弁護士 衛藤二男
(32)自然災害による被災者の
債務整理に関するガイドラインB
最終回は、まとめとして、この債務整理の申し出から終了までの手続きの概要をお話します。
◆1 債権者への手続き着手の申し込みと同意
@まず、熊本地震による被災者(債務者)は、住宅ローンを組んだ金融機関(債務の元本総額が最大の債権者で、主たる債権者といいます)に対して、本ガイドラインに基づく債務整理手続きに着手する旨を書面で申し出ます。
Aこの債務者からの申し出に対し、主たる金融機関は申し出を受けてから10営業日以内に、その申し出に同意するかどうかを書面で回答します。
◆2 登録支援専門家の選任依頼とその委嘱
@次に、メインの金融機関から債務整理の申し出について同意を得た債務者は、関係機関(弁護士会、公認会計士会、税理士会、不動産鑑定士協会等)を通じて、全国銀行協会(全銀協)に対し、関係機関に登録された登録支援専門家を委嘱することを依頼します。
A全銀協から推薦依頼を受けた関係機関は、登録支援専門家を全銀協へ推薦し、その推薦に基づいて全銀協は登録支援専門家の委嘱をします。ほとんどの場合、初めに弁護士が登録支援専門家として委嘱され、必要に応じて不動産鑑定士等が委嘱されているようです。
◆3 債権者への債務整理の申し出
@登録支援専門家が決まると、債務者は登録支援専門家の援助を受けながら、メインの債権者(金融機関)のみならず、原則として全ての債権者に対して、書面により債務整理の申し出をします。
Aその申し出の際には、財産目録、債権者一覧表、陳述書(事情説明書)その他必要書類を揃えて、これを債権者へ提出します。
B注意しなければならないのは、この債務整理の申し出があった時点から債務整理の終了するまでの期間(これを一時停止期間といいます)は、債務者は一定の場合を除いて資産の処分等や新たな借入ができなくなるし、債権者も弁済を受けたりすることができなくなります。これに違反すると、本ガイドラインに基づく債務整理手続きの利用を拒否されます。
◆4 調停条項案の作成・提出と債権者の同意
@債務整理の申し出の後、一定期間内に、債権者に対して、債務の弁済に関する調停条項案を作成して提出しなければなりません。
Aこの調停条項案には、いくつかの要件がありますので、登録支援専門家の助言等を受けながら作成します。
B調停条項案の作成に際して、債権者との事前の協議をすることもあります。
C調停条項案について、全ての債権者の同意が得られたら次の段階へと進みますが、その同意が得られないかまたは得られる見込みがないときは、債務整理手続きは不成立となって終了します。
◆5 特定調停の申し立てへ
@調停条項案について債権者の同意を得た場合(同意の見込みを得た場合も含む)、債務者は、簡易裁判所へ特定調停の申し立てをします。
A特定調停手続きにおいて調停条項案が調停調書へ記載されて同手続きは終了し、これと同時に、本ガイドラインに基づく債務整理手続も終了します。
Bその後は、債務者は、調停条項に従って返済していくことになります。
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