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 保護司会菊陽支部長 熊谷 和信
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1028号 2022年2月27日
(1)保護司という存在知っていますか?

菊陽町の保護司と菊陽町役場総務係長と主事。
皆さんこんにちは。今回ワンネスさんのご好意により、初めて寄稿させていただくことになりました。大変嬉しく思っています。
さて、皆さんは「保護司」と聞いてどんなことを思い浮かべますか。案外知っておられる方は少ないのではないでしょうか。
保護司は、犯罪や非行した人の立ち直りを支援・指導するボランティアです。菊陽町には、現在8名の保護司が地域の安全・安心を願って、菊陽町役場総務課と連携しながら活動しています。
保護司は、犯罪をした人や非行のある少年に寄り添い、善良な社会人として更生することを助ける役割を担っているのです。犯罪や非行が生まれるのは地域社会です。立ち直る場所もまた地域社会です。犯罪から立ち直るには、彼らが過去と真摯に向き合い努力することは当たり前ですが、地域社会として彼らに「居場所」を与えることも必要なのです。立ち直りを支える方法は種々です。何ができるか皆さんと次回から一緒に考えていきたいと思います。 |
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1030号 2022年3月27日
(2)ボランティアとして保護司の身分は?
保護司を務めて8年になります。少年院や刑務所を出てきた対象者として10代の青少年から大人まで担当し、彼らと月2回来てもらい面接し、私たちは彼ら宅にも訪問し、支援と指導を行っています。今は、昔と違って犯罪者の多くは、大人の愛情に触れることなく育った少年や、貧困家庭で暴力を受け続けた少年、対人関係が希薄で地域社会から排除・孤立せざるを得ない大人と多元的な困難を抱えていることが多いように思います。
家族への恐喝で捕まり仮出所した、ある対象者を担当した時のことです。何度か会ううちに、私に問うのでした。「保護司はボランティアといっても、こうして俺と面接するごとにお金もらうんだろ」と。私は「いいや、もらうことはない」と言うと彼は信じられないという顔でした。
保護司は、法務大臣が委嘱する更生保護ボランティアで非常勤の国家公務員でもあります。給与は支給されません。保護司の仕事は、彼らを監視したり問い詰めたりすることではありません。飽くまでもその人の犯罪に目を向けるのではなく、その人の課題に目を向け寄り添いながら、支援を続けるという根気のいる仕事でもあるのです。
菊陽町では、現在8名の保護司が役場総務課と連携し、こうした活動を行っています。
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1032号 2022年4月24日
(3)保護司ってどんな人がなっているの?
保護司とは、犯罪をした人や非行のある少年を隣人として受け入れ、信頼関係を築きながら再犯・再非行のない人生を歩んでいけるよう支えていくのが保護司の務めです。
又、犯罪予防などの啓発活動として、街頭キャンペーンやJR駅でのあいさつ運動にも取り組んでいます。
かつて、保護司は誰にも知られず活動する裏方ボランティアでしたが、今は罪を犯した人の立ち直りや、保護司活動について積極的に情報発信するようになり、地域の皆さんに理解が図れるようになりました。
現在(2022年4月)、菊池郡市内には男性55名、女性22名の保護司が研修を受けながら活動しています。年齢層では、どうしても人生経験豊富な年代で、しかも時間的に余裕のある定年退職者や自営業者や主婦の人が多いように思います。保護司になるには66歳以下などある一定の要件を満たす必要はありますが、そんなに厳しいものではありません。もし、この記事を読んで興味を持たれた方や保護司として適任と思われる方がおられたら、その情報を熊谷までもらえると嬉しいです。 |
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1034号 2022年5月29日
(4)犯罪者イコール加害者では、
保護司はその加害者に寄り添うのは何故?

菊陽町の保護司同士で犯罪者の処遇についての会議
保護司は、犯罪をした人や非行のある少年を隣人として受け入れ、同じ目線に立って親身に接し、心的交流をベースに立ち直りを支援しています。
「反省なくして更生なし」と言われている通り、加害者が自分の行いを深く反省し、被害者に謝罪しその被害の回復に努め、更生の道を歩むのが本来の更生の姿です。保護司は、彼らと面接を行う際には謝罪や被害弁償についても、当然指導は欠かせません。加害者と被害者双方にとって有益な結果を得る支援と指導が重要なのです。
罪を犯した人間には何でも投げつけてもよい、人間として扱う必要がない、と考える人もあると思います。私自身も悪事を働いた人は刑務所に送られて、はい終わり。自分の視界から遠ざけていました。刑務所から出てきた後のことなど全く知りませんでした。
いじめでも同じですが、一度過ちを起こしても、人は情に触れ立ち直れることができるのです。私たち保護司はそんな犯罪者の立ち直りを支援しながら、再犯防止に努め、安心で安全な地域づくりを目指しているのです。 |
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1036号 2022年6月26日
(5) 「社会を明るくする運動」って、何?
来月7月は「社会を明るくする運動」強調月間です。これは全国的な運動で、皆さんも県内の公共施設等で「社会を明るくする運動」と書かれたノボリ旗を目にしたことがあるのではと思います。菊陽町でも役場、中央公民館、キャロッピア、図書館に毎年ノボリ旗が掲げられます。
そして、コロナが蔓延する以前は7月の第2土曜日に、町の図書館ホールにて「菊陽町明るく住みよい社会をめざす青少年のつどい」としてイベントを行ってきました。このイベントを通して、犯罪をした人の社会復帰には広く国民の理解と協力が必要である、ということを訴えてきました。2022年度は、7月2日(土)町の図書館ホールにて午前10時から開催予定です。保護司の活動報告も行います。
保護司の私たちは、犯罪をした人を受け入れ、社会復帰と再犯防止に向け彼らに面接指導を行っています。一度犯罪をした人の社会復帰には、何より就労と居住の確保が重要です。それが中々難しいのです。保護司の力だけでは無理があります。皆さんの理解と協力がどうしても必要なのです。長年にわたりこの「社会を明るくする運動」に力を入れている所以がそこにあります。
人は、周りに支えられている、受け入れられているという実感する時、立ち直りの力が出てくるのではないでしょうか。
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1038号 2022年7月24日
(6)保護司になっていただける方いませんか
菊陽町には、現在保護司は8名おります。年齢は40代から70代まで女性4名、男性4名です。多くが退職された人で、元役場職員、現町会議員、元保育園長、元小学校PTA会長、元自衛官、元銀行員、現僧侶、元小学校長、といったメンバーです。
私たち保護司は、少年院を仮退院また刑務所を仮出所した人の改善更生を手助けし、再非行・再犯のない人生を歩んでいけるよう支えていくのが務めです。このように、日常生活から逸脱した人達を元の日常に戻していくことは、地域から犯罪を減らすことにも繋がるのです。安全・安心な地域づくりにも貢献しています。
保護司は、無給ですが非常勤の国家公務員でもあります。無給であるが故、対価のない人間対人間の関係性が生まれ、信頼関係ができると思うのです。そこで、更生に向けた力になるのではないでしょうか。確かに給与は支給されませんが、職務に要した費用の全部または一部が実費弁償金として支給はされます。また、職務遂行中に被った災害に対しては、国家公務員災害補償法が適用されます。身分が保障されています。
社会参加活動の一つとして、私たちの菊陽町を犯罪や非行のない明るい社会の実現に向け、一緒に活動される方を望みます。 |
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1040号 2022年8月28日
(7)保護司のやりがいって何?

大津町・西原村・菊陽町3町村の保護司21名
日本の保護司制度は、130年以上の歴史があり、罪を犯した人を隣人として受け入れ、やむなく非行や犯罪に走った人の立ち直りを支え指導し、励ます役割を担っています。つまり、私たち保護司は再び非行や犯罪に陥るのを防ぐ「更生保護」活動を行い、地域社会の一員として暮らせるよう支援すること。そのことを目標としています。
「更」と「生」を組み合わせると「甦」という文字になります。これは、正に「甦る(よみがえる)」ということです。
更生保護の活動は、あまり目立たない活動として長年行われてきたきらいがあります。しかし、現代は誰一人取り残さない社会づくりが提唱され、たとえ過ちを犯しても「人は変われる」を信じて、地域社会の一員として立ち直ってもらう。それが私たち保護司の使命でもあります。
こうした彼らの人生の転機に係ることが、保護司のやりがいだと強く感じています。 |
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1042号 2022年9月25日
(8)犯罪者と接するって怖くないの?
保護司は、犯罪や非行をした人と直接会って、更生を手助けすることが努めです。そこで、多くの方はこうした犯罪や非行をした人に直接関わる、という部分への不安や抵抗があるのではないでしょうか。それで保護司になってもらえないのではと思われます。
しかし、私たち保護司が担当する対象者というのは、刑務所を仮出所した人、或いは執行猶予で保護観察を付与された人です。つまり、刑の満期を待たずに出所できる人というのは、自分が犯した罪に改悛の情が十分に認められた人です。重罪者の多くは仮出所が認められることなく、満期釈放で、保護司による保護観察の対象にはなりません。保護司の接する多くは薬物違反、窃盗、ぐ犯者(罪を犯すおそれのあるとみなされる少年少女)等の事犯による対象者が殆どです。
「人は変われる」を信じ、犯罪者に対し利他を行じ「一隅を照らす存在」として社会的意味は大きいと思います。
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1044号 2022年10月23日
(9)保護司としての生の声聞かせて!

保護司は、日常生活から逸脱した人たちを元の生活に戻していく活動が主です。かつて、保護司は誰にも知られず活動する裏方のボランティアでした。
しかし、今は罪を犯した人の立ち直り活動にとどまらず、保護司について積極的に発信し地域の皆さんに理解を図り、できれば私たちと共に活動していただける方を探しています。
そこで、今回からは菊陽町で実際保護司として活動しているメンバーの生の声を紹介していきます。
「保護司に任命されて12年が過ぎました。面接は町内の町民センターの一室で行っています。保護観察期間が終わって『結婚しました』『子どもができました』等々連絡があります。それがやりがいであり、保護司を続けていこうという原動力です。」(62歳 女性)
「私は保護司になって8年目です。妻からは『あんたは人を更生させるどころか、あんたこそ更生させてもらうべきだ』と言われています。なんて情けない保護司でしょう。このような私ですが、気持ちだけは人に寄り添い何か役に立つことがあれば、という思いを持っています。私は、保護司として他人の人生に関わりを持てること。それが保護司のやりがいと思っています」(70歳 男性 筆者・熊谷) |
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1046号 2022年11月27日
(10)保護司になってどんな感想を持ったか聞かせて!

保護司は、犯罪や非行をした人の改善更生を手助けすることが主な活動です。保護司として犯罪者とどのように接し、関わりを持ち「処遇活動」(立ち直りを支援すること)を行っているのか、菊陽町で実際活動している保護司の声を紹介します。
「“人は変われる”という言葉が心に残っています。世の中がよくなるよう信じ、相手の思いに耳を傾け、自立した生活ができるよう支え、立ち直りを助ける保護司になれたらと思います」(保護司経験:半年 59歳 女性)
「保護司を拝命して5年目を迎えます。先ず面接に当たって心掛けている一つとして、相手を『認める』事です。認める事で心を開き、信頼関係が構築され、その先には『最高の笑顔』を見る瞬間があります。保護観察期間最後の面接時に『良く頑張りましたね』と声を掛けると『先生が担当でよかったです』と、『最高の笑顔』で感謝されることも。この様に『立派に立ち直せる』ことができ『最高の笑顔』の瞬間に出会えることが保護司のやりがいだと感じています。」(保護司経験:5年 62歳 男性)
保護司は、自分が担当する犯罪者と月2回の面接を行い指導と支援を行うのが主な活動です。 |
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1048号 2022年12月25日
(11)保護司のやりがいとは
保護司としての原点は、仏教の教義に発していると言われております。それは「亡己利他(もうこりた)」という教えです。これは、「己を忘れて他を利する」と読めます。「利他(他を利する)」とは何か。「悪事は己に向け、好事は他に与え、己を忘れて他を利する」とあります。「悪事」つまり危険が伴う仕事は私が引き受け、「好事」危険を伴わない仕事は他人に回して上げなさいという意味です。
このような思いで私たち保護司は菊陽町に犯罪のない、安心安全な地域づくりを目指して活動しています。実際、現在どのような思いで保護司活動をしているのか、感想を紹介します。
「保護司をやって一番嬉しいことは、対象者(犯罪者)と面接を重ねているうちに対象者の生活環境に安心感・居場所ができて会話が進み、笑顔が増え元気になられてくることが一番かな。どの面接も『アーそうだったのか』『そんな考えもあるんだ』と、会話の中に細かな思いやりの心遣いに学ばされる事が多い。これまで生きてこられた人生、そしてこれからの人生、貴重な体験を語っていただけ、対象者の大事な節目に出会えて寄り添えることは有り難い」(保護司経験:8年 70代 女性)
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1050号 2023年1月29日
(12)保護司として犯罪者に接して思うこと!
塀の中から出てきた人は、どのようにして生きていくのか、保護司になる以前、私は全く知らなかったし考える事もありませんでした。悪事を犯した人は刑務所へ入って、それ以後のことには無関心で私の視界から遠ざけてきました。
しかし、保護司として犯罪者との面接を経験し、彼らの背景には幼少期に虐待、差別、貧困、孤立、学力等が影響していることが分かりました。
そんな出所者に能力を引き出し、社会復帰に向け働くことの充実感を感じさせる精神的な支えになろうとするのが保護司の役目でもあります。今回も菊陽町で活動する保護司の声を紹介したいと思います。
「私は、保護司として経験も短く、私自身が対象者にどう接してよいのか、どのように導いてよいのか考え、いつも不安な気持ちがあります。しかし、面談するときは対象者が話し易いように、緊張などしないで話せるように心がけています。『変わりなかった?』『楽しいことあった?』などと・・・・・・その時の返事の明るさ等に気を配っています。対象者自身からこんな事があったよ。と自分の心の中を少しでも話してくれると、嬉しくなります。まだ達成感だったり、これがやりがいと話せることはありませんが、対象者の気持ちを聴いたり、助言をし一歩、二歩と前に進めるよう関わっていけたらと思っています」
(保護司経験:8ケ月 59歳 女性)
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