東ヶ丘区 疋田博


148号 2003年1月5日

(1)森のはなし

 21世紀は「環境の世紀」と言われています。そして「みどり」「森林資源」などの活字をよく目にするようになりました。
 そこで森林が人々の生活にどのようにかかわっているか少し考えてみたいと思います。
 木、林、森、漢字で書いてみますと1本1本は「木」、木が並んだものは「林」、林の上にさらに木が重なったものが「森」でようか。また、木は樹木とも言い、林と森をつないで「森林」とも呼びます。森とはたくさんの種類の樹木の集団を指すものと考えられます。
  では、我々の日常生活に「森」はどうかかわってるのでしょうか。

1.目に見えない恵
 ・酸素を供給する(二酸化炭素を吸収)  ・気温を調整(木陰)

2.レクレーションの恵み
 ・花、新芽、紅葉、巨木  ・林内散策の癒し(森林浴)

3.国土保全活動(保安林)
 ・水源かん養  ・防霧  ・土砂流失防備  ・雪崩防止  ・土砂崩壊防備  ・落石防止
 ・飛砂防備    ・防火  ・防風        ・魚つき    ・水害防備     ・航行目標
 ・潮害防備    ・保健  ・干害防備     ・風致    ・防雷        

4.産物
  ・木材   ・木の実   ・山菜、きのこ

5.野生鳥獣の棲家
・樹木と鳥獣の共存     木の実 ⇒ 鳥獣のエサ ⇒ 種子運搬 ⇒ 樹木の子孫を増す

 このように森は計り知れない力を秘めています。


152号 2003年2月2日

(2)森のはなし

 「森」が樹木の集団であれば、まず身近にある庭木について語る必要があります。
 街を散策していると各家庭の庭にはいろんな樹木があります。赤色系の実をつけているものには、クロガネモチ、ウメモドキ、ピラカンサなど、背の低い気ではマンリョウ、センリョウ、ヒャクリョウ(学名はカラタチバナ)、ジュウリョウ(学名はヤブコウジ)、そして刺のあるアリドウシなどがあります。黒色系の実がなるものに、イヌマキ、ヒイラギ、サカキ、ヒサカキ、モクセイなど植えてあります。
 また大きい庭木の下にはまったく違う種類の木が知らないうちに芽生えていることがよくあります。どうしてでしょうか。犯人は鳥たちです。熟した実はヒヨドリ、ツグミ、ショウビタキ、メジロなどのエサとなっています。特に鳥たちは完熟した実から順に食べて、遠くまで飛び回り、果肉を消化したあと硬い種だけを排泄します。
 樹木はこうして自分たちの子孫をなるべく広い地域に残しているというわけです。まさに樹木と鳥の共存関係でもあります。特に面白いのは、樹木の中には種子を包んでいる果物の中に発芽を抑える成分を持ち、鳥が胃袋の中で消化しなければ芽を出せないものもあるということです。
 また、隣家との境、道路側には生垣もあります。イヌマキ、カシノオキ、カイズカイブキ、ベニカナメ、ツゲ、サザンカ、モクセイ、ヒイラギなどの樹木が植えられ刈り込まれています。一般的に目隠し目的と考えられがちですが、防火と防音の働きもしてくれます。落ち葉しない肉の厚い樹木が最適ではないでしょうか。
 いずれにしても自分の庭ですから四季の変化、用途など自由に発想を豊かにして見直してみるのも楽しいのではないでしょうか。さらには、樹間のバランスを考え、木陰も作り小鳥を呼び寄せられたら、毎日が楽しい気分で過ごせる気がします。


156号 2003年3月3日

(3)木のなまえ

1.イチイ(一位)
  仁徳天皇がこの木で笏を作り、正一位の位を授けたと伝えられている。別名アララギ、オンコとも言う。

2.アスナロ
  明日からはヒノキになろうという意味から付けられた名前と伝えられている。葉はヒノキに似て、木の肌は杉に似ている。

3.コノテガシワ
  枝葉が人の掌の形をし整然と並んでいる。

4.クヌギ(櫟)
  どんぐりは丸く大きいため遊びの道具として使われた。

5.カシ(樫)
  材が硬い。カシの仲間は葉の特徴を名前にしたものが多い。
 @アラカシ(葉の周りの鋸葉が粗い)   Aウラジロガシ(葉の裏が白い)
 Bツクバネガシ(枝先の葉付が羽根つきの羽に似ている  Cウバメガシ<姥目樫>(葉が細く小さい)

6.マテバシイ
  別名マテガシ。材質が椎と樫の中間ほどで「待てば椎になるかも」という意味が込められた。

7.バクチノキ
  木の皮が大きく剥がれる性質から、博打で身ぐるみ剥がされるのに例えられた。

8.サルスベリ(百日紅)  肌がつるつるでサルも滑るという意味。

9.ツバキ(椿)  初春に咲く。

10.エノキ(榎) 夏に咲く。

11.ヒイラギ(柊)
  冬に咲く。庭木として鬼門(敷地の北東角)裏鬼門(南西角)に植え魔よけとされる。

12.シキミ(樒)  墓花として使われる。

13.ヤツデ 刃先が大きく裂けて人の手に似ているため、泥棒除けとして古来より門の脇に植えられた。

14.カエデ(楓) 種子に羽がつき風の力を借りて飛び子孫を増やす。

15.ナナカマド  七回釜戸に入れても燃え尽きない。


161号 2003年4月6日

(4)木材の用途

 1.イチョウ(銀杏)   まな板、実は茶碗蒸しなどに使われる
 2.イチイ(一位)    床柱、笏(神具)
 3.カヤ(榧)       碁盤、将棋盤
 4.イヌマキ(槙)    床柱
 5.モミ(樅)       天井板
 6.ツガ(栂)      天井板
 7.スギ(杉)      床柱、建築材、家具
 8.ヒノキ(桧)     建築、家具材
 9.サワラ(椹)     桶材
10.クヌギ(櫟)     しいたけ原木
11.カシ(樫)      家具材
12.ケヤキ(欅)     床柱、建築家具材
13.クワ(桑)      床柱、家具材
14.ホオノキ(朴)    まな板、彫刻材
15.クスノキ(楠)    家具、彫刻(仏像)、樟脳
16.タブノキ       家具
17.クロモジ       つま楊枝
18.ヤナギ(柳)    まな板
19.ヤマザクラ(山櫻) 縁板(縁側の板強)
20.モッコク(木斛)  沖縄地方では建材として使われている
21.カエデ(楓)     床柱、家具
22.ツゲ(黄楊)    櫛、ソロバンの玉、将棋の駒、印材
23.トネリコ       野球用バッド材
24.ガマズミ      柔軟性に富み石屋さんのゲンノウの柄に最適別名ウシコロシ、ウシタタキとも言う
25.マツ   (松)   建築材、以前は炭鉱の支柱に使われた
26.クリノキ (栗)   以前、鉄道の枕木として使われた
27.ナラ   (楢)   家具材
28.ブナ   (?)   建築、家具材


165号 2003年5月11日

(5)樹木の性質

1.日向でよく育つ木=陽樹と言う
(イチョウ、アカマツ、クロマツ、クリカイズカイブキ、ケヤキ、ハンテンボク、モモ、ネムノキ、キササゲ、キョウチクトウ、サルスベリ、フヨウ)

2.多少日陰でも育つ木=半陽樹と言う
(スギ、ヒバ、ヤナギ、ナラ、トサミズキ、ハナミズキ、カヤ、モミ、ヒノキ、サクラ、カシ、シイ、ブナ、クス、オガタマノキ、ヤマモモ
 シャリンバイ、ユズリハ、ツゲ、モチノキ、ヒサカキ、サカキ、サンゴジュ、ツバキ、サザンカ、シャクナゲ、アセビ、ネズミモチ)

3.強い日陰でも育つ木=陰樹という
(イチイ、イヌマキ、コウヤマキ、ツガアスナロ、アオキ、ヤツデ、ナギ、マサキ、クルミ)

4.日向、日陰どちらでも育つ木
(ゴヨウマツ、ヒマラヤシーダー、ナンテン、コブシ、タムシバ、マンサク、ナナカマド、カナメモチ、カイドウ
 ボケ、ウメモドキ、ニシキギマユミ、カエデ、ヒメシヤラ、ナツツバキ、ザクロ、ヤマボウシ、ガマズミ)

5.移植に弱い木
(イチイ、オガタマノキ、キリ、コブシ、サクラ、シラカバ、タイサンボク、ナラ、ヒバ、モクレン)

6.その他注意すべき事項
 @ツツジは弱酸性の土壌のほうが花つきがいい
 Aジンチョウゲを移植するときは、長い根は切らずに丸めたまま植えた方が枯れない
 Bドウタンツツジの新芽が萎れたら他の木も水を欲しがっていると判断して水遣りをすること


168号 2003年6月1日

(6)森は天然のダム

 これまで5回にわたって森と樹木について書いてきました。まず、森と人間とのかかわり(森の恩恵)は・・・
 @目には見えない贈りもの(酸素製造機能)、A視覚を通した贈りもの (新緑、紅葉)、B土地の保護機能(枝葉、根による崩壊防止)、C林産物の贈りもの(木材、山菜、きのこ)、D野生鳥獣の棲家(巣)
 しかし、森林にはもっと大事な役割があります。森が天然のダムの役目をしていることです。空から降ってくる雨は枝葉で受け止め幹を伝って地表に達します。地表には落ち葉、コケなどがあり水を含む働きが出来ます。そのため、一度に川に流れないですみます。ほとんどの水は地下水となり、長い年月を掛けて川に流れていくことが分かっています。逆に、森の無い地方地域では、露木や、台風シーズンには大きな水害に見舞われていることになります。
 そして、園地下水を上水道の水として利用して生活しているというわけです。したがって、きれいな森にしておかないときれいな水は飲めなくなるのではないか、少し心配ですね。
 また、雨は空気中のいろんな成分を集めて一緒に地面に降ってきます。汚れた空気では、汚れた雨となってしまいます。
 21世紀は「環境の世紀」といわれています。自分たちの住むこの地球を汚さないよう、みんなで気をつけて生きたいと思います。

 

 

    川久保区  田中成美


139号 2002年10月27日

(1)イギリス文学紀行便り

 台北、香港を経由してイギリスのヒースロー空港に降り立ったのは8月22日の早朝6時20分であった。香港で、待ち時間の関係で数時間の観光を済まして来たので、日本を出てから2日ぐらい経っているような錯覚がした。ふと空を見上げるとイギリスには珍しい青空が広がっている。今からのたびを祝福してくれているようで嬉しかった。
 「皆は大丈夫だろうか・・・」参加者11名のことが気になりふと振り返る。中学生から60代までの会社員、主婦、キルトの先生、親子と年代も職業も関係も本当に様々。ただひとつだけの共通点は私の英語スクールの生徒さん達ということである。皆意外と元気そうで安心した。手作りの旅「イギリス文学紀行」ありきたりのツアーでない海外旅行。ハプニングも多いし、自己責任も重いが園文、中身も思いでも濃い旅。そんな旅を体験して欲しい・・・。これは数年前からの思いだったが、今回実現することが出来て本当にうれしかった。
 空港からホテルへは、ツアーならば大型バスが空港横付けで待っているところだが、私達のような手作りの旅行派はそういうことはしない。地下鉄に乗るのである。ロンドンの地下鉄はいうまでもなく世界でもっとも長い歴史を持ち、その車両の形からチューブといわれている。これを乗りこなせばロンドン観光は本当に便利で安くできる。ただドアが閉まるのが早く、アナウンスもあまりないので、駅の標識に気をつけておかないと乗り過ごしてしまうから要注意。私達がチューブに乗り込んだのは、ちょうど朝のラッシュアワー時で、ものすごい混みようであった。全員大きなスーツケースを持っているので悪い気がしたが、現地のイギリス人たちは一向に気にかけてない様子であった。中を見渡すと実に様々な人たちが立っている。アジア系、中近東系、アフリカ系・・・ロンドンは本当に国際都市なのである。
 「Excuse me!」通勤者を押しのけてやっとの思いで地下鉄を降りた。 さあ、旅の始まりだ!


145号 2002年12月8日

(2)イギリス文学紀行便り

 旅にはそれぞれの夢がある。特にそれが海外旅行になるとその夢はおおいに膨らんでくる。
 イギリスについての夢といえば一般的に、アフタヌーンティー、イングリッシュガーデン、バッキンガム宮殿・・・。どれも日本人のロマンを掻き立てるものばかりである。しかし今のイギリスを代表するものといえば、なんと言っても「ハリー・ポッター」であろう。
 全世界で数百万部を売り上げ、つい先日発売になった4巻ももちろんベストセラー。映画の第2部も封切りされ、私を含め多くの人たちが楽しみにしている。
 その映画の代一部のロケが行われた有名な駅が、ロンドンにある「キングスクロス駅」だ。映画のロケ以降観光客がひっきりなしに訪れるこの駅はスコットランドなどのイギリス北部へ向かう駅である。
 この駅についての夢を長い間膨らませ最大の楽しみにしてきたメンバーが一人いた。お母さんと一緒に参加した中学生である。聞くところによると第1巻の「賢者の石」は数回読んだそうだ。
 地下鉄を乗り換えてキングスクロス駅に着いたのはロンドンについた日の4時頃であったろうか。みんな地下鉄にもだいぶ慣れてきていた。乗り慣れるとこれほど便利なものはない。1日パスを買うと数百円で乗り放題だから経費の節約にもなるし生活者の感覚を少しだけど味わうことも出来る。
 地下鉄を降りて駅に出た。“Wow it’s BIG”その大きさと歴史を感じさせる佇まいにはやはり驚かされてしまう。
 ハリー・ポッターの主人公が魔法の学校に行くときに使った9番ホームのプレートは、もう外されてないと聞かされてがっかりして、ふと中学生を見ると姿が見えない。
 時代の流れに乗るのが少し遅い私たちをちょっと置いて、彼女はロケがたくさん行われた所ですでに何枚も写真を撮っていた。
 夢に掛ける情熱は子どもも大人もない。小さな夢を現実化できるチャンスを与えることが出来て私もうれしかった。


149号 2003年1月12日

(3)イギリス文学紀行便り

 「ここに行かなかったら後悔することになるでしょう。」
 全行程に同行してくれたエリック氏の一言に皆気持ちも決まり、東経0度、世界の基準子午線が通るグリニッジ天文台を見に行くことになった。電車で行けばロンドンから30分ぐらいのところにあるのだが、私たちはテムズ川を下って約1時間半のクルージングを楽しみながらいくことになった。テムズ川の両岸には国会議事堂などの有名な建物が多くあり、川風を頬に受けながらの遊覧観光は最高であった。
 天文台は小高い丘の上にあった。1675年、船の位置を正確に知るための天体観測データを作る目的でチャールズ二世によって建てられたものである。当時は東洋から輸送される香辛料は高価のもので多くの富をもたらしたらしい。正確な軽度や時刻を知ることはインド、スマトラなどへ往復するのにどうしても欠かせなかったのだ。
 実はこの天文台が丘の上にあるのは意味がある。建物のてっぺんに赤いボールがくっついている。このボールが午後1時ジャストに上からストーンと下に落ちる仕組みになっているのだ。17世紀の貿易船はこれを見て時計を合わせていたそうで、眼下に広がる海に浮かぶ船からも見えるように丘の上に天文台は建てられたそうである。そして21世紀の今日もまだ同じように落ち続けているというのが指すがイギリスである。
 世界の標準時計も自然発生的に出来たものではなく、国の利益を確保する重要な必要性の基に作られえたことを知り、科学の発展の背景を見る思いがして面白かった。
 「みなさーん、急いでー。もうすぐ1時!ボールの落ちるのを見そこないますよ!」
 エリック氏の注意に時差ボケで疲れている体に鞭打って皆で走った。It’s 1:00 now!!ボールがゆっくり落ちていく・・・。これで後悔がひとつ減った。

 

153号 2003年2月9日

(4)アガサクリスティーの故郷「トーキー」

 あまりにも短すぎるロンドン観光に終わりを告げ、私たちは今でもイギリスで一番の高級リゾート地「トーキー」へと向かった。ここは「ナイル殺人事件」などでおなじみの名探偵「ポワロ」を世に送ったミステリー作家、アガサクリスティーの故郷なのだ。
 ロンドンのバディントン駅で違う電車に乗ろうとしたりするなど相変わらずのハプニングの後、やっと自由席に腰を落ち着けることが出来た。早速隣り合わせになった女性に話しかけてみる。「Where are you from?」なまりの強いその女性はドイツから家族旅行に来ているとのことであった。
 この「トーキー」という町はアガサクリスティーの生きていた時代は、フランスやロシア等ヨーロッパ各国のロイヤルファミリーの避寒地だったそうである。アガサクリスティー自身もとても裕福な家庭のお嬢様であった。作品もほとんどが上流階級を舞台としている。
 白い壁の建物が立ち並んで高級ホテルが目立つ。南国的な香りの強いこの町はおりしもの3連休と重なり観光客であふれていた。車から見える美しい海岸線は短い夏を楽しむ人たちでいっぱい!
 水着を着てゆったり日光浴をしている太目の女性たちを見て「先生もここではビキニが着れますね!」と男性参加者が冗談を言うと皆が爆笑した。
 朝食に必ず出るカリカリに焼いたベーコンを明日からは食べないようにしようとひそかに思った。


162号 2003年4月13日

(5)「貴婦人の横乗り乗馬」体験

 イギリス滞在も4日目を迎えた私たちはエクセターの西にある「ダートゥムア」へとミニバンを走らせていた。「ムア」というのは「荒野」を意味する。荒涼と広がる原野も日本では目にしない風景で、イギリス訪問の大きな魅力のひとつともいえる。
 私たちがこの地を訪れたのは「貴婦人の横乗り乗馬」を体験させてくれる牧場があるとの情報を得たからである。「横乗り乗馬」とは貴婦人が長いドレスを着て、馬をまたがないで横乗りで乗馬をするのである。鞍も横乗り専用のものがある。いまだに貴族、貴婦人がいるイギリスでは盛んであるらしい。もちろんイギリスほどではなくても他の国でも存在し、日本にも支部があり競技大会も定期的に行われていると聞いている。
 「こんなところに牧場があるのだろうか」と思えるような田舎の道を通り抜けやっと目的の牧場に着いた。上品な微笑と洗練されたアクセントの英語で迎えてくれた奥さんは先祖代々この地に住む地主の家系であるそうだ。娘さんや孫さんの優雅な乗馬のショーをまず見せていただいた。『How beautiful!』
 その後、希望者はドレスを着て馬の上で写真を撮っていただけるとのこと。「イヤー、恥ずかしい」と言っていたメンバーも美しいドレスを見るなり「もうこんな機会はないかもしれないから、やってみよう」ということになった。お気に入りのドレスと帽子に身を包み、手と足を支えていただきながらやっとの思いで馬の上に横乗りに乗る。気分はすっかりレディ!
 帰ってから夫にその写真を見せると「ワハハ・・・!」と大笑い。女のロマンは分からないの?


177号 2003年8月3日

(6)イギリス文学紀行便り

 エクセターから焼く700q離れた「湖水地方」まで、私たちはミニバスを走りに走らせた。100年前と景観がまったく変わっていないこの地方は、環境保護の先駆け「ナショナルトラスト」の発祥の地としても有名である。
 その名のとおり、ここは美しい湖が点在し「絵のようなイギリスの風景」という表現がぴったりである。昔から多くの芸術家たちが住んだ場所でもある。詩人ワーズワース、ピーターラビットの作者であるベアトリックス・ポターの二人は特に世界的に有名だ。
 日本からもこのピーターラビットの古里だけに来る旅行者も多い。ちょっとした村の風景がピーターラビットの絵本に出てくる情景のまま残っているのだからすばらしい。実は私は以前から、この絵本の作者ポーターのファンなのだ。
 作家としての成功を収めた後、才能の限界を感じた彼女は羊を飼い始め牧場主としても大成功を収める。作家から農民へ。この変身もユニークである。結婚も、若いとき恋人と死別し、中年過ぎてから横伴侶と巡り会っている。
 人生の浮き沈みを鮮やかに乗り切るこのバイタリティを私も持ちたいと願う。
 この「湖水地方」は日本のテレビでもよく取り上げられる。「この前私が止まった宿がテレビで紹介されてました」と参加者の一人がうれしそうに話していた。
 「計画してよかったなぁ」と心の中でつぶやいた。