矢原正治 F


1035号 2022年6月12日

(181)アボカド クスノキ科

   

 今月は、アボカドにします。中南米の原産で、メキシコから多くが輸入されています。現在は、熊本県でも「津奈木町、戸馳島など」で生産できるようになり、国産も売られています。アボカドの果肉は、「森のバター」とも呼ばれ脂肪分が多く、非常に栄養価が高いと言われています。32年前、ブラジルで30m位の大きな木に、沢山の実がなっていたので感動しました。
 アボカドの脂質に含まれる脂肪酸はオレイン酸が主で、オレイン酸は、高コレステロール、高エネルギーの食事が原因で過剰に増える、悪玉(LDL)コレステロールを抑制する効果があると言われています。また、果肉には、ビタミンEや葉酸などのビタミン類や、カリウムや鉄などのミネラル類、植物繊維も豊富に含みます。アボカドの果肉は、高血圧や生活習慣病を予防する効果があると言われています。
 オレイン酸は、他にオリーブ油にも多く含まれ、血管の健康を保ち、生活習慣病を予防すると言われています。植物繊維も多いので便秘の解消にも良いようです。
アボカドは、脂肪が多いです。脂肪のエネルギーは1gで9Kcalです。食べ過ぎると「太る、ニキビが出る」可能性がありますので、一日50g位(1/2個位)と言われています。良いからといって食べ過ぎには注意しましょう。
 久しぶりに散髪をしに行きました。散髪屋さんの庭には毒草(スイセン、スズラン、クリスマスローズ、クワズイモなど)が多いので、明日にも抜こうかなと言われましたが、せっかく増やしたので、抜くのはかわいそう、綺麗な花を愛でてくださいと言っておきました。また、前の道の植え込みに、外来種で棘棘の「ナス科の金銀ナスビ(悪茄子)」が生えていました。早めに駆除した方が良いでしょう。身近には、花の綺麗な有毒植物が沢山あります(園芸店で売られている植物の1/3位は有毒植物)。口に入れ飲み込まなければ、ほとんどが触っても問題なく大丈夫で、皆さんの生活の中で共生してきた植物です。ただ、似たような有毒植物と食用植物を一緒に植えない方が良いと思います(誤食をする可能性があるので)。「ニラの葉とスイセンの葉」、「朝鮮朝顔(トランペットツリー)の根とゴボウの根」などの誤食は、近くに植えていて事故が起きています。
 また、「グロリオサの地下部による中毒は、ヤマノイモと間違えた誤食」で。おかしいと思ったモノは食べないでください。
 私たちが食べている、植物には、沢山の有毒植物があります。例えば、「大豆などの豆類、里芋、コンニャクなどのサトイモ科の仲間、ナス科のジャガイモなど、サツマイモ、ワラビ等々」、私がアレルギーで食べられないのが、ウルシ科の「マンゴー、生のカシュウナッツ」ですが、完熟マンゴー、よく加熱したカシュウナッツとマンゴージュースは飲食できます。前処理を「きちんと」して食べて下さい。有毒植物を怖がらず、楽しく、美味しく、前処理をして、食を楽しんでください。


1037号 2022年7月10日

(182)ダイコン アブラナ科

  

 今月の薬用植物は春の七草のスズシロ(蘿蔔)の『ダイコン』にしました。
  生野菜の水分含有量で、もっと多いのはキュウリで約98%、次が大根で約95%です。キュウリは、果実を、生食や漬物、加熱して食べますが、葉や蔓は食べません。しかし、ダイコンは、地上部も根の部分も、全部食用になり、干して保存食にもなる野菜です。
 ダイコンの根(肥大根)は剃り下ろすと特に辛くなります。これは細胞を壊すことによりカラシと同じ様な辛味の成分が酵素で分解して生成します。切るだけですと辛味はほとんど生成しませんし、熱をかけると「酵素」は失活(機能を失う)しますので、煮物にした時は、辛味はほとんど感じません。またダイコンの中には澱粉・多糖を分解する酵素(アミラーゼ(ジアスターゼ))が入っていますので、澱粉の消化を助けます。この酵素を見るにはダイコンおろしと納豆を混ぜると、糸が引かなくなるのを観察するのが良いですね。
 薬用では、大根(中国で「菜箙(らいふく)」)は、辛甘、涼。肺・胃に入り、積滞を消す、痰熱を化す、気を下す、中を寛やかにする、解毒する等の効果があり、消化を助け、咳・咽に痛みを抑え、痰を除く、イライラした気分を落ち着かせる等の作用が期待できます。種子(菜箙子(らいふくし))は、辛甘、平。肺・胃に入り、気を下ろし喘を定める、食滞を消す、痰を化す等の効果があり、咳・咽の痛みを抑え、痰を除く、消化を助ける等の作用が期待できます。葉(菜箙葉(らいふくよう))は、辛苦、平で、脾・胃に入り、食を消す、気を理する効能があります。
 また、阿蘇の民間療法では、ダイコンの干した葉を、浴剤として風呂に入れ、女性の冷えを予防するそうです。面白いのは、ダイコン葉の煮汁を産後の牛に飲ませると親牛の胎盤の排泄が促進され、産後の肥立ちが良いと今でも使っています。
 さらに干葉湯(ちばゆ)は、ダイコンの干した葉を浴剤として冬に冷えた身体を温めるのに用いる習慣が各地であるようです。ダイコンの干した葉を風呂に入れると何故温まるのかという問合せがありました。辛味の成分が皮膚吸収し、血管を拡張、血流量を上げる可能性があるからだと思います。しかし、沢山入れ過ぎると、皮膚が「ピリピリ」しますので、皮膚の弱い人は注意して下さい。アブラナ科植物は、辛味の成分のイソチオシアナート(イソチオシアネート)類を含みます。イソチオシアナート類は辛味受容体のTRPA1 agonistです。TRPA1は、わさびの辛味の受容体であり、17℃以下の冷温度域で痛み刺激を感じます。TRPA1を活性化させると、寒くなる(17℃以下の冷温度)と脳が判断し、身体を温め始めますので、暖かくなるとことが分かってきましたので、ダイコンの葉を浴湯に用いるのは理にかなっています。

 ダイコンの葉、ニンジンの葉は抗酸化力が大変強いので、無農薬の葉を小さく切り、チリメン雑魚&胡麻と一緒にフライパンで炒って、振り掛けにすると美味しいです。大根には多くの酵素が含まれています。 でんぷんを分解す「アミラーゼ(ジアスターゼ)」は食べ物の消化を助け、胸焼けや胃もたれ、二日酔いなどを防でくれます。他にも、タンパク質分解酵素である「プロテアーゼ」や「セテラーゼ」。 脂質分解酵素の「リパーゼ」、発がん物質を抑制する酵素の「オキシダーゼ」などが含まれています。生で、大根を上手く用いると、肉を柔らかくするなど、料理に巧く利用してください。


1039号 2022年8月14日

(183)ヨメナ キク科

   

 今月は、キク科のヨメナにしました。6〜9月に開花する野草です。
 ヨメナの葉は山菜として食用に、春先の若芽を摘んで用いますい。秋の蕾と花も食用となります。 天ぷら、おひたし、和え物、汁の具材、ヨメナご飯 などの料理があり、収穫した新芽を乾燥し、ポリ袋に入れ、冷蔵庫で保存するといつでも利用できます。薬用には、全草を、煎じて、民間薬として「解熱、解毒、止血、咽喉痛,痔」などに用います。
 ヨメナのラテン名は、 Kalimeris yommena で、属名の Kalimeris は、「星」の意味で、花が放射状をしているからとのこと。(現在の植物名ラテン名は、Aster yomena になっています。Asterも「星状体」を意味します)
 草原に行くと似たような植物をみます。例えば、ヨメナとチョウセンヨメナ( Aster koraiensis は、花の冠毛の長さが違うそうです。ヨメナ:0.5mm位、チョウセンヨメナ:1mm位で2倍ぐらいあります。なので、チョウセンヨメナの方が、花の中央がフサフサした感じです。花がないときは、葉の鋸歯の状態なので、見分けられます。なかなか難しいですね。
 今年は6月からの猛暑で成長がおかしい野菜、植物があります。8月に入り暑さも一層厳しくなました。夕立も増えてきます(ピカリ、ゴロゴロ)。3日に一回ぐらい夕立があると、植物君達は助かりますが、雨が降らないと、晴天が続くと水やりも大変です。植物の生命力にかけています。
 大津の借りている畑は、無農薬&有機農法です。畑の土壌の有機物(堆肥など)、無機物(リン酸、カリ、カルシウム、マグネシウム、鉄 等々)が、どの程度か、解らないので、適当にやっているのが、いけないのでしょう。有機農法で用いて良い「安価な石灰」をご存知の方がありましたら、教えていただけませんか?
 先月の「大根」ですが、三大栄養素の、タンパク質を分解する酵素、脂質を分解する酵素、糖質を分解する酵素が含まれ、胃が弱る暑い夏、大根の酵素を巧く利用し消化を助け、胃を助け、夏バテを予防するのは如何ですか?
 新型コロナの BA.5変異株の感染の急増です。感染しないように『マスクをし、三密を避け、渋茶でうがい』をして予防しましょう。
 暑いからといって、冷たいものばかり飲食し、胃を弱らせ、夏バテをしないよう、たまには温かい鍋料理でも食べ、汗をかき、胃が元気で、蒸し暑い夏を、楽しくお過ごしください。熱中症予防には、水分の補給をし、サラサラの汗をかける身体と元気な胃腸を保ちましょう。


1041号 2022年9月11日

(184)サネブトナツメ クロウメモドキ科

   
サネブトナツメの花と、実堰B

 今月は、不眠の改善に用いる「サネブトナツメ」にします。サネブトナツメは、ナツメ(Ziziphus jujuba Mill.)の亜種に分類されています。種子から発芽した苗を分けて頂いて4年目、鉢から地植えして2年半、樹高が2mぐらいに伸びました。たまに強風が吹く中、添え木が無いと立っているのが厳しい状態で、昨年は花を咲かせ、今年初めて実を付けました。
 サネブトナツメの名前の由来は、果実の種(さね)が大きく(太い)ことからついたと言われています。
サネブトナツメは落葉広葉低木で、花を7〜8月につけます。葉の形はナツメに似ていますが、果実の長さは、サネブトナツメ:1cmほど、ナツメ:2cm位で、ナツメに比べ、果実は小さいですが、果実に対し核(さね)が大きく、果肉が大変薄いです。ナツメは果肉を薬用(大棗)と食用に、サネブトナツメは種子(仁)を薬用に用い、果肉を食用にします。
 サネブトナツメとナツメの果実の違いは、サネブトナツメの実(果肉)は酸味が強く酸っぱく、ナツメの実(果肉)は糖分が多く甘みがあります。
 サネブトナツメの中国名:酸棗(さんそう)で、薬用には種子を用い「酸棗仁(さんそうにん)」と言い、精神を鎮める、不安、動悸、不眠など心の虚を改善する漢方薬に処方されます。不眠に用いる漢方処方で(1)疲れているのに眠れない時に「酸棗仁湯(酸棗仁、 茯苓、センキュウ、知母、甘草)」を用います。他の不眠に用いる処方で、(2)興奮して眠れない人に「黄蓮解毒湯(黄蓮、黄檗、オウゴン、山梔子」、(3)慢性的に眠りが浅い人に「加味帰脾湯(人参、朮、茯苓、甘草、生姜、大棗、酸棗仁、竜眼、遠志、当帰、黄耆、木香、柴胡、山梔子)」を用いると良いと教えてもらいました。
 コロナ禍、ストレスで眠れない人が多い様です。どれに合うか症状を自分で診て処方を選び、まず3〜5日分ぐらいを薬局で購入し試してください。熟睡できれば良いですね。睡眠の基本は、『脳が考えるのを諦める(止める)』ことと、脳科学者が教えてくれました。
 私は、講義・講演・会議等で聞いている時、眠くなることがあります。話していることが面白くなく、興味を持てないから眠くなります。学生の時よく居眠りをしていました。(学生さんは授業料を払っていますので、寝ても良いのでは)ただ、国会、町議会の時に居眠りをしている議員さんは、脳が考えることを諦めているのでしょうか? やる気(考え&行動するエネルギー)が無いと思ったりして?
 9月に入っても、まだまだ暑い日が続きそうです。また新型コロナの感染者も余り減りそうにありません。少しでも良い睡眠が得られ、夏バテを少しでも解消し、疲労が少なくなりますことを祈願しています。


1043号 2022年10月9日

(185)ミソナオシ マメ科

 熊本市内に『味噌天神』があります。そこには、味噌の腐敗を抑えるとして笹(竹)が植えられています。また「味噌を直す」という意味で「ミソナオシ」という植物があります。
 マメ科のミソナオシは、一見、草に見えますが、低木です。原因は、1年目の樹高は30cm位、茎が緑色で、草のように見えるからですが、2年目の、樹皮が茶色に変わり1m弱の細い茎の木になります。7月終わりから花が咲き始め、9月になると種子が出来、横を歩くと、ズボンにペタリとくっ付き、くっ付き虫で種子を移動させます。中国では全草を「青酒缸(せいしゅこう)」、根を「青酒缸根」と呼び、生薬として用いられます。2013年(平成25)に、茎、葉に含有されるフラボノイド類に味噌に発生する白カビを抑制する効果があることが、徳島大学薬学部の研究で確認され、味噌の腐敗などを抑制する効果が科学的に明らかになっています。
 植物は自分が生きるために、抗菌、静菌など、微生物の増殖を抑制する効果を持っていますが、その強うさには強弱、特異性があります。昔は、食品の腐敗・食中毒防止に植物を用いていましたが、今はプラスチック製に代わったものが多くあります。例えば、弁当を買うと、容器、中に「緑色のギザギザ」があります。何かご存じですか?元は抗菌性のある「ハラン(バラン)」、植物の葉を用いていました。またナンテンの葉、竹の葉なども、ほとんどがプラスチック性になってしまいました。昔々は、「おにぎりに梅干し」周りを「タケノコの皮」で巻いて、腐敗を予防していました。
 プラスチック製品が安価、安全管理が安易になった今、プラスチック製品の利用が増え、ポイ捨て、自然界へのマイクロプラスチック公害が問題になっています。マイクロプラスチックは、地球を回り回って、私たち動物の肺、血液中に、人の体内にも入っていると言われています。いつ被害が出るのでしょうか?植物由来の製品は、自然に戻りますが、プラスチックは何百年も分解しません。コロナ禍、利用の増えているマスクもプラスチック、ポイ捨てをしないで、可燃物ゴミに。タバコのフィルターもプラスチック、灰皿に。
 ウイルスも怖いですが、プラスチック類のポイ捨ても、回り回って怖いことに。皆様の、特に若い人達の、ご健康をお祈りいたします。ストレスの少ない、人に余り迷惑をかけない、楽しい生活を、お送りください。『健康第一で』


1045号 2022年11月13日

(186)セイタカアワダチソウ キク科

  

 花粉症の原因植物として、厄介者扱いされていた植物ですが、虫媒花で花粉の飛散がほとんどないので、今はあまり問題にされていません。
 10年位前に、急に見なくなりましたが、ここ数年で増えてきました。さすがに繁殖力は旺盛ですね。19世紀の終わり頃(明治)、観賞用やミツバチの蜜源として北アメリカから日本に入り、戦後野生化し、日本中で繁茂しています。南阿蘇の草原でも、セイタカアワダチソウが、ススキを押し退けて、増えてきています。自然破壊にもつながりますので、駆除が必須ですが、なかなか厄介ですね。根こそぎ抜いていくしか方法はないのですが、50人で30分、草抜きをしましたが、10m四方ぐらいがやっとでした。
 悪いこととばかりではありません。
1)薬用:蕾の時の花穂を浴湯に、アトピー性皮膚炎が改善をすると、草原再生の草集めに行った時に、実際に利用している方がいると、教えてくれました。ヨーロッパでは、つぶした葉を、虫刺され、怪我の止血に外用で用いると。北アメリカ大陸先住民が生薬として、整腸、風邪、怪我の改善に民間薬で利用されていたようです。
2)食用:花&蕾を、食用に(白和物。ケーキ、パン、パウンドケーキ)
 セイタカアワダチソウのペーストを加えたパウンドケーキを焼いて12時間位後に食べると、絶品だそうです(作って、試してみてください)
3)染色:花を用いた染色(アルミを用いると黄色、鉄を用いると緑色)に。
4)茶に:花から作られるお茶は、下痢、痛み、発熱の改善する作用があると言われ、万能の植物かもと?
 こんなに良い利用法も多くあります。
<考え方を変えると(裏返すと)、悪いことも良いことに>
 自分がダメだと思っていることを、裏返しにすると、良いこと(目立つこと)になるかも?
 来年は、スギ花粉が多そうです。これからに季節、緑陽色野菜を、多めに食べると、花粉症が、ひどくならない可能性があります。お試し下さい。
 また、無農薬のみかん類の皮、またカラタチ、スダチ、ユズなどの未熟果実(なるべく果肉が小さい方が良い)を輪切りし、乾燥、お茶にして飲むと、少し改善するかも。お試しをください。
 マスク無しになると、インフルエンザと新型コロナに、ダブルで感染する可能性も大。唾液で抗ウイルスを、渋茶でウガイし予防、ストレスの多い毎日、巧くストレスを解消し、心身のバランスを普通に保たれ、少しでも楽しい生活、ご健康をお祈りいたします。


1047号 2022年12月11日

(187)ショウガ ショウガ科

 

 2007年3月11日(354号)に一度書きましたが、またショウガです。寒くなると、ショウガ(根茎部)を使う料理が多くなります。ショウガは冬の野菜、身体を温める効果、抗菌(静菌)の効果があり、料理には薬味(スパイス、香辛料)として利用します。新生姜は、清涼感があり辛味が弱く、また茎の付け根に赤色のアントシアンを含みます。古ショウガ(ひね生姜)は、辛味が強く、薬用はこれを用います。

 熊本の市場には、
新生姜:親生姜から出て育った生姜で親(種生姜)から扇状に発育した写真の色白の部分。種生姜は写真茶色の部分。 
古生姜(ひね生姜):新生姜を収穫して洗わず、泥がついたまま貯蔵庫に保管し少しずつ出荷して、段々水分が抜けて皮が変色します。数か月すると茶色になり、水分が抜けて辛みが増してきます。
 新生姜は、辛味よりも香りを大事にし、古生姜は、調理に、魚及び肉の臭味消し等の目的で使います。新生姜の、出来が良い物を「種ショウガ」として取っておきます。
 ショウガは、薬用として3種類の使い分けをします。
ヒネ生姜(生のショウガで):体の中を温めるよりも、発汗作用が強い。また吐き気がある時は、必ず生で用います。
乾燥したショウガ(生姜(ショウキョウ)、乾生姜)(ショウガを乾かしたもの):発汗よりも体内を温める力が強いです。
乾姜(カンキョウ、ショウガを蒸して乾燥):体内を温める力が大変強いです。
 
生のショウガには、辛味で発汗作用の強い「ジンゲロール」が多く、加熱すると成分が変化し「ショウガオール」が増え、身体の中心を温める力が強くなります。

<身体の中心を温める効果のショウガを作り、保存、利用>
ショウガをすりおろす。
すりおろしたショウガを、ドンブリ等に入れ、ラップをし、電子レンジで加熱。
かき混ぜて加熱を3回位繰り返す。
冷やし、容器に入れ、保存する。
必要な時に、すりおろし加熱したショウガを用いる。

 寒い時は、鍋に野菜類を沢山入れ、薄味で、沢山食べましょう。緑黄色野菜には、緑の葉緑素に「マグネシウム」を含みます。マグネシウムは、便通を良くします。また、植物繊維も多く、イモ類(サツマイモ等)にも植物繊維が多いので、腸内環境を整います。
 年末年始、暴飲暴食は避け、胃腸・肝臓を労わり、大腸の腸内細菌群(腸内フローラ)を良くし、ストレスの少ない日々をお過ごしください。皆さん、来年は、少しでも良い年になりますように!


1049号 2023年1月15日

(188)野菜「サツマイモ」 ヒルガオ科

 年末年始はいかがお過ごしですか?野菜不足?健康には野菜を350g/日、摂取と、サツマイモ料理を一日一食食べれば、少しの野菜を食べるだけで、十分に野菜の摂取量が可能になり、ダイエット、腸内細菌フローラも良くなり、免疫アップです。焼き芋がブームです。昔はリヤカーを引きながら「石焼き芋〜〜」の声が聞こえていましたが、今はいろんな店で売っていますし、肥後大津駅前に自動販売機まであります。
 35年ぐらい前まで、大津町にサツマイモを原料としたアルコール工場もありました。昔のように菊陽&大津の大地でサツマイモを沢山栽培すると、熊本市内の地下水の窒素濃度が下がります。またIT工場ができると地下水がどう変わるのでしょうか??
 サツマイモの別名、唐薯(藷、芋)、甘薯、蕃薯、琉球薯などといいます。中国から、琉球国(沖縄)を経て伝わりました。短日植物で、日の長さが約11時間以下にならないと開花しません。 たまに熊本などでも開花しますが結実は難しいです。原産地は南アメリカ。食用にするのは塊根(肥大根)です。ちなみにジャガイモは塊茎を食べます。サツマイモは10℃以下になると腐敗を起こします。しかし、10℃前後で冬を越したサツマイモは糖度が増し美味しくなります。これは、低温で保存すると、細胞内の浸透圧を高めるために、酵素がデンプンを分解し、甘い麦芽糖、ブドウ糖が増加するためです。サツマイモはひと冬越したものが甘くて美味くなります。また、女性の大好きな石焼き芋は甘い焼き芋を食べるのに大変理に適った温度(70℃ぐらい)で焼くからです。これはデンプンを分解し、麦芽糖にする酵素の働きを十分に引きだすのに良い温度です。ちなみに電子レンジで焼き芋を作ると、早くできますが、酵素がすぐ死んでしまい、余り甘く無いです。(糖尿病の方には良いかも)
 サツマイモはイモだけでなく、葉、葉柄も食用、薬用にします。サツマイモには、いろんな品種があり、甘味の少ない品種は、ジャガイモの代わりの料理にも利用できます(お試しください)。しかし、サツマイモは暖かいところでしか栽培できないのですが、近頃、北海道でも栽培できるようです。繊維質が多く、さらに、大腸を刺激し便秘を改善する成分も含みます。
  薬用では紅薯(コウショ)と言い、塊根:胃・十二指腸潰瘍の出血、茎:子宮出血,急性胃腸炎、葉:夜盲症、便秘などに用いられると中国本草図鑑などに記されている。更に、紫サツマイモのアントシアン、黄色サツマイモのカロチノイド、葉のクロロゲン酸誘導体などが注目されています。茎葉の効果:整腸、がん予防、美容・美肌、抗糖尿病、高血圧改善、抗酸化、メラニン生成抑制、アルツハイマー予防など。
 痩せた土地でも、栽培・収穫でき、芋、葉、茎など全て食用に、食糧危機を救うサツマイモを上手く利用。屁は臭く無く、太らない、免疫力アップ、腸内フローラを改善などなど、『最強のスーパーフードサツマイモ」を食べて、家の中や外で運動をしカロリーを消費、筋力アップで、2023年も健康で楽しい一年をお過ごしください。


1051号 2023年2月12日

(189)トウモロコシ イネ科

 トウモロコシの実は偶数個、毛(雌蕊【しずい】)も同じ数。トウモロコシデンプンは、いろんな粉に利用されています。××粉を購入するときに、裏の原材料名を見てみてください。例えば、餅とり粉は、トウモロコシデンプン(コーンスターチ)です。スイートコーンの実を食べた後の芯を輪切りし、茹でると甘いスープができます。お試し下さい。
 中央アメリカから南アメリカ北部原産。世界各地で食糧や家畜用飼料、アルコール原料などを目的に栽培されている一年生草本植物です。日本へはポルトガル人によって安土桃山時代の天正7年(1579)に渡来したと言われています。しかし農作物としての本格的な栽培は、明治時代に入ってから北海道で始まりました。
 和名のトウモロコシは唐モロコシの意味があります。当時は唐(中国大陸)から新しい文化を取り入れ、また多くの産物を輸入していたため、例えポルトガルを経て渡来したとしても、外国より渡来したものに唐と名づけることも珍しくはありませんでした。
 トウモロコシの収穫期に、雌花の長いひげ状の花柱(かちゅう)を採取して、日干しにして乾燥します。これを生薬で南蛮毛(なんばんもう)、玉蜀きずい(ぎょくしょくきずい)と言います。
 薬効は利尿(りにょう)、腎機能の改善、むくみ、黄疸(おうだん)、肝炎、胆のう炎、胆石、糖尿病などで、薬理試験でもすぐれた利尿作用、血圧降下、末梢(まっしょう)血管拡張作用があります。毒性の少ない安全な利尿剤ですから連続して服用しても副作用は少なく、妊娠時のむくみにも効果的に用いられています。
 また、緩下(かんげ)作用も少しあり便秘にも効果があるので、お茶の代用として常時用います。
 ポップコーンを作るときに油をタップリ使います。もし油が気になる方は、よく洗って何度か焼いた砂を中華鍋に入れて、ポップコーンを作ってみて下さい。これはインド式ポップコーン作りです。砂を除くのは料理用のザルを用いると、砂と分けることができます。しかし、自然の地球の味が少ししますが、塩を加えるだけで、油は使いませんので、健康的で良いかも?阿蘇のトウキビの種子を用いても、ポップコーンはできます。

<料理>私の友人のHPより:
スイートコーンの実をおろし金で擦り,好みによって裏漉しして皮などを取り除きますが,これに牛乳を加えて塩とコショウで味を調えたコーンスープを、お試しください。(スイートコーンの芯も、甘みがありますので、上手く使ってください)。

 皆様のご健康をお祈りします。


1053号 2023年3月12日

(190)フキ キク科

 甘い物がもてはやされ、そのために糖尿病疾患、それに関連した多くの病気の方々が増えています。脳がブドウ糖を最も利用するので、甘い物は本能的に欲します。しかし、甘いものを摂取し過ぎると糖尿病になる前に、胃腸を弱らせ、免疫力が低下、コロナ(COVID-19)、インフルエンザ、風邪などに感染しやすくなります。果物・野菜は、甘さ、酸味、苦味のバランスの良さが旨味のベストだと思うのですが。甘ければ美味しいと言われています。人の味覚が甘みに洗脳され、病気が増えていて困ったものですね。カロリーゼロの飲食物が大繁盛、医者も大繁盛です?

   

 今月は、苦味の強い「フキ」です。写真はフキノトウです。フキノトウの学名の属名のPetasitesはギリシャ語で“大きな帽子”を意味します。北海道の民話に出てくるコロボックルという妖精は蕗の葉の下に住むと言います。東北以北、北海道にあるアキタフキは、雨が降ったときに葉を取って傘の代わりにできるほど大きなもので、1.5m位になります。トトロでも出てきますね。
 フキノトウ、茎葉、根茎は民間で、 乾燥したフキノトウを、食欲促進、せき止め、去痰に、また茎葉や根は煎じてうがい薬に用います。フキは雌雄異株で、雌花は白色、雄花は白黄色で、花茎をフキノトウと呼びます。フキノトウには、フラボノイド配糖体が多く、苦味がありますが、天ぷら、あえ物、味噌汁に入れ、春の香りを楽しみます。フキにはフラボノイド等のポリフェノールが多く、アクが強いので、特に胃の弱い人は、あく抜きをして食べることをお勧めします。
 家の庭のフキノトウは2月下旬に顔をのぞけました。足元に注意して歩かないといけない時期になりました。家の庭では、ウメ、サンシュユ、福寿草、エンゴサク等が花を咲かせています。桜(サクランボ、ソメイヨシノ)ボタン、コブシ、ユキヤナギ等の蕾が日に日に膨らんでいます。シャクヤクが赤い芽を伸ばしています。阿蘇の草原でも野焼きが始まり、春が近いのを感じます。今年はサクラがいつ咲くだろうとウキウキしています。いつも足元の草花で花見をしています。
 借りている畑では、セリバオウレンの花が咲き、カブの花芽が伸び、足元を見るとアマナの葉が出、タンポポの花が咲いていました。目を上に向けると桜(ソメイヨシノ)の花芽がだいぶ膨らんできました。畑の周りの杉林の中にはタブノキ、サネカズラ等々、畑の周りにもヨモギ、アマナ、オニタビラコ、コオニタビラコ、オオバコ等々、薬用植物が30種ぐらい生え、薬用植物&有用植物、50種以上を栽培しています。芝生もあり、弁当持参で、食事&お茶もできます。もしお時間があれば、借りている畑に、遊びにおいでください。


1055号 2023年4月9日

(191)ハヤトウリ  ウリ科

   

 今月はウリ科植物の中の『ハヤトウリ』にしました。隼人瓜(ハヤトウリ)を、知らない人も多いのでは? 皆さん如何ですか?
 ハヤトウリは、アメリカから大正時代に鹿児島県に入り、栽培されたことから隼人瓜の名前がつきました。蔓は角張っていて10mぐらい伸び、旺盛に成長し、秋になると、一株に100個ぐらいの「沢山の実をつける」ので、別名「千成瓜」とも言われています。食用には、緑色の洋梨型の果実を用います。果実の中には柔らかな大きな種が入っています。あまり料理のレシピが無いのと、甘みが少ないので、余り食べられていませんが、健康に優しい美味しい食材です。
 果実には、不溶性植物繊維が多く、腸を刺激し便通を良くします。また、高血圧、利尿、美肌、ストレス緩和、免疫力UPなどがあると言われていますが、如何でしょうか。お試しください。
 苗の準備は、種子を果実から取り出さないで、春になると果実の中から芽を出してきます。4月〜5月上旬ごろ、果実を横に向け、半分を土に埋め植え付けてください。溝がある部分から芽と根が出します。芽が10cmぐらい伸びるまで水はやらない方が良いと言われています。ウリ科ですので雌花、雄花の花を咲かせます。収穫しやすい高さの棚にはわせるのがBestです。一個の果実を植え、上手くいくと、9月ごろから沢山収穫が楽しめますので、余ったら、皆さんに差し上げてください。
<料理、家畜の飼料に>
料理:皮をむいて種を取り除き、果肉を刻み酢の物に。果実の二に割り、種子を除き、粕漬け、味噌漬け、塩漬けなどの漬物に。煮たり炒めたりして食べても美味です。甘味がほとんどないので、好きな味付けができ楽しめます。 
家畜の飼料: 根、蔓&葉の全草は、家畜の飼料に利用できます。
 人口が増え過ぎて、食糧難が、日本にも訪れる可能性が十分あります。家畜が食べられる部位は、人も食べられるはず。ただ、牛のように胃を4個持っている動物は、セルロースを微生物が分解し、回り回ってタンパク質に、牛の体(肉)を作る元になります。牛は草から肉(タンパク質)を作ります。人が消化できないセルロース(不溶性植物繊維)から肉(牛の体)が出来ることになります。(すごいことです)
 外国から輸入したトウモロコシなどの飼料で霜降り肉を好んで食べるのを考え直し、少し硬いですが、阿蘇の草原の草を食べた牛の肉を、キノコ、植物のタンパク分解酵素を巧く利用、柔らかく調理し、環境に優しいSDGsの生活することも考えるべきではと。如何でしょうか?


1057号 2023年5月14日

(192)コエンドロ セリ科

   

コリアンダーの花と種子

 4月の終わりは、夏を思い出す暑さが続き、急に暑くなったので、心身のバランスを崩された方が多いのではと思います。私は、東南アジア〜ネパールのことを思い出し、ネパールのカレーを食べたいなと。皆様はいかがお過ごしでしたか?
 今月は、コエンドロにしました。コリアンダー、パクチー、シャンツァイ(香菜)等々、多くの名前で呼ばれている、越年草又は一年草の草本です。
 タイ料理では「パクチー」、ベトナム料理では「ザウムイ」と言われ欠かせない食材で、東南アジアに行くと、いろんな料理に食材として入っていて、美味しく食べられます。しかし、私だけかもしれませんが、日本で食べると、臭く感じます。日本の料理には合いませんね。
 コエンドロのラテン名は「Coriandrum sativus」で、日本名をコリアンダーと言い、コリアンダーの語源は、ギリシャ語の「コリス(Koris)」で、虫という意味です。コエンドロの葉が南京虫(なんきんむし、カメムシ)に似た「香り」を発することから名付けられようです。20年ぐらい前までは、観察会で「カメムシの香りのする草」と言って、香りを匂っていただいでいましたが、今は東南アジア料理で香辛料として利用する機会が増え、馴染むがある方が多くなりました。
  全草(根を含む)を、乾燥したものを「胡すい(こすい)」と、種子を「胡すい子」と言い、薬用に用います。果実(コリアンダー・シード)は、完熟すると芳香を放ちます。3000年以上も前から栽培され、古代ローマ時代には肉の保存に使われたようです。また、健胃整腸剤としても利用されてきました。全草の「胡すい」も、中薬大辞典には、性味:辛、温。汗を発し湿疹を透す(治す)、食を消し気を下す 等の薬効が書かれています。日本では料理をするときに、根を捨てますが、東南アジアでは、根も料理に用います。 
 植物の根は地中の水&ミネラルなどを吸い上げ、成長に重要な部位です。生きるために必要なエネルギーを沢山含んでいる部位です、SGCsで、廃棄せず上手く利用し、食してみては如何でしょうか。ホームページを見ると、根を用いた多くの料理が見つかります。パクチーの根には、抗酸化力、老化防止、美肌などなど多くのことが書かれていますが、どこまで本当でしょうか? 
 暑いと紫外線が皮膚に悪いと、日焼け止めクリームを塗り、紫外線を避ける傾向があります。本当に良いのでしょうか? 皮膚でビタミンDが作られにくく、カルシウムの吸収が悪くなり、若い人でも骨粗鬆症になります。また、これにダイエットが重なると、骨粗鬆症になる確率が増えますので、たまには太陽に当たり、皮膚でビタミンDを作り、カルシウム&コラーゲンを一杯含むジャコ(雑魚) or イリコを食べて、骨折しないように骨を強くしておきましょう。
 皆さま、心身のバランスを巧くコントロールし、食事で腸内細菌を整え、暑さに負けない、暑バテしない、暑くなりそうな夏をお過ごしください。


1059号 2023年6月11日

(193)キュウリ ウリ科

  

 キュウリの原産地はインドのシッキム地方(今は、ネパールとブータンの間、中国国境)と言われています。日本での旬は夏ですが、一年中、市場で販売される野菜の一つです。英名:Cucumber、中国語:Huanggua(黄瓜)と言います。
 漢字で胡瓜と書き、中国西域の「胡」から伝来の「瓜」という意味です。 他にも熟すと黄色くなることから「黄瓜」、昔は臭気がり「臭瓜」になったという説などが。 インドで3000年ほど前から栽培されていたと言われ、中国には紀元前100年ぐらいに、日本へは平安時代に入り、園芸野菜として鑑賞され、あまり野菜として利用されていなかったようが、現在は多くの料理によく利用される重要な野菜の一つです。
 キュウリのギネスワールドレコーズに「Least Calorific fruit」(カロリーの最も低い果物)との記録名があります。キュウリは14kcal/100gと低カロリーです。
 キュウリには不溶性植物繊維と水溶性植物繊維の両方が含まれます。植物繊維は善玉細菌の増殖を助け、腸内環境の改善が期待できます。カリウム(K)を多く含み、利尿効果で、ナトリウム(Na)の排泄を促し、むくみなどの解消、高血圧の解消が期待されます。また、キュウリに含まれる香り成分「ピラジン」が血液サラサラ、血液凝固抑制の働きがあると言われています。
 ネパールでのトレッキングの後、キュウリを食べると水の補給になり、喉の渇きが解消されます。夏バテ予防にいいですね。
 脂質を分解する酵素の「ホスフォリパーゼ」が含まれています。上手くいくと痩せるかな?ミネラルでは「シリカ」が含まれています。シリカ(Si)は美肌効果、爪、毛髪の老化や修復作用があると言われています。キュウリを食べると若返るかも?
 キュウリには苦味のある「ククルビタシン類」という成分が含まれます。もし中毒になると、下痢、腹痛、酷い時は気が遠くなるような嘔吐・下痢を繰り返します。 ククルビタシン類はキュウリ、ゴーヤ、メロンなどのウリ科植物などに広く含まれています。苦味の強い時は注意してください。
<便秘の改善>
 不溶性植物繊維を取り過ぎると、逆に便秘が悪化(重症化)することがあります。
 水溶性植物繊維は、便を軟化させると言われています。
 海藻類は、消化しない多糖(植物繊維)を多く含みます。便秘改善に良いので、食事に混ぜ、効果があるかどうか、お試しください。
 下腹部が冷えると大腸の動きが悪くなり、大便が大腸に停滞すると、大便水分が減り、固く、コロコロの大便になり、滑りも悪く、糞詰まりになります。
 腹を温めましょう。例えば、塩 or 糠を布袋にいれ、電子レンジで温め、タオルに巻いてお腹の上に置き温める。腹巻きをして冷えないようにするなど。
 よく噛んで食事をし、大便は我慢せず、出し、楽しい生活をお送りください。


1061号 2023年7月9日

(194)アマ  アマ科

   

アマ花と果実

<有毒植物をうまく前処理し食する人々>
 オメガ3が多いと、アマニ油、エゴマ油がもてはやされています。アマニ油はアマの種子を加熱(焙煎)した後、搾った油。エゴマ油はエゴマの種子を焙煎(加熱)し搾汁します。有毒植物のアマの種子には、分解すると有毒な青酸(HCN)を出す化合物(リナマリン)が含まれています。リナマリンは、加熱(焙煎)することで、分解し、減少します。アマニ油を作るときは、きちんと焙煎し、青酸化合物を分解し、ガスとして除き、油を作る必要があります。
 アマニ油には、人に必要な必須脂肪酸のα-リノレン酸、リノール酸が豊富に含まれています。これらのオメガ3脂肪酸は血中のコレステロール値の抑制、動脈硬化の予防、血流の改善、免疫力の向上などがあると言われています。
 アマの茎から繊維のリネンが作られ織物に利用される有用植物です。青酸化合物を含む、食用の植物で有名なのが「梅、杏仁、枇杷、アーモンドなどのバラ科サクラ属植物、タピオカデンプンの原料植物のキャッサバ、他にアマ」等があります。これらは巧く前処理し食しています。皆さま、先人の知恵を、きちんと理解して食べて下さい。発癌は時間が経過して発症しますので、注意して前処理し、巧く利用し、楽しい食卓を。
<有毒植物、魚、キノコを食べる>
・生で食べると有毒の食品(前処理をして食す)
ワラビ: 実験動物での発癌性の化合物を含みます。(灰汁などを入れ加熱)
ナス科植物: ジャガイモの芽の根元、皮が緑のモノ(毒成分は加熱では減毒しない。水に溶けやすいので砕いてさらす)
マメ科植物: 大豆、白花豆などの豆類(加熱して食べましょう)
サトイモ科植物: サトイモ、コンニャク など(加熱し食べましょう)
モロヘイヤ: 種子は絶対に食べないように(加熱しても無毒化しない)
バラ科の果実: 未熟の果肉:ウメ、アンズ、モモなど。種子(仁)にも(細胞をつぶす(壊す)と、酵素で分解する。熟すと有毒成分が減少する。
ソテツの実、材: 鹿児島の島々、沖縄で味噌などを作り食用に(細胞をつぶす(壊す)と、分解し、毒性が減少する)
魚の、フグの仲間: 血液などに毒。(加熱しても分解しません)
魚の、ウナギ、アナゴ、ハモ など: 生の血。(加熱して食す)(タンパク質の毒で、加熱すると毒性はなくなる)
シイタケ: 生、生焼けで、痒みなどの皮膚炎が出ることあり。(乾燥したもの、粉末でも、よく加熱しないと皮膚炎を起こす)
マイタケ、シメジなどのキノコ類: 生で食べると、嘔吐下痢、皮膚炎など(よく加熱して食べる)など
 昔の人々の多くのトラブルの経験を元に、食品の前処理があります。上手く前処理、楽しい食事をしてください。
 これから暑い季節、冷たいものを取り過ぎると胃腸が弱り夏バテします。たまに胃を温める食事をし、汗をかき、胃の調子を整え、よく噛み、いろんな物を食べ、楽しみながらの食事を。


1063号 2023年8月13日

(195)タマネギ ヒガンバナ科(旧 ユリ科)

 タマネギの、私たちが食べているのは、葉の根元が膨らんだ部分の鱗茎です。昔は、ユリ科で、食べて問題無いと感じる科名でしたが、今はヒガンバナ科で、ヒガンバナと言えば毒草、この科に変わると食べて良いのかなと思う方もいるのではと思いますが、タマネギは、食べて問題はありません。タマネギは、一般に食用にする「鱗茎」の部分、SDGsで、たまに食べる地上部の葉はネギの代わりに、「鱗茎の皮」をお茶などにして楽しんでください。
 薬用には「鱗茎」を乾燥したものを胡葱(こそう)といい、強壮、発汗、利尿、消化促進、風邪の予防、解熱などの作用がると言われています。
 タマネギの生は辛いですね。辛味の成分の硫黄を含む、硫化アリル類(アリシン)は、タマネギを刻むと涙が出る揮発性の成分です。硫化アリル類は水に溶けやすく、熱に弱い化合物です。多くの機能性がありますので、生のままで利用するのも良いでしょう。辛味の少ない新玉ねぎを利用するのも良い方法です。
 目にシミない前処理、方法はホームページにありますので紹介します。
●切る1〜2時間前に冷蔵庫に入れて冷やす(揮発性分の揮発を抑える)。
●切る前に電子レンジで30秒〜1分程度加熱。
●包丁を水にぬらしてから切る。
●よく切れる包丁を使って切る。
●ゴーグル・メガネ・マスクをかける 等。
ネギ類、ニラ、ニンニク等にも含まれる、アリシンなどの硫化アリル類は、消化液の分泌を促し食欲増進に、他に、新陳代謝亢進、神経を落ち着かせ、ビタミンB1の吸収を助けるなどの作用が知られています。更に、血液サラサラで動脈硬化の予防などの報告もあります。
 タマネギには、フラボノイドのケルセチン( Quercetin )が含まれ、特に茶色い皮には多いです。ケルセチンは、毛細血管を丈夫にし、善玉コレステロールを増やし、悪玉コレステロールを減少さ、血液サラサラの効果があると言われています。
 タマネギには揮発性の辛味のアリシンなどの硫化アリル類と、甘い糖分(果糖、ブドウ糖、ショ糖)が沢山含まれます。しかし、生ではアリシンの辛味が強いので、甘みをあまり感じませんが、加熱するとアリシン等の硫化アリル類が揮発し、糖分は残ります。特に細胞を壊しながら加熱すると甘みを強く感じます。糖分は水に溶けるので、水を加えずにフライパ等でよくかき混ぜながら加熱すると、甘みが強くなります。タマネギの生の搾り汁を糖度計で測定したBrix:9ぐらいとのこと。フライパンで飴状にするとBrix:16ぐらいに、凍らせて加熱するとBrix:24ぐらいに、みじん切りにし、炒める前に重曹をタマネギ一個(250g位)に1/2小さじ入れて、炒めるとBrixが:30を超す値になると報告があります。お試しください。
 玉ねぎを銀杏切りにし、甘酢に数日漬けると、辛味も減り、夏の食欲の落ちた時の食欲増進には良いです。
 うまく料理し、夏バテしないように、ご利用ください。


1065号 2023年9月10日

(196)トウガラシ ナス科

 今回は「トウガラシ」のお話しです。トウガラシは「薬味=香辛料=スパイス」でしょうか。スパイスは、特有の五味「甘味、酸味、苦味、塩味、辛味」や、特有の香りをもち、香りの成分には抗菌性(抗微生物)を有するものが多く、食中毒の予防にも利用されます。
 トウガラシには様々な機能性があります。1)温性で、血行を促進し体表面を温め発汗。2)温湿布に用い、皮膚表面の血流を促進。3)育毛を補助。4)カプサイシンは微量で、胃での糖の吸収を促進する。5)抗菌性など 
 日本語で、唐辛子は「辛い」、火は「熱い」と言います。しかし、英語では辛いを「HOT」、熱いのを「HOT」で、同じです。脳は「熱いと辛い」を同じ部位で感じていることが判っています。
 辛み成分は、身体を温めるものが多く、その代表がトウガラシ(唐辛子)です。トウガラシの性質は「温」ですが、「体内を温め、発汗し、汗の気化熱で体を冷やします」。暑いときは、汗をかくことで、皮膚表面の熱が放散され、体温の上がりすぎを防ぎます。なので、唐辛子を食べると、カプサイシン類が持つ発汗作用で、かいた汗が蒸発の際に皮膚表面の熱を奪うため、“涼”を感じます。
 ブラジル中央部の都市「パンタナール」の日本人の方に、現地で、とても辛いトウガラシの話を聞いたのを思い出します。「実が1cmぐらいの小さなトウガラシの実を食べた現地の動物は、暑い夏を生きている、食べなかった動物は見かけなくなる」と。トウガラシの果実に抗生物質と同じ作用があるのではと感じました。これ以来、海外の市場では抗菌のため唐辛子をもらいカジリながら観ています。
 日本では果実収量の良い「鷹の爪」が一般的で、地域により「旨味成分」と「辛味成分」が異なり、沢山の種類があります。世界では3000種以上ではと言われています。辛くない品種には、ピーマン、パプリカ、シシトウガラシ等があり、美味しいです。
 トウガラシと言えば「辛味」と思いがちですが、トウガラシの果肉部分には、本来辛味が無いことがわかっています。トウガラシの辛味成分は、果実の隔壁(しきり部分)から分泌され、隔壁と胎座(種に接する部分)に貯蔵されます。辛いのは隔壁と胎座(種がついている白いワタのような部分)で、収穫の際、果肉や種子に辛味が分散します。果肉には糖分が貯蔵され甘みがあります。カプサイシン類は、微量で塩の代わりになり、巧く使うと料理の塩分を半分ぐらいに減らすことができます。これにより高血圧など生活習慣病に効果があるので巧くご利用ください。
【減塩調味料の作り方】
 ホワイトリカー(150ml)に一味唐辛子小さじ一杯。料理500mlぐらいに、これを小さじ一杯加えると、1/2ぐらいの減塩料理になります。お試しください。
 夏バテ解消には胃を弱らせないことが肝要です。トウガラシの辛み成分は食欲を増進させますが、辛い物の摂り過ぎはホドホドに。胃を弱らせ夏バテしないように、猛暑の残暑をお過ごしください。


1067号 2023年10月8日

(197)シ ナス科

    

 秋の味覚「クリ(栗)」、熊本県の山鹿、山江&球磨などが名産地、「山鹿栗スイーツフェア」が9〜11月に行われています。宮崎の高千穂の「栗きんとん 栗九里」とう栗羊羹が美味しいです。
 クリの花が5月に咲くと、独特の香りが漂い、開花が分かります。穂のように長い雄花の香りですね。雌花は雄花の根元に小さい花を咲かせ、受粉するとイガイガの中に種子(食べる部分)ができます。
 クリの葉、イガ、樹皮、渋皮には多量のタンニン(ポリフェノール)を含み渋いです。薬用としては、葉の煎液を、ウルシかぶれ、火傷などの皮膚疾患に外用で。葉が無い時は樹皮やイガでも良いようです。また、生の葉をもんだ汁を外用で、ウルシかぶれに。クリのイガの黒焼きをゴマ油で練り塗布すると脱毛予防に良いと言われていますが、いかがでしょうか?
 さらに、水溶性のビタミンB1、ビタミンC、ミネラルのカリウム(K)、ポリフェノールのgallic acid(没食子酸)等を多く含みます。
 日本での甘栗は「天津甘栗」が有名です。天津甘栗は、日本で作られた甘栗で、北京の山などで収穫された栗が天津港から日本に輸入され甘栗に加工。「天津甘栗」の名前がつきました。天津甘栗は中国に1995年ぐらいに逆輸入され、新栗が出る秋〜冬に天津などで名物になっています。
 クリの材は、鉄道の枕木に利用され、明治時代の近代化に貢献したようです。
 栗は縄文時代から重要な食用として利用されていました。「丹波栗」が大粒で有名で、古事記、万葉集、日本書記にも出てくる歴史あるモノで、江戸時代に全国に広まったと言われています。
 美味しいクリの選び方は、鬼皮が茶色で濃く張りと光沢のあるものがよく、一部が黒いもの(虫食い、痛み)等は避けてください。栗のスイーツで「モンブラン」というのがリますが、栗とは関係ないようです。山のような形をしたお菓子をモンブランというのでしょうか。フランス語で「モン=山」、「ブラン=白」という意味だそうです。
 秋になるとキノコが美味しいですね。キノコを、生で食べると、嘔吐下痢を起こすことがありますので、熱をきちんと加えて、美味しく食べてください。大豆などのマメ科類も、生で食べると、同じように嘔吐下痢を起こしますので、加熱して、美味しく食べましょう。
 秋になると空気が乾燥し、胃の水(水滞)が減り、胃の調子が良くなり「欲の秋」と言われます。ただ夏バテで胃腸が弱っている人は、食べ過ぎると、体調を壊しますので、胃をいたわりながら、食欲の秋をお楽しみください。風邪中と感じたら「すぐ、葛根湯を一包」で予防を。