三里木区 たわらや酒店 宇野功一
(149)日本最北端の酒蔵
国稀(くにまれ)酒蔵訪問記 その1
◆留萌本線 留萌駅下車
本来ならば九州から鉄道を乗り継いで渡道を試みたいところでしたが、週末を利用して北海道を巡るとなると、飛行機を使わざるをえませんでした。
2月10日(日)、札幌から旭川の手前に、深川という駅があります。深川から日本海の港町の留萌まで伸びる全長50.1qのローカル線・留萌本線に家族4人で乗り込みました。2両編成のディーゼルカーは、定刻の午前11時10分に深川駅を出発。一面真っ白の石狩平野から小高い山を登り始めました。峠下駅から下り勾配となり、およそ1時間で、12時7分に留萌駅に到着。
昭和62年3月に訪問して以来、32年ぶりの留萌駅訪問。当時は留萌が終着駅ではなく、そこから増毛駅と日本海沿いを北上する羽幌線が伸びていましたが、廃止となり、駅前もすっかり寂しくなってしまいました。ここからバスで約30分、旧増毛駅へ。2年前に留萌〜増毛間が廃止となり、バスが唯一の交通手段となってしまいました。13時9分、旧留萌駅前に降り立つと、日本海側から突風で、雪が体に勢いよく当たり、吹雪の歓迎を受けました。このバス停から徒歩で350m、国稀(くにまれ)酒造へ。駅前の商店街なのですが、冬季営業するお店はなく、ただただ雪がふぶいている人気のない街でした。気温は−15℃で今年一番の寒気も歓迎してくれました。
■日本最北端の酒蔵「国稀(くにまれ)」
熊本から2300q。日本酒を醸造している最北端の酒蔵が國稀(くにまれ)酒造です。
江戸時代、北海道には酒蔵が存在していませんでした。明治になり、北海道開発が行われ、酒蔵がぽつぽつと産声を上げました。北海道内で日本酒を造る蔵は15社。面積の割に酒蔵がないのはそのためです。
木造2階建ての風格のある建物。蔵の中は、外のふぶいているところと違いあたたかく感じました。「いらっしゃいませ」と國稀酒造・佐藤敏明さんが出迎えてくれました。長年、酒蔵に仕えて、番頭さんのような存在です。「今日は、札幌ゆきまつりの会場へ、社員総出で出張していますので、私が案内をします」とのことでした。玄関があり、帳場があり、奥に通路が伸びて、その奥に土蔵の酒蔵をこしらえた、日本海沿いの酒蔵に共通する様式の建物でありました。帳場から女性の事務員さんが、酒粕をお湯で溶いて温めた甘酒を出してくれました。
吹雪で冷えた体を、体の中から温めてくれる甘酒のおもてなしはとても嬉しく、そしておいしかったです。
厳冬の最北端の酒蔵訪問記、次に続きます。 |