例えば外国産の小麦ではなく国産の小麦で作ったパンを買うこと。余計なものを買わない(特に海外のものは買わない)、ごみはできるだけ出さない工夫をすること。政府や企業がテレビで行っている「消費をすすめる」宣伝にだまされないこと。一番大切な事は消費社会がよしとしてきた価値観を転換させ「本当に豊かな生活は何か」を問い直すことです。
 地球温暖化は一人ひとりの生活とともに国の政策にも大いに責任があります。戦争は最大の環境破壊と大量殺戮をもたらします。世界各地で内戦や紛争が多発しています。CO2排出量の世界第1、2位の米国・中国は、経済最優先で温暖化防止に積極的ではありません。中国では硫黄分の多い石炭を大量に使うため、膨大な量の亜硫酸ガスを大気中に放出しています。その結果、中国各地・韓国・日本に酸性雨や黄砂として深刻な健康被害や農作物の被害をもたらしています。
 気候変動問題では国際社会での日本の評判は最悪です。日本では温室効果ガスの削減が一向に進んでいません。先進国や中国・インド・ブラジルなどの国々では自然エネルギーを大いに利用していますが、日本は「21世紀は太陽光や風力などの自然エネルギーが経済社会に大きな役割を果たす」という世界の大潮流に背を向けています。今後の危険な気候変動や地球規模の大災害の予測について、全国民に対して積極的な説明もありません。この国は、国民一人ひとりのいのちや生活についてはあまり真剣に考えていないようです。
 結局、私たちは自分で自分のいのちを守っていくしかありません。地球温暖化・異常気象による大災害がいつ起こるかわかりませんが、いつ来ても驚かないように非常時の備えと心の準備そして「意識の変革」をしておくことです。たとえ、マヤのカレンダーが終わる2012年12月22日に天変地異(?)が起こるとしても、私たち人類には一つの試練と考えるしかありません。

参考文献: 「地球を殺そうとしている私たち」   ティム・フラナリー  発売:ソニー・マガジンズ
「不都合な真実」   アル・ゴア   講談社 ・  「太陽の暗号」  エハン・デラヴィ  三五館


404号 2008年3月16日

(56)感染症の時代@ 〜環境を破壊する病原体〜

 この地球には無数の生き物が生きています、いのちあふれる星です。荒涼とした太陽系の他の惑星と比べると奇跡としか言いようがありません。現在175万種の生き物が確認されていますが、推定では500万種とも5000万種とも言われています。ウイルス・細菌・酵母・カビ・藻類などの微生物にいたっては、数えきれないほどの個体数です。例えば、庭先の土に中には、1g約10億の微生物がいるそうです。彼らは、地球35億年の歴史の中で生命誕生の時点からの生き物で、地球の生態系の中で、重要な働きをしています。
 すべての生き物は水、空気、土を中心とした環境という生態系の中で、お互い関わりあって「共生」して生きています。地球は微生物から人間まですべての生物の共同体であり、すみかです。
 同じように、私たち人間の腸内(胃から大腸まで)にも微生物(腸内細菌)がいます。腸内細菌は、種類は300種類、数は100兆個とも言われ、食べ物の栄養成分の分解・消化・吸収やその他いろいろな働きをしています。腸内環境で生きている腸内細菌と人間はまさに共生の関係なのです。
 ところが「環境あっての生物」という原則に反しているのが病原体(病原微生物)と呼ばれています。病原体は特殊な生物かもしれません。病原体の多くは私たち人間の身体を環境としていながら、人間の身体を破壊し、生命を奪います。感染とは、微生物が宿主となる生物に本来はいないはずの部位に侵入・定着した状態です。さまざまな病原体は人におこす災い“感染症”として人類に多大な影響を及ぼしてきました。
 多くの先人たちがさまざまな感染症と戦い、今日まで多くの感染症をコントロールしてきました。人類を危機におとしいれてきた天然痘は根絶され、ハンセン病・コレラ・ペストなどは治療ができます。現在もまた、さまざまな感染症が私たちの生命を脅かしています。私たちは免疫や個々のウイルスの知識を学び、これらの感染症の脅威に立ち向かわねばなりません。
 最近全国で麻疹(はしか)の発生が起こっていますが、先進国の中で日本は麻疹の輸出国として非難を浴びています。麻疹はどのような感染症なのでしょうか。また地球規模で患者が急増し深刻な問題となっているHIV感染症―エイズ(AIDS)、きわめて強い毒性をもち、致死率6割とも言われる新型インフルエンザとはどのような感染症でしょうか。
 人間も一種の病原体かもしれません。人間は「生命進化の頂点にあり、地球上の代表的な生き物」とうぬぼれていますが、自分自身が生きている自然環境を破壊して、多くの生き物を絶滅させています(毎年4万種の生き物が絶滅)。地球環境に対して病原性をもつ私たち人間についてもあらためて考えてみたいと思います。

参考図書  
「病原体から見た人間」    ちくま新書
「人類VS感染症」    岩波ジュニア新書


409号 2008年4月20日

(57)感染症の時代A 〜人類史に影響を与えた感染症〜

 ハンセン病・ペスト・梅毒・結核・天然痘・麻疹などの感染症は、過去に多くの人々を苦しめ、人命を奪い、社会に大きな影響を及ぼしてきました。過去の歴史には、その時代を特徴付ける感染症(疫病)があり、その時代を生きた人々はその感染症から逃れられないものでした。猛威をふるう感染症に対して、ある者は死にある者は生き残り、いのちが受け継がれてきました。
 中世のヨーロッパでは、13世紀にハンセン病はピークに達しましたが、人類の歴史の中で、ハンセン病ほど不当な差別と社会的制裁を加えられた病気はありません。ハンセン病のような慢性感染症に冒され、病いを抱えたまま生き延びていく患者は悲惨な生涯をすごすことになります。ハンセン病の患者は病いによる苦痛だけでなく、想像できないような差別に死ぬまで耐えなければならなかったのです。これはつい最近まで、あるいは今もなお日本のハンセン病の患者に起こっている事実です。 
 14世紀から15世紀前半にかけて、ペストの大流行により大量死をもたらし、死(死者)はあまりにも身近でした。「メメント・モリ(死を憶えよ、死を知れ)」の思想がゆきわたり、生と死が逆転した世界でした。1348年から1353年までの6年間大流行したペストは黒死病と呼ばれました。致死率の高い劇症性の感染症のペストはおびただしい死をもたらし、黒死病はヨーロッパ全体で3000万とも3500万ともいわれる死者を出しています。
 15世紀末から16世紀にかけてのルネッサンス期に梅毒が猛威をふるいました。1495年頃突然ヨーロッパに現れた当初の梅毒は、急性の激烈な感染症として流行し、しばしば命を奪っていました。その後50年以内に現在のように進行の遅い型に変化しました。
 結核菌の慢性感染による結核は、9000年前の昔の人骨にその痕跡が認められています。結核が大きな社会問題になったのが、18世紀後半〜19世紀の産業革命期の都市における肺結核の大流行からです。一日14〜5時間労働で安い労働賃金、劣悪な労働環境と生活環境に結核やその他の感染症がはびこり、蔓延していきました。日本でも明治以降の産業革命による都市の人口集中により結核が蔓延し「結核は国民病」と言われていました。
 このように人類はその見えない恐怖に対して悲惨な体験をしてきましたが、20世紀になり、やっとそれらの感染症の原因が目に見えない微小な細菌やウイルスなどの病原体であることがわかりました。しかし、今なお、少なからずの人々に影響を与えており、多くの課題を残しています。
 さらに、現在もなお、私たちはエイズや抗生剤耐性の細菌や未知のウイルスによる感染症の脅威にさらされています。21世紀の大疫病になるかもしれない「新型インフルエンザ」の出現の危機に直面しています。感染症の歴史から多くを学び、個々の感染症の実態を知ることで、今後の感染症の蔓延を防ぎ、被害を最小限度に留めることができます。

参考文献:「感染症は世界史を動かす」  ちくま新書


412号 2008年5月18日

(58)感染症の時代B 〜ハンセン病〜

 わずか0.2〜0.4×3〜8ミクロン(1ミクロン=1000分の1mm)の桿菌であるライ菌が、有史以来、多くの人間に人として生きる道を閉ざしてきました。そして、患者の家族や社会に大きな影響をもたらしてきました。ハンセン病の歴史から、私達は「病気についての無知と誤解がいかに患者への偏見と差別、迫害をもたらしてきたか」を学ぶことができます。
 ハンセン病は、もともと熱帯地方の病気であり、インドを中心としてアジアでは古くから認められていました。紀元前4世紀、ハンセン病がインドから、中東・地中海世界に蔓延し、中世初期には全西洋に広がりました。
 中世は閉鎖的な社会であり、ハンセン病患者を中世キリスト教会は差別し、迫害し、隔離する施策をとりました。患者は、生きながら自分の死の葬儀を目の当たりにし、死ぬがよいと言われ、ラザレット(隔離施設)に追いやられました。13世紀にはヨーロッパ各地に2万ヵ所のラザレットがありました。ハンセン病にかかると、肉体的な苦痛だけでなく、患者の市民権、人権、生存権の剥奪にまで及びました。病原体の知識がなかった時代、感染することは罪であり、患者は「神から裁かれた罪人」とみなされていました。日本でも、1996年3月27日「らい予防法の廃止に関する法律」が成立するまで、ハンセン病隔離政策のもとに、患者は偏見・差別をうけ続けてきました。
 ハンセン病はかつてレプラと呼ばれ、ライ菌による慢性の感染症です。ライ菌は感染力が弱いため長時間の密な接触がないと感染せず、たとえ体内にライ菌が入ったとしても、たいていの場合は死滅します。ごく限られた場合にのみ、菌が生き残って体内で増え、感染に至ります。子どものときに感染し、長い潜伏期を経て大人になって発症します。
 ライ菌は神経や皮膚で増殖します。知覚神経が麻痺するため、けがをしても痛みを感じないので患部が化膿しても気づきません。運動神経が麻痺すると、筋肉が萎縮して手足が変形することがあります。炎症によって皮膚が崩れて潰瘍になり、皮膚に腫瘤が出て、顔面に変化が現れます。潜伏期間が長いので感染経路がわかりにくく、中世の人々にとって、ハンセン病は身体的病変と「不治の病い」の誤解ため、人々は、はるか昔からつい最近まで、この病気を怖がり、患者を差別し迫害し遠ざけていました。
 1871年ノルウェイのハンセンによって病原体が同定され、1940年代以降、化学療法による治療が可能となり、現在、日本ではほとんどの患者が完治しています。
  現在でも、熱帯・亜熱帯を中心にハンセン病の患者が出ています。WHOの発表では1985年から2005年末までに全世界で1,400万人以上が治癒し、有病者数は23万人ですが、新規患者数は年間約26万人と報告されています(2006年)。日本では最近の新規患者数は、毎年、日本人は0〜数名、在日外国人は約6名です。在日外国人患者についてはブラジルやフィリピンなどからの若い労働者が目立ちます。なお、全国15のハンセン病療養所には約2,800名(平均年齢80歳)の入所者がいます。しかし、ほとんどの入所者は治癒していますが、後遺症や高齢化などのため引き続き療養所に入所しています。

参考図書:「感染症は世界史を動かす」  ちくま新書


417号 2008年6月22日

(59)感染症の時代C 〜ペストT〜

 20万年前、私たちの祖先ホモ・サピエンスがこの地球に登場して以来、厳しい自然環境のなかで飢餓や外敵そして感染症に脅かされ、危機的な状況になりながらも、今日まで生存してきました。中世に大流行したペストは、世界で7000万人、ヨーロッパで3500万人の人命を奪っています。1300年のヨーロッパの総人口が7300万人、1500年の世界人口が4億2500万人(推定)ですから、ペストがいかに恐い伝染病かわかります。(現在、世界人口66億人で、感染症全体による死亡数が年間1350万人)。ペストは540年ごろエジプトに発し、ローマ帝国に蔓延しています。
 1348年、イタリアのフィレンツェは屍(しかばね)の町と化していました。路地を1本通り過ぎる間にも、腐臭を放つ死体に出会い、家々の戸口には死骸があちこちに転がっていました。そしてペストはヨーロッパ全体にひろがっていきました。フィレンツェのボッカチョは黒死病に遭遇し、「デカメロン」を著し、黒死病の渦中にあった人々の生活を忠実に描写しています。「おびただしい数の死体が、どの寺にも、日々、刻々、競争のように運び込まれました。どこも墓場が満員になると非常に大きな壕を掘って、その中に一度に何百と新しく到着した死体を入れ、幾段にも積み重ね、壕もいっぱいに詰まってしまいました」(デカメロン・岩波文庫)。
 中世ヨーロッパでは、人々は教会と領主の2重の権力に縛り付けられ、人口の大半を占める農民は荘園に縛りつけられた農奴で、自分自身の体さえも自分のものでなかったのです。当時の都市の生活環境も劣悪で、上下水道の整備もなく、生ごみや自らの排泄物も街路に投げ捨て、運河に垂れ流していました。動物も糞尿を撒き散らしながら歩き回っていました。人々は極めて不潔な生活環境で生活をしていました。自然災害、天候不順による凶作、飢饉のため、農村では餓死者が相次ぎ、慢性的食料不足による劣悪な栄養状態、おまけにイギリスとフランスの百年戦争のため、人々は極限状態で生活をしていました。そこに黒死病がやってきたのです。
 先進諸国では19世紀までにほとんど根絶されましたが、1994年インドでペストが発生しているように アジア、アフリカ地域の国々を中心に依然として患者発生がみられます。
 日本での流行は明治32年に台湾から来航した船舶からペスト菌を持ったネズミとペストに感染した船員が神戸港に上陸したので始まり、周辺の地域にまでペストが拡大しました。その後、1899年、1900年、1905年〜1910年代に大きな流行があり、その後、大正15年まで散発的に流行を繰り返し、昭和4年に最後の患者となり、その後、現在までペストの発生は報告されていません。


421号 2008年7月20日

(60)感染症の時代D 〜ペストU〜

 いつも長い文章を読んでいただき、ありがとうございます。この感染症シリーズは少々退屈かもしれません。しかし、過去の危険な感染症の教訓は現在にも生きています。歴史や過去に学ぶことは現在を生きる上で極めて重要な事だと思います。
 ペストは元々、齧歯類(特にクマネズミ)に流行する病気で、人間に先立ってネズミなどの間に流行が見られ、人間、ネズミ以外に猿、兎、猫などにも感染します。菌を保有したネズミの血を吸ったノミに人が血を吸われた時にその刺し口から菌が侵入します。また感染者の咳や痰などに含まれる菌を吸い込む事で感染します。
 ペストは、致死性の高い劇症型の急性細菌感染症で、原因となるペスト菌(腸内細菌科)が体内に入って2〜5日たつと、全身の倦怠感に始まって寒気と高熱が続きます。そしてリンパ節炎、敗血症および小出血斑を生じ、重症化すると中毒症状、意識障害からショックを伴い、死に至るケースもあります。腺ペスト(80〜90%)が最も普通に見られ、リンパ腺が冒されます。感染したノミに刺された場合、まず刺された付近のリンパ節が腫れ、ついで腋下や鼠頸部のリンパ節が腫れて痛みます。リンパ節はしばしばこぶし大にまで腫れ上がります。ペスト菌が肝臓や脾臓でも繁殖して毒素を生産するので、その毒素によって意識が混濁し心臓が衰弱して、多くは1週間ぐらいで死亡します。死亡率は50〜70パーセントとされています。ペスト菌が血液によって全身にまわり敗血症を起こすと、皮膚のあちこちに出血斑ができて、全身が黒いあざだらけになって死亡するので黒死病とも呼ばれます。肺ペストは、気管支炎や肺炎を起こし、強烈な頭痛、嘔吐、39〜41℃の弛張熱、急激な呼吸困難、鮮紅色の泡立った血痰を伴う重篤な肺炎像を示し、2〜3日で死亡します。
 ペスト菌は強力な感染力のため、空気感染で広がります。発病した患者をできるだけ早く発見し、治療する必要があります。患者を伝染病院に隔離して、抗生物質(ストレプトマイシン、テトラサイクリン、サルファ剤等)を投与します。
 現在、この日本でも、安心はできません。観光客や商社マンがペスト菌常在地域(アフリカの山岳・密林地帯、東南アジアの熱帯森林地帯やヒマラヤ山脈地帯、中国・モンゴルの草原地域、北米南西部のロッキー山脈周辺、南米のアンデス山脈および密林地帯等々)を訪れています。また、この地域から資材や食品、ペットの輸入も増えています。東京などの大都心ではクマネズミが大量に繁殖しています。
 人間の生活環境・社会環境が悪化すると疫病が流行します。今後、大地震や巨大台風などの自然災害により生活環境・社会環境が破壊されると、ペストをはじめさまざまな感染症が流行するかもしれません。