(81) 三里木区 たわらや酒店 宇野功一
安土桃山時代から評判の花見酒
◆桜と日本人
今年の熊本の桜の開花は3月19日との発表がありました。桜の花は春の使者として、古来より日本人が愛した花です。開花から1週間で満開をむかえ、美しく、はかない花の姿は、日本人が美徳とする「潔さ」に通じるところがあります。
花見の歴史は古くは奈良時代、中国から伝来した「梅」の鑑賞に始まり、平安時代に桜の花に変わってきたと言われています。野外で盛大に宴を行う「花見」は、桃山時代、太閤秀吉が開いた醍醐の花見が有名です。慶長3年3月15日(1598年4月20日)、京都の醍醐寺で、秀吉、ねね(北政所)、秀頼、淀君をはじめ諸大名や配下の諸々、総勢1300名余り。太閤記が伝えるところ、宴には「加賀菊酒」が登場します。戦国時代の姫たちも、加賀菊酒の旨さに酔いしれたやも知れません。きっと、お茶々も、お初も、お江も(お市の三人娘)加賀菊酒を飲んで、桜を愛でたでしょう。
◆加賀の菊酒
今から500年以上も昔の室町時代。人々が憧れた銘酒がありました。「加賀の菊酒」です。加賀の菊酒は最も古い幻の銘酒でした。貝原益軒が晩年の著「扶桑記勝」で「加州剱は金沢より三里、白山より下る川あり、手取川と云。大河也。その水にて酒を作る。雪水にてつくる。甚好酒。色すめり。或者天下をめぐりて酒の高下を試む」(霊峰・白山から流れる出る手取川の雪解け水で仕込む酒は、澄んでおり美味)と述べています。
現在でも白山山麓の手取川の流れる付近には銘醸蔵が数多くあります。「菊姫」「天狗舞」「手取川」「萬歳楽」が有名です。今年の花見は、加賀の菊酒をたずさえて、粋に宴を行うのはいかがでしょう。
◆最高のにごり酒(これからが旬)
「吟醸、純米、普通酒など造りの違う全てのジャンルに最高の味を求める」という言葉通り、頑固なまでのこだわりによって醸される「菊姫」の思想が息づいたお酒は、普通酒クラスのお酒にも兵庫県特A地区の吉川町産山田錦を用いられます。そして、鑑評会用と市販用の区別をせずに行われる仕込み。もちろん、これらの伝統に裏づけされた揺るぎない誇りから生まれるこの新酒のにごり酒も、酒米の旨味が生きた個性的な味を持っています。醗酵完了直前の甘みの強い醪(もろみ)を、そのまま練りひいた風雅の酒は、醪そのものが持つ自然な旨味と、柔らかな飲み口をお楽しみいただけます。室町時代から評判の花見酒の紹介でした。
〜酒質コメント〜
にごり酒は濃醇でベタベタ甘いと思っている方、このにごり酒は違います。ほんのりと甘味を感じる米の旨み、なんとも言えない上品な味わい。すこし、ホワイトチョコレートににた味です。ロックで飲むのもお薦めです。 |