緑ヶ丘区 弁護士 衛藤二男
(43)葬儀費用について
≪相談の内容≫
葬儀費用は、相続財産の中から支払っても良いのでしょうか。また、葬儀費用は、本来は誰が負担するべきでしょうか。私は、父の死亡が突然であったために、やむを得ず自分の定期預金を解約して父の葬儀費用として200万円ほどを立て替えて支払っています。相続人である兄弟姉妹にも負担してもらいたくて相談しましたが、支払ってくれません。お香典も皆で分配するべきだともいわれています。
葬儀費用は、私が一人で負担しなければならないのでしょうか。お香典は、相続財産として分配するべきでしょうか。
≪回 答≫
まず、葬儀費用は、被相続人の死亡後に発生した費用であり、その費用がたとえ被相続人のために使用されたとしても、被相続人が負担するべきものではありません。したがって、被相続人の相続財産(葬儀費用相当額の支払債務)ではなく、相続財産対象ではありませんから、遺産分割調停や遺産分割審判では解決できません。もちろん、相続人間で協議して誰がどのように負担するかが決まれば、その合意は有効ですから、その合意に従えばよろしいでしょう。問題は、相続人間で協議が整わない場合です。葬儀費用は、最終的に誰が負担するべきかということについてはいろいろな考え方があり、どれが正しいとも言えないのが現状です。
葬儀費用は、本来は喪主や相続人のために執り行う儀式ではなく、被相続人のために執り行うものですから、被相続人の社会的地位や資産の状況、交友関係などさまざまな要素があるために、その金額も千差万別です。また、地域によってもいろいろな決まりや慣習もあるためにそれも考慮することが必要です。
また、香典も被相続人の死亡後に喪主となる人が受け取るものですから、相続財産ではありません。被相続人の葬儀費用の一部に充てることを目的としているとも考えれていますので、通常は喪主が負担する葬儀費用の一部に充当することが許されると考えられます。葬儀費用の負担を全くしなかった相続人が、香典も相続財産と同じように相続人間で平等に分配するするべきだと主張することもよく聞くことですが、香典の趣旨からすると少し筋が違うとも言えます。
いずれにせよ、このように葬儀費用の負担や香典の分配の可否については、法律上の基準はありませんので、まずは当事者間で十分に話し合いをして解決するのが望ましいでしょう。
衛藤二男法律事務所
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