三里木区 たわらや酒店 宇野功一
(140)安い日本酒はこうしてできる
三倍増醸造酒の生い立ち 後編
前回の続きです。
では一体、いくらぐらいで出来るのでしょうか?概算をしてみましょう。
【純米酒60%精米 1800mlの原価】
●原料米1俵(60kg) 15,000円 ●玄米20俵で純米酒を仕込むとします。
原料原価:15,000円×20俵=30万円
20俵=20×60kg=1200kg
60%にまで精米するとその重量は
1200s×60%=720kg
総米720kgの仕込みとなります。白米1トン当たりの、発酵によるアルコール生成量は、320リットル/tですから、総米720kgの仕込みだと、発酵から得られる純粋なアルコールは、0.72t×320リットル/t=約230リットル。アルコール度数16%の純米酒であれば、230リットル÷0.16=1438リットル =1升瓶換算で約800本の純米酒が得られます。純米酒一升瓶1本当たりの原料米の原価は、30万円÷800本=375円、純米酒1800mlの原価=375円を覚えておきましょう。
次にこの純米酒を三倍増醸造酒に加工するとします。総量1t当たり720リットルまでの醸造アルコールを添加できるので、総米720kgであれば、518リットルの純粋なアルコールを添加できます。醸造アルコールの原価は、1kl当たり16万円なので、1リットル当たりの原価は
160円/リットル。この仕込みの醸造アルコールの原価は、518リットル×160円=82,880円。
三倍増醸法で得られる酒量は、発酵によるアルコール量230リットル+添加する醸造アルコール量518リットル=748リットル。これをアルコール度数16%に換算すると748リットル÷16%=4675リットル=一升瓶換算で2597本となります。
原価は、原料米原価30万円+添加する醸造アルコールの原価82,880円=382,880円。これに糖類や酸味料の原価を加算すると約40万円となります。三倍増醸造酒一升瓶1本当たりの原価は、40万円÷2597本=154円、三倍増醸造酒
1800mlの原価=154円を覚えておきましょう。
日本酒の酒税は、清酒15度以上16度未満、1kl当たり140,500円。15度を超える1度ごとに9,370円を加算となります。16%未満の清酒1本当たりの酒税は、1升瓶1本当たり253円。純米酒の原料+酒税=628円、三倍増醸造酒の原価+酒税=407円ということになります。これに、製造コストや流通マージンを加えて、三倍増醸造・清酒の一升パックで1,000円未満(税込)の製品が市場に流通することになります。この種類の日本酒が日本酒全体の半分以上を占め、日本酒全体を「美味しくない」「まずい」とイメージに染めてしまっているのが現状です。あなたはどの日本酒をチョイスしますか? 安価な酒?それとも、まっとうな酒? |