(13) 緑ヶ丘区 弁護士 衛藤二男
相続の遺留分
今回からは、遺言における具体的な問題点についてお話ししていくことにしますが、第一回目は「遺留分」です。
〈事例〉
被相続人である甲には、相続人である長男A、長女B、二女Cがおり、甲の妻は既に他界している。長男Aは、父甲と同居して長年にわたって家業を手伝い、また、結婚後も夫婦で甲と同居して生活を共にしてきた。他方の長女Bや二女Cは高校、大学をそれぞれ卒業後は、嫁いで他県に居住している。
甲は、不動産(甲死亡当時の評価額は3000万円、遺産の評価時期については争いがあるが、本件では評価時期による差はないものとする)のほか定期預金(4口、額面合計1500万円)を所有しており、生前、公正証書による遺言をしていた。それによると、長男Aに不動産と定期預金の一部を相続させ、長女Bと二女Cには定期預金の中から各300万円を相続させる、というものであった。
〈遺留分とは〉
まず、上記の事例で各相続人の法定相続分をみてみましょう。遺産の合計額は4500万円、3人の子の相続分は平等ですから各自3分の1、したがって、A、B、Cの各法定相続分は1500万円となります。しかし、前記の公正証書遺言に従うと、長男Aの相続分は不動産(3000万円)のほか定期預金(1500万円からB、Cの取分合計600万円を控除した残額900万円)の合計3900万円、長女Bと二女Cは各300万円となります。
そもそも、「遺留分」とはどういう意味でしょうか。
被相続人は、本来、自己の財産を自由に処分できるのが原則であり、遺言によりその処分をすることも自由です。しかし、民法は、被相続人と一定の身分関係にある相続人の生活保障、財産(遺産)形成に対する貢献等を考慮して、被相続人の遺産に対する処分の自由に制限を加え、遺産に対する一定の割合を相続人に保障する制度として設けたのが遺留分制度です。このように、遺留分は、遺留分権利者全体が遺産の全体に対して保障されている「一定の割合」のことであり、特定の遺産に対する権利ではありません。
〈遺留分権利者と遺留分の割合〉
では、遺留分が認められる相続人や、その一定の割合というのはどのようになっているでしょうか。
遺留分を認められている相続人を遺留分権利者といい、被相続人の配偶者、子、子の代襲相続人、相続欠格や廃除における代襲相続人、直系尊属ですが、被相続人の兄弟姉妹には遺留分はありません。また、各遺留分権利者の遺留分の割合は、直系尊属のみが相続人の場合は被相続人の財産の3分の1、それ以外の相続人の場合は2分の1とされています(民法1028条)。 |