緑ヶ丘区 弁護士 衛藤二男
(30)自然災害による被災者の
債務整理に関するガイドライン
今回は「自然災害による被災者の債務整理に関するガイドライン(以下、本ガイドラインといいます)」についてのお話です。今回は、本ガイドラインに基づく債務整理を申し出ることができる債務者について説明します。
本ガイドラインに基づいて債務整理を申し出ることができる債務者とは、個人の債務者であって、以下の要件にすべて該当しなければなりません。
なお、以下の各要件については、更に詳しく説明する必要がありますが、紙数の関係で、詳しい説明は次回以降に説明することにします。
@住居、勤務先等の生活基盤や事業所、事業設備、取引先等の事業基盤が今回の熊本地震の被害を受けたことにより、現在負担している住宅ローンや住宅リフォームローン、事業性ローンその他の債務を弁済することができなくなっていること、または近い将来においてその債務の弁済をできなくなることが確実であると見込まれること。
A弁済について誠実であり、その財産状況(資産と負債)を債権者に対して適正に開示していること。
B熊本地震が発生する前において、現在負担している債務について、期限の利益を喪失させる事由に該当する行為がなかったこと。ただし、その行為についてその債権者の同意がある場合は除く。
C本ガイドラインに基づく債務整理を行った場合、債権者の立場から見て、破産手続や民事再生手続と同額以上の回収見込みがあり、経済的な合理性が期待できること。
D債務者が事業の再建・継続を図ろうとする事業者の場合は、その事業に事業価値があり、債権者の支援を得られることで事業再建の可能性があること。
E債務者が反社会的勢力(暴力団関係者等)ではなく、その恐れもないこと。
F破産法第252条第1項(第10号を除く)に規定する免責不許可事由がないこと。
以上の要件との関係で、若干の補足説明をしておきます。
まず、本ガイドラインは、「熊本地震の被害を受けたことにより」、それまでに弁済できていた債務の弁済ができなくなった、または近い将来においてその債務の返済ができなくなることが確実という要件がありますので、原則として、「熊本地震の被害を受けたこと」を資料によって証明する必要があります。
その資料としては、家屋や事業所・事業設備等が損壊又は流失した場合は、り災証明書、被災証明書がありますが、これらの証明書を提出できないときは、陳述書という書面で事情を説明することもできます。勤務先等が被災して収入や売上が減少した場合は、勤務先のり災証明書、被災証明書、過去の給与明細書等です。次に、熊本地震の後に新たに負担することになった債務については、本ガイドラインに基づく債務整理の対象にはなりません。
次回も引き続いて、本ガイドラインの説明をする予定です。 |