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前回の相談事例を前提に、今回は、相続における遺産の調査について、お話ししましょう。
まず前回の相談事例の確認ですが、相談者のお父様が被相続人であり、その遺産としては、@自宅の土地・建物、A賃貸しているアパート2棟、B銀行預金、Cアパート建築時のローン残、Dサラ金からの借金があります。
ところで、相続は、被相続人の遺産すなわち資産と負債を含めて相続することですから、相続に際しては、資産と負債の両方を調査することが必要です。
なぜなら、相続人は、単純承認をすれば被相続人の遺産(資産と負債)をすべて相続します(民法920条)が、負債が資産を上回っている場合は、相続することで不利益を受ける場合があります。その場合は、相続によって得た財産の限度において被相続人の債務や遺贈を弁済することを留保して相続を承認する限定承認(民法922条以下)や、相続放棄を資産のみならず負債も相続しないこともできます。したがって、単純承認、限定承認、相続放棄の判断をするには、遺産の内容(資産と負債)を調査しておくことが必要となるのです。
【資産の調査】 資産には不動産(主として土地・建物)、動産(自動車・貴金属類等)、有価証券(株式・国債等)、現金・預貯金、貸付金、賃料・借地料等がありますが、相談事例では、自宅不動産と賃貸しているアパートおよび賃料、銀行預金が資産となります。
不動産の調査としては、固定資産税の関係で市町村役場の固定資産税課で不動産に関する台帳で確認後、法務局(いわゆる登記所)で登記事項証明書の交付を受けることができます。賃貸しているアパートについては、賃料債権(借りている人に対する毎月の賃料請求権)が相続財産になりますが、賃貸借契約書により相手方や賃料を確認できます。銀行預金は、通帳により確認できますが、通帳がない場合は銀行に照会して確認できます。その際は、被相続人との関係を示すため、戸籍謄本(照会請求する本人と被相続人との繋がりを示すため、それぞれの戸籍関係書類)の提出を求められることがあります。
【負債の調査】 相談事例では、アパート建築時のローン残とサラ金からの借り入れが負債になります。
ローン残については、おそらく金融機関からの借り入れですから、借入先金融機関に対して、相続開始時(被相続人の死亡時)の残高照会することにより確認できます。サラ金からの借入金は、請求書や督促状で一応はわかりますが、利息制限法上の制限を超える利息の請求があることが考えられます。そこで、まずは、取引履歴の照会をし、それをもとに利息制限法上の利率に引き直し計算をして借金の残額を確定することになります。これをすることで場合によっては過払い金が発生していることもあり、その場合は資産になります。
遺産の内容によっては調査の方法も異なりますので、もし分からないときは弁護士や税理士等の専門家に相談した方が良いでしょう。
次回は、相続の仕方である単純承認、限定承認、相続放棄についてのお話です。
衛藤二男法律事務所 282−8251 |