三里木区 たわらや酒店 宇野功一
(131)B級グルメと地酒C 昭和時代編
◆昭和時代のB級グルメ
今回は、戦前の昭和時代に熊本で誕生したB級グルメを紹介します。太平燕(たいぴーえん)をご存知でしょうか? 太平燕はもともと、中国福建省地方の中華料理でした。太平燕は一言で言い表すとスープ春雨料理です。およそ100年前、福建華僑が九州に渡ってきて、創作を加え、熊本流にアレンジされ、現在の太平燕が生まれたと言われています。
熊本の中華料理屋で、太平燕がメニューとして登場し始めるのは、1933(昭和8)年〜1934(昭和9)年頃と言われています。熊本での太平燕発祥の店は、紅蘭亭(熊本市安政町)説、会楽園(熊本市新町)説、中華園(元県民百貨店8階)説とさまざまな説があります。どの店も創業が昭和8年前後であり、それ以降に太平燕がメニューに登場して、熊本の人々が食したことは事実です。いずれにしても、華僑という組織は、横の繋がりが強いので、レシピなどについても相互に情報交換をして、よりおいしく、より熊本人の好みの味に改良されていったことも事実でしょう。
太平燕をB級グルメで紹介するのは太平燕に申し訳ないかもしれませんが、戦前の食の中で、世界各地からさまざまな食材が持ち込まれ、大正のモダンで自由な時代を過ごし、最終的な完成系に達したのがこの時代のように思います。ですから、太平燕はB級グルメではなく、A級グルメかもしれません。
多くの人が九州・熊本の麺と言えば、とんこつラーメンをイメージされると思いますが、もしかすると太平燕の方が歴史ある食べ物かもしれません。太平燕は家庭で作ることができますし、学校給食のメニューとして登場するほど熊本では一般的な料理です。
長崎ちゃんぽんの麺が春雨麺に替わったものですので、肉や魚、野菜をたくさん食べることができ、子どもから大人まで大人気です。
◆平燕の簡単レシピ
〜用意するもの(2人前)〜
●緑豆春雨80g ●ショウガ薄切り数枚 ●豚肉50g ●イカ50g
●エビ50g ●ニンジン15g ●しいたけ1枚 ●キャベツ200g
●青ネギ1/2本 ●かまぼこ(ちくわ可)半個 ●卵1個
●キクラゲ(あれば少々)
●水3カップ(600ml) ●鶏ガラスープの素 大さじ1 ●塩 小さじ半分
●胡椒 少々 ●日本酒 大さじ1 ●薄口しょうゆ 大さじ1
〜作り方(意外と簡単に作れますよ)〜
@ 材料は食べやすい大きさに切る。春雨は水かぬるま湯で戻す。
A 中華鍋を熱して油大さじ1〜2を入れ、ショウガ、豚肉、イカ、エビ、ニンジン、シイタケ、かまぼこ、ネギを炒め、塩胡椒して、最後にキャベツを炒める。
B 炒めた具の2/3量を鍋から取り出す。
C 湯とスープの素を加えて、酒、薄口しょうゆを加え、ひと煮立ちさせる。
D 春雨を入れて取り出した具を戻し、器に盛る。
E ゆで卵のしょうゆ漬けを半分に切って乗せる。
太平燕には、熊本の泰斗(千代の園)、香露、瑞鷹などの芳醇な味わいの日本酒がぴったりです。男の手料理で、一献どうでしょうか? |