矢原正治
(148)キキョウ キキョウ科
今月はキキョウです。7月末から咲き出しています。青紫の花が綺麗で、薬用では根を用います。根の形が薬用人参に似ているので、薬用人参の偽物として用いられた歴史もありますが、効果は大きく違います。しかし、韓国ではキムチに用いられ「キキョウキムチ」として売られています。もし手に入るのでしたら、キュウリ・ニンジン・タマネギ等の野菜と混ぜて食べると美味しいです。
キキョウの根は、生薬名“桔梗”といい、用途は鎮咳去痰、漢方では強壮、排膿、咽喉痛を目的に配合され、最も簡単な処方は、桔梗湯(桔梗4g、甘草2g/一日分)です。桔梗湯は、咽喉の炎症(急性扁桃炎、扁桃周囲炎、急性咽頭炎、喉頭炎)に伴う咽喉腫痛、咽の痛み、咽の違和感による咳などに用います。
キキョウは秋の七草に含まれています。
《萩の花尾花葛花なでしこの花おみなえしまた藤袴朝顔の花(山上憶良作)》
万葉集のこの歌に出てくる朝顔は、キキョウと言われています。秋の七草は鑑賞用の美しさで選ばれています。月見をしながら花を愛で、団子を食べる(月見で団子)のイメージですが、全て薬用植物です。
<秋の七草>
萩(ハギ) 根:女性のめまい、のぼせに。
オハナ(ススキ) 根茎:利尿薬として。
葛(クズ)花:二日酔いに。
クズの根:葛根湯などの漢方薬に根から取ったデンプンをくず湯として。
撫子(ナデシコ) 種子:むくみ、月経不順に。オ女郎花(オミナエシ)根:利尿薬または腫れ物に。
藤袴(フジバカマ)全草:乾燥させ風呂に入れて皮膚のかゆみ、神経痛に。
桔梗(キキョウ) 根:咽の痛み、咳・痰に。
アサガオの種子:つぶして下剤に用います。
私たちが、食べる植物は、機能性がありますので、広く考えると全てが薬用です。また身近にある植物もたくさんの薬用植物がありますが、有毒植物もありますので、分からない物は口にしないで下さい。
先日、私の連載を見ているという方から、ブドウのような房の実がなったのでと「ヨウシュヤマゴボウ」を見せてもらいました。ブドウのような実と電話で言われたので、蔓性のブドウかと勘違いしましたが、実際に見せてもらってよかったです。
ヨウシュヤマゴボウは、有毒植物で、根を食べると嘔吐・下痢を起こしますので、食べないで下さい。ヨウシュヤマゴボウの暗紫色の果実を使って子供たちが色水を作り遊んでいますが、問題は出ていませんので、たくさんなめなければ大丈夫のようです。有毒成分は、根にたくさん含まれますので、食用にするヤマゴボウ(アザミの根)と間違って食べないで下さい。酷い目にあります。
暑い毎日が続きます。心身のバランスを普通に保ち、皆さまご自愛下さい。 |