緑ヶ丘区 弁護士 衛藤二男
(44)離婚裁判事例
今月号は、少し趣向を変えて、これまでの約30年間に及ぶ弁護士生活において私が担当した多数の離婚事件を基にして、「夫婦間の愛情と信頼の関係」について感じたことをつれづれなるままにお話ししてみようと思います。
憲法第24条は、「家族生活における個人の尊厳と両性の平等」という標題の下に、次のように規定しています。
第1項 「婚姻は、両性の合意のみに基づいて成立し、夫婦が同等の権利を有することを基本として、相互の協力により、維持されなければならない」
第2項 「配偶者の選択、財産権、相続、住居の選定、離婚並びに婚姻及び家族に関するその他の事項に関しては、法律は、個人の尊厳と両性の本質的平等に立脚して、制定されなければならない」
憲法は、婚姻や家庭生活のあり方についての基本法として、婚姻や家庭生活のあるべき姿を示しています。すなわち、戦前の家制度や家長制度を中心とした婚姻関係や、家庭生活とは異なり、個人の尊厳と男女は本質的に平等であることを中心とした婚姻関係や、家庭生活を築くべきであるという理念を示しています。
次のような事例について、皆さまはどのように感じられることでしょうか。
「20代後半の男女が仕事の関係で知り合い、約1年の交際の後に入籍して晴れて夫婦になり、夫の実家(農家)で夫の両親と同居を始め、その半年後にはかわいい子ども(孫)も誕生しました。ところが、奥様と義理の両親との間で子ども(孫)の養育の方法や家事のやり方を巡って意見が食い違い、義理のご両親は、『嫁(奥様)の養育方針では孫に当家を継がせることはできない、嫁は当家の家風にはふさわしくない』などと広言するようになり、家庭生活もギクシャクするようになりました。夫は、妻よりも両親の言い分を聞くだけで、妻には我慢するように言うばかりです。そこで妻は、このような生活には耐えられない、ということで子どもを連れ実家へ帰り、別居生活となりました。そして、ついに結婚後2年に、性格の不一致を理由として離婚することになりました」
家の跡取りとしての子を産むのが嫁の勤め、嫁は家の働き手、などという昔ながらの家制度を中心とした結婚観に染まっている家庭では、息子さんの結婚についてもそのような結婚観で若夫婦を見るため、どうしても溝が生まれるのです。
このような家庭では、夫婦の合意で結婚はしたけれど、その夫婦の間には、個人の尊厳とか両性の本質的平等という価値観は生まれていないようです。
結婚生活において最も大切なことは、お互いに相手方を一人の人間として尊重して信頼し、その上で深い愛情が醸成されることではないでしょうか。これが夫婦の絆というものではないか、と考える今日この頃です。
衛藤二男法律事務所
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