三里木区 たわらや酒店 宇野功一
(148)分かりやすい日本酒の世界A
日本酒の影の主役 麹カビについて
◆日本酒の影の主役 麹カビ
皆さまに問題です。
「お酒はどんな飲み物ですか?」
これはすぐに答えることができると思います。
「液体の中に、アルコール(エチルアルコール)が入ったもの」と・・・。
日本では、酒税法によって、酒類とはアルコール分1度(1%)以上の飲料との規定があります。
では次の問題です。 「どのようにしてアルコールを作りますか?」
少し考えてしまうと思います。
簡単にいうと、酵母菌が呼吸をすることで、糖分をアルコールと二酸化炭素に分解する反応なのです。これをアルコール発酵といいます。
ブドウを利用してワインを造る場合は、ブドウジュースには糖分が入っていますので、簡単にアルコール発酵が始まります。
ビールは、麦のままでは発酵しません。
麦に水を含ませて、麦芽にします。麦芽には糖分が含まれますのでアルコール発酵します。
日本酒は、米を原料とします。米はデンプンで出来ていますのでこのままではアルコール発酵しません。
米のデンプンを糖分にする影の主役が「麹カビ」なのです。日本酒のみならず、焼酎、味噌、醤油も麹カビを利用しています。日本の食文化全体を支えているのが麹カビと言えると思います。
日本酒を造る時に用いられる麹カビをアスペルギルス・オリゼーといいます。この麹カビは、デンプンに付着すると、アミラーゼという「糖化酵素」を作り出してくれます。また、麹カビは糖化酵素だけでなく、若干のプロテアーゼ(タンパク質をアミノ酸に分解する酵素)も作り出してくれます。この微量なアミノ酸が、日本酒の旨み・コク、ふくらみ、苦み、味わいの奥行を作り出すのです。
味だけにとどまりません。麹カビが作り出すアミノ酸が、酵母菌に取り込まれて、日本酒に含まれる香りの成分をも作り出しているのです。私たちのご先祖の方々は、経験的に麹カビを上手に利用して、酵母菌を使って、おいしい日本酒やおいしい焼酎、そして、日本を代表する調味料である味噌や醤油を作ってきたのです。
あまりにも身近な存在で、しかも目に見えない存在なので、意外と日本の食文化の原点を知らない日本人がいかに多いことか…。
知っておかないと、チコちゃんに叱られますよ。
「ボーッと生きてんじゃねーよ!」ってね。 |